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ハローおホモ達★ギルド入会編

イケメンずるい

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「ワーナーさーん! ご飯お願いします!」

魔法をたくさん使って、はらぺこりんなコージくん。
てってってっと厨房前のカウンターに駆け寄れば、ワーナーさんはカウンターの後ろで「おうコージ!」とニコニコ笑った。
うっ、眩しい……。
これがルークさんやリイサスさんだったら、「可愛いね、セックスする?」って尻撫でられるに決まってるから、まともなワーナーさんの対応に本当に嬉しい。
いや本当に……。セクハラしない人間がこんなにも尊いなんて……。

「魔法練習お疲れ! 今最高の料理を用意すっから、もうちょっと待ってな!」
「ありがとうございます! えへ~楽しみ~!」

俺はいつの間にか背後にいたリイサスさんにエスコートされて、広場の丸いテーブルに着席。
途端に冒険者さんたちが「どけっコージくんの顔を見せろ!」とか何とか叫んで、我先にと他のテーブルの椅子を奪い合うように座ったのは、きっと気のせいだと言うことにしておこう。
俺は何も見ていないし聞いていない…。3メートルくらい離れて密集する筋肉もりもりマッチョメンなんて知らない……。
あ、そうそう。さっきのメテオライト・クラッシュの爆音については、ジャックさんが工事の音ってみんなに説明してくれたっぽい。
俺を見てサムズアップしてくれたので、俺も真剣な顔でサムズアップしといた。
ジャックさん、やっぱり良い人だ。誤魔化してくれたし、後でお礼言わなきゃな。
……あとメテオライト・クラッシュの口止めも。


「コージ、肉で良いか?」
「おにく! 大好きです!」
「そーかそーか! よしっ、じゃあとっておきを作らなきゃな!」

ワーナーさんはそう言って俺をよしよ~しと撫で繰り回す。
そんで椅子に座る俺の後ろにいたリイサスさんにスン…とした真顔を向けて、人差し指をクイクイ。こっち来いって意味だ。
リイサスさんが嫌そうな顔して寄れば、2人で何やらポショポショ。

「おいラック。ブラッディ・ブルの肉使うからな。金貨3枚、お前に請求すんぞ」
「あぁ。構わない」
「……マジ?」
「ブラッディ・ブルならコージくんも間違いなく美味しいって言うだろうしな。払ってやるから完璧に作れよ」
「…………お前の事だから…どうせ、経費じゃ落とさんとか…ルークさんに払わせるとか……そう言うかと思ってたのに」
「コージくんにかけるお金に、糸目はつけない。全財産どころか俺の人生全部捧げるつもりなんだからな」
「…………マジかよ」

リイサスさんとワーナーさん、不仲なんだなって思ってたけど、2人でナイショ話をしてから、ワーナーさんが口あんぐり開けてる。
そんなワーナーさんをリイサスさんが鼻で笑い、俺の側にカムバック。
ワーナーさんは信じられないって顔で俺とリイサスさんを交互に見て、やがて苦笑を浮かべて厨房へ行っちゃった。
……何を話してたんだろ?

「アイツ…俺を何だと思ってるんだ…?」
「血も涙もない変態イケメン?」
「それはコージくんがそう思ってるってこと?」
「マッサカー」
「誤魔化し方へたくそで可愛いねぇ。セックスする?」
「しないです」

そういうとこだぞ!
いちいちセックスするか確認すんなよ! いつか何かの拍子に頷いちゃいそうで怖いんだよ!

「あっ、そうだ。忘れるところだった。料理が出来るまでに冒険者カードを渡しておこう」

そう言ってリイサスさんは受付の男の人…確か、シーガルさんだっけ? 鹿のツノを生やした青年から1枚のカードを受け取って、俺と向き合う形でテーブルの反対側に座り、冒険者カードの説明を始めた。

「これはコージくんがオーディアンギルドの一員だと証明するカード。オーディアンギルドの冒険者カードだよ」
「おぉー」
「これを持っているだけで、入国時に税を払わなくて良くなるんだ。公的な身分の証明にもなるし、社会的信用もある程度は得られるね」
「しゃかいてきしんよう」
「金貸しからお金を借りやすかったり、家を買えたりするよ。冒険者ってのは色々と不安定な職業だから、ランクで判断するんだ。低ランクの冒険者のうちは審査も通りにくいんだけど、B級やA級にまでなると高額ローンも結構通ったりね」
「ほうほう。リイサスさんのお家もですか?」
「アレは知り合いのドワーフに頼んで建ててもらったものさ。内情を知ると、商人ギルドを通すなんてバカらしく思えるよ」
「ほへぇ、業界の闇……」
「そう、それで……何の話だっけ? そうだ冒険者カード。身分を証明することで、お店でツケが効くこともあるみたいだよ」
「ふんふん」
「それと…これは非公式な使い方なんだけど……喧嘩になりそうになった時、ギルドの規模によって相手が引くこともある。俗に言う、『俺のバックには○○が付いてる』状態だね」

ほぉー! なるほどなぁ。
オーディアンギルドは他と比べ物にならないくらい超大規模なギルドって話だから、これは使えそうだ。
でももし俺がそういう使い方をしようとする時は……物理的にギルドマスターがバックに付いてそうだけども。
ルークさんが側にいるってだけで、チンピラに絡まれることはほとんど無さそうだよなぁ。だってルークさん顔めちゃ怖いし。
まぁ、何はともあれ、冒険者カードは持っておくべきだな!

「でもね、これは血を1滴垂らさないと正式登録は完了しないんだ」
「え!」
「本人確認と一緒にステータスとかも入れないといけないからね。1ヶ月に1回更新が必要だけど、更新の時は俺が知らせるし、冒険者カード自体は持ってて損はないよ」

そう言ってリイサスさんは懐から小さな針を出した。
俺はちょっと怖気づいてドキドキ状態。
痛くないかな。痛いのヤだな。生前は10歳まで注射で泣いてたくらいだし……。
オイ誰だ弱虫とか思った奴。そうだよ弱虫だよ悪いか。

「じゃあ指を出してね。ちょっとちくっとするよ?」

恐る恐る出した俺の人差し指をグッと掴み、リイサスさんは針の先をプツと刺した。

ちくっ

あいたっ!
うぅ、やっぱり痛いのは嫌いだぁ…。好きな人もそうそういないだろうけどぉ…。
顔をしかめる俺をくすっと笑って、リイサスさんが血が滲んだ俺の指先をカードにぴとっと付けた。
途端、ぽわ…と淡い光を発するカード。

「よし光った。これで終わりだよ。痛かったね、良く頑張ったね」

リイサスさんが優しい顔で俺の頭をなでなで。
むむ…悪い気はしない。悪い気はしないんだけど……、俺5歳じゃないんだよね。
……いや、なんでやめるの。別に嫌とは言ってないじゃん。だから続けても良いよ。もっと撫でろください。
なんて猫みたいにゴロニャンしている俺は、血がプクーッと膨らむ俺の指先を熱心に見詰めるリイサスさんの視線に気付かなかった。

「…勿体ないなぁ」
「へ?」

あれ? あれれ? なんか指が引っ張られてる。
あ、何だかヤな予感。

ベロ
パクッ

わっ! わぁーっ!?
やりやがった! コイツやりやがったよ!  血ぃ舐められたー! 指咥えられたぁー!
この変態やろー!
他人の血ってすっごく怖いんだぞ! 友達のお母さん(外科医)が言ってたんだぞ! 色んな感染症の元らしいんだぞー!

と、慌てふためく俺を見て、リイサスさんがクスクスと意地悪そうに笑う。

「そんなに慌てちゃって、可愛いなぁ。コージくんの血は甘くてとっても美味しいねぇ。セックスする?」
「しないっ!」

しないしない! するもんか! 血も涙もない変態イケメンに差し出すケツはなーい!!
俺がプンプン怒ってキッと睨み付けると、リイサスさんはますます愉快そうに口端を歪めて……でも、急にパッと横を見た。
不思議に思ってリイサスさんの鋭い視線の先を見ると、冒険者さんたち。全員が不自然に目を逸して、木製ジョッキ片手に固まっている。
中には誤魔化すように口笛を吹いている人も。
そのおかしな様子からたどり着く結論はただひとつ。
…………見てた?

