24 / 50
24
しおりを挟む
「中山くん。私たち帰るね」
かよと晴斗が寝室を覗いた。ベッドの傍で菜々美から離れようとしない翔に、かよは「頼むね」と言う。
「しかし、凄いマンションだなぁ」
晴斗がそう呟くと、かよは振り返って「それ、今言うこと?」と怪訝な顔をした。
そんな顔を向けられた晴斗は、首をすくめると翔に「またな」と言った。
一旦、菜々美から手を離すと立ち上がりふたりを玄関まで見送る。
「宮原。助かった」
「ううん。たまにね、あるのよ。こういうこと。私は知ってるけどびっくりしたでしょ」
翔を見上げると不安げな顔をしている。
「明日になれば元の菜々美でいるから。少し傍にいてあげて」
「ありがとう」
かよにそう言うとふたりはマンションを出ていく。ふたりが帰った後に、リビングを覗くとすっかりキレイに片付いていた。
菜々美のスマホはテーブルに置かれている。メッセージアプリに入っていた養父からのメッセージに、翔は酷く落ち込んだ。
勝手に見てしまったのは申し訳ない。だけどそれよりもあのメッセージに、翔はどうしたらいいのか分からなくなっていたのだ。
「菜々美……」
養父と折り合いが悪いとは聞いていたが、菜々美がこんなにも悪酔いしてしまうくらい、溝があるとは思ってもいなかった。
寝室へ行き、菜々美の様子をもう一度伺う。寝返りを打ったのか、さっきとは向きが変わっていた。
ベッドに腰掛け、菜々美の髪を撫でる。せつない想いが、胸を締め付けていた。
◇◇◇◇◇
翔は菜々美のベッドで抱きかかえるように眠っていた。
菜々美がそのことに気付いたのは、朝方寝返りをした時だった。
(え……?翔?なんで……?)
頭の中が混乱していた。なんでここに翔がいるのか分からなかった。
そっと起き上がって珈琲でも飲んで頭の中を整理しようとした時、翔の腕が菜々美をしっかりと掴んで放さなかった。
「しょ、翔……?」
「………ん」
ゆっくりと目を開けた翔は菜々美の後頭部に手を置き、自分の方へと引き寄せた。
目の前に翔のキレイな顔があるのは、なんだか気恥ずかしい。目線をどこに送っていいのか分からず、キョロキョロしている。そんな菜々美に安心したのか、翔は菜々美にキスをする。
「え?え?え?」
目を丸くした菜々美の行動が面白くて、でもそれがいつもの菜々美だと思った翔はふわっと笑顔を見せた。
「良かった。いつもの菜々美だ」
「ん?」
状況が飲めていない菜々美は、キョトンとしている。
「もしかして昨夜のこと、覚えてない?」
コクンと、頷く。
翔の言葉から、何かしらやってしまったのが目に見えてる。もしかして、いつものあれかなと感じてヤバいところを見られたと青ざめる。
「宮原に電話しちゃったよ」
と、昨夜あったことを話す。話を聞いてるうちに顔色が険しくなる。
(そうだ。あのメッセージ……)
菜々美は悔しくて悔しくて、アルコール量が半端なく進んでしまった。決していいお酒とはいえない状態になってしまった。
いつもならかよに電話入れるのに、今回は翔にかけてしまったのだ。
「ごめん……」
ポツリと、そう呟くように言った。それを聞いた翔は、ポンポンと頭を軽く叩いた。「大丈夫だよ」と言うように……。
かよと晴斗が寝室を覗いた。ベッドの傍で菜々美から離れようとしない翔に、かよは「頼むね」と言う。
「しかし、凄いマンションだなぁ」
晴斗がそう呟くと、かよは振り返って「それ、今言うこと?」と怪訝な顔をした。
そんな顔を向けられた晴斗は、首をすくめると翔に「またな」と言った。
一旦、菜々美から手を離すと立ち上がりふたりを玄関まで見送る。
「宮原。助かった」
「ううん。たまにね、あるのよ。こういうこと。私は知ってるけどびっくりしたでしょ」
翔を見上げると不安げな顔をしている。
「明日になれば元の菜々美でいるから。少し傍にいてあげて」
「ありがとう」
かよにそう言うとふたりはマンションを出ていく。ふたりが帰った後に、リビングを覗くとすっかりキレイに片付いていた。
菜々美のスマホはテーブルに置かれている。メッセージアプリに入っていた養父からのメッセージに、翔は酷く落ち込んだ。
勝手に見てしまったのは申し訳ない。だけどそれよりもあのメッセージに、翔はどうしたらいいのか分からなくなっていたのだ。
「菜々美……」
養父と折り合いが悪いとは聞いていたが、菜々美がこんなにも悪酔いしてしまうくらい、溝があるとは思ってもいなかった。
寝室へ行き、菜々美の様子をもう一度伺う。寝返りを打ったのか、さっきとは向きが変わっていた。
ベッドに腰掛け、菜々美の髪を撫でる。せつない想いが、胸を締め付けていた。
◇◇◇◇◇
翔は菜々美のベッドで抱きかかえるように眠っていた。
菜々美がそのことに気付いたのは、朝方寝返りをした時だった。
(え……?翔?なんで……?)
頭の中が混乱していた。なんでここに翔がいるのか分からなかった。
そっと起き上がって珈琲でも飲んで頭の中を整理しようとした時、翔の腕が菜々美をしっかりと掴んで放さなかった。
「しょ、翔……?」
「………ん」
ゆっくりと目を開けた翔は菜々美の後頭部に手を置き、自分の方へと引き寄せた。
目の前に翔のキレイな顔があるのは、なんだか気恥ずかしい。目線をどこに送っていいのか分からず、キョロキョロしている。そんな菜々美に安心したのか、翔は菜々美にキスをする。
「え?え?え?」
目を丸くした菜々美の行動が面白くて、でもそれがいつもの菜々美だと思った翔はふわっと笑顔を見せた。
「良かった。いつもの菜々美だ」
「ん?」
状況が飲めていない菜々美は、キョトンとしている。
「もしかして昨夜のこと、覚えてない?」
コクンと、頷く。
翔の言葉から、何かしらやってしまったのが目に見えてる。もしかして、いつものあれかなと感じてヤバいところを見られたと青ざめる。
「宮原に電話しちゃったよ」
と、昨夜あったことを話す。話を聞いてるうちに顔色が険しくなる。
(そうだ。あのメッセージ……)
菜々美は悔しくて悔しくて、アルコール量が半端なく進んでしまった。決していいお酒とはいえない状態になってしまった。
いつもならかよに電話入れるのに、今回は翔にかけてしまったのだ。
「ごめん……」
ポツリと、そう呟くように言った。それを聞いた翔は、ポンポンと頭を軽く叩いた。「大丈夫だよ」と言うように……。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
泉南佳那
恋愛
イケメンカリスマ美容師と内気で地味な書店員との、甘々溺愛ストーリーです!
どうぞお楽しみいただけますように。
〈あらすじ〉
加藤優紀は、現在、25歳の書店員。
東京の中心部ながら、昭和味たっぷりの裏町に位置する「高木書店」という名の本屋を、祖母とふたりで切り盛りしている。
彼女が高木書店で働きはじめたのは、3年ほど前から。
短大卒業後、不動産会社で営業事務をしていたが、同期の、親会社の重役令嬢からいじめに近い嫌がらせを受け、逃げるように会社を辞めた過去があった。
そのことは優紀の心に小さいながらも深い傷をつけた。
人付き合いを恐れるようになった優紀は、それ以来、つぶれかけの本屋で人の目につかない質素な生活に安んじていた。
一方、高木書店の目と鼻の先に、優紀の兄の幼なじみで、大企業の社長令息にしてカリスマ美容師の香坂玲伊が〈リインカネーション〉という総合ビューティーサロンを経営していた。
玲伊は優紀より4歳年上の29歳。
優紀も、兄とともに玲伊と一緒に遊んだ幼なじみであった。
店が近いこともあり、玲伊はしょっちゅう、優紀の本屋に顔を出していた。
子供のころから、かっこよくて優しかった玲伊は、優紀の初恋の人。
その気持ちは今もまったく変わっていなかったが、しがない書店員の自分が、カリスマ美容師にして御曹司の彼に釣り合うはずがないと、その恋心に蓋をしていた。
そんなある日、優紀は玲伊に「自分の店に来て」言われる。
優紀が〈リインカネーション〉を訪れると、人気のファッション誌『KALEN』の編集者が待っていた。
そして「シンデレラ・プロジェクト」のモデルをしてほしいと依頼される。
「シンデレラ・プロジェクト」とは、玲伊の店の1周年記念の企画で、〈リインカネーション〉のすべての施設を使い、2~3カ月でモデルの女性を美しく変身させ、それを雑誌の連載記事として掲載するというもの。
優紀は固辞したが、玲伊の熱心な誘いに負け、最終的に引き受けることとなる。
はじめての経験に戸惑いながらも、超一流の施術に心が満たされていく優紀。
そして、玲伊への恋心はいっそう募ってゆく。
玲伊はとても優しいが、それは親友の妹だから。
そんな切ない気持ちを抱えていた。
プロジェクトがはじまり、ひと月が過ぎた。
書店の仕事と〈リインカネーション〉の施術という二重生活に慣れてきた矢先、大問題が発生する。
突然、編集部に上層部から横やりが入り、優紀は「シンデレラ・プロジェクト」のモデルを下ろされることになった。
残念に思いながらも、やはり夢でしかなかったのだとあきらめる優紀だったが、そんなとき、玲伊から呼び出しを受けて……
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる