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第2章
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「挿れるぞ」
耳元でそう言う良樹の言葉に理菜が頷くと、良樹は理菜の腰に手を回してきた。
でも……。
「ま、待ってっ!」
それは理菜の声だった。
自分で出した声にびっくりした。あまりの大声だったから、自分で驚いてしまったくらい。
「どうした」
良樹は理菜にそう言った。
理菜の身体は震えていた。
さっきまであんなに幸せに感じていたことが、今は恐怖になってる。
「ごめん……なさい……」
知らずにそう呟いていた。
それがどんなに良樹を傷つけているのか分からずに、そう呟いていた。
良樹がどんなに理菜を宥めようとしても、ずっと同じことしか言えなかった。
泣きながら理菜はベットの中にいた。
布団に包まり、ただ「ごめんなさい」と言って震えながら泣いていた。
良樹は理菜が落ち着くまで傍にいて、抱きしめてくれていた。眠ってしまうまでそうしてくれて、それなのに何も言えない自分が嫌だっと思った。
──嫌われたくない……
──知られたくない……
布団の中でまだ震えている理菜の傍で、じっと見つめている良樹に申し訳ない。
でも怖くて。
どうにもならなくて。
ただ泣いていた。
いつの間にか眠っていた理菜は、ボソボソと話す声に目が覚めた。
廊下で声がする。
薄っすらと目を開けると、部屋には良樹はいなかった。廊下で聞こえる声は、良樹のだった。
「……シュン。んなこと、言ってんじゃねー」
そんな声が聞こえて来た。
でも駿壱の声が聞こえないのは、良樹は駿壱と携帯で話しているらしい。
「だから、リナのことだよ。え……?ああ。分かってんだよ。でもな……」
そんなやり取りをずっと聞いていた。
自分のことを話してるらしいのは分かったけど、何を言ってるのか寝起きの理菜には理解することが出来ない。
ただ、ぼんやりとその声を聞いていた。
「だから、リナになんかあったんか?ずっと言ってる。ごめんなさいって。許してって」
その言葉に完全に頭が覚醒した。
理菜は眠ってる間もずっと言っていたらしい。
いつもされてる時に言っていた言葉。
遠い昔の記憶。
忌まわしい記憶。
身体が硬直してしまった。
──知られたくない
──嫌われたくないの
それなのに、よりによって駿壱と話している。
駿壱には理菜の気持ちなんて分からないから、絶対に言うだろう。
何故かそんな確信を持ってしまった。
身体の震えが止まらなくなっていた。
気のせいか、息苦しい。
胸が圧迫されるような感じがする。
手が痺れてきたような感じもする。
ヤバイ……。
「……う……っ」
何かを掴もうとして痺れた手を伸ばす。
足も動かせないくらいに痺れて来て、理菜はそのままベットからドサッと落ちてしまった。
◆◆◆◆◆
助けて……。
もう、我儘言わないから……。
ねぇ。
パパ……。
あたしを虐めないで……。
「リナ!」
理菜を起す良樹の声。その手には携帯が握られてて、そこから聞こえるシュンイチの声。
『おい!どうしたっ!!』
その声に良樹は、電話の向こうの駿壱に叫んでいた。
「リナの呼吸がおかしい!」
『またか……』
そう言ったのが聞こえた。
「なんだよ、それ!」
『ヨシキ!そのヘンに紙袋ねぇか?紙袋をリナの口に当てろ。寝かせてからな!今、帰る!!』
そう叫んだ駿壱の声が薄っすらと聞こえた。
「リナ!リナ!」
理菜をベットに寝かせて、探し出した紙袋を口に当てている。その姿を確認すると、本当に申し訳なくなっていた。
バタン!
ダダダッ……!
