33 / 50
33
しおりを挟む
菜々美にも嫉妬心があるんだと知った日から、翔は菜々美に必要以上に触れることが多くなった。
そんな翔の行動が、嬉しいような恥ずかしいようなそんな思いを抱える。
「菜々美」
キッチンに立つ菜々美を、後ろから抱きしめる。
「ちょ……っ」
びっくりして持っていた卵を落としそうになる。
「もう……っ、翔!」
「なに作るの?」
「か、簡単なものしか作れないよ!」
菜々美は翔をキッチンから追い出す。普段、料理はしない菜々美。食事はいつも適当に済ましてしまう。
だが、翔がいるとそうもいかない。
(とりあえず、目玉焼きくらいなら出来るかな)
冷蔵庫を見ても作れる材料は入っていない。
「目玉焼きくらいしか作れないや」
苦笑いする菜々美に「いいよ」と答える。
「私、本当に料理しないんだよね」
フライパンを出しながら言う菜々美の隣で、コーヒーカップにインスタントの珈琲を入れる翔は、菜々美の話を聞いていた。
「食べることに執着しないから、余計に作りたいって思わないのかも」
「じゃ今度一緒に作ろうか」
菜々美は翔の顔を見た。
「こう見えて料理はわりと好き」
にっこり笑う翔は、菜々美からフライパンを奪った。
「俺が焼くから」
「でも……」
「いいからいいから」
座ってなよと菜々美をキッチンから追い出す。仕方なく菜々美はダイニングテーブルに珈琲が入ったカップを置いた。
椅子に座り、キッチンの方を見る。翔は慣れた手つきで卵を割っていた。
「はい」
テーブルの上に置かれた目玉焼きは、崩れることなくキレイに焼かれていた。
「私だったらこうもいかないわ」
情けないけど、菜々美が焼いたら黄身が崩れていただろう。
「たかが目玉焼きだよ」
「その目玉焼きが無理なのよ」
情けない顔で翔に笑う。
「意外だな」
翔はそう言いながら菜々美の前の椅子に座った。
ふたりで簡単な朝食を済ませて、ふたりで片付けをした後、ソファーに座りテレビを見ていた。
「なぁ」
菜々美を抱き寄せる。
「ん」
「一緒に住まない?」
「え……」
顔を上げて翔を見る。
(今……、なにを……?)
何を言われたのか理解出来なかった。その為、菜々美は翔の顔をじっと見ていた。
「金曜日になると、こうしてずっと一緒にいるだろ?」
翔の話を黙って聞く。
「だったらもう、一緒に住んでしまった方がいいな……と」
菜々美の顔色を伺う。頭の中で言われた言葉が何度も何度も流れる。
「でも……」
「もちろん、生活費はちゃんと払うよ。それに、家のこともやるから」
「家のこと……?」
「うん。掃除も料理も俺がする」
「でも……」
誰かと住むということに抵抗がある。どんなに仲のいい親友でも、どんなに大好きな人でも……。
だからこそ、菜々美は返事が出来なかった。
そんな翔の行動が、嬉しいような恥ずかしいようなそんな思いを抱える。
「菜々美」
キッチンに立つ菜々美を、後ろから抱きしめる。
「ちょ……っ」
びっくりして持っていた卵を落としそうになる。
「もう……っ、翔!」
「なに作るの?」
「か、簡単なものしか作れないよ!」
菜々美は翔をキッチンから追い出す。普段、料理はしない菜々美。食事はいつも適当に済ましてしまう。
だが、翔がいるとそうもいかない。
(とりあえず、目玉焼きくらいなら出来るかな)
冷蔵庫を見ても作れる材料は入っていない。
「目玉焼きくらいしか作れないや」
苦笑いする菜々美に「いいよ」と答える。
「私、本当に料理しないんだよね」
フライパンを出しながら言う菜々美の隣で、コーヒーカップにインスタントの珈琲を入れる翔は、菜々美の話を聞いていた。
「食べることに執着しないから、余計に作りたいって思わないのかも」
「じゃ今度一緒に作ろうか」
菜々美は翔の顔を見た。
「こう見えて料理はわりと好き」
にっこり笑う翔は、菜々美からフライパンを奪った。
「俺が焼くから」
「でも……」
「いいからいいから」
座ってなよと菜々美をキッチンから追い出す。仕方なく菜々美はダイニングテーブルに珈琲が入ったカップを置いた。
椅子に座り、キッチンの方を見る。翔は慣れた手つきで卵を割っていた。
「はい」
テーブルの上に置かれた目玉焼きは、崩れることなくキレイに焼かれていた。
「私だったらこうもいかないわ」
情けないけど、菜々美が焼いたら黄身が崩れていただろう。
「たかが目玉焼きだよ」
「その目玉焼きが無理なのよ」
情けない顔で翔に笑う。
「意外だな」
翔はそう言いながら菜々美の前の椅子に座った。
ふたりで簡単な朝食を済ませて、ふたりで片付けをした後、ソファーに座りテレビを見ていた。
「なぁ」
菜々美を抱き寄せる。
「ん」
「一緒に住まない?」
「え……」
顔を上げて翔を見る。
(今……、なにを……?)
何を言われたのか理解出来なかった。その為、菜々美は翔の顔をじっと見ていた。
「金曜日になると、こうしてずっと一緒にいるだろ?」
翔の話を黙って聞く。
「だったらもう、一緒に住んでしまった方がいいな……と」
菜々美の顔色を伺う。頭の中で言われた言葉が何度も何度も流れる。
「でも……」
「もちろん、生活費はちゃんと払うよ。それに、家のこともやるから」
「家のこと……?」
「うん。掃除も料理も俺がする」
「でも……」
誰かと住むということに抵抗がある。どんなに仲のいい親友でも、どんなに大好きな人でも……。
だからこそ、菜々美は返事が出来なかった。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
完結【R―18】様々な情事 短編集
秋刀魚妹子
恋愛
本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。
タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。
好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。
基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。
同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。
※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。
※ 更新は不定期です。
それでは、楽しんで頂けたら幸いです。
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
【R18】溺愛ハッピーエンド
ななこす
恋愛
鈴木芽衣(すずきめい)は高校2年生。隣に住む幼なじみ、佐藤直(さとうなお)とちょっとえっちな遊びに夢中。
芽衣は直に淡い恋心を抱いているものの、はっきりしない関係が続いていたある日。古典担当の藤原と親密になっていくが――。
幼なじみと先生の間で揺れるちょっとえっちな話。
★性描写があります。
【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。
——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない)
※完結直後のものです。
【R18】カワイイ君へ~大人女性と年下くん~
戸森鈴子 tomori rinco
恋愛
大人の女性のためのR18小説
年下の男の子と様々な女性が織りなす、ちょっと胸キュンで
でもエッチ!な女性のためのR18小説です♡
あなたはどの彼が好みですか??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる