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「面白かったなぁ!」
映画館から出て、屋外テラスがあるカフェで、翔と菜々美はランチ遅いランチを取っていた。
翔はガッツリとハンバーグセット。菜々美はあさりのパスタ。
「まさかあの女優があんな役をやるとは思わなかったね」
「ほんと、それな」
笑うふたりは、もうずっとこうしていたかのようだった。
お互いの趣味も分かってはいたつもり。だけど、まだまだ知らないことはあったのだ。
「菜々美があの映画を観て笑ってくれるとは思わなかったよ」
「え?」
「コメディとか観ないかなって思ってた」
「観ないんじゃなくて、観せてもらえなかったんだよね」
だから菜々美でも不思議だった。コメディを観て翔と同じタイミングで笑うなんて、知らなかったのだ。
「でも菜々美は恋愛ものの方が好きだろ」
そう言われるのは菜々美が【恋愛小説家】だから。
「う~ん……。どうなんだろ」
好きかどうかなんて分からない。比べるにも他のジャンルを観てきたことはない。恋愛ものは、隠れて少女漫画をよく読んでいたから。少年漫画なんかは部屋にあったら大事になると思い、手は出していなかった。少女漫画があっただけでも大変だったから。
「でもホラーが苦手なのは確かね」
菜々美は怖い話が嫌いだ。それ以外ならきっと観たり読んだりするのだろう。実際、菜々美の仕事部屋にある本棚には少女漫画も少年漫画もある。青年漫画や女性漫画といわれるものもあるTL漫画といわれるようなものでさえある。小説はラノベや純文学や現代文学などといわれる小説もある。
ジャンルはホラー以外なら家にあるのだ。
「あ、そうなの?」
家にある本の種類の話をすると驚く。
「だって、凄ぇ際どい漫画とかもあるよな」
「最近のは多いよね」
「そういうのも読むんだ」
菜々美がそういうのを読むとは思わなかったと、翔は驚く。
「で、そういうのは書けないと。読んでるのに?」
「読むのと書くのじゃ違うわよ」
実際、それで詰まってる。だけどそれを書かなきゃ不自然なのだ。
「それって経験不足だから?」
「ん……」
「よし!じゃ、次行こ」
食べ終わって立ち上がる翔は、さっさと伝票を持って行く。
「え、私の分払うよ」
「いいんだよ」
「だって、さっきも……」
「男だからな」
そう言うとふたり分の食事代を払ってしまった。
「こっちに金がない時、頼むわ」
振り返ると菜々美に言って笑った。
◇◇◇◇◇
ランチの後はショッピングモールをブラブラと回って歩いた。回りを見ると同じようにカップルが手を繋いで楽しんでる姿がある。
世の中カップルはこうやって楽しんでいるのかと、改めて思った。
普段あまり外に出ない菜々美は、こうして外の情景を見ることはない。人々が普段過ごす日常なんかも見ることはない。
(たまにはこうして見ることは大事ね)
小説を書くにはやっぱり必要なことだとひしひしと感じた。
「小説のこと、考えてる?」
黙って回りを見ていた菜々美に、翔は顔を覗き込んだ。
「え……」
「小説のことを考えてるだろ」
「あ……。バレた?」
翔に考えてることがモロ分かりだったらしく、申し訳ないと苦笑いする。
「いいよ。気にしないで」
菜々美の手を握りショッピングモールの中を歩く。
回りにどんな風に見られているのだろうと、思いながら歩く。自分が恋人と並んで歩く姿を想像出来なかった。そんな日が来るとは思ってなかった。
「で?」
隣に立つ翔は菜々美を見下ろしていた。
「今日は楽しかった?」
「あ……っ、うん………」
顔を見られないように、横を向き頷く。
「なら良かった」
肩を抱き寄せた翔は、菜々美の髪の毛に触れる。
「ちょ……っ、人前っ」
「いいじゃん。誰も気にしないよ」
その通りで、誰もふたりを振り返ることはなかった。
