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翔との生活が始まった。それに対して菜々美は不思議な感覚を覚えた。
朝起きると隣には翔がいる。その翔が菜々美の代わりに朝ごはんを用意してくれる。朝食をとって身支度を終えると、翔は会社へと向かう。その翔を見送る菜々美は、こんな時間があるとは思わなかった。
「じゃ行ってくる」
鞄を持って玄関に向かう翔に手を振る。
「行ってらっしゃい」
そう誰かに言う時が来るとは思わなかった。
翔が出かけてから、菜々美は食器を片付け、洗濯機を回し軽く掃除をする。ただ掃除機をかけるだけなのだが、それすら菜々美には結構大変なことだ。
だけど、今までみたいにはいかないと掃除機をかける。いくら翔がやってくれると言ってるとはいえ、甘えっぱなしでは申し訳ない。
掃除が終わると洗い終わった洗濯物を干す。
当たり前のことが、菜々美にとっては当たり前ではなく、とても新鮮な出来事だった。
「なんだか……、不思議だわ」
洗濯物を干し終わった菜々美は、今の自分を振り返り呟いた。
いつもひとりのこのマンションに、翔の荷物がある。そしてここに翔は帰ってくる。
それが不思議でならなかった。
「仕事しよ……」
一通りのことを終えた菜々美は、仕事部屋へと向かった。
◇◇◇◇◇
仕事をしていると、スマホが鳴り出した。山之内かなと思って画面を見ると、【母】と出ていた。
「はぁ……」
ため息を吐くとその電話に出る。
「なに?」
素っ気なく電話に出た菜々美に、母親は『付き合ってる人いるんだって?』と言った。
だいぶ前に賢から聞いてるのかと思った。それに養父も知ってる。話を聞いてないわけがない。
「聞いてたんじゃないの?」
『聞いてたわよ。でもあなた……』
「お母さんも反対なわけ?私、もう24なんだけど!」
母親も反対なのかと声を荒げた。この母親は、養父に子連れで結婚してもらったからなのか、負い目を感じている。だから養父には逆らえないのだ。
『お父さんが反対してるなら……』
「誰が相手だろうと反対するでしょ、あの人は!」
『菜々美……』
「仕事だって反対してる。私の持ち物も私の着るものも、全て反対してきた!車を運転することも反対してるでしょ。あの車は当て付けのようなものよ!」
菜々美の真っ赤な車。あの車を見ると嫌な顔をされる。
「何をしたってあの人は私が嫌いなのよ」
『そんなこと……』
「あるでしょ。私がパパの子だから」
なんでそこまで嫌うのか、菜々美には分からない。だけど、ことごとく菜々美を見る度に言われてきた。
──やっぱりあの男の子だ──
その言葉が引っ掛かっている。養父は菜々美の実父を知ってる。そう感じていた。
「あの人はパパのことを知ってるの?」
ずっと抑えていたことを聞いていた。電話の向こうで母親は黙り込んだ。
暫く黙り込んだ母親は、ポツリといった。
『会って話すわ』
電話を切った菜々美は、自分から聞いておいて怖いと感じていた。
何かあるのではと。それでも理由が知りたかった。養父がなぜそこまで菜々美に対して厳しいのか。菜々美のすることに反対するのか。
(聞くのが怖い……)
それでも聞かなきゃいけない気がした。
朝起きると隣には翔がいる。その翔が菜々美の代わりに朝ごはんを用意してくれる。朝食をとって身支度を終えると、翔は会社へと向かう。その翔を見送る菜々美は、こんな時間があるとは思わなかった。
「じゃ行ってくる」
鞄を持って玄関に向かう翔に手を振る。
「行ってらっしゃい」
そう誰かに言う時が来るとは思わなかった。
翔が出かけてから、菜々美は食器を片付け、洗濯機を回し軽く掃除をする。ただ掃除機をかけるだけなのだが、それすら菜々美には結構大変なことだ。
だけど、今までみたいにはいかないと掃除機をかける。いくら翔がやってくれると言ってるとはいえ、甘えっぱなしでは申し訳ない。
掃除が終わると洗い終わった洗濯物を干す。
当たり前のことが、菜々美にとっては当たり前ではなく、とても新鮮な出来事だった。
「なんだか……、不思議だわ」
洗濯物を干し終わった菜々美は、今の自分を振り返り呟いた。
いつもひとりのこのマンションに、翔の荷物がある。そしてここに翔は帰ってくる。
それが不思議でならなかった。
「仕事しよ……」
一通りのことを終えた菜々美は、仕事部屋へと向かった。
◇◇◇◇◇
仕事をしていると、スマホが鳴り出した。山之内かなと思って画面を見ると、【母】と出ていた。
「はぁ……」
ため息を吐くとその電話に出る。
「なに?」
素っ気なく電話に出た菜々美に、母親は『付き合ってる人いるんだって?』と言った。
だいぶ前に賢から聞いてるのかと思った。それに養父も知ってる。話を聞いてないわけがない。
「聞いてたんじゃないの?」
『聞いてたわよ。でもあなた……』
「お母さんも反対なわけ?私、もう24なんだけど!」
母親も反対なのかと声を荒げた。この母親は、養父に子連れで結婚してもらったからなのか、負い目を感じている。だから養父には逆らえないのだ。
『お父さんが反対してるなら……』
「誰が相手だろうと反対するでしょ、あの人は!」
『菜々美……』
「仕事だって反対してる。私の持ち物も私の着るものも、全て反対してきた!車を運転することも反対してるでしょ。あの車は当て付けのようなものよ!」
菜々美の真っ赤な車。あの車を見ると嫌な顔をされる。
「何をしたってあの人は私が嫌いなのよ」
『そんなこと……』
「あるでしょ。私がパパの子だから」
なんでそこまで嫌うのか、菜々美には分からない。だけど、ことごとく菜々美を見る度に言われてきた。
──やっぱりあの男の子だ──
その言葉が引っ掛かっている。養父は菜々美の実父を知ってる。そう感じていた。
「あの人はパパのことを知ってるの?」
ずっと抑えていたことを聞いていた。電話の向こうで母親は黙り込んだ。
暫く黙り込んだ母親は、ポツリといった。
『会って話すわ』
電話を切った菜々美は、自分から聞いておいて怖いと感じていた。
何かあるのではと。それでも理由が知りたかった。養父がなぜそこまで菜々美に対して厳しいのか。菜々美のすることに反対するのか。
(聞くのが怖い……)
それでも聞かなきゃいけない気がした。
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