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足腰ガクブル★死神の吐息編

説教と因縁と創造主

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俺には、どうしても許せないものがこの世に3つある…。


1つ目はパイナップルの入った酢豚。

2つ目はバラバラに置かれたシリーズものの漫画やDVD。

3つ目は悪意のある裏切り。


そう、ガレや狐さん達が行った事は、この3つ目に該当する。
狐さんとミゲルさんは命令されていたのかも知れないが、そんなの俺には関係無い。ガレと同罪だ。

と、いう事を俺は正座するガレと土下座する狐さんミゲルさんの正面に仁王立ちしながらゆっくり丁寧に1時間程かけて教えてやった。

正座に慣れていないのか、ガレの顔が青かったのは面白かったが、そんなのは表に微塵も出さず、笑顔で説教を続けた。

「~というわけで、ガレや狐さん達が行った事は、俺の純情を弄んだ挙げ句に放り捨てた事と代わり無いんですよ。分かってる? 反省してる?」

「「すみませんでした」」

狐さんとミゲルさんは額を床に擦り付けたまま謝ってくれたが、ガレは両頬を膨らませたまま俺をじーっと見ている。
おっさんがやっても可愛くねェからな?

「何だよガレ。文句あんならハッキリ言え」

「……じゃあ言うけどよ…、コージだって俺を裏切って逃げようとしたじゃねェか…。なのに何で俺だけ怒られてんだよ……」

「俺の脱出には悪意は無い。むしろあのまま留まっていたら、ルークさん達への悪意ある裏切りになっちまうだろ。…それに、ガレだけじゃねーよ。どーせ後でお仕置きするんだろ。あ、ハーヴィー忘れんなよ。じゃねェと全力で抵抗すっからな」

「おかしい……本来なら俺に決定権がある筈なのに……何でか逆らえねェ……」

「あ"? あと1時間説教されたいって?」

「ちょ…! お頭早く謝って下さい!!」

「え、何で俺が」

「コージさんを拐って犯して挙げ句の果てに手の上で転がして愉快そうに笑ってたのは誰っすか!!」

「うっ………ご…、ごめんなさい……」

分かればよろしい。
俺は未だに土下座し続けている狐さんとミゲルさんを解放して、あのお嬢様部屋にガレを連れて戻る。

そしてベッドにぼふんと倒れこみ、一息吐いた。
……疲れた。とにかく、疲れた。
勇気を振り絞ってキスして、痛む身体に鞭打って逃げて、狐さん達との和解に頭使って、遺跡からの脱出に超緊張して、あの暗い通路で神経磨り減らして、ガレに捕まって絶望しかけて、2人に騙されていたって知って怒って……おかしい。まだ朝の8時なのに……。何でこんなにも疲れる事してるんだ俺は。
あーあ、何だかバカらしくなってきちゃった!
脱出は諦めて無いけど…しばらくは止めとこ。

俺がそんな風に思っていると、ガレが上からのし掛かって来た。
エロい事する意思は無いようなので、放置しておいても問題は無い。
ガレはうつ伏せに横になってる俺を絶対に逃がさないとばかりに覆い被さって来て、俺の後頭部に顔を埋めてすんすんと嗅いでいる。
…汗臭いだろうから止めて欲しいんだけども……まぁ言っても無駄か。それよりもガレって案外体温高いんだなー……。………やべ、眠くなってきた…。

「…寝ても良いが、次起きた時に尻穴閉じなくなってても文句言うなよ」

「うー…最強の脅し文句……」

「コージの瞳に俺がいないのは嫌だからな」

…………この状況で俺がすらりとした長髪美少女ならば100点満点の絵面なのにな……。
ガレだってリイサスさんだっておんにゃのこからモテるだろーに…。なんて勿体無い。寄越せその美貌。

ぐぅーーーーーぎゅるるるる…ぎゅるん

「……………」

「……………」

突然俺の腹から響いた怪獣の鳴き声に、俺とガレは目を合わせたまま暫く沈黙する。
……あー……そう言えば、俺ここに来てからなんにも食べて無いわ…。

「………………ぷ、ふふふふ……! くっくっくっ…はっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!」

