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第1章
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その話を聞いたのは、黒龍が理菜の為に動いてるって聞いてから数日。黒龍の面々が話しているのをたまたま聞いたのだ。
「なぁ。知ってるか?」
学校をサボって倉庫に向かっていた理菜。倉庫近くで黒龍の面子が話しているのを見た。
「ヨシキさんとマミさん、別れたって話」
「ああ。聞いた。なんでだろうな」
「でも俺はあのマミって女は好きじゃねーから。別れて正解だって思うぜ」
「お前の趣味は関係ないじゃんか」
そんな話が聞こえて来た。
(別れた……?)
理解が出来ないその言葉に、理菜は驚いていた。でもそれが倉庫に着く頃、事実だって知ったのだ。
「ねぇ!シュンイチ。ヨシキに会わせてよっ!」
そう叫ぶ女の人の声。それが真美だってすぐに分かった。
倉庫の前で駿壱が困った顔で真美を見ていて、そこに駆けつけた百合も真美を抑えていた。
「マミ。いい加減に諦めな」
腕を掴んでいる百合は呆れた声を出していた。でもそんな百合に真美は突っかかっていた。
「ユリっ」
「ヨシキはああいうヤツなんだって思って。あたしの弟だけど、よく分からないとこがあるから」
「だけどっ」
納得がいかない真美は、百合の胸倉を掴んでいた。そしてそんな真美を見ていた駿壱が、静かに低い声で言った。
「ユリ。マミ、連れて行け。煩い」
駿壱は本当に面倒くさいという顔をして、真美を見ていた。
「シュンイチっ!お願いっ!!」
その叫びは悲痛な叫びだった。人ってこんなにも叫べるものなんだって思った。
百合が真美を連れて歩き出しても、真美は駿壱に懇願していた。
「ヨシキに会わせて」って。
理菜はそんな真美と顔を合わせられなくて、いくつも並んでいる倉庫の陰に隠れた。
──ほんとに別れたんだ……。
真美の後姿を見て、理菜はそう思った。叫びながら、暴れながら、引き摺られるようにして去って行く。
そんな姿を見てなんだか、可哀相な気がしてきた。
──でも、なんでだろう。
──なんで別れたんだろう。
「お兄ちゃん」
理菜は駿壱に駆け寄った。
「また来たのか。学校は?」
最近理菜がここに来ても、学校に行けとは言わなくなっていた。だけど一応「学校は?」と聞く兄。
「午前は行って来た」
「そうか」
「ねぇ。さっきのマミさん……?」
「ああ。ヨシキに会わせろと煩ぇ」
頭を抱えながら倉庫の中に入って行く。
「今日、ここには来てないんだ。学校にもいなかった」
階段を上がって部屋の中に入る。
「ま、仕方ねぇな」
冷蔵庫からペットボトルの紅茶を出すと、それを理菜に放り投げた。
理菜はそれを受け取って、ペットボトルを開ける。
駿壱は煙草を吸いながら、理菜に言う。
「昨日……だっけな。ヨシキがマミに言ったんだよ。別れようって」
そう言うとため息を吐く。
「あいつはダメなんだよな」
「え」
「マミ」
「ダメって?」
理菜は聞くけど、駿壱は理菜を見て「お前に話しても分からねーだろうな」と言う。
「もうっ。子供扱いしてっ」
「子供だろ」
「酷い」
「ついこの前までランドセル背負ってただろーが」
「酷いっ、お兄ちゃんっ!」
そんなやり取りはいつものこと。駿壱は理菜をまだまだ子供扱いする。それは仕方ないんだけど。
「ヨシキはな、元々、そんなに女と付き合うってことに興味はないヤツなんだよ。本気で女に惚れたこと、ねんじゃねぇかな」
駿壱はそう話してくれた。
良樹が本気で女に惚れたことないってことを初めて知った。
(じゃなんでマミさんと……)
不思議に思う理菜だったが、答えは本人にしか分からない。
「本気で惚れるような女がいないってことだな。女よりバイクがいいっていうヤツだから。でもそれって寂しいよな」
微かに笑う駿壱に、理菜はどうしたらいいのか分からず、手に持っている紅茶を飲んだ。
「なぁ。リナ」
駿壱がこっちを見て言う。
「ヨシキにだけは惚れるなよ」
「え」
「アイツにだけは惚れるな。お前が傷付くだけだから」
理菜はこの言葉に頷くことは出来なかった。
「なぁ。知ってるか?」
学校をサボって倉庫に向かっていた理菜。倉庫近くで黒龍の面子が話しているのを見た。
「ヨシキさんとマミさん、別れたって話」
「ああ。聞いた。なんでだろうな」
「でも俺はあのマミって女は好きじゃねーから。別れて正解だって思うぜ」
「お前の趣味は関係ないじゃんか」
そんな話が聞こえて来た。
(別れた……?)
理解が出来ないその言葉に、理菜は驚いていた。でもそれが倉庫に着く頃、事実だって知ったのだ。
「ねぇ!シュンイチ。ヨシキに会わせてよっ!」
そう叫ぶ女の人の声。それが真美だってすぐに分かった。
倉庫の前で駿壱が困った顔で真美を見ていて、そこに駆けつけた百合も真美を抑えていた。
「マミ。いい加減に諦めな」
腕を掴んでいる百合は呆れた声を出していた。でもそんな百合に真美は突っかかっていた。
「ユリっ」
「ヨシキはああいうヤツなんだって思って。あたしの弟だけど、よく分からないとこがあるから」
「だけどっ」
納得がいかない真美は、百合の胸倉を掴んでいた。そしてそんな真美を見ていた駿壱が、静かに低い声で言った。
「ユリ。マミ、連れて行け。煩い」
駿壱は本当に面倒くさいという顔をして、真美を見ていた。
「シュンイチっ!お願いっ!!」
その叫びは悲痛な叫びだった。人ってこんなにも叫べるものなんだって思った。
百合が真美を連れて歩き出しても、真美は駿壱に懇願していた。
「ヨシキに会わせて」って。
理菜はそんな真美と顔を合わせられなくて、いくつも並んでいる倉庫の陰に隠れた。
──ほんとに別れたんだ……。
真美の後姿を見て、理菜はそう思った。叫びながら、暴れながら、引き摺られるようにして去って行く。
そんな姿を見てなんだか、可哀相な気がしてきた。
──でも、なんでだろう。
──なんで別れたんだろう。
「お兄ちゃん」
理菜は駿壱に駆け寄った。
「また来たのか。学校は?」
最近理菜がここに来ても、学校に行けとは言わなくなっていた。だけど一応「学校は?」と聞く兄。
「午前は行って来た」
「そうか」
「ねぇ。さっきのマミさん……?」
「ああ。ヨシキに会わせろと煩ぇ」
頭を抱えながら倉庫の中に入って行く。
「今日、ここには来てないんだ。学校にもいなかった」
階段を上がって部屋の中に入る。
「ま、仕方ねぇな」
冷蔵庫からペットボトルの紅茶を出すと、それを理菜に放り投げた。
理菜はそれを受け取って、ペットボトルを開ける。
駿壱は煙草を吸いながら、理菜に言う。
「昨日……だっけな。ヨシキがマミに言ったんだよ。別れようって」
そう言うとため息を吐く。
「あいつはダメなんだよな」
「え」
「マミ」
「ダメって?」
理菜は聞くけど、駿壱は理菜を見て「お前に話しても分からねーだろうな」と言う。
「もうっ。子供扱いしてっ」
「子供だろ」
「酷い」
「ついこの前までランドセル背負ってただろーが」
「酷いっ、お兄ちゃんっ!」
そんなやり取りはいつものこと。駿壱は理菜をまだまだ子供扱いする。それは仕方ないんだけど。
「ヨシキはな、元々、そんなに女と付き合うってことに興味はないヤツなんだよ。本気で女に惚れたこと、ねんじゃねぇかな」
駿壱はそう話してくれた。
良樹が本気で女に惚れたことないってことを初めて知った。
(じゃなんでマミさんと……)
不思議に思う理菜だったが、答えは本人にしか分からない。
「本気で惚れるような女がいないってことだな。女よりバイクがいいっていうヤツだから。でもそれって寂しいよな」
微かに笑う駿壱に、理菜はどうしたらいいのか分からず、手に持っている紅茶を飲んだ。
「なぁ。リナ」
駿壱がこっちを見て言う。
「ヨシキにだけは惚れるなよ」
「え」
「アイツにだけは惚れるな。お前が傷付くだけだから」
理菜はこの言葉に頷くことは出来なかった。
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