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『もしもし?』
電話越しに聞く翔の声がやけに大人っぽい。
「本当にかけてきた」
期待していたわりにはそんなことを言ってしまう。
『なんだよ』
翔はそう笑った。
『メシ、行かね?』
「え」
『この前、迷惑かけたから』
「迷惑?」
『あぁ。だから、奢るからメシ行こう』
迷惑だなんて思ってもいなかった菜々美だが、その誘いにOKした。
夕方。菜々美のマンションに白い車で来た翔は同窓会の時とは違う雰囲気だった。同窓会の時は無理に大人の男性を演じるかのような雰囲気だった。それが今日は年相応の格好をしていた。
「高梨」
マンションの前に停めてあった車に寄りかかって立っていた翔は、菜々美に気付くとニッと笑った。
「じゃどうぞ」
と、ドア開けて菜々美を車に乗せる。そして運転席に回り車に乗り込むと、シートベルトをする。
「さて。どこがいいかな」
菜々美を方を見る翔は高校生の時よりも落ち着いた雰囲気だった。高校生の頃はやんちゃな感じだった。いつもバカやってフザけて遊んでいた。
「大人になっちゃったね」
「何が」
「高校の時とずいぶん違う」
「まぁな。もう24だしな」
そう言う翔は真っ直ぐ前を向いて車を走らせる。
「お前、食べたいものある?」
そう聞かれて「ん~……」と考える。菜々美は食に拘る人ではないから、なんでも良かった。代わりにお酒があればそれでいい。
「お酒が呑めるとこだったらどこでも平気よ」
菜々美はそう言う。それを聞いて「おれが呑めないじゃん」そう答える。
翔は「仕方ないなぁ」と言うように笑い、車を走らせていく。
車の中から街中をぼんやり眺めながら、翔と懐かしい話をしていた。一年生の時の担任の話や、あの頃一番モテてた女の子が早くもお母さんになっていることとか。どうでもいいような話で盛り上がっていた。
車は一軒のオシャレなレストランへと入っていく。
「イタリアン?」
「そ。よく来るんだ。この店」
そう言って駐車場に車を停めて、店の中へと菜々美と一緒に入って行った。
店内は広く解放感のあるお店だった。
「好きなの頼んでいいよ」
メニューを渡されるが、食に拘る人ではないからピンとこない。
「中山くんのおすすめは?」
お手上げ状態な菜々美はメニューを翔に渡す。
「変わらないね、そういうとこ」
ふっと笑みを浮かべる翔は、店員を呼んで菜々美が好きそうなものをオーダーした。
◇◇◇◇◇
翔がオーダーしてくれたのは、ボンゴレスパゲッティと、サラダそれに菜々美の為に赤ワインを頼んでくれた。
「そんなんで良かった?」
翔の言葉に「うん」と頷く。
本当に食に関してはなんでもいいらしい。特に嫌いなものもなければ、これが好き!というようなものもない。食べられればそれでいいらしい。
菜々美がそんな風になってしまったのは、やらり養父のせいだと言えるだろう。食に異常に拘る人で、毎月の食費がバカにならないくらいかかっていた。
毎月、母親が苦労していたのを見て育ってるから興味がないのかもしれない。
食に拘るなら、本に拘った方がいいと考えてる。
「なぁ」
食事をしている手を一旦止めて、翔は菜々美を見る。その目に捕らえられた菜々美は、翔から目を逸らすことが出来なかった。
「おれと……」
少し躊躇いながらも言葉を続ける翔をじっと見る。
「おれと付き合わないか?」
ドキンっと心臓が跳ねる。そんなことを言われたのは産まれて初めてで、しかも初恋の人に言われるとは思ってもなかった。
「え……っと……、あ……」
顔が真っ赤になっていくのが分かる。どう反応したらいいのかも分からなくて、目線を落とす。
目だけでキョロキョロとさせる菜々美にふっと笑う翔。
「そんな反応されるとは思わなかった」
「え……あ、えっと………」
言葉が出てこない。誤魔化すようにワインをグィと飲み込んだ。
(顔が熱い……)
手にしたグラスを持ったまま、菜々美は何も言えなくなっていた。
「答えはすぐに出さなくていいよ」
翔はそう言うと、フォークを手にして食事を再開させた。
