34 / 50
34
しおりを挟む
「一緒に?」
目の前のかよは、驚いて目を丸くした。
「まさかそんなことを言うとは思わなくて……」
菜々美が思い悩んでいることは分かっている。誰かと一緒に暮らすことに抵抗あるのは、実家の問題があるから。
母親とふたりで暮らしていた時はまだ良かった。だがそこに養父が入り、そのうち種違いの弟が出来た。その養父には行動を制限され、弟には姉とは認められず、母親はそんなふたりの顔色を伺い、菜々美に助けを求めている。
高校を卒業してすぐに一人暮らしを始めた菜々美は、奨学金使って大学へ通った。だが、小説家として名前が売れ忙しくなった菜々美は、休みがちになった。
小説家として忙しくなってからは、弟には金を要求されることが多くなった。お小遣いをあげれば「これだけ?」と文句。養父からは「余計な金は持たせるな」と叱咤される。
そんな養父と弟との関係を見て、母親は「ごめんね、ごめんね」と泣くばかり。
「あの家を……、思い出すから……」
人と暮らすことに抵抗があるのは、そのことがあるから。
「菜々美」
持ったコーヒーカップをテーブルに置くと、菜々美をじっと見た。
「中山くんとは上手くいってるんでしょ?」
「うん……」
「一緒にいて苦痛に感じる?」
首を横に振る。翔といて落ち着くことはあっても苦痛には感じない。
「なら、大丈夫じゃない?」
「でも……」
「私だっていつまでもマンションに来れるとは限らないよ」
かよに彼氏が出来て、その相手と結婚でもしたら、ここにかよは来る頻度は減る。今も菜々美と翔のことを気遣って週末は来ることを控えている。
「中山くんが家事をやってくれるんでしょ?菜々美にとったらいい話だと思うよ」
そうなのだ。家事をすることが苦手な菜々美からしたら、出来る相手がいることはとてもありがたい。
「だけど……」
「もう、さっきからそればっか」
呆れてため息を吐く。それでもかよは菜々美の気持ちを理解はしている。
「大人になってからの初恋だからねぇ……」
かよはポツリと呟く。
「え?」
「大人初恋って感じ」
かよは菜々美を見て優しい笑みを浮かべた。
「何をするにも、どうしたらいいのか分からないんじゃないの?不安だしさ」
かよが言うことは当たってる。全てが初めてのことで、どうしたらいいのか分からなかった。
誰かと付き合うことも初めて。手を繋いだのも初めて。キスもセックスも翔が初めて。翔が他の女の人といるだけで嫉妬することも初めてのことで、自分で感情をコントロール出来なかった。
(こんなに拗れた感情を持つなんて……)
家族とのことも拗れてる。だからこそ、他人と関わることが怖い。
「かよ……」
「きっと、大丈夫。中山くんなら大丈夫」
かよは菜々美にそう言った。
目の前のかよは、驚いて目を丸くした。
「まさかそんなことを言うとは思わなくて……」
菜々美が思い悩んでいることは分かっている。誰かと一緒に暮らすことに抵抗あるのは、実家の問題があるから。
母親とふたりで暮らしていた時はまだ良かった。だがそこに養父が入り、そのうち種違いの弟が出来た。その養父には行動を制限され、弟には姉とは認められず、母親はそんなふたりの顔色を伺い、菜々美に助けを求めている。
高校を卒業してすぐに一人暮らしを始めた菜々美は、奨学金使って大学へ通った。だが、小説家として名前が売れ忙しくなった菜々美は、休みがちになった。
小説家として忙しくなってからは、弟には金を要求されることが多くなった。お小遣いをあげれば「これだけ?」と文句。養父からは「余計な金は持たせるな」と叱咤される。
そんな養父と弟との関係を見て、母親は「ごめんね、ごめんね」と泣くばかり。
「あの家を……、思い出すから……」
人と暮らすことに抵抗があるのは、そのことがあるから。
「菜々美」
持ったコーヒーカップをテーブルに置くと、菜々美をじっと見た。
「中山くんとは上手くいってるんでしょ?」
「うん……」
「一緒にいて苦痛に感じる?」
首を横に振る。翔といて落ち着くことはあっても苦痛には感じない。
「なら、大丈夫じゃない?」
「でも……」
「私だっていつまでもマンションに来れるとは限らないよ」
かよに彼氏が出来て、その相手と結婚でもしたら、ここにかよは来る頻度は減る。今も菜々美と翔のことを気遣って週末は来ることを控えている。
「中山くんが家事をやってくれるんでしょ?菜々美にとったらいい話だと思うよ」
そうなのだ。家事をすることが苦手な菜々美からしたら、出来る相手がいることはとてもありがたい。
「だけど……」
「もう、さっきからそればっか」
呆れてため息を吐く。それでもかよは菜々美の気持ちを理解はしている。
「大人になってからの初恋だからねぇ……」
かよはポツリと呟く。
「え?」
「大人初恋って感じ」
かよは菜々美を見て優しい笑みを浮かべた。
「何をするにも、どうしたらいいのか分からないんじゃないの?不安だしさ」
かよが言うことは当たってる。全てが初めてのことで、どうしたらいいのか分からなかった。
誰かと付き合うことも初めて。手を繋いだのも初めて。キスもセックスも翔が初めて。翔が他の女の人といるだけで嫉妬することも初めてのことで、自分で感情をコントロール出来なかった。
(こんなに拗れた感情を持つなんて……)
家族とのことも拗れてる。だからこそ、他人と関わることが怖い。
「かよ……」
「きっと、大丈夫。中山くんなら大丈夫」
かよは菜々美にそう言った。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
永遠の隣で ~皇帝と妃の物語~
ゆる
恋愛
「15歳差の婚約者、魔女と揶揄される妃、そして帝国を支える皇帝の物語」
アルセリオス皇帝とその婚約者レフィリア――彼らの出会いは、運命のいたずらだった。
生まれたばかりの皇太子アルと婚約を強いられた公爵令嬢レフィリア。幼い彼の乳母として、時には母として、彼女は彼を支え続ける。しかし、魔法の力で若さを保つレフィリアは、宮廷内外で「魔女」と噂され、婚約破棄の陰謀に巻き込まれる。
それでもアルは成長し、15歳の若き皇帝として即位。彼は堂々と宣言する。
「魔女だろうと何だろうと、彼女は俺の妃だ!」
皇帝として、夫として、アルはレフィリアを守り抜き、共に帝国の未来を築いていく。
子どもたちの誕生、新たな改革、そして帝国の安定と繁栄――二人が歩む道のりは困難に満ちているが、その先には揺るぎない絆と希望があった。
恋愛・政治・陰謀が交錯する、壮大な愛と絆の物語!
運命に翻弄されながらも未来を切り開く二人の姿に、きっと胸を打たれるはずです。
---
その溺愛も仕事のうちでしょ?〜拾ったワケありお兄さんをヒモとして飼うことにしました〜
濘-NEI-
恋愛
梅原奏多、30歳。
男みたいな名前と見た目と声。何もかもがコンプレックスの平凡女子。のはず。
2ヶ月前に2年半付き合った彼氏と別れて、恋愛はちょっとクールダウンしたいところ。
なのに、土砂降りの帰り道でゴミ捨て場に捨てられたお兄さんを発見してしまって、家に連れて帰ると決めてしまったから、この後一体どうしましょう!?
※この作品はエブリスタさんにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる