赤い薔薇 蒼い瞳

星河琉嘩

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第1章

7

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 学校の掲示板に何枚も貼り紙がしてあった。その紙は掲示板いっぱいに貼られていた。そして掲示板の前にはたくさんの生徒が集まっていた。


 不思議に思いながら理菜はその横を通り過ぎる。理菜は視線を感じる。掲示板の周りにいる生徒たちは理菜をじっと見てヒソヒソと話をしていたのだ。


(なんだろう……?)


 不思議に思っていたが、理菜は気にしないで昇降口へ向かった。自分の下駄箱を開けるとそこからはたくさんの手紙のようなものが現れた。
 その内容は信じられないものだった。




「ヤレる女」




 そう書かれた紙は、下駄箱だけじゃなく、教室の机、廊下の掲示板。他にもいろんな場所で見られた。


 教室に入るとクラスメートたちの痛い視線が理菜に向けられていた。それに耐えることが出来ずに理菜は教室を飛び出した。
 廊下に出てもこっちを見てくる生徒たち。




 ──痛い。痛い。痛い。






 どうしてこうなったのか。理菜には分からない。
 なんでこうなったのか。理菜には分からない。
 どこから入ったのか。理菜には分からない。



 なんでそのことを、知ってるのか。
 それがどうして「ヤレる女」になったのか。





 分からない。
 分からない。
 分からない。




 屋上に上がり、ひとり泣いていた。悔しくて悔しくて。どうしようもないくらい、悔しくて。



 ♪~♪~♪~!!



 スマホが音を出して鳴った。学校には持って行ってはいけないのだが、隠れてみんな持って行ってる。そのスマホを制服のポケットから取り出した。
 画面に出ている名前。「亜紀」の文字。理菜は躊躇しながら指で画面をスライドした。


『リナっ!どこにいるの!?』
 スマホに出るとそう叫ぶ声が聞こえた。とても困惑した声で叫んでいた。
「……アキ……」
 涙ながらに言う理菜に亜紀はまた怒鳴った。
『どこにいるのっ!』
「……屋上」
『分かった』
 亜紀はそう言うと電話を切った。
 きっと、屋上に来る。亜紀はそういう子だ。



     ◆◆◆◆◆




 屋上の隅で泣いている理菜に人影が近付く。その人影の正体を理菜は知っている。


「リナ」
 そう言うと、隣に座り理菜の頭に手を置いた。
 膝を抱えて泣いている理菜。いつもこうして亜紀は理菜のもとに駆けつけてくれる。それは出会った頃から変わらない。


「ねぇ。何があったの?」
 亜紀は聞いてきた。学校中に貼られたあの紙のことを言ってる。




「ヤレる女 秋月理菜」
「レイプされた女 秋月理菜」
「レイプして欲しい女 秋月理菜」



 そんな言われもない言葉が書き連ねられてる。その紙が学校中に貼られて理菜の居場所がなくなっていた。
「コウも心配していた。教室から飛び出したってって言って、うちの教室に来たの」
 浩介がなんで心配するのか、理菜には分からなかった。
「コウ、昔からあんたが気になるのよ」
「……?なんで?」
「まったく。気付いてないのね」
 呆れ声を出す亜紀。そんな亜紀は理菜を見て言った。
「教えて。何があったか」
 その言葉に理菜は頷いた。



 キーンコーンカーコン……。
 予鈴が鳴ってる。でも理菜と亜紀は屋上から出て行こうとはしない。屋上でずっと膝を抱えて話をしていた。



 レイプされた日のこと。
 良樹が助けてくれたこと。
 兄のこと。
 百合のこと。
 黒龍のこと。
 青薔薇のこと。



 ここ数日にあったことを話していた。それを黙って聞いていてくれた。そして亜紀はため息を吐いて言った。


「シュンイチさん、黒龍の副総長だったんだ……」
 亜紀は呟くようにそう言った。


「それにしても……」
 ため息を吐いて理菜を見る。
「なんでもっと早く言ってくれなかったの」
 亜紀は怒ってるみたいだった。今まで何でも話してきてこれからもそうだと思ってる存在。
 だけど、今回のことは知られたくなかった。
 それを分かってて言う亜紀は、それ程に理菜を心配している。


「リナ。なんでも話してよ。親友なんだから」
 そう言う亜紀に頷くことしか出来なかった。
 こんなに大切な存在は他にいない。理菜にとって亜紀はそんな存在だった。
 だけど理菜の運命は大きく変わろうとしていた。
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