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ハローおホモ達★ギルド入会編

万事解決……か…?

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「……それが君の結論か」
「はい」

俺の両隣から明確な殺意が膨れ上がる。
俺は自分の耳を疑っていた。
だって…、ワーナーさんとは今日会ったばかりだ。ほんの数時間前に初めましてってしたんだ。
なのに、なんで? え、本当になんで?
なんでもう俺が好きなの……?
どうしたら出会って数時間の奴と、子供の頃からの夢を比べて、俺を選ぶなんてことが出来るわけ……?

俺は背中にジトリとした嫌な汗をかき、ワーナーさんを呆然と見詰めた。
ワーナーさんの目は嘘っぱちを言っているようには見えない。…ワーナーさんが分からない。

……というか…、もしかして、俺の認識が間違ってた?
ワーナーさんは、本当に安全地帯にしても大丈夫な人だった?
本当は物凄く怖い人で、俺がその本性を知らなかっただけだったり…する……?
だって、「お前だけ」とか「日本人だけ」とか言われちゃったらおしまいかもしれないけど…、自分の将来と、結婚出来るかどうかも分からない好きな人を比べたら…、…自分の将来を取るだろ。普通は。

…………いや、いやいやいや! ワーナーさんが特別情熱的なのかも!
ほ、ほら、アメリカの人とかって、友情とか愛とか、超大切にするだろ。それと同じ感じでさ……。
え、偏見だって? 分かっとるわい! でもそう思わないとやってられないんだい!!

だって、だってさぁ………ワーナーさん見るからに陽キャだもん。他人に執着とかしないタイプに見えるもん。
だからマジで信じたくない。

ワーナーさんが、ヤンデレ執着ホモォの可能性なんて。

いやいやいやッ! ホントにムリだからッ! もうルークさんとリイサスさんでお腹いっぱいだからぁーっ!
ジャックさんは普通っぽいからこの際尻を狙われようがもう良いです! でも普通じゃない男3人抱えるのはキャパオーバーですぅーーっ! 俺は伊○誠じゃない! 滅多刺しになんてなりたくなーーい!!
なんて俺の切実な首横ブンブンを華麗にスルーして、ワーナーさんはスッと息を吸った。

「俺はコージを嫁にします」
「お前、ごときが」
「何を言われてもこの決意は揺るがねぇっすよ。だから、例えルークさんたちでも、邪魔するなら」

たっぷり10秒くらい空いた間に、全員の視線がワーナーさんに集まる。
ギルド中が耳が痛いくらい静かになって、空気が張り詰める。誰かのゴクリと唾を飲む音が聞こえたと思ったら、多分俺の喉から音はした。
ワーナーさんはそんな緊張と混乱に苛まれる俺を見て、ニカッと笑った。まるで安心させるように。
俺はなんでか、そのあまりに場違いな笑顔にホッとしてしまい、ゆるりと同じように口角を上げて。

「アンタもリイサス・ラックも、後ろから包丁でぶっ刺してやる」


あ、やばい。


《ここまで加筆修正済み》


マジかよ…。もう…なんて日だ! 俺の癒しのワーナーさんを返せ!
ヤンデレ+ヤンデレVSヤンデレとか悲惨な未来しか想像出来ないわ。自分で言うのもなんだけど、こんなちんちくりんを何で地位も権力も顔面力も持った大人が奪い合ってんだよ。可笑しいだろ。対象はグラマーな美女か、乙女ゲー主人公だろ。普通は。

「…………なるほど。ワーナー、君も私達と同じ覚悟を背負ったのだな…」

ちょ、ルークさんそこ感心しちゃダメなとこ。ヤンデレ同士共感し合うな。いや別にしてもいいけど俺の知らない所でやってくれ。俺はウサギさんとかけっこをしておく。

「当たり前です」

即答。
いやいや、殺す覚悟背負っちゃダメでしょ…。

「……ならば、尚更解雇は免れない。今までご苦労だった。解っているとは思うが、コージくんの前に現れたらその時点で敵とみなs「ちょちょちょ! 待ってルークさん待って!」ぬ?」

ぬ? じゃねーよアンタ! 何さらっと解雇宣告しちゃってんだよ! ワーナーさんの料理食べられなくなるとか嫌だからな!? ほら見ろよ周りの反応! 明らかに嫌がってんだろ! ワーナーさんの料理は皆好きだってよ!

