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「なかなか凄い家だな」
菜々美の実家に着いたふたり。翔はその家を見上げてそう呟いた。
菜々美の実家はそれなりの大きさ。翔の実家はマンションだから、こんな大きさの家に住んでいたことに驚いていた。
「養父と暮らすまではアパートに住んでいたの」
母親とふたりだった頃は6畳二間のアパートに住んでいた。その頃を懐かしいとでも言うように思いを飛ばしていた。
菜々美の真っ赤のスポーツカー。それを家の前に停めて門を開ける。
持っていた合鍵を使って玄関のドアを開ける。そこには母親がいた。
「菜々美。どうしたの?」
母親は驚き、目を丸くしていた。そして翔に気付くと頭を下げる。
「あ……。中山くん。高校の同級生」
「いらっしゃい。どうぞ」
母親はそう言って翔を中へ招き入れた。
リビングに入ると父親がソファーに座っていた。菜々美と翔に気付くと顔色が変わる。
「菜々美。まだそんな男と付き合っているのか」
低い声で威圧してくる。その威圧感に負けそうになる。だけど、今日は負けるわけにはいかなかった。
「お……養父さんに……、言いたいことがある……の」
絞り出した声はか弱い。それでも菜々美はやめなかった。
「もう……、私のことを……、解放して……」
その言葉に養父は怒りを露にした。立ち上がり、菜々美の頬をバチーンっ!と叩いた。叩かれた拍子に後ろにすっ飛んで、棚にぶつかり棚に置かれていた置時計などがガラガラと落ちた。
「菜々美っ」
菜々美に駆け寄った翔はキッと養父を睨んだ。そして母親の方にも目線を移す。
「あなたは娘がこんな仕打ちを受けていても黙っているんですね」
「え……」
「問題はお養父さんだけでないようですね。お母さんの方にも問題があるようだ」
菜々美の肩をしっかりと抱き、立ち上がらせる。
「今日ここに来たのは、あなたたちから菜々美を解放してもらう為です。その話をしに来ました。だけど話は出来ないようなので、おれは菜々美を連れて帰ります。そのまま菜々美と一緒に暮らします。あのマンションを離れて」
真っ直ぐ菜々美の両親を見る翔。その翔に養父は怒り狂って翔の胸ぐらを掴み殴った。
「あなたはそうやって、力で菜々美と菜々美のお母さんを支配してきたのではないのですか」
「黙れ」
「あなたがしてきたことは立派なDVです」
「オレは家族を養ってきた!菜々美が行きたいという高校にも行かせた!菜々美がやりたいという小説家という馬鹿げた仕事もやらせてる!それのどこがDVなんだ!」
「その思考がDVですよ。おばさん。あなたも気付いてるんじゃないですか。これが菜々美を苦しめてること。おれはおばさんも離れることをお勧めしますけどね」
そう言って菜々美を見た。菜々美は目に涙を溜めていた。
「行こうか」
「ん……」
菜々美は翔と一緒にリビングを出ていこうとした。その後ろから養父は言葉にならない声で何か叫んでいた。それを菜々美の母親は抑えていた。
「菜々美。行きなさい。あなたはここには戻らないで。中山くんと幸せになりなさい。あなたの人生を生きなさい」
「お前っ!」
「菜々美の人生はあなたのものじゃないの!」
リビングから 養父を出さないように、必死で止めていた。その姿を見て翔は菜々美の手を取り家を飛び出した。
玄関を出た所で、弟の賢がいた。一年ぶりに会う賢は生意気に拍車がかかっていた。
「あんた、来てたの」
そう言う賢の口調は、小学生でない。あの養父のコピーのようだった。
翔を見ると「ふーん」と呟く。
「あんたにしちゃ上出来な男だね。ブスの癖に」
賢は菜々美によくブスと言う。姉さんとも呼ばない。いつもあんただった。
「賢」
「そうだ。お金。ちょうだい」
ため息を吐くと財布を取り出した。そこから5万抜き取った。
「もうこれが最後。私はここには戻らないから」
「え?」
「あのマンション、引き払うの。ここには戻らない」
「……」
賢は黙ったままだった。
「お母さんを守ってあげてね」
そう言って車のドアを開けた。だが菜々美に変わって運転席に座ったのは翔だった。
「翔」
「おれが運転する」
「ん」
助手席に回った菜々美は賢をもう一度見た。
「お母さんを困らせないでね」
菜々美の一番の気がかりは母親とこの弟だった。菜々美には酷い態度をする賢だが、母親には甘えるところがある。父親といるから菜々美にキツイことを言ったりする。それは菜々美も分かっていた。だけど菜々美にはどうすることも出来なかったのだ。
翔は車のエンジンをかけ、菜々美の家から離れていく。賢がその車を黙って見送っていた。
車内では菜々美は堪えていたものが溢れ出していた。涙が止まらず静かに泣いていた。
