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第1章
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次の日。理菜は学校へは行かなかった。代わりに理菜は百合と一緒に美容室へ行った。
なぜか、百合が一緒に行くよって言って引き下がらなかった。
自分で色を戻そうとしたのに、百合がそう言ったから。理菜は百合の行きつけの美容室へ行く事になった。
「ここの店長は“青薔薇”の2代目なんだ」
そう言った百合。
百合に紹介されて店長さんに挨拶した。店長さんはニッコリと営業スマイルをして、百合にはエラソーな言葉使いで話していた。
「金色に?染めるの?」
そう聞いた店長さん。その言葉に百合が答える。
「この子、元々金色なんですよ」
「へぇ」
そう言った店長さんは理菜の顔を覗き込む。
そして、目を見て驚いていた。
今日はコンタクトをしていない。理菜のブルーの目を見て驚いていた。
「シュンイチの妹かぁ。そういや、聞いたことあったな」
この人は駿壱を知ってるらしく、そう言った。ふふっと笑った顔がとてもキレイだった。
「任せて。キレイな色にしてあげる」
そう言っては理菜の髪を弄りだした。
結局カラーだけではなく、カットもしてもらった。
「お金……」って言うと、店長さんが笑って「いらないよ」と言った。
でも申し訳なくて百合の方を見ると、百合も笑って「受け取っておきな」と言った。
だから、無理にお金を渡そうとするのはなんだか悪い気がして素直にそれを受けた。
「リナちゃんだっけ?」
帰り際。店長さんが理菜に声をかけた。
「また来なよ。今度はユリなしで」
そう言うと笑って見送ってくれた。
「リナ」
百合と一緒に繁華街を歩いていた。理菜の髪に触れて安心したように笑った。
「リナはこの自分が本当の自分だと思ってるんだろ?」
頷いた理菜にニッコリと笑って、頭に手を置く。
「あたし、あんたのその髪好きよ。キレイな髪してる。その瞳も」
昔、亜紀にそう言われた記憶がある。それを色々あったからか、忘れていた。
◆◆◆◆◆
その日。夜になるまで百合と一緒だった。ご飯も百合に奢ってもらった。途中、携帯が鳴って出ると心配してる駿壱だった。その駿壱に百合と一緒って言うと、少し安心した声を出した。
夜になるまで、百合はいろんなところに連れて行った。
理菜に自由をくれた。
いろんなことを教えてくれた。
──髪の色ひとつでこんなにも変わるんだって思う。
──目の色ひとつでこんなにも変わるんだって思う。
コンプレックスと思っていた、自分の容姿。だけど今、そのコンプレックスは完全とは言えないけど、少し解消されたように思えた。
──たったひとことで。
(あたしは変われるんだ)
百合に送られて家に帰った理菜を待ち構えていたのは駿壱だった。
「やっぱりそれがリナだ」
優しい笑顔を向けてくれた。
自分にはもう、カラコンもいらない黒髪もいらない。
自分は自分らしく。
そうやって生きていけばいい。
金色の髪とブルーの瞳は自分自身だ。
それが自分であるから。それをやめられない。
教師がなんて言ったって理菜はもう変えることはしない。これが自分だから……と。
◆◆◆◆◆
朝。起きて制服に袖を通す。一昨日までとは気分が違う。
鏡の前に立つ理菜は、自分の本当の姿を見てニカッと笑った。
リビングへ降りると、やっぱりもう母親はいなかった。テーブルには今月のお小遣いと朝食が置いてある。
理菜は朝食を食べながら、お小遣いを財布の中へと入れる。
──ママは知っているのだろうか。
──あたしが何をしようとしているのか。
──ママは知っているのだろうか。
──あたしの心の奥の決心を。
理菜は、もう止められなかった。
自分を止められない。
本当の自分になる為に。
金色の髪とブルーの瞳で生きることを決めたってこと。
──ママはきっと知らないだろう。
通学カバンを持って、家を出る。
金色の髪にブルーの瞳。
それが理菜だ。
そして、昨日。
百合に頼んで開けてもらった赤いピアス。
ピアスを開けた理由は、決意のようなものだった。
負けない自分になる為に。
学校に着くと、先生たちが大騒ぎだった。
一昨日まで黒髪の黒い瞳の理菜が、金髪にブルーの瞳に戻っていて、しかも耳にはピアスをしている。
他の生徒も大騒ぎ。
レイプ事件の噂が流れている。その騒ぎが収まっていないのに、また騒ぎを起したって思ってるだろう。
でも、それでいい。
自分は自分なんだから、と。
「リナっ!」
後ろから走って来たのは亜紀。理菜の姿を見て驚いた。
そしてその後ろから浩介。浩介も理菜の姿を見て驚いていた。
「リナ……」
亜紀は心配そうに見ている。先生に髪を染めてコンタクトを入れて来いって言われたことを話していたから。
浩介もそれは知ってる。
教室で、他のクラスメートがいる前でそんなことを言っていたから。
理菜はてっきり、「バカじゃねぇの?」って言われると思っていた。
でも、浩介の口から出た言葉は予想していたのとは違う言葉だった。
「そっちの方がリナらしいや。それにそのピアスも似合ってんじゃん」
その言葉に理菜は思わず嬉しくなった。