「ワーナーさんは解雇しちゃダメです! ワーナーさんの料理を気に入ってる人もたくさんいる見たいですし!」

「……それは知っている。事実、彼の作るテットポッドの串焼きと甘味に勝るものはないだろう。……しかし、コージくんが関わるのなら別だ」

お前はバカか!? …はっ! 今一瞬、『いってきゅう!』の出革三朗が乗り移った気が…! って、そんな事どーでもいい! ふざけてる場合か!

「公私混同しちゃってるじゃないですか! ギルドマスターなんでしょ!?」

「コージくんより大切なものはない」

ヤンデレもここまで来るとサイコパスだなこんちくしょう!
えぇっと…! どうすれば良いんだ!? 待って、今考えてるから! 考えてるからそんな『何とか止めてくれ!』って顔で見ないでギャラリーの皆さん!

えーっと、えーっと…あっ! そうだ! 確か奥野腹黒いクラスメートが、相手を説得したいなら、弱味を利用しろ! って言ってた!
ルークさんの弱味…………俺、だよな…。
……思い…付いた……けど……俺がこのセリフを言ったら、間違いなくエロいお仕置きをされる自信がある。いやむしろ、その自信しかない。
………でも、あのお肉めっちゃくちゃ美味しかった…。だから……。

「……ルークさんは、公私混同しちゃうようなダメなおじさんだったんですか?」

「「!?」」

うん、そこにいた全員が驚いてる…気がする。分かるよ。今のルークさんにこんな挑発行為はヤバイよな。分かってる。でも、俺はワーナーさん(が作る美味しい料理)を守るって決めたんだ!

「コージくんっ…!? 何を…!」

「そんな人だったなんて……俺、ガッカリです…」

「っ!!?」

よし、動揺してる動揺してる。もうちょっとかな。

「そもそもっ、ルークさんは俺を…襲ったじゃないですか…! 初めてだったのに…あんな、いっぱい奥突かれちゃって……、今思い出しても…、ああっ、気持ち良くなっちゃうっ…」

「「ッッッッッ!!??」」

俺の言葉に真っ赤になる一同。
…こいつら、揃いも揃ってホモかよ。ルークさんリイサスさんジャックさんワーナーさんはまぁ良いとして、その他大勢まで同じ反応してんじゃねぇよ…。

え? さっきのセリフ? ……何も言うな。俺だってこんな事したくないんだ。こんな…っ! 恥ずかしいこと…!
……ノリノリに見えるだって? ………まぁ、ちょっと楽しくは感じちゃうよね…。何が…って、俺の言葉にいちいち顔を青くしたり赤くしたりするギャラリーの様子が。
羞恥心?
とっくに棄てたわ。リイサスさんの家のベッドの下に。

「なっ…!? こ、コージく…!!」

「自分は犯して、番になる事まで迫ってきたのに、ワーナーさんは求婚したくらいで解雇ですか…?」

「うぐっ」

「……どうしても解雇するって言うんなら、ルークさんとのえっち以上の事、ワーナーさんとしなきゃワーナーさんが可哀想ですよね…。例えば…青姦とか?」

ぼんっと顔から湯気が出てきそうなワーナーさんとは対照的に、ルークさんは顔を真っ青にした。
おーおーwwそんなに姦を推奨するかww
でも良かった。俺の流れに引き込めた。これなら後は容易い。

「だっ…ダメだ!! 絶対にダメだ!!」

「えー? でも、解雇しちゃうんでしょ…?」

「しない! ワーナー・エレストーンとの雇用契約は継続する!」

よっしゃ! 言質取った! 証人はギャラリー!
そう思ってガッツポーズをした途端、周りから歓声があがった。
うんうん、そーだよな。皆ワーナーさんの料理は好きだよな。
リイサスさんとルークさん以外が喜ぶ中、本人のワーナーさんは、ぽかん…として俺を見つめていた。

「……ふ、はははは…! 流石ルークさんとリイサス・ラックを手懐けただけあって、ただ者じゃないみてぇだな!」

え?
ただのただ者ですが?

「コージ! 俺、お前の事ぜってぇ諦めねぇからな! コージにはいつか俺の嫁さんになってもらう! 分かったら毎日飯食いに来い! 金はいらん!」

はっ、はわぁぁぁぁぁ! 超魅力的なお誘い! 男前な上に癒し系兄貴キャラ戻ってるぅぅぅ! お帰り兄貴ぃぃ!
プロポーズも男前~! 俺、ワーナーさんになら…抱かれても良いかも…!

「……コージくんには、敵わない…。惚れた方が負けとは、良く言ったものだ」

「…君が負けるとは思っていなかったよ。………ただ、コージくんならあり得る話だったな」

歓声の中で、ルークさんとリイサスさんが苦笑しているのが見えた。
もう彼らだって怒ってないみたいだし、解決…かな?

……うわ、どっと疲れが出てきた。緊張してたせいか、尿意も…。トイレ…。
俺はワーナーさんにトイレの場所を聞き、人混みを掻き分けてトイレに入った。
用を済ませてから手を洗っていると、不意にジズの事が頭に浮かんだ。


──…ジズ、今何してるんだろ…。あのトロフィーと一緒にいるのかな……?
あー……そう言えば、トロフィーがステータスがどうのこうのって言ってた気がする…。仮昇天から戻って来た後はお肉に夢中だったし、その後すぐに求婚騒ぎがあったから確認出来てなかったなぁ。今は誰もいないみたいだし、確認してみるか!
俺のステータスを鑑定!


《種族:人間

名前:阿山康治郎

レベル:3

年齢:15

性別:オス

属性:万能

職業:F級冒険者

スキル:鑑定 魔力無限 アイテムボックス 媚び 愛技吸収 

特別スキル:ラブジュース new! 色彩の上書き

称号:神の愛し子

加護:神鳥の加護

好きなタイプ:頼りになる人


           通知 ON/○OFF》




……んー? 何か増えてる?
えっと、まず…新スキルゲット!
『色彩の上書き』を鑑定!

《特別スキル 色彩の上書き

 クォックに愛された証。習得者が触れた無生物の色を自在に変化させる。変化させた無生物は習得者の意のままに操れる。》

おぉー! ジズか! 嬉しいなぁ。あいつ、愛してくれたんだなぁ。
新事実に思わず頬が緩む。

…で、加護はなんとなく分かるよ。ジズに守護してもらってるしね。でも…称号の、コレなんだ?  『神の愛し子』? 俺の知り合いで神って言ったら、あのトロフィーくらいしか思い付かないんだけど。……ま、取り敢えず鑑定!

《称号 神の愛し子

 世界の創造主、ゼロアと生命活動が行われているうちに会い、愛された証。死後の天界行きが約束される。創造主ゼロアが創造した世界でこの称号を獲得した者は 個体名:阿山康治郎 のみである。》

…????
…んーっと、まず、ゼロアって誰? 次に、天界行きが約束ってどういう事? 天界以外もあるの? 最後に、この称号って世界で俺だけ? え、超レアなんじゃね?

……ゼロアってマジ誰!!?

『私だ』

……やっぱりお前か自信過剰トロフィー!!

『……さっきまでマジ誰!!? と嘆いてはいなかったか?』



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