電話越しに聞く翔の声がやけに大人っぽい。
「本当にかけてきた」
期待していたわりにはそんなことを言ってしまう。
『なんだよ』
翔はそう笑った。
『メシ、行かね?』
「え」
『この前、迷惑かけたから』
「迷惑?」
『あぁ。だから、奢るからメシ行こう』
迷惑だなんて思ってもいなかった菜々美だが、その誘いにOKした。
夕方。菜々美のマンションに白い車で来た翔は同窓会の時とは違う雰囲気だった。同窓会の時は無理に大人の男性を演じるかのような雰囲気だった。それが今日は年相応の格好をしていた。
「高梨」
マンションの前に停めてあった車に寄りかかって立っていた翔は、菜々美に気付くとニッと笑った。
「じゃどうぞ」
と、ドア開けて菜々美を車に乗せる。そして運転席に回り車に乗り込むと、シートベルトをする。
「さて。どこがいいかな」
菜々美を方を見る翔は高校生の時よりも落ち着いた雰囲気だった。高校生の頃はやんちゃな感じだった。いつもバカやってフザけて遊んでいた。
「大人になっちゃったね」
「何が」
「高校の時とずいぶん違う」
「まぁな。もう24だしな」
そう言う翔は真っ直ぐ前を向いて車を走らせる。
「お前、食べたいものある?」
そう聞かれて「ん~……」と考える。菜々美は食に拘る人ではないから、なんでも良かった。代わりにお酒があればそれでいい。
「お酒が呑めるとこだったらどこでも平気よ」
菜々美はそう言う。それを聞いて「おれが呑めないじゃん」そう答える。
翔は「仕方ないなぁ」と言うように笑い、車を走らせていく。
車の中から街中をぼんやり眺めながら、翔と懐かしい話をしていた。一年生の時の担任の話や、あの頃一番モテてた女の子が早くもお母さんになっていることとか。どうでもいいような話で盛り上がっていた。
車は一軒のオシャレなレストランへと入っていく。
「イタリアン?」
「そ。よく来るんだ。この店」
そう言って駐車場に車を停めて、店の中へと菜々美と一緒に入って行った。
店内は広く解放感のあるお店だった。
「好きなの頼んでいいよ」
メニューを渡されるが、食に拘る人ではないからピンとこない。
「中山くんのおすすめは?」
お手上げ状態な菜々美はメニューを翔に渡す。
「変わらないね、そういうとこ」
ふっと笑みを浮かべる翔は、店員を呼んで菜々美が好きそうなものをオーダーした。
◇◇◇◇◇
翔がオーダーしてくれたのは、ボンゴレスパゲッティと、サラダそれに菜々美の為に赤ワインを頼んでくれた。
「そんなんで良かった?」
翔の言葉に「うん」と頷く。
本当に食に関してはなんでもいいらしい。特に嫌いなものもなければ、これが好き!というようなものもない。食べられればそれでいいらしい。
菜々美がそんな風になってしまったのは、やらり養父のせいだと言えるだろう。食に異常に拘る人で、毎月の食費がバカにならないくらいかかっていた。
毎月、母親が苦労していたのを見て育ってるから興味がないのかもしれない。
食に拘るなら、本に拘った方がいいと考えてる。
「なぁ」
食事をしている手を一旦止めて、翔は菜々美を見る。その目に捕らえられた菜々美は、翔から目を逸らすことが出来なかった。
「おれと……」
少し躊躇いながらも言葉を続ける翔をじっと見る。
「おれと付き合わないか?」
ドキンっと心臓が跳ねる。そんなことを言われたのは産まれて初めてで、しかも初恋の人に言われるとは思ってもなかった。
「え……っと……、あ……」
顔が真っ赤になっていくのが分かる。どう反応したらいいのかも分からなくて、目線を落とす。
目だけでキョロキョロとさせる菜々美にふっと笑う翔。
「そんな反応されるとは思わなかった」
「え……あ、えっと………」
言葉が出てこない。誤魔化すようにワインをグィと飲み込んだ。
(顔が熱い……)
手にしたグラスを持ったまま、菜々美は何も言えなくなっていた。
「答えはすぐに出さなくていいよ」
翔はそう言うと、フォークを手にして食事を再開させた。
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