異世界転移したんだけど周りが全員過保護なホモだった件

メル

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ツンデレガチ勢★聖騎士団編

とある聖騎士たちの会話

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「せいっ!」

キィィィン……ぐわぁんっ

「うわっ」

「攻撃が単純過ぎる! 敵に動きの癖を教えているようなものだぞ!! 次!」

「第3部隊、アシュトン・ダグラス、いきます!」

カァン…バキンッ

「動きは悪くないが剣の手入れをしていないだろう!! 戦場では剣が折れれば命も終わると考えておけ!! 次!」





「団長、いつにも増して機嫌悪いな」

「会議だけの筈が、上層部に口出しされて訓練まで追加になったもんなー」

「そのせいで! あの子に! 会いに! 行けないのが! 最大の! 要因だと! 思うぜ! 俺は!」

「ああ、あの子ですか…。あの子が団長に嫁いでくれたら、一件落着なんですがねぇ…。それとチャド、うるさいです」

「すまん!!」

「お前改善する気ねーだろ…。…というか、あの子って誰だ?」

「そっか、お前ら2人とも『死神の吐息』殲滅に行かなかったんだっけ」

「おう。シャムロック家のお嬢様が突然魔物を倒してみたいとか言うもんだから、そっちの警護に回ってたんだよ」

「あーあの侯爵家のお嬢様か。女だからってちょっとわがまま言い過ぎだよな。上層部に親戚がいるからって、教会を何の躊躇いもなく使うし」

「ええ。いい加減にしてほしいです。自分以外は全員奴隷と思っているようですし…。本当に愚かな小娘…」

「お前、たまに言葉の端々に棘が滲み出るよな」

「ふふふ気のせいですよ」

「…それで、あの子って?」

「団長が! 『死神の吐息』に! 捕らわれていた! あの子を! 助けたんだ!」

「捕らわれていたぁ? 貴族の子供なのか?」

「いや、一般の冒険者だよ。ほら、話題になってるだろ? オーディアンギルドが探してる『人を惑わす小悪魔のような天使』って」

「ああ! 昨日も親父が笑ってたよ。『言い過ぎだ』って。…え、まさか!?」

「そう! その子!」

「うぉぉぉマジか!! ど、どんな子なんだ!?」

「まさに『人を惑わす小悪魔のような天使』、でしたねぇ」

「とてつもなく可愛い。この国一番の男娼って言われても納得するくれぇだ」

「そ、そんなにか!!」

「『死神の吐息』に性奴隷として捕らわれていたって団長と副団長は言ってるけど、ガレ・プリストファーにしつこく求婚されてたって噂だぜ?」

「俺は『死神の吐息』の奴ら全員手懐けたって聞いたけど」

「『死神の吐息』に潜入してた、ミゲルって奴がいるんだが、詳しくは教えてくれなかったぜ。ただ、『大切に大切に愛されていました』って副団長にあの子の事を報告してんのを聞いた奴がいるとか」

「尻振って虜にしてたんじゃねーの?」

「でも、男慣れしてなさそうな雰囲気でしたよ」

「確かに。ありゃあ自分が好意と欲望を向けられてんのに気付いてなさそうだったな」

「え……それ、ヤバくねぇか? すぐ襲われちまうだろ…」

「だから、昼間の創造祭で第1部隊の実力者上位10人がその子の警護に動いたんだよ」

「だっ、第1部隊が10人も!!?」

「なんでも、城下町で貴族の子供に絡まれたかららしい。警護中の様子を聞いたんだが、無邪気に手を振ってくれたんだと」

「それが可愛くて各々で自分をアピールし始めたら、団長から牽制が飛んできたと」

「ほへぇ~」

「あの! 『奇跡』を! 引き起こしたのも! その子の! 仕業! なんじゃ! ないかって! もっぱらの! 噂だ!」

「………マジで?」

「お前ら、その『奇跡』を身をもって体験したんだろ? 生き返った感想は?」

「……最期に見たのは、俺に馬乗りになって剣を振り上げた男の姿だった。で、気付いたら死んだ筈の友が俺を揺さぶっていたんだ。一瞬、あの世かと思ったぜ」

「私は首をはねられました。が、起きて見ると傷1つ無く、綺麗にくっついていましたよ。その時あの子を初めて見たのですが、ガレ・プリストファーと目を合わせて苦笑いしていました。……何か知っているのは間違い無さそうです」

