異世界転移したんだけど周りが全員過保護なホモだった件

メル

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足腰ガクブル★死神の吐息編

コージくんの辿った道は…

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【コージくん奪還作戦途中報告会議】



コージくんが『惑わしの霧』に拐われて5日目。
オーディアンギルドの一室には、ギルドマスターである私と、参謀のリイサス、その他重鎮達と報告者が集まっていた。
理由は勿論、コージくんに関する情報の報告である。ここで出された情報を元に、コージくんの居場所を絞り込む事が目的だ。
……皆が何かしらの情報を掴んでいると信じたい。


「では、今から報告会を始める。いつもならギルドマスターの挨拶なんかが入るが緊急事態ゆえに今回は割愛させてもらう。まずは各々手に入れた情報を出して欲しい」

リイサスの言葉で周囲に緊張が走り、こういった空気に馴染みのない低級冒険者達は冷や汗をかいているのが見て取れた。が、そんな事はどうだって良いし、誰も気にする様子は無い。
そんな中、1人の男が挙手をした。

「はい。奴隷市を調べていたオールです。リイサスさんのツテを使わせてもらい、世界各国の奴隷商を調べましたが、コージさんらしき人物の噂はありませんでした。コージさん程の方ならば噂にならない筈がないので、奴隷として囚われている可能性は無いに等しいかと。ですが念の為、王都にA級冒険者のロイを残して調べてもらっています。それと、奴隷商人の方々への吹き込みも完了しました」

「そうか、ご苦労。ルーク、君の方はどうだった?」

「うむ。この国に所属する36の貴族のうち、20の貴族への聞き込みと協力要請が終わった。貴族達に怪しげな動向は見られず、また、そう言った噂も無かった。国外の貴族に関しては何とも言えぬが、国内に限り、貴族に監禁されている事は無いだろう。国外の者達にも協力要請はしているので、3日後にはある程度絞り込める筈だ」

そう、貴族の可能性は低い。
貴族というのは、ほとんどが手に入れた宝を見せびらかすバカな生き物だ。例外もあるとは言え、コージくん程の可愛い子を手に入れたのならば即座に婚約発表でもしている筈である。だが、現時点でそれが無い。ならば、と考えた結論が、貴族では無い、だった。
…事実と予想と憶測を混ぜる事は危険だと分かってはいるが、どうしても安心する要素が欲しい。どうか、人畜無害な一般人に保護されていて欲しいというのが、皆の願いなのだ。

「貴族じゃ、ない…となると……一般人か…? それか盗賊という線も…」

「いや、何も人間に限る話ではない。魔族に囚われている可能性とて充分にあるのだ。…魔族領土などに飛ばされていなければ良いが……」

「無いわけじゃないが、可能性は低いんじゃないか? 人間の領土と魔族領土の割合は7:3だぞ?」

「それでもあり得る話だ。最悪の場合、魔王や悪魔族共の手に渡っているやも知れん」

「だがそうだったとしても、魔王が無闇に人を殺さない性格なのは幸いだな…。おかげで知性ある魔族による人の殺傷事件は年に数件だ」

「数件も起きていると考えるべきだ! それに…もし知性の無い魔族…性欲の化身であるオークなどに囚われていたら…!!」

「「…………………」」

重鎮達が口論を始めるが、彼らはコージくんの正体を知らない。その分、心配事も多いのだろう。
コージくんは『絶対防御』が使える。ならば上位魔族だろうと簡単に手を出す事は出来ない。なので私とリイサス、ジャックはその点はあまり心配していない。

「あの、ちょっと良いっすか」

ふと、ジャックが真剣な面持ちで挙手した。
リイサスが話を促せば、ジャックは暗い雰囲気のまま、報告を始める。

「一般人への聞き込みなどをしていたジャックです。同ギルド、D級冒険者のトムからの証言なのですが…。トムの親族の聖騎士が、追い詰めた『死神の吐息』の頭、ガレ・プリストファーが『惑わしの霧』に逃げ込み、行方不明だと……。時刻はコージくんが霧に拐われた頃と一致し、確認も取れました。恐らくですが…、コージくんとガレ・プリストファーは同じ場所に転移したと思われます」

ジャックの報告に、辺りは騒然となった。
『死神の吐息』…。暗黒属性が過半数を占める、異質の大規模盗賊団。
そこの頭と鉢合わせなどしていれば、人間への攻撃を躊躇いそうなコージくんならあっという間に拐われてしまってもおかしくないのだ。
これには、私もリイサスも動揺した。
『死神の吐息』相手ならば、貴族の何倍も厄介である。何せ人数が多く、どこに潜んでいるかも分からないのだ。