「……ふ…、へへへへへ…あははははははは!!」

ガレが笑い出したのに釣られて、俺も堪らず笑い出す。
するとだんだん本当に可笑しくなってきて、いきなり鳴いた腹の怪獣に言い聞かせるよう、俺達は2人で大爆笑した。
いきなりの笑い声に部屋の前を通った団員が腰を抜かしたのだが、俺にそれを知るすべは無い。

「空気読まねェなァコージの怪獣は! コージに似て可愛い奴だ! うし、飯にするか!!」

「ふへーい! 飯~!!」

「肉と魚と野菜…どれが良い?」

「肉ぅー!!」

「よーし用意させっからちょっと待ってろ」

そう言ってガレは扉を開けて、何故か腰を抜かしていた団員に何か指示を出した。
団員はコクコクと頷いて駆け出して行ったんだけど…何であの人怯えていたんだろう。ガレがこんなにも笑顔なのに。
ガレは扉を閉めるとまた俺の上に覆い被さってきた。
重たい…けど人肌あったかいのでしばらくはこのままでいよう。

「すぐに来るから、食い終わったら…な?」

「……うぃっす………」

察した…。
中に出されちゃうんだよなー…。妊娠の可能性は低いんだけど…中に出されると……う"ー…、ムズムズするんだよなぁ……。

「そうだ。この際だから、何か質問あるか?」

「質問?」

「コージはこれから盗賊の嫁になるんだぞ? 分からない事とか質問があれば答える」

嫁ぇ……。……ま、いっか。
うーん、質問か…。あ、そうだ。

「…じゃあ質問! ガレさんは処女ですか!!」

「…え? あ、いや、……は…?」

俺の質問に目をぱちくりさせるガレ。
まぁそうなりますよね~。想定外の質問きたら普通『は?』ってなりますよね~。

「……えっと…、コージは…俺に突っ込みたいのか?」

「え? ……いや別に突っ込みたいって訳じゃ…」

例えガレが処女だろうが処女じゃなかろうが、俺のような恋愛、貞操共に童貞野郎じゃ色気ぷんぷんのガレを満足させられる訳がない。
……あれ、目から汗が…。

「…まぁ、コージが望むんなら……俺は構わねェよ?」

「遠慮しときます…」

なんか感覚麻痺しちゃってたけど…ケツなんて通常は出すとこなんだから挿れちゃダメでしょ。もう3回ヤられたけど大丈夫か俺のケツ…。

「あー、処女かだったな。…まぁ一応、処女だぜ? 餓鬼の頃襲われかけた事は何度あったが、全員返り討ちにしてやった」

あ…そっか…ガレ、暗黒属性で虐げられてきたんだっけ…。
んーーーー…ガレだったからこそ無事な訳で…実際にヤられちゃった人だっているんだろうな…。…むむ……なんか、ムカつくな…。
生まれ持った才能のせいで差別なんて、最低だ。しかも暗黒属性=魔族って考え方もおかしい。魔族が火炎魔法とか疾風魔法を使う場合もあるのに…、自分達に害があるものをネガティブなイメージで捉えてしまったがゆえの誤認だな。…じゃあ何でその間違いが正されないんだ? 気付いている人はいる筈なのに何で発言しない? 暗黒属性の人達だってどうして立ち上がらないんだろう?
…ちょっとデリケートな問題かも知れないけど…聞かぬは一生の恥だ!

「……じゃあさ、ガレ…。…何で暗黒属性=魔族ってイメージが消えないんだ? 事実じゃないんだろ?」

「……そうだな。説明しといた方が良いか」

ガレが俺の上から退き、ベッドの上に胡座をかいた。
どうやら真面目なお話のようなので俺も起き上がって女の子座りをする。
……そう、これは俺の少ない特技の1つだ。女の子座りなんて、俺の同級生の男は誰1人として出来なかった。……誇れないけど。