「当たり前じゃん。これが本来のあたしなんだよ」
理菜はそう言って、ふたりに笑った。
なぜか、百合が一緒に行くよって言って引き下がらなかった。
自分で色を戻そうとしたのに、百合がそう言ったから。理菜は百合の行きつけの美容室へ行く事になった。
「ここの店長は“青薔薇”の2代目なんだ」
そう言った百合。
百合に紹介されて店長さんに挨拶した。店長さんはニッコリと営業スマイルをして、百合にはエラソーな言葉使いで話していた。
「金色に?染めるの?」
そう聞いた店長さん。その言葉に百合が答える。
「この子、元々金色なんですよ」
「へぇ」
そう言った店長さんは理菜の顔を覗き込む。
そして、目を見て驚いていた。
今日はコンタクトをしていない。理菜のブルーの目を見て驚いていた。
「シュンイチの妹かぁ。そういや、聞いたことあったな」
この人は駿壱を知ってるらしく、そう言った。ふふっと笑った顔がとてもキレイだった。
「任せて。キレイな色にしてあげる」
そう言っては理菜の髪を弄りだした。
結局カラーだけではなく、カットもしてもらった。
「お金……」って言うと、店長さんが笑って「いらないよ」と言った。
でも申し訳なくて百合の方を見ると、百合も笑って「受け取っておきな」と言った。
だから、無理にお金を渡そうとするのはなんだか悪い気がして素直にそれを受けた。
「リナちゃんだっけ?」
帰り際。店長さんが理菜に声をかけた。
「また来なよ。今度はユリなしで」
そう言うと笑って見送ってくれた。
「リナ」
百合と一緒に繁華街を歩いていた。理菜の髪に触れて安心したように笑った。
「リナはこの自分が本当の自分だと思ってるんだろ?」
頷いた理菜にニッコリと笑って、頭に手を置く。
「あたし、あんたのその髪好きよ。キレイな髪してる。その瞳も」
昔、亜紀にそう言われた記憶がある。それを色々あったからか、忘れていた。
◆◆◆◆◆
その日。夜になるまで百合と一緒だった。ご飯も百合に奢ってもらった。途中、携帯が鳴って出ると心配してる駿壱だった。その駿壱に百合と一緒って言うと、少し安心した声を出した。
夜になるまで、百合はいろんなところに連れて行った。
理菜に自由をくれた。
いろんなことを教えてくれた。
──髪の色ひとつでこんなにも変わるんだって思う。
──目の色ひとつでこんなにも変わるんだって思う。
コンプレックスと思っていた、自分の容姿。だけど今、そのコンプレックスは完全とは言えないけど、少し解消されたように思えた。
──たったひとことで。
(あたしは変われるんだ)
百合に送られて家に帰った理菜を待ち構えていたのは駿壱だった。
「やっぱりそれがリナだ」
優しい笑顔を向けてくれた。
自分にはもう、カラコンもいらない黒髪もいらない。
自分は自分らしく。
そうやって生きていけばいい。
金色の髪とブルーの瞳は自分自身だ。
それが自分であるから。それをやめられない。
教師がなんて言ったって理菜はもう変えることはしない。これが自分だから……と。
◆◆◆◆◆
朝。起きて制服に袖を通す。一昨日までとは気分が違う。
鏡の前に立つ理菜は、自分の本当の姿を見てニカッと笑った。
リビングへ降りると、やっぱりもう母親はいなかった。テーブルには今月のお小遣いと朝食が置いてある。
理菜は朝食を食べながら、お小遣いを財布の中へと入れる。
──ママは知っているのだろうか。
──あたしが何をしようとしているのか。
──ママは知っているのだろうか。
──あたしの心の奥の決心を。
理菜は、もう止められなかった。
自分を止められない。
本当の自分になる為に。
金色の髪とブルーの瞳で生きることを決めたってこと。
──ママはきっと知らないだろう。
通学カバンを持って、家を出る。
金色の髪にブルーの瞳。
それが理菜だ。
そして、昨日。
百合に頼んで開けてもらった赤いピアス。
ピアスを開けた理由は、決意のようなものだった。
負けない自分になる為に。
学校に着くと、先生たちが大騒ぎだった。
一昨日まで黒髪の黒い瞳の理菜が、金髪にブルーの瞳に戻っていて、しかも耳にはピアスをしている。
他の生徒も大騒ぎ。
レイプ事件の噂が流れている。その騒ぎが収まっていないのに、また騒ぎを起したって思ってるだろう。
でも、それでいい。
自分は自分なんだから、と。
「リナっ!」
後ろから走って来たのは亜紀。理菜の姿を見て驚いた。
そしてその後ろから浩介。浩介も理菜の姿を見て驚いていた。
「リナ……」
亜紀は心配そうに見ている。先生に髪を染めてコンタクトを入れて来いって言われたことを話していたから。
浩介もそれは知ってる。
教室で、他のクラスメートがいる前でそんなことを言っていたから。
理菜はてっきり、「バカじゃねぇの?」って言われると思っていた。
でも、浩介の口から出た言葉は予想していたのとは違う言葉だった。
「そっちの方がリナらしいや。それにそのピアスも似合ってんじゃん」
その言葉に理菜は思わず嬉しくなった。
「当たり前じゃん。これが本来のあたしなんだよ」
理菜はそう言って、ふたりに笑った。
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