異世界転移したんだけど周りが全員過保護なホモだった件

メル

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ツンデレガチ勢★聖騎士団編

クソ長髪がっ!!

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聖騎士団が王都へ帰還するべく、地下遺跡を出発してから、1時間。
馬車の荷台に乗せられたコージさんは、ずっと膝を抱えて俺と団長を睨んでいる。
無理矢理連れて来たのだからそれも当然なのだが…あれだけ親しく話していたのに、と思うと哀しくもある。

俺はコージさんの知り合いという事で、側にいさせてもらえた。
団長は事情聴取をする為に、わざわざ荷台まで乗り込んできた。
聖騎士の、トップが、だ。
本来ならばそういった事は部下に任せるのに。一体どういうおつもりなのか……。

「……おいガキ。貴様の名前は何だ?」

「………………まずは自分から名乗るのが礼儀じゃないのか?」

「…あァ?」

コージさんはどこまでも反抗を貫くつもりなのか、団長の質問を礼儀を理由に突っぱねた。

「身の程を知れよ餓鬼。貴様こそあのクズ共から助けてやった礼がそれか? 今ここで置いて行っても良いんだぞ?」

「頼んでないし、置いて行って貰っても自分でどうにか出来る」

「ほぉーー…。具体的にはどうするつもりだ?」

「……………ミゲルさんが教えてくれたけど、ここから王都って一直線なんだろ。歩けばいつか着く」

食料は? とは聞けなかった。
団長のこめかみに青筋が入り、冷気が漂ったからだ。
コージさんも団長が発する冷気にに気付いたのか、少し怯えた様子で俺達を見上げている。

「………………………………甘い」

「へ?」

「ああああああ甘い甘い甘い甘い甘い!! 思考が甘ければ認識すら甘く挙げ句の果てには前提までもが甘い!! 砂糖か貴様!!! 俺は辛党だ!!」

「知るか!!?」

団長の謎の怒鳴りに、コージさんが困惑気味ながらも怒鳴り返した。
俺はというと、初めて見た感情剥き出しの団長に戸惑いを隠せず、ただ見守っているだけ。
もしも団長がコージさんを害そうものなら、俺は身を呈して、コージさんを守る。…………そう誓ったのだ。








~2日前~





「失礼します。」

厳重な鉄の扉をノックすると、中から入れ、と命令がかかった。

「ミゲルっす。どうしたんすか? いきなり…」

俺はお頭に、この『仕事部屋』に来るよう、言いつけられていた。
正体がバレたのではと、内心焦っていたが、表情には出さずにいつものミゲルを装う。

「おう来たか」

ガレ・プリストファーは血塗れのまま、椅子に腰掛けて何かの本を読んでいた。恐らくは読書ばかりのコージさんと話を合わせる為なのだろうが…、先程まで目を覆いたくなるような拷問をしていた人と同一人物とは思えない。

「そうビビんなよ。特に重要な話でもねぇし、お前の正体を追及するつもりでもねぇ」

ガレ・プリストファーの言葉に背筋が凍った。
見破られている。でも、追及するつもりではない? ならば何故……。

「な、んの…事っすか?」

「だからビビんなって。今日はただ命令…、いや頼みがあって来てもらったんだ」

「頼み……」

「ああ」

ガレ・プリストファーが本を閉じ、血で濡れていない場所に置いて立ち上がった。
俺を真っ直ぐ見据え、真剣な表情をする。

「俺はお前がどこの誰で何をしようとしてんのかなんざ興味はねェ。が…、俺もお前も、コージには助けられた身だ。……………守れよ。必ず」

「…!!! ……命に、代えてでも…!!」

この時、ガレ・プリストファーと俺の間には絆が生まれた。コージさんという1人の人間を介して、俺達にはある共通の目的が出来たのだ。

コージさんの笑顔と幸せ。…それだけは、例え命を捨てたとしても守らなければならない。




~回想終了~





ガレ・プリストファー…。恐ろしい人だ。
今思えば、俺がコナーと共に殺されかけたのも、初めは俺を始末する為……。コージさんが俺達を助けた事で、俺にコージさんを守らせようとこの計画を立てたのか…。

「王都までは歩けば3日! 馬の全速力でも丸1日はかかるんだぞ!! その間、全方向を警戒しながら進むつもりか!! 上手く食料を確保出来たとしても途中には上位魔人の目撃が多発している地域もある!! いくら貴様が結界魔法師とて攻撃出来なければ拐われるだけだ!! また性奴隷に逆戻りしたいのか!!?」

