もう一度会いたい……【もう一度抱きしめて……】スピンオフ作品

星河琉嘩

文字の大きさ
上 下
32 / 97
第1章

29

しおりを挟む
「ちゅ……っ」
「ん……っ」

 車内に響く、ふたりが口づけを交わす音。その音が妙に大きく聞こえて、沙樹は恥ずかしい。崇弘の舌が沙樹の口内に侵入してくると、頭が混乱し出す。
「んんん……っ」
 思わず両手で崇弘を押した。
「沙樹?」
「え……っと、あ、あの、えっと……」
 混乱し過ぎて頭がついていかない。そんな沙樹に気付いてふっと笑みを溢す。
「なんて顔してんの」
「ええっと……、あの……、きゃっ!」
 崇弘は腰を支えるようにしながら、自分の上に沙樹を座らせた。
「沙樹。今度、うちに泊まりに来い」
「え……」
「会うと帰したくなくなる。もっと一緒にいたい」
「タカちゃん。……私も。もっと一緒にいたい」
 そう答えると沙樹は崇弘の首に手を回した。
「いいよ。キスしたいならしろよ」
 顔を真っ赤にしながら沙樹は崇弘にキスをした。



「時間……だな」
 暫く抱きあっていたふたり。崇弘は沙樹から身体を離すとせつない顔をしていた。
「ほら。もう、車降りて」
 そう言うが、なかなか沙樹は崇弘から離れようとしない。
「沙樹」
「もう少し……」
「ダメ。門限、あるだろ」
「でも……」
 崇弘を見上げる沙樹の瞳は潤んでいる。
「……んな顔、すんなよ」
(このまま連れ去りたい)
 崇弘はそう思ってしまう。ダチの妹に手を出した時点でアウトだと思ってるのに、そんなことをしたら輝に殺される勢いだろう。それをふたりは分かっている。

「また連絡する」
 優しく話しかける崇弘にただ頷くしかない。
「ほら」
 沙樹の背中を軽く押す崇弘。名残惜しそうに振り向く沙樹に笑いかけ、運転席に戻る。沙樹が家に向かって歩いていくのを確認して、エンジンをかけた。
(また会えない日が続くな)
 崇弘はゆっくりと車を走らせた。



     ◇◇◇◇◇



 後ろで車が走っていく音を聞いて、寂しくなる。会えば寂しい気持ちが募るのは分かっていた。だけど会いたい思いは強かった。
 誰にも話せないふたりのこと。も知らないふたりのこと。認めてもらえるとは思ってもいない。
 でも秘密にしているのは心苦しくなる。

 堂々と会いたい。
 でもそれは出来ない。相手は自分よりも10も上。崇弘が悪く言われてしまうだろう。
(早く大人になりたい……)
 誰にも文句を言わせないくらいになりたい。
 そう思いながら家路を急いだ──……。




 第1章   終
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣
恋愛
社会人の鳳健吾(おおとりけんご)と高校生の鮫島凛香(さめじまりんか)はアパートのお隣同士だった。 兄貴気質であるケンゴはシングルマザーで常に働きに出ているリンカの母親に代わってよく彼女の面倒を見ていた。 リンカが中学生になった頃、ケンゴは海外に転勤してしまい、三年の月日が流れる。 三年ぶりに日本のアパートに戻って来たケンゴに対してリンカは、 「なんだ。帰ってきたんだ」 と、嫌悪な様子で接するのだった。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

処理中です...