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山之内から送られてきたものは、仕事部屋の角に追いやられた。捨ててやろうかと思ったが、あれは山之内が自腹切ったものだろうから、なんとなく捨てにくい。さらにああいうものだから、おおっぴらに捨てることもなんとなく出来ない。捨ててるところを誰かに見られたくないという思いもあった。
(ほんと、どうしてくれよう)
次に山之内が来る時に押し返してやろうと考えた。
だけど、山之内が来る日はまだ先だからこうしてダンボールに入れられたまま角に置かれた。
山之内が菜々美の為にしてくれてることは分かってる。だけど、これは菜々美にとってはありがた迷惑ってやつで……。
部屋の角に置かれたダンボールが目に入る度にため息が出る。
(元はといえば私が悪いんだよね)
分かってはいるがこればっかりはどうにも……。
頭を悩ませる菜々美は、パソコンに目線を戻した。
カタカタカタ……。
キーボードを叩く音が部屋に響く。何度も書いては消して書いては消して。その繰り返し。
でも締め切りは待ってはくれない。
(なんで題材を大人の恋愛にしちゃったんだろう)
ため息ばかり吐く。いつもは高校生か、大学生の恋愛ものばかり。だからそんなに気にはしなかった。
だけど大人の恋愛となるとまた違う。そりゃ高校生の恋愛にもある。性に関すること。
けど、大人はそれ以上のものが求められる。だからこそ、表現力が必要となる。
経験の乏しい菜々美は、想像力を膨らませるしかなかった。
「はぁ……。もうっ、限界!」
パソコンから目を離し、キッチンへと向かう。
いつものようにお湯を沸かしてコーヒーカップにインスタントのコーヒーを入れる。眠気覚ましにはこれが一番。
ダイニングテーブルにカップを置いて、椅子に座るとテレビをつけてみた。テレビには深夜ドラマが入っていた。濃厚なキスシーンからして、まさしく大人の恋愛ドラマ。
「こんな風に映像で表現出来るならなぁ」
それじゃあ、小説の意味がないが。
~♪~♪~♪~
スマホが鳴る。今は深夜0時。こんな時間にかけてくるなんて、非常識だと思いつつスマホ画面を見る。
「え……」
スマホ画面には【中山翔】と表示されていた。
びっくりして出るのを躊躇ってしまう。画面を見つめたままの菜々美は、意を決して通話ボタンを押した。
『たか~な~し~!』
陽気な声が聞こえる。
「中山くん?」
『おれさぁ~』
なんだか酔ってる声だった。
『おまえがぁ~すきだぁぁぁ~』
酔っていてもそんなことをさらっと言えちゃうんだと菜々美はある意味感心してしまった。
「中山くん。酔ってるでしょ?」
『酔って……ねぇよ……』
なんだか様子がおかしいと思った菜々美。
「どこにいるの?」
『……駅前のZっていう飲み屋』
「ひとりで?」
『会社の~……同僚と………』
「呑み過ぎだよ。迎えに行ってあげるから」
呆れた菜々美は、仕方なく車のキーを持って家を出る。
車を走らせてる時にふとなんで迎えに行くんだろうと考える。でもなんか放っておけないと思った。
駅前のZという呑み屋の前に車を停めると、店に入る。店員が「お一人様ですか」と声をかける。それに対して「友達を迎えに来てて」と言うと店内を探す。
店の奥で大騒ぎしてる人たちの中に翔がいた。翔はもうグデグデに酔っていて、今にも倒れそうな勢いだった。こんな状態で電話をかけてきたのだ。
「中山くん」
声をかけると「よぉ。た~か~なし~」と言った。
「酔って電話かけてけるのやめてくれない?」
そう言って、翔の同僚に目を向ける。
「うわっ。すげぇ美人」
「モデルか」
同僚たちはザワザワする。
「友人です。あまり、彼にお酒呑ませないで。弱いんで」
翔の腕を掴むと、立ち上がらせる。
「帰るよ」
そして同僚たちに向き直ると「中山くんの分のお金」と、一万円をテーブルに置く。
「あ、いいですよ」
同僚のひとりがそう言うけど、菜々美は無理にでも置いて翔を連れて店を出た。
店の前に停めた車に翔を乗せると、運転席に回り車を走らせる。
◇◇◇◇◇
「結局、うちに連れてくるはめになるんだよなぁ……」
眠ってしまって、動けない翔を自分の部屋まで連れてくるのに苦労した菜々美は呆れ顔。
玄関で靴を脱がせてどうにかリビングまで連れていく。リビングのソファーに寝かせると菜々美はため息を吐く。
寝室のクローゼットから使ってないタオルケットを出して翔にかける。
「全く。なんなのよ、もう……」
脱力感でいっぱいの菜々美は、仕事部屋に入っていく。でも今日はもう仕事出来る感じではなかった。
リビングにいる翔が気になってしまって、手につかない。
「ふぅ……」
深いため息を吐くと、バスルームに入りシャワーを浴びリビングに戻る。翔はまだ眠っていた。
キッチンに入ると冷蔵庫からビールを出してそれを喉に流し込む。
コトッ。
ビールの空き缶をキッチンに置くと、翔に近寄って見下ろした。
「何なんだろ。ほんとに」
呆れ顔の菜々美が寝室へと向かおうと翔に背中を向けた。リビングを抜けて寝室へ入った菜々美は、後ろから思いっきりだ寄与せられていた。
「──……っ!」
顔だけを振り返って見ると、酔って目が据わってる翔がいる。
「ちょ……っ、中山くん!なにして……っ!」
その酔った状態の翔は、菜々美のうなじに唇を当てた。
「えっ……!ちょ、ちょっと……っ!中山くん!」
