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ツンデレガチ勢★聖騎士団編

報告~頭の中は無法地帯~

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───………知らない天井だ…。




とか現実逃避しても真実はいつも1つなわけで。





はい、おはようございます皆さん。毎度お馴染み、コージくんです。今、隣に全裸の聖騎士団団長が寝ています。そりゃあもう気持ち良さそうにスヤスヤと。腰と尻穴と乳首に違和感ありまくりの俺はムカついてデコピンしたい衝動にかられましたが、仕返しが恐くて止めました。

ところで…今は朝なのか昼なのか夜なのか。カイルとセッセしたのが夕食前の夜だったから……って、あ! ご飯食べ忘れた!! そう言えばすごく腹減ってる!! …いやいや、今はそうじゃなくて…セッセ後にそのまま寝ちゃったから、多分朝か昼だよな…。まぁ、確認すれば済む話か。
そう思って、俺は締め切ったカーテンの向こう側を見ようとベッドを降りようとし……失敗した。

「………どこへ行くんだ」

手首をぎゅっとカイルに掴まれたから。

「い、今が朝か昼か確認しようと思って……」

「………あぁ…」

ぼふっ

「わっ」

カイルが掴んだ俺の手首をぐいっと引っ張り、俺はカイルの上に倒れ込んだ。
どっちも全裸だから肌がぴとってくっついて心地良い……あれ。尻もちんこも綺麗。カイルが洗ってくれたのかな?

「……気分は、どうだ」

「…あ、あぁ、まぁ……普通」

「……そ、うか。で、では…責任を取れ!」

………………?

カイルが俺の下で、俺の腰をガッチリ掴まえたまま顔を赤くして怒鳴った。ぎゅうっと抱き締められてるから、逃げられない。

「……いやいやいや、え、責任? 『取る』じゃなくて、『取れ』?」

「そ、そうだ! 初めてだったんだぞ!」

「えっ! 娼館で済ませたって…」

「素人童貞でも、童貞と付く以上、素人と致したのならば相手は責任は取るべきだろう! 常識だぞ馬鹿め!」

ふんっと鼻で笑いながら俺の腰を抱く腕に、より力を込めるカイル。
いつもの照れ隠しカイルだ。
今の言葉もカイルらしいっちゃカイルらしいけど…生娘抱いたんじゃないんだから…。

「…というか、抱いたのお前じゃん! どっちかって言うと俺のセリフだろそれ!」

「…!!」

なんだよその『今気付きました』って言いたげな顔は…。
おい悩むな。どうやって言い伏せようか考えんな!

「……責任を取り合って…………け、結婚というのはどうだ……」

「却下」

「………………」

…しょぼくれんな!





********************




「今日、俺は何すれば良いの?」

カイルが運んできてくれた朝食をカイルと一緒に食べながら、俺は聞いた。
王都に来る途中、カイルは『盗賊らだけではなく、暗黒属性に殺された騎士達までが全員蘇生した、異例の報告をせねばならん。恐らく、その場にいた俺、ミゲル、それとお前には状況の聞き取りがある筈だ』って言ってたからな…。バレないよう、見た事だけを伝えなきゃならないし、今日じゃないなら今日はどこで何をしたら良いか分かんないし。

「俺は上層部への報告があり、その後は祭りの警備の仕事が入っている。報告中はこの部屋で好きにくつろいで構わんが、外には出るな。その後1度帰ってくるので、その時に昼食でも持ってきてやる」

「…祭りの警備? 聖騎士ってそんな事もすんの?」

「いや、普段はしない。国の祭りならば王国騎士団が行うが、今日は『創造祭』だからな。世界共通の祝い事だと、聖騎士も駆り出される」

「……創造祭、とは」

「……………まさか、知らないのか…?」

やめて……やめてくれ……。そんな『マジかこいつ』って目で見ないで! 俺、こっちで1ヶ月も過ごしてないんだよ! こっちの常識知らないんだよ…!!

