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プロローグ
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沙樹が高幡家に来てから2年経った。来たばかりの時は笑顔はなかった沙樹が、少しずつ笑顔を見せてくれるようになった。
今、沙樹は小学2年生。輝は高校2年生だった。
輝は沙樹をよく連れ出していた。学校の友達と遊ぶことが少ない沙樹を心配して、沙樹を連れて行く。
それが湊たちと一緒にいる時でもそうだった。
「ただいまー!」
店に顔を出した輝は客の相手をしていた母親に言うと、店の隅にちょこんと座っている沙樹を見た。
「沙樹。俺、遊びに行くけど来る?」
「うん」
座って本を読んでた沙樹は、本を閉じて輝に駆け寄った。
「遅くならないでよ」
母親はふたりに言うとまた客の話を聞いていた。
沙樹が輝の友人、三浦崇弘と出会ったのはそんな頃だった。
◇◇◇◇◇
「待たせた」
自転車の後ろに沙樹を乗せた輝が、湊たちと待ち合わせた場所へと到着した。
「あれ。沙樹ちゃん」
湊は沙樹に会ったことあるから知っていた。だが、他の真司と崇弘と零士は沙樹のことを知らない。
「誰?」
「妹」
輝はそう答えると、輝の背中から顔を出そうとしない沙樹に崇弘が目線を合わせた。
「初めまして。三浦崇弘です。よろしくね」
その笑顔に沙樹は釘付けになったのは、その時誰も気付いてなかった。
そんな崇弘との出会いから数年後。輝たちのバンドはデビューを果たした。湊は医大生となり、バンドから脱退。
そしてそのまた数年後には零士はファンの子に刺される事件が起きた。
「お兄ちゃん」
「ん?」
中学3年生の沙樹は、零士の事件を心配して輝に聞いていた。
輝は沙樹に「大丈夫だよ」と答える。沙樹にとって輝の友人たちは、兄のような存在。心配はする。
「会えないの?」
「会えない」
この時はまだ零士は目が覚めることなく、病院のベッドの上だった。
「お前は受験のことをちゃんと考えてなさい」
そう言うと沙樹に笑う。
「母さん。じゃ俺行くから」
輝は時間を見つけては実家に戻ってくる。この日も実家に戻って来ては沙樹の様子を伺っていたのだ。
「零士くん、早く回復するといいわね」
そう言われて、微かに笑ってみせた。
「じゃあな」
沙樹の頭を撫でて輝はまた戻っていく。そんな後ろ姿を見て沙樹は心配だった。
「大丈夫よ」
母に言われて頷いた。
今、沙樹は小学2年生。輝は高校2年生だった。
輝は沙樹をよく連れ出していた。学校の友達と遊ぶことが少ない沙樹を心配して、沙樹を連れて行く。
それが湊たちと一緒にいる時でもそうだった。
「ただいまー!」
店に顔を出した輝は客の相手をしていた母親に言うと、店の隅にちょこんと座っている沙樹を見た。
「沙樹。俺、遊びに行くけど来る?」
「うん」
座って本を読んでた沙樹は、本を閉じて輝に駆け寄った。
「遅くならないでよ」
母親はふたりに言うとまた客の話を聞いていた。
沙樹が輝の友人、三浦崇弘と出会ったのはそんな頃だった。
◇◇◇◇◇
「待たせた」
自転車の後ろに沙樹を乗せた輝が、湊たちと待ち合わせた場所へと到着した。
「あれ。沙樹ちゃん」
湊は沙樹に会ったことあるから知っていた。だが、他の真司と崇弘と零士は沙樹のことを知らない。
「誰?」
「妹」
輝はそう答えると、輝の背中から顔を出そうとしない沙樹に崇弘が目線を合わせた。
「初めまして。三浦崇弘です。よろしくね」
その笑顔に沙樹は釘付けになったのは、その時誰も気付いてなかった。
そんな崇弘との出会いから数年後。輝たちのバンドはデビューを果たした。湊は医大生となり、バンドから脱退。
そしてそのまた数年後には零士はファンの子に刺される事件が起きた。
「お兄ちゃん」
「ん?」
中学3年生の沙樹は、零士の事件を心配して輝に聞いていた。
輝は沙樹に「大丈夫だよ」と答える。沙樹にとって輝の友人たちは、兄のような存在。心配はする。
「会えないの?」
「会えない」
この時はまだ零士は目が覚めることなく、病院のベッドの上だった。
「お前は受験のことをちゃんと考えてなさい」
そう言うと沙樹に笑う。
「母さん。じゃ俺行くから」
輝は時間を見つけては実家に戻ってくる。この日も実家に戻って来ては沙樹の様子を伺っていたのだ。
「零士くん、早く回復するといいわね」
そう言われて、微かに笑ってみせた。
「じゃあな」
沙樹の頭を撫でて輝はまた戻っていく。そんな後ろ姿を見て沙樹は心配だった。
「大丈夫よ」
母に言われて頷いた。
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