翔から逃れようとした菜々美は、バランスを崩して倒れてしまった。菜々美を押し倒した状態になった翔はそのまま、菜々美にキスをした──……。
(ほんと、どうしてくれよう)
次に山之内が来る時に押し返してやろうと考えた。
だけど、山之内が来る日はまだ先だからこうしてダンボールに入れられたまま角に置かれた。
山之内が菜々美の為にしてくれてることは分かってる。だけど、これは菜々美にとってはありがた迷惑ってやつで……。
部屋の角に置かれたダンボールが目に入る度にため息が出る。
(元はといえば私が悪いんだよね)
分かってはいるがこればっかりはどうにも……。
頭を悩ませる菜々美は、パソコンに目線を戻した。
カタカタカタ……。
キーボードを叩く音が部屋に響く。何度も書いては消して書いては消して。その繰り返し。
でも締め切りは待ってはくれない。
(なんで題材を大人の恋愛にしちゃったんだろう)
ため息ばかり吐く。いつもは高校生か、大学生の恋愛ものばかり。だからそんなに気にはしなかった。
だけど大人の恋愛となるとまた違う。そりゃ高校生の恋愛にもある。性に関すること。
けど、大人はそれ以上のものが求められる。だからこそ、表現力が必要となる。
経験の乏しい菜々美は、想像力を膨らませるしかなかった。
「はぁ……。もうっ、限界!」
パソコンから目を離し、キッチンへと向かう。
いつものようにお湯を沸かしてコーヒーカップにインスタントのコーヒーを入れる。眠気覚ましにはこれが一番。
ダイニングテーブルにカップを置いて、椅子に座るとテレビをつけてみた。テレビには深夜ドラマが入っていた。濃厚なキスシーンからして、まさしく大人の恋愛ドラマ。
「こんな風に映像で表現出来るならなぁ」
それじゃあ、小説の意味がないが。
~♪~♪~♪~
スマホが鳴る。今は深夜0時。こんな時間にかけてくるなんて、非常識だと思いつつスマホ画面を見る。
「え……」
スマホ画面には【中山翔】と表示されていた。
びっくりして出るのを躊躇ってしまう。画面を見つめたままの菜々美は、意を決して通話ボタンを押した。
『たか~な~し~!』
陽気な声が聞こえる。
「中山くん?」
『おれさぁ~』
なんだか酔ってる声だった。
『おまえがぁ~すきだぁぁぁ~』
酔っていてもそんなことをさらっと言えちゃうんだと菜々美はある意味感心してしまった。
「中山くん。酔ってるでしょ?」
『酔って……ねぇよ……』
なんだか様子がおかしいと思った菜々美。
「どこにいるの?」
『……駅前のZっていう飲み屋』
「ひとりで?」
『会社の~……同僚と………』
「呑み過ぎだよ。迎えに行ってあげるから」
呆れた菜々美は、仕方なく車のキーを持って家を出る。
車を走らせてる時にふとなんで迎えに行くんだろうと考える。でもなんか放っておけないと思った。
駅前のZという呑み屋の前に車を停めると、店に入る。店員が「お一人様ですか」と声をかける。それに対して「友達を迎えに来てて」と言うと店内を探す。
店の奥で大騒ぎしてる人たちの中に翔がいた。翔はもうグデグデに酔っていて、今にも倒れそうな勢いだった。こんな状態で電話をかけてきたのだ。
「中山くん」
声をかけると「よぉ。た~か~なし~」と言った。
「酔って電話かけてけるのやめてくれない?」
そう言って、翔の同僚に目を向ける。
「うわっ。すげぇ美人」
「モデルか」
同僚たちはザワザワする。
「友人です。あまり、彼にお酒呑ませないで。弱いんで」
翔の腕を掴むと、立ち上がらせる。
「帰るよ」
そして同僚たちに向き直ると「中山くんの分のお金」と、一万円をテーブルに置く。
「あ、いいですよ」
同僚のひとりがそう言うけど、菜々美は無理にでも置いて翔を連れて店を出た。
店の前に停めた車に翔を乗せると、運転席に回り車を走らせる。
◇◇◇◇◇
「結局、うちに連れてくるはめになるんだよなぁ……」
眠ってしまって、動けない翔を自分の部屋まで連れてくるのに苦労した菜々美は呆れ顔。
玄関で靴を脱がせてどうにかリビングまで連れていく。リビングのソファーに寝かせると菜々美はため息を吐く。
寝室のクローゼットから使ってないタオルケットを出して翔にかける。
「全く。なんなのよ、もう……」
脱力感でいっぱいの菜々美は、仕事部屋に入っていく。でも今日はもう仕事出来る感じではなかった。
リビングにいる翔が気になってしまって、手につかない。
「ふぅ……」
深いため息を吐くと、バスルームに入りシャワーを浴びリビングに戻る。翔はまだ眠っていた。
キッチンに入ると冷蔵庫からビールを出してそれを喉に流し込む。
コトッ。
ビールの空き缶をキッチンに置くと、翔に近寄って見下ろした。
「何なんだろ。ほんとに」
呆れ顔の菜々美が寝室へと向かおうと翔に背中を向けた。リビングを抜けて寝室へ入った菜々美は、後ろから思いっきりだ寄与せられていた。
「──……っ!」
顔だけを振り返って見ると、酔って目が据わってる翔がいる。
「ちょ……っ、中山くん!なにして……っ!」
その酔った状態の翔は、菜々美のうなじに唇を当てた。
「えっ……!ちょ、ちょっと……っ!中山くん!」
翔から逃れようとした菜々美は、バランスを崩して倒れてしまった。菜々美を押し倒した状態になった翔はそのまま、菜々美にキスをした──……。
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