「…………『創造祭』とは、創造主ゼロアがこの世界を創造したとされる12月25日に世界各国で行われる祭りの総称だ。子供は創造主ゼロアの使徒に扮した保護者からプレゼントを貰い、恋人や夫婦は互いに日頃の感謝を伝え合う、聖なる日とされている。………俺も厳しい両親であったが、成人するまでは毎年プレゼントを貰ったし、『創造祭』を知らぬ者など見た事も聞いた事もない。……コージ、お前はどんな秘境で育ったんだ? まさか魔物に育てられたりしてないだろうな?」

「してねーよ教えてくれてありがとよ!!」

通常カイルはいっつも一言余計だよな。確かに教会を敵に回しかねない出生って言ったら魔物に育てられたって発想になるかも知れないけどさ!
でも、『創造祭』かぁ…。クリスマスにそっくりだな。俺祭り大好きっ子だから、行ってみたいな~。

「………案内してやるから、俺が帰るまでにその寝惚けた顔を何とかしておけ」

「!!! ぃよっしゃー!! ありがとーカイル!!」

「…………ふんっ」

カイルはそっぽ向くけど、耳まで真っ赤なの、バレバレだ。



********************



「………真実、なのか」

大聖堂の奥の奥の奥に、その部屋はあった。

「はい。【死神の吐息】団員、【聖騎士団】団員、合わせて600名近くの者が蘇生しました。後遺症などの報告も今のところありません」

薄暗い会議室で問われた事に対し、俺は丁寧に答える。

「暗黒属性によって殺された騎士達が生き返っただと?」

「ええ。私と諜報部隊のミゲル・ガレーナ、【死神の吐息】の頭であるガレ・プリストファー、それと…ガレ・プリストファーに囚われていた一般冒険者のコージ・アヤマが目撃しています」

マズい。コージの名前を出す時、少し上擦ったかも知れない。

「蘇生魔法なのか?」

半円の形の机…その1番左端に座った初老の男が尋ねてきた。
良かった、不審に思われてはいないようだ。

「………恐らくは。伝承で聞いていた蘇生と同じようでした」

「……………誰が、行ったのだ?」

「………不明です。ガレ・プリストファーも驚いた様子でした」

恐らく、あの奇跡を引き起こしたのはコージだ。しかし、コージが望むのであれば俺はそれを隠そう。そうした方が、都合も良いからである。

「…そもそも…人なのか? 600人もの死者を一気に…しかもかなり広範囲で、蘇生させた。しかも属性無視だ」

「魔族か?」

失礼な!! コージはちょっと規格外だが、人間だ! 神々しい人間だ!! ……が、そんな事を口に出すわけにはいかない。コージが追われるような事になっては困る。

「何故魔族が我らを助ける? 神の遣いだ! そうに決まっておる!!」

「神の遣いが何故暗黒属性の者共まで助けるのだ。やはり上位魔族の気紛れだろう」

「気紛れで大量の魔力を使う魔族? まさか…序列入りか!?」

「いえ、そこまでの魔力の塊が近付いてきたのなら、姿は見えずとも分かる筈です」

世界序列…。あれがコージの仕業ならば、コージの魔力は序列入りしても可笑しくないほどの量になる。本気を出せば、この国…少なくとも、領土の半分は吹っ飛ばせるだろう。

「ふむ…、………一般冒険者のコージ・アヤマという者もいたのだな」

「………はい」

触れられると思っていた。だから、平常を装い何でもない風に答えなければいけない。俺は構わないが、コージは教会と敵対する事を望んでいない。

「コージ・アヤマ? ……どこかで聞いたような…」

「彼は【オーディアンギルド】が一丸となって捜索している少年です。拉致被害者として保護しましたが、今は重要参考人として私の部屋にいてもらっています」

「ああ! あの『人を魅了する小悪魔のような天使』か!」

実際に会うまでは、大袈裟な2つ名だと思っていた。なのに、今じゃメロメロだ。
オーディアンギルドの者達も、俺と同じようにコージにハマっていったのだろう。

「それは…さぞかし素晴らしい容姿をしているのだろうな…。その者への聞き取りは、私が行おう」

「結構です!」

「…………………いきなりどうした、マンハットよ」

上層部の幹部達が驚いた表情をしているが、俺は内心怒り心頭だった。
明らかに下心しか見えないではないか! 聞き取りと称して犯す気です、と顔に書いてあるようなものだ!!
ダメだ! 絶対にダメだ!! こんな脂ぎった中年にコージを明け渡して堪るか!!