「まずな、暗黒属性=魔族というのは事実じゃ無い。魔族にだって色んな属性がいるからだ。だがそれを頑なに認めようとしないクソ共がいる。…教会の連中だ。教会は独自の騎士団を作り上げ、創造主ゼロアを信仰していて、神聖属性こそこの世の頂点である~とか抜かしてやがる。…だから、俺ら暗黒属性を敵視していて、見付けたら即捕縛、連行、地下街送り…酷い時には処刑だ。女子供関係無く、な。まぁ、暗黒属性の攻撃で死んだ奴に蘇生魔法が効かないってのも、理由の1つなんだろうがな」

…んだよそれ。あんまりだろ。だってそんな…。…人を人と思ってないような仕打ちじゃねーか。

「んで、そんなクソ共に歯向かったのが俺ら『死神の吐息』。『死神の吐息』の団員は7割が暗黒属性なんだ。言うなれば…ここは暗黒属性の最後の逃げ場なんだよ」

「…逃げ、場」

「ああ。教会の発言力は小国くらいなら潰せる程だ。それを利用して、教会は世界各国に暗黒属性=魔族という考え方を染み渡らせている。だからいつまで経っても暗黒属性は差別の対象だ。ちなみにコージに助けられた時、俺が死にかけてたのは教会の聖騎士っつークソ共が拠点に押し掛けてきたからだ」

…それで、あんな怪我を負ってたのか…。
……俺、教会は嫌いだ。かと言って盗賊行為を肯定するつもりも無いんだけど。
決め付けは良くない。実に良くない。けど俺が今まで見聞きしてきた情報を鵜呑みにするんなら、教会は間違い無く『悪』だ。
考えの押し付けほどムカつくものは無い。

『…康治郎』

うわビビった!
ゼロアか…。ガレいるけど、話し掛けてきて良いのかよ?

『構わぬ。…それよりも、勘違いするでないぞ。属性に順位などは存在せぬ。私を勝手に信仰する者共が勝手に解釈した結果だ』

…そうだよな。大丈夫、分かってる。…ゼロアが、一部の奴を貶めたりする筈ないよな。神様だもんな。

『その通り。天使が暗黒魔法を用いたり悪魔が神聖魔法で村を滅ぼした記録もその国には存在している。神は普段そちらには関与しない。教会の方針に私が口出ししたなどという事実は無い』

うん。俺、ゼロアの事信じてるからな。心配しなくてもゼロアの指示だとは思ってないぜ。

『………そうか。…信じてくれるのか。………お前は、本当にい奴だ…』

え? 憂い? 憂いがどうかしたのか?

『…はぁ…、何でも無い。では康治郎。幸運を祈るぞ。困った事があればいつでも呼ぶが良い』

おう、サンキュー。

ゼロアの気配が消えた。
ガレは黙ったままの俺に不思議そうな顔を向けている。
……つーかあいつ…最初ツンツンデレくらいだったのに、今はツンデレデレだな…。ちょっと可愛…くは無いか。あんなイケボで『べっ別にあんたの為じゃ無いんだからねっ!』とか言われても萎える。つか殴る。

「……コージ…?」

ガレが心配そうに俺の顔を覗き込んできた。

「…ゼロアが指示してるんじゃ無さそうだ。つまり、暗黒属性差別は完全な教会の勘違い!」

「お…う? 何で創造主ゼロアの指示じゃねェって分かったんだ?」

「本人がわざわざ訂正しに来たから」

「………? どこに?」

「どこにって…ここに?」

「…………………いつ」

「今」

「…………………………どうやって」

「えっと…テレパシーで…」

「……………………………………………………………」

…ガレが黙り込んでしまった。
言っちゃダメな事だったかなぁ…。でもガレになら良い気がするんだけど…。

「……創造主ゼロアって…何者なんだ……?」

「……自信過剰な良い奴?」

「…………自信過剰な良い奴…」

「「……ぶふッwwwwww」」

その後、俺達は飯が運ばれて来るまでの間、ずっと笑い続けた。





********************



はぁい(* ̄∇ ̄)ノ
メルです。




えっと、お礼なんですけど……、お気に入り数が1900いきました!!
……あれ、前回1800のお礼しませんでしたか…?ちょっと早すぎませんか…?
…これは、2000も夢ではない…??……いっ、いやいやそんなまさか!まさか…ね……。…ごくり。


ヽ(* ̄∇ ̄)ノ本当にありがとうございます!!
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