異世界転移したんだけど周りが全員過保護なホモだった件

メル

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足腰ガクブル★死神の吐息編

さぁ今度こそ脱出しy…ひっ……!

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「見張りは4時間交代。今は比較的ユルい奴等が担当ですが、コージさんが逃げた事で大量動員されてます。正面突破は難しいかと……」

「だよなぁ……。…ガレ本人に追い掛けられたら多分逃げ切れないしなぁ…」

「ええ、お頭が団員を殺すなんて、今まででは1度もありませんでした。最悪の罰でも、歩けなくして性欲処理用に売るくらいだったのに…」

うわエグ……!!
マジかよ……ガレの奴、んな非人道的な事やってたのか…!!

「…ですので、余程コージさんの事を愛しているんだと思います。居場所がバレれば、逃げるのはまず不可能でしょう」

「…嬉しいような、悲しいような…。ちょっと複雑…」

「でしょうね…。………その、大丈夫でしたか? 昨夜……お頭に……乱暴、されませんでしたか?」

狐さんが俺の格好を見て、言いにくそうに聞いてきた。
忘れてないか? 俺は今、ガレのシャツ1枚で生足なんだぜ?
大事なところは見えてないけど、顔を赤くして逸らす2人を見たら……隠したい。
ああ、狐さんもミゲルさんも、体格が俺と違いすぎて、ズボンは借りられなかったよ…。

「乱暴………はされてないです。…強引だった…けど、痛くなかったので……」

「そっ、そうですか…! 良かったです……!!」

更に顔を赤くして、狐さんとミゲルさんは誤魔化すように遺跡地図に集中するフリをし出した。
………いや何素直に答えてんだよ俺は…!! もっと適当に誤魔化せただろこの間抜け…!!

「……そろそろ、交代の時間っす。出入口はいくつかあるんすけど、今回は……ここ。石像下の隠し通路から出るっすよ。ここから出て真っ直ぐ進めば、王都っすからね」

ミゲルさんが指差したのは、ここから割りと近い場所にある赤い×が描かれた場所だった。
って、真っ直ぐ進むだけ? マジで?
それは…方向音痴の貴公子と呼ばれた俺からしてみれば大変ありがたい!
まぁ、ガレに捕まればそれどころじゃないし、まずは脱出を目的として頑張ろう!

「……足音が消えました。行くなら今です」

狐さんの狐耳がピクピクっと動いて、外の様子を知らせてくれた。
俺は覚悟を決め、薄暗い廊下でミゲルさんと狐さんに前後に挟まれた状態で移動を開始する。
見付かった時に天井にへばり付いたり、壁と同じ色彩の布で身を隠すなんて忍の芸当が俺には出来ないので、身体の大きなミゲルさんが俺を隠せる為の配置だ。

「……………」

「……………」

「……………」

狐さん以外の獣人に気付かれないよう、最大限に音を立てずに移動する。
そんな事、あり得るわけがないんだけど…心臓の音でガレに気付かれそうで、すっごいビクビクした。
だから、無事に石像まで辿り着いた時は自分でも驚くぐらい肩から力が抜けたのを感じた。

ズズズズズ……

ミゲルさんが石像を動かしてくれて、地下通路への階段が姿を現した。
俺は狐さんとミゲルさんに思いっきり頭を下げ、お別れの言葉は言わず、転ばない程度に速く降りる。
周囲に俺達以外の人影は無いが、ここは仮にも盗賊団の拠点。どんな猛者が潜んでいるか分からない。
用心するに越した事は無いのだ。

地下通路は文字通り真っ黒だった。
光源が無いから一寸先すら見えず、魔法で出そうかとも考えたけど、闇に溶け込んでいるうちは気付かれないような気がしてやめた。

実際は3分くらい歩いた地下通路。
暗くて細くて息苦しくて、何時間にも感じられた。
変わらぬ同じ暗闇に、気が滅入りそうになってた時、変化が起こった。
…ふと手を付いた壁に、巨大な葉の蔦が生えていたのだ。
つまり、出口が…地上が近い事だと俺は勝手に判断し、見えてきた希望に歩を進める。
まぁ……その後10分は歩き続けたんですけどね。
でも、明らかに周囲の様子が変わってきて、石壁は土壁になった。
時々上から水がぴちょんって落ちてきてびっくりしたけど、川か何かの近くまで来ているんだと楽観視した。

そして、暗闇の中に一筋の光が入る。
……木製の、古びたドアが目の前に現れた。
所々欠けている場所からは光が差し込んでいて、鳥の鳴き声も聴こえている。

―――やっと脱出出来る。
そうだ、これでリイサスさん達の元へ帰れる。
王都に行かなきゃだけど、冒険者カードをアイテムボックスに入れてるし、『絶対防御』は展開している。
うん、大丈夫だ。

そう思い、俺は古びたドアを開けた







































筈なのに。




目の前には青々とした木が立ち並ぶ森。
雀くらいの鳥がギョエーと不思議な声で鳴いていて、俺の想像した通り、大きな川もあった。
見るだけで日々の鬱憤やらが浄化されそうなこの風景に向かって、俺は1歩を踏み出す事が出来なかった。


両肩に、掛けられた、大きな男の手。

男は俺の背後から、俺を抱き締めるように手を俺の腹まで下ろし、交差させ、呟いた。


「逃げるなんて、酷いじゃねェか」


昨夜、俺に愛を囁いた時と同じ声音で。

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