玄関のドアが乱暴に開き、階段を上る音が聞こえる。
「リナ!」
ドカドカと部屋の中に入って来たのは駿壱だ。
理菜の顔を見るなり、眉間に皺を寄せた。
呼吸はさっきより落ち着いていた。
ベットの傍に座ると理菜の顔を覗き込み、瞼に手を乗せた。
「安心しろ。兄ちゃんはここにいっから。だから寝ろ」
そう言われて理菜は深い眠りに入って行った。
耳元でそう言う良樹の言葉に理菜が頷くと、良樹は理菜の腰に手を回してきた。
でも……。
「ま、待ってっ!」
それは理菜の声だった。
自分で出した声にびっくりした。あまりの大声だったから、自分で驚いてしまったくらい。
「どうした」
良樹は理菜にそう言った。
理菜の身体は震えていた。
さっきまであんなに幸せに感じていたことが、今は恐怖になってる。
「ごめん……なさい……」
知らずにそう呟いていた。
それがどんなに良樹を傷つけているのか分からずに、そう呟いていた。
良樹がどんなに理菜を宥めようとしても、ずっと同じことしか言えなかった。
泣きながら理菜はベットの中にいた。
布団に包まり、ただ「ごめんなさい」と言って震えながら泣いていた。
良樹は理菜が落ち着くまで傍にいて、抱きしめてくれていた。眠ってしまうまでそうしてくれて、それなのに何も言えない自分が嫌だっと思った。
──嫌われたくない……
──知られたくない……
布団の中でまだ震えている理菜の傍で、じっと見つめている良樹に申し訳ない。
でも怖くて。
どうにもならなくて。
ただ泣いていた。
いつの間にか眠っていた理菜は、ボソボソと話す声に目が覚めた。
廊下で声がする。
薄っすらと目を開けると、部屋には良樹はいなかった。廊下で聞こえる声は、良樹のだった。
「……シュン。んなこと、言ってんじゃねー」
そんな声が聞こえて来た。
でも駿壱の声が聞こえないのは、良樹は駿壱と携帯で話しているらしい。
「だから、リナのことだよ。え……?ああ。分かってんだよ。でもな……」
そんなやり取りをずっと聞いていた。
自分のことを話してるらしいのは分かったけど、何を言ってるのか寝起きの理菜には理解することが出来ない。
ただ、ぼんやりとその声を聞いていた。
「だから、リナになんかあったんか?ずっと言ってる。ごめんなさいって。許してって」
その言葉に完全に頭が覚醒した。
理菜は眠ってる間もずっと言っていたらしい。
いつもされてる時に言っていた言葉。
遠い昔の記憶。
忌まわしい記憶。
身体が硬直してしまった。
──知られたくない
──嫌われたくないの
それなのに、よりによって駿壱と話している。
駿壱には理菜の気持ちなんて分からないから、絶対に言うだろう。
何故かそんな確信を持ってしまった。
身体の震えが止まらなくなっていた。
気のせいか、息苦しい。
胸が圧迫されるような感じがする。
手が痺れてきたような感じもする。
ヤバイ……。
「……う……っ」
何かを掴もうとして痺れた手を伸ばす。
足も動かせないくらいに痺れて来て、理菜はそのままベットからドサッと落ちてしまった。
◆◆◆◆◆
助けて……。
もう、我儘言わないから……。
ねぇ。
パパ……。
あたしを虐めないで……。
「リナ!」
理菜を起す良樹の声。その手には携帯が握られてて、そこから聞こえるシュンイチの声。
『おい!どうしたっ!!』
その声に良樹は、電話の向こうの駿壱に叫んでいた。
「リナの呼吸がおかしい!」
『またか……』
そう言ったのが聞こえた。
「なんだよ、それ!」
『ヨシキ!そのヘンに紙袋ねぇか?紙袋をリナの口に当てろ。寝かせてからな!今、帰る!!』
そう叫んだ駿壱の声が薄っすらと聞こえた。
「リナ!リナ!」
理菜をベットに寝かせて、探し出した紙袋を口に当てている。その姿を確認すると、本当に申し訳なくなっていた。
バタン!
ダダダッ……!
玄関のドアが乱暴に開き、階段を上る音が聞こえる。
「リナ!」
ドカドカと部屋の中に入って来たのは駿壱だ。
理菜の顔を見るなり、眉間に皺を寄せた。
呼吸はさっきより落ち着いていた。
ベットの傍に座ると理菜の顔を覗き込み、瞼に手を乗せた。
「安心しろ。兄ちゃんはここにいっから。だから寝ろ」
そう言われて理菜は深い眠りに入って行った。
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