映画館から出て、屋外テラスがあるカフェで、翔と菜々美はランチ遅いランチを取っていた。
翔はガッツリとハンバーグセット。菜々美はあさりのパスタ。
「まさかあの女優があんな役をやるとは思わなかったね」
「ほんと、それな」
笑うふたりは、もうずっとこうしていたかのようだった。
お互いの趣味も分かってはいたつもり。だけど、まだまだ知らないことはあったのだ。
「菜々美があの映画を観て笑ってくれるとは思わなかったよ」
「え?」
「コメディとか観ないかなって思ってた」
「観ないんじゃなくて、観せてもらえなかったんだよね」
だから菜々美でも不思議だった。コメディを観て翔と同じタイミングで笑うなんて、知らなかったのだ。
「でも菜々美は恋愛ものの方が好きだろ」
そう言われるのは菜々美が【恋愛小説家】だから。
「う~ん……。どうなんだろ」
好きかどうかなんて分からない。比べるにも他のジャンルを観てきたことはない。恋愛ものは、隠れて少女漫画をよく読んでいたから。少年漫画なんかは部屋にあったら大事になると思い、手は出していなかった。少女漫画があっただけでも大変だったから。
「でもホラーが苦手なのは確かね」
菜々美は怖い話が嫌いだ。それ以外ならきっと観たり読んだりするのだろう。実際、菜々美の仕事部屋にある本棚には少女漫画も少年漫画もある。青年漫画や女性漫画といわれるものもあるTL漫画といわれるようなものでさえある。小説はラノベや純文学や現代文学などといわれる小説もある。
ジャンルはホラー以外なら家にあるのだ。
「あ、そうなの?」
家にある本の種類の話をすると驚く。
「だって、凄ぇ際どい漫画とかもあるよな」
「最近のは多いよね」
「そういうのも読むんだ」
菜々美がそういうのを読むとは思わなかったと、翔は驚く。
「で、そういうのは書けないと。読んでるのに?」
「読むのと書くのじゃ違うわよ」
実際、それで詰まってる。だけどそれを書かなきゃ不自然なのだ。
「それって経験不足だから?」
「ん……」
「よし!じゃ、次行こ」
食べ終わって立ち上がる翔は、さっさと伝票を持って行く。
「え、私の分払うよ」
「いいんだよ」
「だって、さっきも……」
「男だからな」
そう言うとふたり分の食事代を払ってしまった。
「こっちに金がない時、頼むわ」
振り返ると菜々美に言って笑った。
◇◇◇◇◇
ランチの後はショッピングモールをブラブラと回って歩いた。回りを見ると同じようにカップルが手を繋いで楽しんでる姿がある。
世の中カップルはこうやって楽しんでいるのかと、改めて思った。
普段あまり外に出ない菜々美は、こうして外の情景を見ることはない。人々が普段過ごす日常なんかも見ることはない。
(たまにはこうして見ることは大事ね)
小説を書くにはやっぱり必要なことだとひしひしと感じた。
「小説のこと、考えてる?」
黙って回りを見ていた菜々美に、翔は顔を覗き込んだ。
「え……」
「小説のことを考えてるだろ」
「あ……。バレた?」
翔に考えてることがモロ分かりだったらしく、申し訳ないと苦笑いする。
「いいよ。気にしないで」
菜々美の手を握りショッピングモールの中を歩く。
回りにどんな風に見られているのだろうと、思いながら歩く。自分が恋人と並んで歩く姿を想像出来なかった。そんな日が来るとは思ってなかった。
「で?」
隣に立つ翔は菜々美を見下ろしていた。
「今日は楽しかった?」
「あ……っ、うん………」
顔を見られないように、横を向き頷く。
「なら良かった」
肩を抱き寄せた翔は、菜々美の髪の毛に触れる。
「ちょ……っ、人前っ」
「いいじゃん。誰も気にしないよ」
その通りで、誰もふたりを振り返ることはなかった。
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