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足腰ガクブル★死神の吐息編

さぁ脱出のお時k……あ………

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脱出!
そうと決まればまずは服を着よう!

え~っと…服……俺の服………服…………。

…あ、あれ………? …なにこの………布切れ……。
…………俺の服の色と一致するんだけど……。

…や、ぶかれた……のか……。

………あ、ガレの服発見。これ着よう。つか貰おう。


~5分後~


俺は、部屋に立て掛けてあったゴテゴテとした白い全身鏡の前に立った。
あ、言い忘れてたけど、この世界には鏡が存在するんだ。
リイサスさんの家の本に書かれてたんだけど、何でも300年程前に『ジン・シノノメ』とか言う男が製法を伝えたとか伝えなかったとか……。
完璧日本人の名前なんだけど、鏡の作り方が分かるってどんな職業の奴よ?が、最初の感想だったなぁ。
まぁそんな事はどうだって良いんだ。

……なんで俺は積極的に彼シャツなんてしようと思ったんだ…?
分かっていた筈だ!
俺の身長は165ちょいで、対したガレの身長は大体185くらい! 20センチ程の差があって何でピッタリだと思ったんだ俺は!?
ぎゃーズボンずり落ちるー! だぼだぼー! うわー!
ひーん、ダメだコレー。ベルト無いし、ズボンは諦めよ……。
生足寒いけど気にしない。
見られても気にしない。
その時は全力で逃げますがね!!
外に出てからズボンは考えれば良い。いや、むしろ同じような体格の盗賊から奪うか……?
…もし、いたら考えよう。

俺がささっと服を着れた理由についてだが、なんか、俺の身体すげー綺麗だった。
…多分、ガレが洗ってくれたんだろう。じゃないと全身白濁まみれだった俺が精液臭くないわけがない。
拉致監禁されたし、犯されもしたけど…ほとんど合意みたいなもんだし……あんまり恨んではない。
王都への行き方も教えてくれた。
………一応…感謝、しとくか。

ちゅっ

……さぁ早くここから脱け出そう。
さっさと王都に行って、さっさとリイサスやルークさん達の所へ戻ろう。
もし監禁されれば……そん時はゆっくり説得していこう。

俺は音を立てないように、慎重に慎重にドアを開け、外の様子を確認する。
昨夜起きた殺人騒動の面影は一ミリも無く、ただ静かな石の廊下が広がっていた。

……取り敢えず、出たら即刻捕らえられる、なんて事は無さそうだ。…だが安心するにはまだ早すぎる。
仮にもここは盗賊の拠点だ。
見張りは絶対にいるだろうし、もしかしたら罠だって仕掛けられているかもしれない。

………よし…、行くか。

俺はガレを振り返り、少しの間だけ眺めて、部屋を去った。




***************




早朝の冷える石畳の廊下に、ペタペタと気の抜けるような足音が響く。
足音の正体はぁぁぁぁ………そうっ! 俺! コージくんです!!

さてさて、あのお嬢様部屋を出てから10分くらい…人影は確認出来ません!
…心配になるくらい不用心だなぁ……。
それとも、見張りは外に集中してんのかな……?
まぁ、何はともあれ『絶対防御』は展開してるし、死ぬ事は無いだろう。


ペタペタ………


ペタペタ………


ペタペタ………ザッ


…ペタペタ………ザッザッ


ペタペタペタペタペタペタ………ザッザッザッザッ


タッタッタッタタタタタタ…ザッザッザッザッザッザッ


ヒィィィィ!!
誰か追い掛けて来てる!! 明らかに俺を狙ってるぅぅ!!
つーか俺結構全速力なのに後ろの不審者ちょっとずつ近付いて来てるんですけど!!?
俺息切れしてんのに後ろの奴まったく疲れてない!!
追い付かれるぅぅぅ!! 

ガシッ

「ひぃっ!! ごごごごごめんなさ……………あ…れ?」

いよいよ肩を掴まれて、もう駄目かと思ったその時……見覚えのある獣耳が目に飛び込んで来た。

「………昨日の…」

「おっ、おはようございます………」

そこにいたのは、ガレに1度殺されてしまった狐の獣人さんだった。
なるほど、この人だったかぁ~~。まったく知らない強面のおじさんとかじゃなくて良かった~~。まぁピンチには変わりないんですけども。

「あっ、おはようございます。……つ、連れ戻しに来たんですか……?」

「え? あ、いや……え? 逃亡中なんですか?」

「………ソンナワケナイジャナイデスカー」

「逃亡中なんですね………」

ぎくっ!?
何故分かった!!?
まさか……本物のエスパー……!?
ん? 連れ戻しに来たんじゃないんなら……何でこの人追い掛けて来たんだ?

「…大丈夫です。お頭には言いません。…その、一緒に来て頂けませんか? 俺とミゲル…あ、バンダナの男で、改めてお礼を言いたくて……」

えっ、お礼? 生き返らせた時の?
…別に良いのに。盗賊の癖に、律儀だなー。
うん、あれは俺が文句言っちゃった事が原因だからーって…断ろうとしたんだけど…。

「お頭の嫁が逃げたぞーーー!!!」

「捕まえろーーーー!!!」

「死にたくなければ絶対傷付けるなーーー!!!!」

どうやらガレが起きちゃったみたいでさ…。
野太い叫びが響いてきて、もうげんなり。さりげなく嫁認定されてるし、超焦った。
それで咄嗟に狐さんが近くの部屋に連れ込んでくれて、一難は去った。

「あ……」

中にいたのは、狐さんと同じくガレに殺されたバンダナの男性。
今はバンダナを外していて、男前なお顔が見えていた。
そして、俺の隣にいた狐さんがバンダナの…ミゲルさん?の横に移動し、2人同時に頭を下げる。

「「命を救って頂いて、ありがとうございました!!」」

「…え…っと、その、どういたしまして?」

お礼を言わせるつもりは無かったけど、先に言われてしまっては応えるしかない。疑問系ながらも応えると、2人はほっとしたように顔を上げた。
…おいおい兄ちゃん。兄ちゃんのミスって訳でもないのに、立派な大人がこんな餓鬼にそう易々と頭を下げちゃいかんよ……。
ふと、誰かに言った祖父の言葉を思い出し、申し訳無い気持ちになった。

「…あの、俺の方こそ、ありがとうござました。それと…すみませんでした。せっかくお部屋を用意して頂いたのに……文句ばっかり言っちゃって……」

「え!? コージさんのせいじゃないっすよ! あんな部屋、男なら誰だって嫌がるっす! 文句言って当然なんすから!!」

「そうです! 俺ら、コージさんが一般人なのに、のうのうと拠点に居座ってるって知って…ちょっと、嫌がらせしてやろうって……謝るべきなのは俺らなんです」

「「すみませんでした!!」」

……え、嫌がらせだったの? そこ結構ショックなんだけど……。
ん、でも俺は慈悲深いし、分からん事もないから許す。………もうするなよ…。

「大丈夫です! 自分達の頭がいきなり一般人の嫁なんて連れてきて、嫌がらない方が少ないですよね」

2人が不安げに顔を上げる。
まぁ、色々あったけど、俺と狐さん(本名はコナーさんらしい)達は無事に和解出来た。
そしてそして! なんとなんと!!
脱出を手伝ってくれるそうですっ!!!


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