赤い薔薇 蒼い瞳

星河琉嘩

文字の大きさ
上 下
11 / 32
第1章

10

しおりを挟む
 次の日。理菜は学校へは行かなかった。代わりに理菜は百合と一緒に美容室へ行った。
 なぜか、百合が一緒に行くよって言って引き下がらなかった。
 自分で色を戻そうとしたのに、百合がそう言ったから。理菜は百合の行きつけの美容室へ行く事になった。



「ここの店長は“青薔薇”の2代目なんだ」
 そう言った百合。
 百合に紹介されて店長さんに挨拶した。店長さんはニッコリと営業スマイルをして、百合にはエラソーな言葉使いで話していた。

「金色に?染めるの?」
 そう聞いた店長さん。その言葉に百合が答える。
「この子、元々金色なんですよ」
「へぇ」
 そう言った店長さんは理菜の顔を覗き込む。
 そして、目を見て驚いていた。


 今日はコンタクトをしていない。理菜のブルーの目を見て驚いていた。


「シュンイチの妹かぁ。そういや、聞いたことあったな」
 この人は駿壱を知ってるらしく、そう言った。ふふっと笑った顔がとてもキレイだった。
「任せて。キレイな色にしてあげる」
 そう言っては理菜の髪を弄りだした。


 結局カラーだけではなく、カットもしてもらった。
「お金……」って言うと、店長さんが笑って「いらないよ」と言った。
 でも申し訳なくて百合の方を見ると、百合も笑って「受け取っておきな」と言った。
 だから、無理にお金を渡そうとするのはなんだか悪い気がして素直にそれを受けた。


「リナちゃんだっけ?」
 帰り際。店長さんが理菜に声をかけた。
「また来なよ。今度はユリなしで」
 そう言うと笑って見送ってくれた。



「リナ」
 百合と一緒に繁華街を歩いていた。理菜の髪に触れて安心したように笑った。
「リナはこの自分が本当の自分だと思ってるんだろ?」
 頷いた理菜にニッコリと笑って、頭に手を置く。
「あたし、あんたのその髪好きよ。キレイな髪してる。その瞳も」
 昔、亜紀にそう言われた記憶がある。それを色々あったからか、忘れていた。



     ◆◆◆◆◆



 その日。夜になるまで百合と一緒だった。ご飯も百合に奢ってもらった。途中、携帯が鳴って出ると心配してる駿壱だった。その駿壱に百合と一緒って言うと、少し安心した声を出した。
 夜になるまで、百合はいろんなところに連れて行った。

 理菜に自由をくれた。
 いろんなことを教えてくれた。


 ──髪の色ひとつでこんなにも変わるんだって思う。
 ──目の色ひとつでこんなにも変わるんだって思う。



 コンプレックスと思っていた、自分の容姿。だけど今、そのコンプレックスは完全とは言えないけど、少し解消されたように思えた。




 ──たったひとことで。




(あたしは変われるんだ)





 百合に送られて家に帰った理菜を待ち構えていたのは駿壱だった。



「やっぱりそれがリナだ」
 優しい笑顔を向けてくれた。




 自分にはもう、カラコンもいらない黒髪もいらない。
 自分は自分らしく。
 そうやって生きていけばいい。



 金色の髪とブルーの瞳は自分自身だ。
 それが自分であるから。それをやめられない。



 教師がなんて言ったって理菜はもう変えることはしない。これが自分だから……と。



     ◆◆◆◆◆



 朝。起きて制服に袖を通す。一昨日までとは気分が違う。
 鏡の前に立つ理菜は、自分の本当の姿を見てニカッと笑った。


 リビングへ降りると、やっぱりもう母親はいなかった。テーブルには今月のお小遣いと朝食が置いてある。
 理菜は朝食を食べながら、お小遣いを財布の中へと入れる。


 ──ママは知っているのだろうか。
 ──あたしが何をしようとしているのか。


 ──ママは知っているのだろうか。
 ──あたしの心の奥の決心を。



 理菜は、もう止められなかった。
 自分を止められない。


 本当の自分になる為に。
 金色の髪とブルーの瞳で生きることを決めたってこと。



 ──ママはきっと知らないだろう。





 通学カバンを持って、家を出る。
 金色の髪にブルーの瞳。
 それが理菜だ。
 そして、昨日。
 百合に頼んで開けてもらった赤いピアス。
 ピアスを開けた理由は、のようなものだった。
 負けない自分になる為に。



 学校に着くと、先生たちが大騒ぎだった。
 一昨日まで黒髪の黒い瞳の理菜が、金髪にブルーの瞳に戻っていて、しかも耳にはピアスをしている。

 他の生徒も大騒ぎ。
 レイプ事件の噂が流れている。その騒ぎが収まっていないのに、また騒ぎを起したって思ってるだろう。

 でも、それでいい。
 自分は自分なんだから、と。


「リナっ!」
 後ろから走って来たのは亜紀。理菜の姿を見て驚いた。
 そしてその後ろから浩介。浩介も理菜の姿を見て驚いていた。


「リナ……」
 亜紀は心配そうに見ている。先生に髪を染めてコンタクトを入れて来いって言われたことを話していたから。
 浩介もそれは知ってる。
 教室で、他のクラスメートがいる前でそんなことを言っていたから。


 理菜はてっきり、「バカじゃねぇの?」って言われると思っていた。
 でも、浩介の口から出た言葉は予想していたのとは違う言葉だった。



「そっちの方がリナらしいや。それにそのピアスも似合ってんじゃん」
 その言葉に理菜は思わず嬉しくなった。
「当たり前じゃん。これが本来のあたしなんだよ」
 理菜はそう言って、ふたりに笑った。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...