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第1章
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「ちゅ……っ」
「ん……っ」
車内に響く、ふたりが口づけを交わす音。その音が妙に大きく聞こえて、沙樹は恥ずかしい。崇弘の舌が沙樹の口内に侵入してくると、頭が混乱し出す。
「んんん……っ」
思わず両手で崇弘を押した。
「沙樹?」
「え……っと、あ、あの、えっと……」
混乱し過ぎて頭がついていかない。そんな沙樹に気付いてふっと笑みを溢す。
「なんて顔してんの」
「ええっと……、あの……、きゃっ!」
崇弘は腰を支えるようにしながら、自分の上に沙樹を座らせた。
「沙樹。今度、うちに泊まりに来い」
「え……」
「会うと帰したくなくなる。もっと一緒にいたい」
「タカちゃん。……私も。もっと一緒にいたい」
そう答えると沙樹は崇弘の首に手を回した。
「いいよ。キスしたいならしろよ」
顔を真っ赤にしながら沙樹は崇弘にキスをした。
「時間……だな」
暫く抱きあっていたふたり。崇弘は沙樹から身体を離すとせつない顔をしていた。
「ほら。もう、車降りて」
そう言うが、なかなか沙樹は崇弘から離れようとしない。
「沙樹」
「もう少し……」
「ダメ。門限、あるだろ」
「でも……」
崇弘を見上げる沙樹の瞳は潤んでいる。
「……んな顔、すんなよ」
(このまま連れ去りたい)
崇弘はそう思ってしまう。輝の妹に手を出した時点でアウトだと思ってるのに、そんなことをしたら輝に殺される勢いだろう。それをふたりは分かっている。
「また連絡する」
優しく話しかける崇弘にただ頷くしかない。
「ほら」
沙樹の背中を軽く押す崇弘。名残惜しそうに振り向く沙樹に笑いかけ、運転席に戻る。沙樹が家に向かって歩いていくのを確認して、エンジンをかけた。
(また会えない日が続くな)
崇弘はゆっくりと車を走らせた。
◇◇◇◇◇
後ろで車が走っていく音を聞いて、寂しくなる。会えば寂しい気持ちが募るのは分かっていた。だけど会いたい思いは強かった。
誰にも話せないふたりのこと。輝も知らないふたりのこと。認めてもらえるとは思ってもいない。
でも秘密にしているのは心苦しくなる。
堂々と会いたい。
でもそれは出来ない。相手は自分よりも10も上。崇弘が悪く言われてしまうだろう。
(早く大人になりたい……)
誰にも文句を言わせないくらいになりたい。
そう思いながら家路を急いだ──……。
第1章 終
「ん……っ」
車内に響く、ふたりが口づけを交わす音。その音が妙に大きく聞こえて、沙樹は恥ずかしい。崇弘の舌が沙樹の口内に侵入してくると、頭が混乱し出す。
「んんん……っ」
思わず両手で崇弘を押した。
「沙樹?」
「え……っと、あ、あの、えっと……」
混乱し過ぎて頭がついていかない。そんな沙樹に気付いてふっと笑みを溢す。
「なんて顔してんの」
「ええっと……、あの……、きゃっ!」
崇弘は腰を支えるようにしながら、自分の上に沙樹を座らせた。
「沙樹。今度、うちに泊まりに来い」
「え……」
「会うと帰したくなくなる。もっと一緒にいたい」
「タカちゃん。……私も。もっと一緒にいたい」
そう答えると沙樹は崇弘の首に手を回した。
「いいよ。キスしたいならしろよ」
顔を真っ赤にしながら沙樹は崇弘にキスをした。
「時間……だな」
暫く抱きあっていたふたり。崇弘は沙樹から身体を離すとせつない顔をしていた。
「ほら。もう、車降りて」
そう言うが、なかなか沙樹は崇弘から離れようとしない。
「沙樹」
「もう少し……」
「ダメ。門限、あるだろ」
「でも……」
崇弘を見上げる沙樹の瞳は潤んでいる。
「……んな顔、すんなよ」
(このまま連れ去りたい)
崇弘はそう思ってしまう。輝の妹に手を出した時点でアウトだと思ってるのに、そんなことをしたら輝に殺される勢いだろう。それをふたりは分かっている。
「また連絡する」
優しく話しかける崇弘にただ頷くしかない。
「ほら」
沙樹の背中を軽く押す崇弘。名残惜しそうに振り向く沙樹に笑いかけ、運転席に戻る。沙樹が家に向かって歩いていくのを確認して、エンジンをかけた。
(また会えない日が続くな)
崇弘はゆっくりと車を走らせた。
◇◇◇◇◇
後ろで車が走っていく音を聞いて、寂しくなる。会えば寂しい気持ちが募るのは分かっていた。だけど会いたい思いは強かった。
誰にも話せないふたりのこと。輝も知らないふたりのこと。認めてもらえるとは思ってもいない。
でも秘密にしているのは心苦しくなる。
堂々と会いたい。
でもそれは出来ない。相手は自分よりも10も上。崇弘が悪く言われてしまうだろう。
(早く大人になりたい……)
誰にも文句を言わせないくらいになりたい。
そう思いながら家路を急いだ──……。
第1章 終
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