「…………」

「…………」

「…………」

「……! ……!」

「…………」

「…そ、壮絶だな…」

「チャドは黙っていてもチャドだな」

「じゃあ、その子とガレ・プリストファーは何がどうして『奇跡』が起こったのか、知っているのか…」

「上層部は聞き取りを行ったのか?」

「……いや、何せあの外見だからな…。信仰を忘れた一部の上層部が手を出そうとして、団長が脅して止めたらしい」

「だが、聞き取りしない訳にはいかないだろう?」

「聖騎士団に一任だとよ」

「あの子の為ならば、僕は命を懸けます…」

「うおっ! もー脅かすなよお前!」

「え、つかマジ? つかお前誰?」

「失礼しました。第1部隊のパトリック・モーヒューです」

「だ、第1部隊…!!」

「第1部隊? 俺らと何か違うんすか?」

「(ばっかお前新人かよ!)」

「あっはい、3日前に第4部隊に配属されました」

「本当に新人かよ!!」

「(第1部隊は実力主義、第2部隊は権威主義、常識だぞ!)」

「(………つまり、強い人って事ですか?)」

「(この国でもトップクラスでな!!)」

「(下手な貴族なら道を譲る……)」

「(エッ!!)」

「うちの新人が失礼致しました。……それで、伺ってもよろしいですか…? 先程の言葉について…」

「構いませんよ。いきなり声をかけたのは僕ですから。……作戦に出向いた聖騎士は、皆あの子に助けられました…」

「……!! では…!」

「ええ。噂通り、『奇跡』を引き起こしたのはあの子です。黙っているつもりでしたが、第2部隊の貴族たちがあの子を男娼と呼び、団長に媚を売っているなどと言っていたもので…。無許可ですが広める事にしました」

「それって……バレたらまずいんじゃ…」

「勿論、覚悟の上です。どんな罰だろうと受け入れましょう」

「えっと! じゃあ! あの子は! 無詠唱で! 広範囲! 属性無視の! 蘇生魔法を! 使ったって! 事ですか!? しかも! その後! 帰り道で! 団長を! 倒した! そうじゃ! ないですか!」

「後者は団長が勝手に倒れただけです。ですが…前者は事実です。えぇ…! えぇ!! あの子は神の御子なのです!! ですがあの子は縛られる事を嫌う…。我らはあの子を解放し、あの子が様々な人を救っていくのを影から見守るべきなのです!!」

「…………それが表に出た時、上層部がそう簡単にあの子を解放するでしょうか。自分たちの権威が揺らぐ事を恐れて、始末しようとするのでは…」

「その時は、我らが命を懸けて御守りするだけです。第1部隊の者は全員、あの子に全てを捧げる事に躊躇いなどありません。今ある命はあの子に貰ったものなのですから…。それと、表には出しませんよ」

「出さない? それじゃあ…あくまで、あの子の事は噂のまま終わらせるというのですか?」

「噂で終われば良いですが…第2部隊のおバカさんたちが黙っていますか?」

「あはは、結構言いますね! でも…、そうですね。中には本気に捉える方もいらっしゃるでしょう。ですので、第2部隊などの魔の手からあの子を護る為、ファンクラブを結成しました!」