翔はそれに気付かないふりをして運転を続けた。
菜々美の実家に着いたふたり。翔はその家を見上げてそう呟いた。
菜々美の実家はそれなりの大きさ。翔の実家はマンションだから、こんな大きさの家に住んでいたことに驚いていた。
「養父と暮らすまではアパートに住んでいたの」
母親とふたりだった頃は6畳二間のアパートに住んでいた。その頃を懐かしいとでも言うように思いを飛ばしていた。
菜々美の真っ赤のスポーツカー。それを家の前に停めて門を開ける。
持っていた合鍵を使って玄関のドアを開ける。そこには母親がいた。
「菜々美。どうしたの?」
母親は驚き、目を丸くしていた。そして翔に気付くと頭を下げる。
「あ……。中山くん。高校の同級生」
「いらっしゃい。どうぞ」
母親はそう言って翔を中へ招き入れた。
リビングに入ると父親がソファーに座っていた。菜々美と翔に気付くと顔色が変わる。
「菜々美。まだそんな男と付き合っているのか」
低い声で威圧してくる。その威圧感に負けそうになる。だけど、今日は負けるわけにはいかなかった。
「お……養父さんに……、言いたいことがある……の」
絞り出した声はか弱い。それでも菜々美はやめなかった。
「もう……、私のことを……、解放して……」
その言葉に養父は怒りを露にした。立ち上がり、菜々美の頬をバチーンっ!と叩いた。叩かれた拍子に後ろにすっ飛んで、棚にぶつかり棚に置かれていた置時計などがガラガラと落ちた。
「菜々美っ」
菜々美に駆け寄った翔はキッと養父を睨んだ。そして母親の方にも目線を移す。
「あなたは娘がこんな仕打ちを受けていても黙っているんですね」
「え……」
「問題はお養父さんだけでないようですね。お母さんの方にも問題があるようだ」
菜々美の肩をしっかりと抱き、立ち上がらせる。
「今日ここに来たのは、あなたたちから菜々美を解放してもらう為です。その話をしに来ました。だけど話は出来ないようなので、おれは菜々美を連れて帰ります。そのまま菜々美と一緒に暮らします。あのマンションを離れて」
真っ直ぐ菜々美の両親を見る翔。その翔に養父は怒り狂って翔の胸ぐらを掴み殴った。
「あなたはそうやって、力で菜々美と菜々美のお母さんを支配してきたのではないのですか」
「黙れ」
「あなたがしてきたことは立派なDVです」
「オレは家族を養ってきた!菜々美が行きたいという高校にも行かせた!菜々美がやりたいという小説家という馬鹿げた仕事もやらせてる!それのどこがDVなんだ!」
「その思考がDVですよ。おばさん。あなたも気付いてるんじゃないですか。これが菜々美を苦しめてること。おれはおばさんも離れることをお勧めしますけどね」
そう言って菜々美を見た。菜々美は目に涙を溜めていた。
「行こうか」
「ん……」
菜々美は翔と一緒にリビングを出ていこうとした。その後ろから養父は言葉にならない声で何か叫んでいた。それを菜々美の母親は抑えていた。
「菜々美。行きなさい。あなたはここには戻らないで。中山くんと幸せになりなさい。あなたの人生を生きなさい」
「お前っ!」
「菜々美の人生はあなたのものじゃないの!」
リビングから 養父を出さないように、必死で止めていた。その姿を見て翔は菜々美の手を取り家を飛び出した。
玄関を出た所で、弟の賢がいた。一年ぶりに会う賢は生意気に拍車がかかっていた。
「あんた、来てたの」
そう言う賢の口調は、小学生でない。あの養父のコピーのようだった。
翔を見ると「ふーん」と呟く。
「あんたにしちゃ上出来な男だね。ブスの癖に」
賢は菜々美によくブスと言う。姉さんとも呼ばない。いつもあんただった。
「賢」
「そうだ。お金。ちょうだい」
ため息を吐くと財布を取り出した。そこから5万抜き取った。
「もうこれが最後。私はここには戻らないから」
「え?」
「あのマンション、引き払うの。ここには戻らない」
「……」
賢は黙ったままだった。
「お母さんを守ってあげてね」
そう言って車のドアを開けた。だが菜々美に変わって運転席に座ったのは翔だった。
「翔」
「おれが運転する」
「ん」
助手席に回った菜々美は賢をもう一度見た。
「お母さんを困らせないでね」
菜々美の一番の気がかりは母親とこの弟だった。菜々美には酷い態度をする賢だが、母親には甘えるところがある。父親といるから菜々美にキツイことを言ったりする。それは菜々美も分かっていた。だけど菜々美にはどうすることも出来なかったのだ。
翔は車のエンジンをかけ、菜々美の家から離れていく。賢がその車を黙って見送っていた。
車内では菜々美は堪えていたものが溢れ出していた。涙が止まらず静かに泣いていた。
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