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足腰ガクブル★死神の吐息編
自由業の方ですね分かります
しおりを挟むいやね、俺は思うわけですよ。
どうせチート転移させるんだったら、ゲームでよくあるマップ機能くらい付けてくれても良いんじゃないかってね!
…はい、そうです。
バッチリ迷いました。
それは30分くらい前のことだ。
俺とルークさんとリイサスさんは、倒したゴブリン達をアイテムボックスにポイポイと入れる作業をしていた。
そんな中、突如現れた濃霧。ホント急にモワンモワンってなって、気付けば俺だけが囲まれてしまっていた。
ルークさんたちが遠くで「惑わしの霧だ!」とか「コージくん霧に触れちゃダメだ!」とか叫んでるのを最後に、視界全体がぐるぐる回って……俺は別の場所へと転移していた。
西の森とは雰囲気の違う、見た事もない木がたくさん生えた森……。
……どうすれば良いんだ、これ…。
誘拐霧(?)が発生するとか異世界怖すぎるんだが…?
ていうかもう、本当にどれだけトラブルメーカーなんだ俺……。ドジっ子とか鈍臭いとかそういうレベルじゃないぞ……。
俺は辺りを見回して、その場で立ち尽くす。どこかに建物でもないかなと思ったけど、やっぱりどこを見ても木、草、木、草、木、草……。気温も天気もそんなに変わってないから、国を跨ぐレベルの移動はしてない…と信じたい。
うーん、これからどうすれば良いんだろう。地図もないし、下手に動かない方が良いのかなぁ。もしかしたら思ったよりオーディアンギルドの近くで、ルークさんたちが匂いで迎えに来てくれるかも知れないし。
………でも、さっきから血の匂いがしてるんだよなぁ……!
うぅっ。鉄分たっぷり、嫌な匂いだ。
きっと、近くに動物の死体でもあるんだろうな。動物だよな。誰か動物だと言ってくれ。
ガサッガサガサ
ビクッ
不穏な考えを必死に振り払おうと、動物の死体説を自分に言い聞かせていた時。
遠くの草が音を立て、俺は跳ね上がった。
一瞬風かと思ったけど、多分違う。だって、ガサガサって音が真っ直ぐこっちに向かって近付いてきてるから。
俺は一応疾風魔法の準備をして、音のする方向から距離を取る。
これで兎とかだったら超ダサいけど、怖い魔物とかだったらすぐに攻撃出来るようにと思って。
しかし。
ぬぅん
怖い魔物来るな~来るな~…! と、緊張してジッと見ていれば、現れたのは魔物でも兎でもなく、血まみれのお兄さん。
「……ッ!」
お兄さんは俺に気が付くと、目にも止まらぬ速さで飛び退いて、詠唱を始めた。
「闇の眷属よ 深淵での盟約を果たせ シャドウ!」
「え…、えっ!?」
あれっ攻撃される感じ!?
俺がビックリして何も出来ずにいる間に、地面がジュワジュワ黒く染まり、そこからボコボコと出てくる黒い影。そしてその全てが俺に向かって来た。
混乱中の俺は魔法を使うのも忘れて、攻撃してくる影を呆然と見ることしか出来なかったんだけど…。
バチッ
俺の目の前に来た影が、ガラスにぶつかるみたいに何かに弾かれた。
『神鳥の加護が発動しました』
タイミングよく聴こえてくる通知音。俺は感動した。
ジズ…護ってくれたのか…(←絶対防御を忘れてる奴)
「なっ…!? シャドウを…弾いた…!?」
動揺するお兄さん。ぜぇぜぇ言ってるのに、魔力使って大丈夫なのか…?
いや、そもそも…。
「お兄さん……、暗黒属性なら回復出来るんじゃ…?」
疑問に思った事を口にすると、お兄さんはドサッと座り込んでしまった。
「………戦って多くの魔力を消費した。回復出来る程残っていなかった。残り少ない魔力も、お前に攻撃して失った。……効かなかったがな…。……殺せると思ったのに………」
全てを諦めたかのように言い捨てるお兄さん。
うーん、俺は殺されかけてたのか…。次ジズに会ったらいっぱいなでなでしてやろう…。
頭の中で、「ぐるるぅ!」と喜ぶジズの声が聞こえた気がした。
「えっと…、俺、加護付いてるからお兄さんが敵意とか悪意とか持ってるうちは多分無理だよ」
「…加護持ちかよ……。人生最期にそんな神聖存在に手を出すなんて……俺も不運だったな…」
し、神聖存在…!? 俺、もう処女じゃないけど神聖存在なの…!? てか、最期って…。
お兄さんの体をよく見ると、あちこち怪我をしている訳ではなく、胸から腹にかけて大きく斬られていた。出血も酷いし、放っておけば死んでしまうだろう。
…………助けたいけど、この人俺の事殺そうとしたんだよな…。んー…、でも見殺しはどうかと思うし……。死にかけの極限状態だったら仕方ない…か…?
……あ"ーもうっ! ここで助けなかったら一生後悔する気がする!
「お兄さん! 今から治すから、ここがどこなのか教えてね!」
「は? 治す?」
戸惑ってるお兄さんを無理矢理地面に寝かし付けて、傷口に手を当てた。
えーっと、慰安魔法でいいか!
慰安魔法の神様! この人の傷を治して! 血も戻して! この人を殺さないで!
回復系の魔法を使った事のない俺は、とにかくお兄さんを死なせない事を重要視して慰安魔法の神様に頼んだ。
すると…。
パァァァァァ
明るく光だした傷口。驚愕の表情で俺と傷口を交互に見るお兄さん。
溢れ出ていた血がお兄さんの中に戻って行って、傷口は、痕もなく消え去った。
「…っ!!? 無詠唱で……!!」
がばりと起き上がり、傷があった場所をペタペタと触るお兄さん。
改めて見ると……イケメンですねぇ~! 色男ですねぇ~!
リイサスさんに負けず劣らずの美貌を持っておきながら危険な色気を漂わせるお兄さんは、自分の事をガレと名乗った。
「いつもは偽名を使うが、今回は流石に本名を名乗る。それと、さんは要らない。ガレと呼べ。お前にだけ呼ばせるんだぞ」
が、ガレ? と恐る恐る呼ぶと、ガレはにぃっと笑った。うぅ…雰囲気からして、絶対アカン職業の人だ……。
鑑定、してみるか…。
《種族:人間
名前:ガレ・プリストファー
レベル:83
年齢:25
性別:オス
属性:暗黒属性
属性詳細:闇の力を操る。暗黒属性=魔族というイメージが強く、人間では虐げられてきた。
職業:盗賊の頭
スキル:暗黒魔法 鑑定 罠発見 長の威圧 隠密
称号:死神
好きなタイプ:裏表のない奴
全世界共通認識の凶悪盗賊団、『死神の吐息』の頭。規模が大きく、世界各国にメンバーが散らばっているので、各国騎士団もその足取りを掴めないまま。目的の為なら手段は選ばない極悪非道だが、本命にはゲロ甘い。暗黒属性だからと虐げられて盗賊になった。気に入った奴は側に置き、好きな奴は犯しまくって囲う。》
うん、ヤバイ★
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