「………確かに、彼は素晴らしい容姿をしています。真っ直ぐな性格で、汚れを知りません。だからこそ、出会った全てに愛されるのです。【オーディアンギルド】のギルドマスターを始めとする冒険者は皆、彼を溺愛しており、もし彼が傷付くような事があれば、死力を尽くして害した者を滅するでしょう。それは【死神の吐息】の者も同じです。特に、ガレ・プリストファーは彼にしつこく求婚していたと諜報部隊から報告が上がっています。その他の団員にも、好かれていたようです」

彼を傷付ければ敵が増えるだけだ。
オーディアンギルドも、死神の吐息も、教会の存在そのものを潰そうと動き回るだろう。その為の犠牲も厭わずに。

「ふっ、例え【オーディアンギルド】や【死神の吐息】が歯向かったとしても、我らには敵わんわ。いざとなれば国に圧力をかけて潰せば良い。コージ・アヤマの聞き取りは任せろ」

「いえ、その2つの組織だけではありません」

俺は怒りを通り越して呆れながら反論を続けた。
出来るもになら今すぐにでも殺したい。だが、コージは殺生嫌いの平和主義だ。嫌われてしまう。

「しつこいぞマンハット!! 我らに敵う組織がいると言うのか!!」

「ええ、聖騎士団です」

「ほぅらやっぱりそんなものは存在せ………な、なんだと?」

「マンハット!! 貴様、それが謀反を意味するという事を分かって言っているのか!!!」

数人の中年が、唾を飛ばしながら俺に怒鳴り散らす。
痛くも痒くもない。俺は愛を見付けた! 権力にすがって私腹を肥やすクズなど、俺の敵ではないのだ。

「はい、勿論。…聖騎士のほとんどは既に彼にゾッコンです。それは私とて例外ではなく、もしも私の想い人に手を出そうものならば【聖騎士団】による反乱…、乗っ取りも覚悟しておいた方が良いでしょう」

「なっ…!! なっ…!!?」

「色恋に浮かれたかこのたわけ者が!!」

「………否定はしません。本当に浮かれているんだと自分でも思っています。ですが、そもそも彼はとても強い。ミゲル・ガレーナによると、ガレ・プリストファーをぶん殴り、尻に敷いていたと…。不誠実なまま、不埒な思いで手を出せば頬骨骨折間違いなしです」

ざまぁみろガレ・プリストファー! お前ごときがコージに手を出すなど、俺は許さん!! 殴られた痛みはその罰だ!!
そして流石俺のコージ!! 素直に直接言えない分、心の中でたくさん褒めてやる!!
(※カイルはガレがコージに殴られてちょっと喜んでいた事を知りません)

「何故ちょっと誇らしげな顔なんだ!?」

「貴様ァ…ッ!!」

「反乱を堂々と予告など、到底許される事では無いぞ!!」

「まぁまぁ…。独身の方々、落ち着きなされ。マンハットくんとて人間なのじゃ。愛する人を守る為にその他を捨てるなど、健気で良いではないか」

「うむ。信仰を棄てたわけではなく、むしろこれまで真面目に頑張ってきてくれた。咎める理由にはならんだろう」

「というか、我ら全員が向かってもマンハットくんは倒せんだろうなぁ」

中央部分に座っている上位幹部3名は、状況をよく理解しているようだ。
俺の愛は至って健全で健気。創造主ゼロアの信仰は止めていないし、例え教会が敵に回ったとしても、俺ならば勝てる。
つまり、この場で俺を怒らせるのは得策では無いと判断したのだろう。

「…………蘇生魔法を行ったのがその少年という可能性は?」

「…あり得ないかと。1周回って可愛く思えるほど嘘を吐くのが下手な子ですが、蘇生魔法については何も知らないようでした」

嘘だ。コージだ。コージが行った。

「……そうかそうか…、ふふふ、良かろう。その少年への聞き取りは聖騎士に任せよう。ただし、必ずわしに報告せい。良いな?」

中央席の議長である老人が、俺に同意を促してきた。
この老人は、ドリー・スペクタル。
教会の最高権力者であり、俺の味方でもある。
嘘も、この人にだけはバレるだろうと覚悟していた。そして案の定バレた。が、聖騎士に一任という事は、見逃してくれたのだろう。報告時に協力を要請してみるか。

「………はっ。お心遣い、感謝致します」

ドリーが優しい面持ちで笑った。



********************



「……教会関係の本ばっかり…。エロ本1冊も無いのかよ…」

「あるわけなかろう。俺にはコージで充分だ」

「ひぇっ!? か、帰ってたんなら声かけろよ!!」

「…………ふふっ」

「えっ、ど、どーした? いきなり笑って…。熱でもあるのか…?」

「…いや、不愉快な事があってな…。お前の間抜け面を見たらどうでも良くなった」

「…………そうですか」



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