団長がコージさんに向かって怒鳴り散らしている。馬車の中と御者役の聖騎士が何事かとこちらを覗き、何やら呆れた顔をしてまた前を向く。
彼らは第1部隊の者達か…。団長がこうも感情をあらわにする事はよくあるのだろうか?
俺は聖暗2属性だったせいで諜報部隊だったが…団長と直接話したのは初めてだな…。

「で、でも聖騎士の世話になるくらいなら俺は歩く!」

「何だとこの餓鬼!! んなに盗賊のちんこが良かったのかこのクソビッチが!! 男が欲しけりゃ男娼にでもなったらどうだ!!?」

「誰がビッチじゃ!! 少なくともあんたよりはガレの方が何十倍も優しかった!!」

「!! お前……」

団長の動揺した声に、コージさんへ目を向けると…コージさんは目に涙を溜めていた。
反抗する声も涙声で、泣くのを必死に堪えているようだった。

「…団長。すみませんが、これ以上虐めるつもりなら彼は本当に出て行きますよ。彼の行動力には時々驚かされますので」

咄嗟に助け船を出すと、コージさんは少しほっとしたような顔をする。
ずっと強気だったコージさんの涙を見た団長は気まずそうに顔を背けて、そのまま座り込んだ。

「…………ぐすっ」

守ると誓ったのに、泣かせてしまうとは…。お頭に合わす顔がねぇな…。






********************




最悪だ。最悪だ!
最近涙脆いとは思ってたけど、まさか聖騎士団の前で泣くなんて!
この長髪が酷い事ばっか言うからだ!
俺にはジズの加護も『絶対防御』もあるし、攻撃魔法だってたくさん使えるのに! 祈願魔法で食料も水も出せる!
性奴隷でもない! ガレはちゃんと愛してくれてたもん! ちんこだってむしろ嫌い…、でもガレのなら……。………いややっぱ嫌いだ!! 毎回『あへぇ』ってなるし!!

ミゲルさんがフォローしてくれて、長髪はムスッとしたまま俺の前に胡座をかいた。
涙を拭きながら、視線をあっちこっちに移動させてる長髪をこそっと見る。

…美形。その一言に尽きるな畜生め。
サラッサラな腰までの銀髪が、吹き抜ける風に靡いていて、悔しいが絵になる。。
アニメ銀玉の登場人物、ヅラ小次郎の髪を阪田銀刻の銀色に染めたような……。
つまりは2次元キャラが飛び出て来たような容姿をしている。
さぞかしおんにゃのこにモテモテなんでしょうねぇ…、…ムカつく!
…あ、そうだ鑑定。
………ふ、ふふふふふ…! 俺を散々貶した罰だ! 性癖を奥の奥まで覗いてやる…!

このクソ聖騎士団団長を鑑定!



《種族:人間

名前:カイル・マンハット

レベル:80

年齢:28

性別:オス

属性:神聖属性

属性詳細:光の力を操る。

職業:聖騎士団団長

スキル:魔法成功率上昇 消費魔力減少 警戒

称号:裁く者

好きなタイプ:ポジティブで自分の毒舌を受け流してくれる人。

聖騎士団第1部隊隊長と聖騎士団全体の団長を担う若き実力者。特別暗黒属性を敵視している訳ではなく、ただ上層部の方針に従っているだけ。街で見掛けてもスルー出来る者はスルーしている。【死神の吐息】に関しては暗黒属性以前に犯罪者の集団なので徹底的に殺る。普段は威厳溢れる姿で仕事をこなしているが、好きな人の前に出ると途端に性格の悪い毒舌になってしまう。虐めたい訳では無いが自然とそうなってしまうので、本人は真剣に悩んでいる。顔にはまったく出ない言わばツンデレ。》




…こんなツンデレがあってたまるかい!!

じゃあ俺に対しての毒舌は!? いや毒舌じゃなくて侮辱だな!!
あれは好意の裏返しって受け取っても良いのか…!?
…………いや、無いな。あり得んあり得ん。今見た事は綺麗サッパリ忘れよう。
そうだ。それが良い。俺は何も見ていない。何もしなかった!

…あ、涙引っ込んじゃった。




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