「…ですが、聖騎士によるとガレ・プリストファーはかなり深い傷を負っていたようで、コージくんを見付ける前に力尽きた可能性もあります」

「……いや、それは無いよ…」

ジャックが希望的観測を述べた後、リイサスが片手で頭を押さえながらぽつりと呟いた。

「何か知っているのかね?」

そう尋ねると、リイサスは呆れたような笑みを浮かべて報告し出す。

「…裏の住人達からの情報だ。『死神の吐息』の頭、ガレ・プリストファーに溺愛する恋人が出来たと。様々な特徴などの情報が飛び交っていたので違うと思っていたが…ジャックの話で繋がった。コージくんはガレ・プリストファーと会った。そしてコロッと騙され、拉致監禁…。恋人に、されたんだろう。無理矢理な」

無理矢理?
私からコージくんを奪っておきながら無理矢理拐って、無理矢理閉じ込めて、恋人だと?
結界が消えた頃を考えれば、既に犯されている可能性が高い、だろうな。ああ、許せない。私のコージくんを。私の番となるべきあの子を。犯したというのか。私の知らないところで、私の知らないように。コージくんのあの淫らな身体を、暴いたというのか。ああ、赦せない。赦さない。

「………っ!! ルーク、落ち着け。覇気が駄々漏れだ。周りの奴らも怯えているだろう。ほら、ジョンソンなんていい歳して失禁してるぞ? これじゃあ冷静な判断が出来ずに報告会は一時中断せざるを得ない。というか今のままじゃ続けられない!」

リイサスの声に周囲に気を向ければ、冷や汗をかきながらもその場に残る者、逃げ出す者、泡を吹いて失神している者、失禁している者など……軽く惨事だった。

「……すまない。また、私は我を忘れて……」

「君、本当にすまないと思っていないだろ…。4時間に1回は注意してるぞ…」

「………」

「…はぁ、安心しろ、って言う事は出来ないが、『死神の吐息』には聖騎士団の聖暗2属性の者が潜入しているとの情報も入っている。救い出される日も近いだろう」

「待てない。今すぐにでも教会に連絡し、聖騎士に手伝わせるべきだ」

「落ち着け。教会は私的に使われる事を嫌う。頷いてくれる筈が無い」

「ならばコージくんの正体を…」

「信じてもらえるか微妙だね。むしろ創造主の名を騙る不届き者と認識されかねない。信じられたとしても、コージくんは教会に身柄を保護されるだろう」

「っ……! ではせめて! コージくんが助け出されるその時に、盗賊団の一員で無い事を証明出来るよう…!!」

「コージくんには冒険者カードを渡している。自分で身分を証明出来るさ。今俺らが動ける事と言えば、コージくんの居場所の特定だけだ」

「……」

私とリイサスとのやり取りを、部屋で意識を保っていた数人がハラハラと見詰めている。
……自分でも分かっている。私はコージくんと引き離されてから、冷静じゃいられなくなっているのだと。
それほどまでに、私の中のコージくんの存在は大きい。
2度と会えないなんて事になれば、私は…………。
そこまで考えて、歯軋りをしてどかっと座り込んだ。
コージくん……。愛しの、コージ…。はやく、笑顔を見せておくれ。私は、悪意など知らないというような君の純真無垢な笑顔が大好きなんだ…。


ガレ・プリストファー…。もしもコージくんを傷付けるような事があれば、地獄の果てまで追い掛けて必ず償わせよう苦しんで死ね

だから…どうかコージくんを守ってくれ。
世間の悪意から。誠意の無い者共から。理性の無い魔物から。






********************



「ふぇっ…へくちっ!」

「……可愛い。…いや違うそうじゃない。寒いのか?」

「………ガレって気を抜くと思った事そのまんま言っちゃうよな…。んー、寒くはないんだけど…」

「じゃあ誰かが噂してんのかもな」

「(異世界にもそういうジンクスあるんだ……)」











********************



はぁい(* ̄∇ ̄)ノ
メルです。




2000……そう、2000………!!
到達したんです!!!!2000に!!!!
コメントでたくさんのおめでとうを頂きました本当にありがとうございます!!!!

いつかの願望が現実になりましたよわっしょい!!
2000という数字は自分の中では殿堂みたいなイメージがあってああヤバイ超嬉しい。
こんな…っ!!こんなノリと勢いと若気の至りである作品をここまで評価して頂けるなんて……っ!!感激で目から汗が止まりませんっ!!!


これからも『異世界転移したんだけど周りが全員過保護なホモだった件』をよろしくお願いします!!




ガレ「次回! ガレとコージのラブラブな日常~聖騎士全滅を添えて~! 乞うご期待!!」

コージ「おい待て嘘予告ヤメロ」




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