異世界転移したんだけど周りが全員過保護なホモだった件

メル

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ツンデレガチ勢★聖騎士団編

ウブなポンコツは少し可愛かった

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「……つまり、聖騎士団長は極度の見栄っ張り体質と言う事ですか…?」

ミゲルさんが信じられないといった表情でスティーブさんに確認すると、スティーブさんは満面の笑みで頷いた。

「そーそ。好きな子には強くてかっこよくて色恋沙汰には興味ないよ~っていう自分を見せたい…と思ってたらしい。…子供の頃に」

「子供の頃? じゃあ…今は?」

「今は止めたいと毎晩のように言ってるが、癖付いちまったもんはそう簡単に抜けねぇんだよ。それで何度も玉砕したんだぜ? その度に自己嫌悪に陥って自室に籠りっきりになるんだよな。…大体、1~2週間くらい。ただ、今回のコージには相当惚れ込んでるみてぇだからな…数ヵ月。いや、1年ってとこか?」

「「そ、そんなに…」」

自分でもビックリです。
俺のどこに惚れる要素があったんだろうか。往復ビンタで目を覚まさせてやった方が良いんじゃないだろうか。
あ、ちなみに、カイルの告白についてはあやふやに濁させて頂きました。
フレば自暴自棄の自己嫌悪。OK出せば一生逃がしてはくれないだろうって言われれば…ねぇ? 悪い奴ではないって分かったし、無下にするのもどうかと思って……。
…やっぱりハッキリごめんなさいした方がこいつの為なのかなぁ…。

カイルはまだ洗脳状態が解けず、俺と手を繋いでアワアワはぁはぁしている。
…自分からお願いしといて焦んなよ…。ウブな中学生かお前は。…というか、洗脳状態が解けた時に俺照れ隠しで殺されないかな?

「好きな子に触れる、っていう経験が無い分、反動がスゴい事なってんなぁ。魔物が襲撃して来ても使いもんになんねーぞ…」

「…………知らなかった…。まさかあの冷静沈着な団長が色々拗らせたポンコツだったなんて……」

「ぶっはww確かにポンコツではあるよなww…ああそれと…この団長の癖は俺ら第1部隊しか知らねーから、他言無用だぞ? コージも、諜報のお前も」

「はい」

「了解です」

俺達が頷くと、スティーブさんは安心したように笑った。
カイルは相変わらず俺の手を勝手ににぎにぎして勝手に赤くなって勝手にとろけている。
気まぐれに頭を撫でると、犯されまくって快楽堕ちしたヒロインみたいな表情になって…、止めるとおねだりするように頭を差し出してきた。だから俺もナデナデナデナデ…。
うわ、これ癖になりそー…。

「…コージ? 団長を拒絶せず可愛がってくれてんのは俺も嬉しいがよ…。……団長も男…しかもかなり強い部類なんだから、襲われねェよう気を付けろよ? ただでさえ自分の癖を否定されずに舞い上がると思うからさ…」

「あー……、コイツに襲う勇気ありますかね?」

「馬鹿ではないから嫌われるような事を進んでするとは思えねぇが…、極限まで追い込まれたらきっと仕出かすぜ? それに、コージはもう…初めてって訳じゃないだろ?」

「うーむ、そうっすけど…。いまいちコイツが俺に興奮してる所が想像出来ないっていうか…」

「分かった。コージさんにとって、団長はペットポジションなんですね?」

「そう! それだ!!」

「お前らひでぇwwwwww」

酷い? そんなの、俺が言われた暴言に比べれば軽いもんだろ! ペットとして愛されるんならドMにとっては天国じゃないか! カイルがドMかは知らないけど!
その後、しばらく笑い転げたスティーブさんは思い出したかのように俺に質問を始めた。

「なぁ…、さっきも言ってたが、何故コージの話に『惑わしの霧』が出てくる? 教えてくれないか?」

別に隠す必要も無いし、と思って俺はクエスト中に『惑わしの霧』が発生。転移先でガレに拐われた事を話した。一応ガレの傷を治して気に入られた事も伝えておくが…、そう言えばあの傷を付けたの、聖騎士なんだよな…。

「……なるほどなぁ~。大体は分かったぜ。…それで、コージは何て名前のギルドに入ってんだ?」

「オーディアンギルドって所です」

俺が自分の所属するギルドを伝えると、スティーブさんと一緒に、ミゲルさんまでもが『えっ!?』と驚いた顔をした。
何か驚くような要素あったかなぁ?

