3 / 50
3
しおりを挟む
トイレから戻ってきた菜々美は、酷い現状に驚いた。
菜々美が座っていた場所には晴斗と翔もいたが、その翔がぐたーとしていた。
「どうしたの?」
「こいつ、呑み過ぎたらしい」
「え?そんなに呑んでたっけ?」
そう言うと翔に「大丈夫?」と声をかける。
「あ……、ん……」
言葉にならない感じで答える。
「どのくらい呑んだのよ」
晴斗に聞いてみる。その晴斗も呑んでるかから翔が呑んだ数まで覚えていない。
だけど、菜々美が覚えてるだけでも5杯は呑んでる。
(たった5杯でこうなったの?)
酒豪な菜々美からすれば不思議だった。
「高梨、高梨」
晴斗が菜々美にニヤッと笑った。
「翔はお前に『呑みすぎちゃった~』とかやって欲しかったんだよ」
ん?
ん?
ん?
「は?どういうこと?」
翔を挟んで晴斗に聞く。
「今の高梨は、ど真ん中なんだよ」
「なにが」
「翔の好きな女のタイプ。美人系だからよ」
「そうそう!高校ん時もそういう系好きだったよなぁ」
「付き合ってたの、どっか女子大生じゃなかったっけ?」
男子たちは次々に語り出す。
菜々美もそれは覚えていた。女子大生と付き合ってるっていうこと。それを聞いた時、ショックを受けたのを覚えてる。
「にしても……」
晴斗は翔を見る。
「これ、どうするよ」
翔は座ってられなく床に寝転んでいた。座敷にいたからまだ良かったが。
「それに比べて高梨はどんだけ呑むんだ」
菜々美が空けたグラスはもう10杯は軽く超えていた。それなのに呑んでいない時となんら変わらない。
「菜々美は枠だからー」
横から言ったかよもかなり呑んでいた。
「枠?」
「ザルじゃなくて枠ね!引っ掛かるところがないくらい呑むのよ」
「ちょっと、かよ!」
10杯は呑んでるのに平気な顔してる菜々美は、逃げ出したくなってしまった。
「……きもぢ……わる………」
床で寝転んでた翔は、気持ち悪そうだった。
「中山くん。大丈夫?お水もらおうか?」
そうは言ったがそれよりも吐きそうな感じだった。
「ちょっと、誰かトイレ連れていってあげてよ!」
菜々美はそう言うが、誰も動かない。仕方なく菜々美が翔を起き上がらせた。
「ほら、トイレ行って!」
ヨロヨロと立ち上がる翔が心配でトイレまで着いていく。トイレの前に行くと中へ押し込む。
ここはこじんまりとした居酒屋だから、トイレはひとつしかない。男女別れてはいないからこういうことが出来る。別れてはいたら入っては行けないだろう。
そんな菜々美は翔の背中を擦っていた。
◇◇◇◇◇
「中山くんを送ってくる」
暫くトイレから出て来れなかった翔は、ぐったりとしていた。そんな翔を見かねて家まで送るという、菜々美。
「平気か?」
「変わってくれるの?」
と晴斗に言うが「幹事だからなー」と笑う。心成しか晴斗がニヤニヤしているようにも見える。何かを企んでいるのではと思ってしまう。
「タクシー呼ぼっか」
晴斗はそう言って店の店員にタクシーをお願いしていた。
晴斗が外に出てタクシーが来るのを待ってくれていた。その間、菜々美は翔の様子を見ていた。なぜかみんな、自分たちが楽しめばいいって感じでこっちを気にしなかった。かよでさえ、久しぶりに会うクラスメイトたちと話すのに夢中だった。
「高梨!」
呼ばれると、翔の腕を掴み立ち上がらせる。
晴斗と一緒にタクシーまで翔を運ぶ。
「悪いな、高梨。本当はおれが連れて帰った方がいいんだろうけど……」
「幹事だしね」
「他のやつらもあてにならないし……」
苦笑いの晴斗に「大丈夫。まだ仕事残ってるからちょうどいいわ」と告げる。
「じゃまた!」
タクシーのドアが閉まると翔に「住所は?」と聞く。
だが酔っぱらっていて答えられない。何度も何度も聞くが全然ダメだった。
「はぁ………」
大きなため息を吐いた菜々美は自分のマンションの住所を告げる。
(放っておくわけにはいかないもの)
窓に凭れかけてる翔を見てまたため息を吐いた。
◇◇◇◇◇
マンションの前まで来ると運転手さんに手伝ってもらいながら、タクシーから翔を下ろしどうにかエレベーターまで向かった。エレベーターに乗り込み菜々美の住む5階まで行く。その間も菜々美の肩に凭れている。
半分眠ったような状態。だけど、起きてはいる。
「もう……っ。酔っぱらいは重い!」
そう言いながらも5階に着くと自分の部屋まで翔を引き摺っていく。
ガシャン……っ!