「…………………………えっ、ファンクラブ?」

「はい! その名も『K-A-M』です!」

「カム?」

「『コージくんを愛して護る』の略です!」

「あ、ああ、今更ながらコージくんって名前なんだな」

「なんか、みんなあの子とかその子とか、固有名詞を言わないから不思議だったけど…」

「…名前を言うと、来るんですよ」

「…? 誰が?」

「団長が、です。こんな風に」


「お前ら、何故サボっている。それに今、コージとか言わなかったか」


「「「!!?」」」

「だっ団長!? いつの間に…!!」

「団長、僕が彼らを引き留めたんです」

「その理由は?」

「『K-A-M』に勧誘していました」

「ああ、あのファンクラブか…。今、何人だ?」

「第1部隊は全員入会していますし、コージくんに惚れ込んだ他の部隊を合わせると…ざっと250人といったところでしょうか」

「チッ…。もうそんなに増えているのか」

「(やっぱり団長、コージくんに夢中なんだな!)」

「(パトリックさんの話が本当なら、そりゃ惚れるだろ!)」

「(あの! 外見! だからな!)」

「直接手を出すなよ。あとコージに気付かれんなよ。あいつ、庶民思考だからな」

「徹底しておきます」

「…あぁ、それとパトリック。お前、コージの噂を広めているらしいな」

「……もう、バレちゃいましたか」

「別に咎めるつもりはない。が、コージに迷惑はかけるな。より多くの者がコージの味方になるように動け」

「心得ております。『K-A-M』副会長の名に恥じぬよう努めていきます」

「……会長は誰だ」

「副団長ですが…」

「スティーブ…! あいつ…!!」



「…す、すみません…パトリックさん。あの…、……俺を、ファンクラブに入会させてください!!」

「! ……パトリックさん。私も、お願いします」

「…………構いませんが、コージくんの為に、全てを捨てる覚悟はありますか?」

「コージくんに救われたこの命…、コージくんの為に、使います!」

「私たちは独身です。捧げられるものは多くありませんが、それでもあの子を愛したいのです」

「……よろしい。おふたりの入会を許可しましょう」

「!! ありがとうございます!」

「ありがとうございます」

「詳しい説明は明後日の夜、食堂で行いますが『K-A-M』の大まかなルールは全部で4つ。1つ目は、コージくんを愛すること。2つ目、コージくんを全力で護ること。3つ目、コージくんを困らせる言動は禁止。4つ目、会員での争いは禁止。以上です。分かりましたか?」

「「はい!」」

「すみません! 少し! 気になったんですけど! 団長は! 会員じゃ! ないんですか!?」


「…ファンだと手が出せないだろう?」


「…団長にそこまで言わしめるコージくん…。見てみたい…」

「惚れるのは勝手だが手を出したら殺す」

「団長…、聖書には無益な殺生は禁止だと…」

「コージに寄る虫が消えるのなら、無益ではないだろう。それに、俺は会員では無いが、コージの為ならば全てを捨てるぞ。いざとなれば信仰さえも」

「…本気なんですね」

「当然だ。それとそこのお前」

「はっ、はいっ!」

「さっき、コージに命を救われたどうのこうの言っていたが、コージが『奇跡』を起こしたというのはあくまで噂だからな?」

「……否定は、しないんですか?」

「コージが自分から話すまで、俺は問いたださない事に決めたからな。事実かどうかは俺にも分からん。……長話し過ぎたな。お前らも訓練に戻れ」

「はい!」




「………それはそうとお前ら、ファンクラブってマジかよ」

「ホントにコージくんとやらの為に全て捨てられんのか~?」

「俺…あの子の笑顔、1回だけ見たんだよ。………正直、心臓がきゅんきゅんし過ぎてこのまま死ぬんじゃないかって思った」

「私は泣き顔を見ました。団長と言い争って泣かされたみたいで…。一目惚れでしたね」

「お前ら…いい歳して…」

「はぁっ!? 俺ギリ20代ですぅー!!」

「あと5ヶ月で30だろーが」

「私だってあと10年はいけます」

「お前見た目は若いからなー」

「でも、マジ気になるなー。どんな外見か、詳しく教えてくれよ」

「髪が茶色で、かなり背が低いですね。ちょうど、兵舎の上にいるあの子みたいな……って、え…? あれ? …コージくん!?」

「は!? うわマジだ!! だ、団長!! 兵舎の屋根の上に、コージくんが!!!」

「!!!!??」

「わーお見たかよ今の団長の反応速度…」

「そんな事言ってる場合かよ!!」

「……待て。もう1人…いや、2人いる!」




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