「………………あー、ああ! そう言う事か! だからガレ・プリストファーにあんなに大事にされていたのか!」

ミゲルさんは謎が全て解けたらしい。スティーブさんは頭に?を飛ばしている。勿論、俺もだ。

「コージさんだったんですね! オーディアンギルドが必死に探している『人を魅了する小悪魔のような天使』って!」

「ぶへほっ!!!」

カイルの顔に向けて全力で吹き出した俺は悪くない。顔中にかかった俺の唾液を指で取ってはペロペロ舐め、アへ顔で興奮している奴なんて俺は知らない。
悪い奴がいるとすれば、そんなあだ名で捜し回っているルークさんリイサスさんだ。絶対許さん。塵にしてくれるわ。むしろその塵で粉塵爆発を起こしてやるわ。

「やっぱりそうなのか!! いやぁ、あの2つ名を知った時は大袈裟だと思ったが…こんだけ可愛いんだから、納得だな! ……というか、コージはガレ・プリストファーに大事にされていたのか?」

「あ。いや……、…まぁ、大丈夫っぽいんで言いますが…、コージさんはガレ・プリストファーに求婚されていたんですよ」

あー!! ミゲルさん何で言っちゃうの!! 理由はないけど何か恥ずかしいだろ!!

「求婚!? 盗賊の頭と聖騎士団団長に求婚されるなんて、コージすげェな!! どっちも玉の輿じゃねェか!! で、どっちを選ぶんだ?」

「選びませんよ! 俺恋愛対象は女の子だし! 選んだらルークさ…ああ、ギルドマスターとギルドの人達数人に監禁されかねないんで!」

そう言った途端、俺の手を握っていたカイルがぎゅうううっと手に力を込めた。痛くて離そうとするも、カイルが離してくれない。

「痛っ…! いたたたたたた!! 痛い痛い!! カイル!!」

涙目になってカイルを睨むと……カイルもまた、俺を静かに見詰めていた。怒りが見え隠れする透き通るような水色の瞳が俺の目をじぃっと見下ろしている。
あれ…カイルさん、貴方もしかして……洗脳、解けてる?理性、戻ってる?

「………嫉妬、だな」

「………嫉妬、ですね」

そこ! 無駄話しない! 見てないで助けて!!

「___……どういう、事だ? ガレ・プリストファーに求婚された? ギルドの者共に監禁? 説明してもらおうか」

もっ、もももももも戻ってるぅ~~~!!
照れ隠しに殺されなかったのは良いけど尋問も嫌だぁぁぁぁぁ!!
あぁぁぁぁぁぁ助けてーーーー!!





********************





俺が正気に戻ったのは、【死神の吐息】から連れ出して来た少年が俺の頭を一通り撫で終わった後だった。

戻った時は、羞恥で死にそうになった。
触れられたぐらいで理性を失い、告白をし、手を繋ぎ、頭を撫でられたのだ。
いっその事ここで舌を噛み切って死のうかとまで考えたが…、俺は昔から変な癖のせいで好きな人の傍にいるという経験が少ない。
特にこの少年に関しては、今までとは比べ物にならない程好きになっている。……一目惚れなど言える訳がないが、逃がしたくないと思った。
俺の名前を呼んで、俺の手を取って、俺だけにキスをして欲しい。おはようとおやすみを言い合って、一緒に飯を食べたい。共に眠りにつきたい。繋がりたい。1つになりたい。
そんな日々を妄想して、余計に諦められなくなった。
だから、まだ正気が戻らぬ演技をした。
このままなら、少年は俺に触れ、可愛がってくれる。ペットポジションだとしても、最後には四六時中、愛し愛される仲になってみせると決意をして。

少年はコージというらしい。
クエスト中に『惑わしの霧』に強制転移させられ、そこで死にかけたあのクズを助けてしまい、拐われたと説明している。
もっと深く斬っておけば、クズとコージが出会う事もなかっただろうに…。と、俺は自分を深く責めた。
コージの所属ギルドは、最近話題の【オーディアンギルド】。ギルドメンバー全員が、1人の少年を血眼になって捜索しているらしい。
ミゲルが捜索されてる少年の2つ名を口にした時、コージが思いっきり俺の顔に吹き出した。
嫌悪感など1ミリもない。むしろ愛しくて、正気じゃないのを理由に全て舐め取ってしまった。
…だが……、やはりそうか。ミゲルも気付いたようだが、やはりコージがその少年なのか。
…………つまり、コージは帰らなければならないのか……………。…いやちょっと待て。コージはあの奇跡の場面に生きて立ち会った貴重な人物だ。それを理由に王都に引き留めておけば……。
ああ、それよりも、あのクズに大事にされていた?
一体どういう…………は? ……求婚、されていた……?

……………………そうか。なるほどな………。コージは性奴隷などではなく……恋人、だったのか。
………………………………………イラつく。ムカつく。俺の未来の妻が、あんなクズに汚されたと思うと………今すぐ押し倒してグチャグチャにしてやりたくなる。
あいつの死体の前でコージを犯したら、コージはあいつを諦めて俺のものになってくれるだろうか。いや、そんな事をすれば嫌われてしまう。嫌だ。絶対に嫌われたくない。拒絶されたら俺はどうなるか分からない。
とにかく、今はコージを王都から出さず、恋人になる所から始めないと…。

「選びませんよ! 俺恋愛対象は女の子だし! 選んだらルークさ…ああ、ギルドマスターとギルドの人達数人に監禁されかねないんで!」

………………………………は?







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