ドアを開けると鈍い金属音が響く。もう夜も遅いから本当に響く。
ドサッと翔を玄関に倒れ込むように下ろすと、翔の靴を脱がせる。
「ほら、ちょっと起きて!」
目が覚めたら自分の家に帰ってもらおうと必死だった。何度か声をかけるけど、翔は動く気がない。
「もうっ!」
仕方なく翔を玄関に放置して、仕事部屋へと向かう。仕事部屋は本棚に囲まれた部屋だった。その中央に机がありパソコンが置かれている。ここで菜々美は小説を書いている。
本に囲まれてる生活は菜々美の憧れだった。何よりも本が大好きな菜々美は、学生時代、休み時間になるとよく図書室に入り浸っていた。本屋や市の図書館にもよく行くくらい、本が大好きなのだ。
それは小説だけに止まらず絵本や漫画なども同じ扱いだった。一時、小説だけでも600冊は越えるくらい所有していた。
どんどん増える本を前に独自にルールを作ったくらいだ。
荷物を置くとパソコンの前に座る。パソコンを起動し、今書いている小説のフォルダを開いた。
だけど、やっぱりあるシーンで行き詰まる。それもそうだ。未経験な菜々美にとって、そのシーンを書くのが難しい。
「やっぱり、こういうのはやめた方がいいのか……」
ポツリと呟き、パソコンを閉じるしかなかった。
菜々美が座っていた場所には晴斗と翔もいたが、その翔がぐたーとしていた。
「どうしたの?」
「こいつ、呑み過ぎたらしい」
「え?そんなに呑んでたっけ?」
そう言うと翔に「大丈夫?」と声をかける。
「あ……、ん……」
言葉にならない感じで答える。
「どのくらい呑んだのよ」
晴斗に聞いてみる。その晴斗も呑んでるかから翔が呑んだ数まで覚えていない。
だけど、菜々美が覚えてるだけでも5杯は呑んでる。
(たった5杯でこうなったの?)
酒豪な菜々美からすれば不思議だった。
「高梨、高梨」
晴斗が菜々美にニヤッと笑った。
「翔はお前に『呑みすぎちゃった~』とかやって欲しかったんだよ」
ん?
ん?
ん?
「は?どういうこと?」
翔を挟んで晴斗に聞く。
「今の高梨は、ど真ん中なんだよ」
「なにが」
「翔の好きな女のタイプ。美人系だからよ」
「そうそう!高校ん時もそういう系好きだったよなぁ」
「付き合ってたの、どっか女子大生じゃなかったっけ?」
男子たちは次々に語り出す。
菜々美もそれは覚えていた。女子大生と付き合ってるっていうこと。それを聞いた時、ショックを受けたのを覚えてる。
「にしても……」
晴斗は翔を見る。
「これ、どうするよ」
翔は座ってられなく床に寝転んでいた。座敷にいたからまだ良かったが。
「それに比べて高梨はどんだけ呑むんだ」
菜々美が空けたグラスはもう10杯は軽く超えていた。それなのに呑んでいない時となんら変わらない。
「菜々美は枠だからー」
横から言ったかよもかなり呑んでいた。
「枠?」
「ザルじゃなくて枠ね!引っ掛かるところがないくらい呑むのよ」
「ちょっと、かよ!」
10杯は呑んでるのに平気な顔してる菜々美は、逃げ出したくなってしまった。
「……きもぢ……わる………」
床で寝転んでた翔は、気持ち悪そうだった。
「中山くん。大丈夫?お水もらおうか?」
そうは言ったがそれよりも吐きそうな感じだった。
「ちょっと、誰かトイレ連れていってあげてよ!」
菜々美はそう言うが、誰も動かない。仕方なく菜々美が翔を起き上がらせた。
「ほら、トイレ行って!」
ヨロヨロと立ち上がる翔が心配でトイレまで着いていく。トイレの前に行くと中へ押し込む。
ここはこじんまりとした居酒屋だから、トイレはひとつしかない。男女別れてはいないからこういうことが出来る。別れてはいたら入っては行けないだろう。
そんな菜々美は翔の背中を擦っていた。
◇◇◇◇◇
「中山くんを送ってくる」
暫くトイレから出て来れなかった翔は、ぐったりとしていた。そんな翔を見かねて家まで送るという、菜々美。
「平気か?」
「変わってくれるの?」