「見てたね、アイツら」
「リイサスさんが変なことするからですよ」
「コージくんが可愛過ぎるからだよ」
「そんなことないですぅー!」
「んじゃ、コージくんがもちもちしてるから」
「も、もち……」

べ、別に食べ過ぎとかじゃないし……。もちもちじゃないし……。

「……マ、何にせよ牽制は必要かな」

血も涙もない変態イケメンの口からこぼれた、そんな不穏な呟き。
嫌な予感がして逃げようとしても時すでにおすし。リイサスさんのちょっと恐ろしいまであるイケメン顔が、すぐ目の前にずいっと迫ってきて………。

ちゅう

俺はろくな抵抗も許されずに、キスされた。
ギルドの中心で。観衆のど真ん中で。

「むっむっ! むぅー! むぅぅーーーッ!」

躊躇なく口内に侵入してくるリイサスさんの舌。俺は必死に追い返そうとするけど、リイサスさんの舌はぬるぬると俺の舌に絡んできて、逃してくれない。
これが2人きり…、またはルークさんだけしかいない場所なら、まぁ俺も好きにさせてるんだけどね! 今回これ滅茶苦茶人前ですからね~!
俺も必死です。

「り、しゃすさ…! まっ、んんッ! ぷはっ、ひ、ひどい! いきなりなんてこと…むむッ! は、はぁ、も、やだぁ…。ん、りぃさす、さ、んん……!」

キス。抗議。キス。抗議。キス。
俺が文句を言おうとする度に、また唇が重なって、舌がぬるぬる絡み付いてくる。リイサスさんの恐るべきキステクにへろんへろんの俺は、まともな抵抗も出来ずにただ迫りくるイケメン面から逃げるしかない。逃げられてないけど。
俺がいい加減にしろとリイサスさんの胸元をドンドン力いっぱい叩くと、リイサスさんはやっと舌を抜き、ちゅっちゅと触れるだけのキスをしてきた。

「ん…ふふ。コージくんが誰のものなのか、アイツらに知らしめとかないとね。君は少し無防備過ぎるんだよ」
「そんな、こと、ない! もん…!」
「そんなことあるんだよ。ほら、周りを見てごらん」

耳元で囁くな! イケボで囁くなーっ!
俺がブンブンブンッと首を振ってリイサスさんを押し退けると、リイサスさんは急に冷たい目になって、周りを顎でクイッて指した。
で、俺がチラッと周りを見ると……、絶句。
ギルド広場にいた100人くらいの男。
そのほぼ全員が、顔を赤くしたり両手で覆ったりで、見事にズボンにテントを張っている。つまり総員フル勃起状態。
中には壁に向かってこっそりシコシコ始めてる奴も……って、えーっ! そこで始めちゃダメだろ冒険者さん! 公然わいせつがどうのこうので捕まっちゃうよ!
だけど…、本当に、何で?
俺リイサスさんとキスしただけなのにぃ。

「分かったかい? 君は何故か変に謙虚だから、何度でも言うよ。君は可愛い。可愛いんだよ、本当に」
「あぅぇ……」
「たまに思うんだ。実はこれはただの夢で……、現実の俺は何らかの理由で死んでいて、神様とやらが最期に、最高に幸せな夢を見せてくれているんじゃないかってね」

えっ。そ、そこまで!?
その例え、最上級の幸せの時に使うヤツじゃない!?
そんな事言われたら………ちょ、ちょっと嬉しいじゃねーか…。
なんて思って俺が鼻の下を擦ると、リイサスさんはもう1回、俺に触れるだけのキスをしてきた。

「だから、俺から君を奪わないで…。君を奪おうとする奴らはいくらでもいるんだ。分かっただろう? 周りの反応がその証拠さ」
「……、」
「君と出逢って、俺の人生ぐちゃぐちゃだよ。もうこうなったら、俺を一生幸せに出来るのは君しかいないんだ。お願い。誰にも奪われないで。俺を幸せにしてよ…」


ひぇぇっ……!
ぷ…プロポーズだ!!
女の子なら卒倒レベルのドイケメンが縋るようにキスしてくるとかっ、どんな乙女ゲーだよぉっ!
っどどど、どうしよう!!
今まで曖昧に好き好きしてきたリイサスさんにっガチプロポーズされてしまった!
ルークさんにもリイサスさんにもプロポーズされてぇっ……俺はいったいどうすればいいのーーーー!?






いや選ばないんですけどね。俺ノンケなので。

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