と晴斗に言うが「幹事だからなー」と笑う。心成しか晴斗がニヤニヤしているようにも見える。何かを企んでいるのではと思ってしまう。
「タクシー呼ぼっか」
晴斗はそう言って店の店員にタクシーをお願いしていた。
晴斗が外に出てタクシーが来るのを待ってくれていた。その間、菜々美は翔の様子を見ていた。なぜかみんな、自分たちが楽しめばいいって感じでこっちを気にしなかった。かよでさえ、久しぶりに会うクラスメイトたちと話すのに夢中だった。
「高梨!」
呼ばれると、翔の腕を掴み立ち上がらせる。
晴斗と一緒にタクシーまで翔を運ぶ。
「悪いな、高梨。本当はおれが連れて帰った方がいいんだろうけど……」
「幹事だしね」
「他のやつらもあてにならないし……」
苦笑いの晴斗に「大丈夫。まだ仕事残ってるからちょうどいいわ」と告げる。
「じゃまた!」
タクシーのドアが閉まると翔に「住所は?」と聞く。
だが酔っぱらっていて答えられない。何度も何度も聞くが全然ダメだった。
「はぁ………」
大きなため息を吐いた菜々美は自分のマンションの住所を告げる。
(放っておくわけにはいかないもの)
窓に凭れかけてる翔を見てまたため息を吐いた。
◇◇◇◇◇
マンションの前まで来ると運転手さんに手伝ってもらいながら、タクシーから翔を下ろしどうにかエレベーターまで向かった。エレベーターに乗り込み菜々美の住む5階まで行く。その間も菜々美の肩に凭れている。
半分眠ったような状態。だけど、起きてはいる。
「もう……っ。酔っぱらいは重い!」
そう言いながらも5階に着くと自分の部屋まで翔を引き摺っていく。
ガシャン……っ!
ドアを開けると鈍い金属音が響く。もう夜も遅いから本当に響く。
ドサッと翔を玄関に倒れ込むように下ろすと、翔の靴を脱がせる。
「ほら、ちょっと起きて!」
目が覚めたら自分の家に帰ってもらおうと必死だった。何度か声をかけるけど、翔は動く気がない。
「もうっ!」
仕方なく翔を玄関に放置して、仕事部屋へと向かう。仕事部屋は本棚に囲まれた部屋だった。その中央に机がありパソコンが置かれている。ここで菜々美は小説を書いている。
本に囲まれてる生活は菜々美の憧れだった。何よりも本が大好きな菜々美は、学生時代、休み時間になるとよく図書室に入り浸っていた。本屋や市の図書館にもよく行くくらい、本が大好きなのだ。
それは小説だけに止まらず絵本や漫画なども同じ扱いだった。一時、小説だけでも600冊は越えるくらい所有していた。
どんどん増える本を前に独自にルールを作ったくらいだ。
荷物を置くとパソコンの前に座る。パソコンを起動し、今書いている小説のフォルダを開いた。
だけど、やっぱりあるシーンで行き詰まる。それもそうだ。未経験な菜々美にとって、そのシーンを書くのが難しい。
「やっぱり、こういうのはやめた方がいいのか……」
ポツリと呟き、パソコンを閉じるしかなかった。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
やさしい幼馴染は豹変する。
春密まつり
恋愛
マンションの隣の部屋の喘ぎ声に悩まされている紗江。
そのせいで転職1日目なのに眠くてたまらない。
なんとか遅刻せず会社に着いて挨拶を済ませると、なんと昔大好きだった幼馴染と再会した。
けれど、王子様みたいだった彼は昔の彼とは違っていてーー
▼全6話
▼ムーンライト、pixiv、エブリスタにも投稿しています
【R18】溺愛ハッピーエンド
ななこす
恋愛
鈴木芽衣(すずきめい)は高校2年生。隣に住む幼なじみ、佐藤直(さとうなお)とちょっとえっちな遊びに夢中。
芽衣は直に淡い恋心を抱いているものの、はっきりしない関係が続いていたある日。古典担当の藤原と親密になっていくが――。
幼なじみと先生の間で揺れるちょっとえっちな話。
★性描写があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる