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第5章
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柚子は何もないマンションの部屋に椅子に座らされ、手足を縛り付けられていた。
車の中でブラウスのボタンは引き千切られてはだけている。
口に入れられたタオルは外されていた。
「ねえ」
部屋の中には紫とふたりだけだった。男たちは他の部屋で待機している。
「なんでREIJIと?」
「言う必要ない」
「誰がしゃべっていいって言った?」
その笑いは不自然で気持ち悪い。高校生の頃の紫とは違っていて、柚子は怖かった。
いや。始めっからそうだったのかもしれない。柚子が知らないだけで……。
「本当は、高校ん時からムカついていたのよ」
柚子を見る紫の顔は冷たかった。背筋が凍るように冷たい。
「だって……、あなたのお兄さん、BRの元メンバーでしょ」
「なんで……」
「しゃべるなって言ってるでしょ」
柚子に近付き、柚子のはだけたブラウスに触れる。そのブラウスをさらに引き千切る。
柚子の白い素肌が見える。さらに履いていたスカートのウエスト部分にナイフを当てた。そのままナイフを動かしていく。
ビリビリッとスカートが破れて柚子の太腿が露になった。
「………っ!」
ナイフを動かした時に、刃先が太腿に軽く触れ、スー……と赤い血液が流れていく。
「あ~あ、キレイな太腿に……」
部屋にもうひとり入ってきた。その人が柚子の太腿に流れる血液を見て不適な笑みを溢す。
「紫、やりすぎ」
「だって、ムカつく」
紫は持っていたナイフを再び柚子に向けていた。
「……やめて」
柚子の声は聞かない。まっすぐナイフをブラジャーの真ん中に入れた。
「ムカつく。ほんとに。なんであんた……、私のREIJIと……」
紫は本当にREIJIしか見えてなかった。目の前にあるもの全てから逃げてるようにも見えた。だからREIJIしか見えてない。
ザッと、ブラジャーを切られ柚子の胸が姿を表す。
「ムカつく。本当に」
胸元につけられた赤い跡。それに気付いた紫は顔を赤くし、怒り出していた。
◇◇◇◇◇
そのマンションの前に着いた湊と優奈は、疑わしいと思う部屋を探しだした。
だけどそれは簡単には分かる筈もなかった。
♪~♪~♪~!
何度も柚子に電話をかける湊。どうにかその音が聞こえないかとひとつひとつのドアの前で聞き耳を立てる。だがそんなに簡単に聞こえるわけない。
「柚子……っ」
湊がこんなにも焦ってる姿を見るのは初めてだった。柚子がこんなにも大切にされているんだって知って、こんな時なのに少し羨ましいと優奈は感じた。
「柚子ちゃんを探さなきゃ……」
また先を急ぐ優奈に着信が入る。
そのスマホ画面には【柚子】の文字。
この前、柚子と番号を交換したばかりで初めての着信だった。
だけど、電話の向こうの声は柚子ではなかった。
『こんにちは。PINK ROSEのリーダーの優奈さん』
その声には聞き覚えがあった。
「DREAM ROSEの……っ」
伊原華。紫の姉だった。そしてこの華は、優奈と犬猿の仲。
「華っ!柚子はっ!」
『あ─……、妹がね、ちょっと遊んでる』
「遊んでるって……」
『早くおいでよ。面白いから』
そう言って電話が切れ、その後すぐに写真が送られてきた。
その写真を見て、優奈は泣き出しそうになっていた。
「どうした?」
優奈に近付き、スマホを覗き込む。
そこには椅子に座らされて手足を縛られ、洋服を引き千切られた柚子がいた。
顔や身体に殴られた跡が残っていた。切られて血も流している。
その写真を見た湊は怒りで身体が震えていた。
「……どこにいる」
静かな声はマンションの外廊下に響いた。その声は非常に冷たく恐怖を感じさせた。そのタイミングで優奈のスマホがメッセージを受け取っていた。
「あ……」
そのメッセージには部屋番号が書かれていた。
◇◇◇◇◇
ドンドンドン!!
湊が乱暴にドアを叩く。インターフォンも連打していた。
「華!開けなさい!」
優奈も叫んでいた。
暫くして、ガチャリとドアが開いた。そこに立っていたのは柚子を捕まえた男のひとりだった。
格闘でもやっていたのか、体格はいい。だが、湊も負けてない体格だ。暇さえあれば鍛えてるから。
身長も湊の方が高い。相手は湊を睨んでいたが、その眼力に根負けしたかのように後ずさった。
靴は履いたまま、ドカドカと部屋の奥へと入っていく湊。その後ろを優奈も着いていく。
ガチャとリビングのドアを開けると、そこにはぐったりとした柚子がいた。そしてその柚子を見下ろしてる紫がいる。
紫が湊と優奈に気付くとニヤリと笑う。奥ではソファーに座った華がいた。
「うちの妹、怒ると手がつけられないのよ」
と、呆れた顔をした。
「そっちの男はあんたのカレシ?」
そう言う華の言葉に触れず、湊は柚子を抱きしめた。それを見て華が優奈に聞いた。
「この子、他にも男いるわけ?」
そんな華の言葉はふたり共、聞いてなかった。というより、無視してた。そして湊の声が聞こえた。
「──…………を」
なんて言ったのか分からないくらい、低い声が部屋に響いた。
車の中でブラウスのボタンは引き千切られてはだけている。
口に入れられたタオルは外されていた。
「ねえ」
部屋の中には紫とふたりだけだった。男たちは他の部屋で待機している。
「なんでREIJIと?」
「言う必要ない」
「誰がしゃべっていいって言った?」
その笑いは不自然で気持ち悪い。高校生の頃の紫とは違っていて、柚子は怖かった。
いや。始めっからそうだったのかもしれない。柚子が知らないだけで……。
「本当は、高校ん時からムカついていたのよ」
柚子を見る紫の顔は冷たかった。背筋が凍るように冷たい。
「だって……、あなたのお兄さん、BRの元メンバーでしょ」
「なんで……」
「しゃべるなって言ってるでしょ」
柚子に近付き、柚子のはだけたブラウスに触れる。そのブラウスをさらに引き千切る。
柚子の白い素肌が見える。さらに履いていたスカートのウエスト部分にナイフを当てた。そのままナイフを動かしていく。
ビリビリッとスカートが破れて柚子の太腿が露になった。
「………っ!」
ナイフを動かした時に、刃先が太腿に軽く触れ、スー……と赤い血液が流れていく。
「あ~あ、キレイな太腿に……」
部屋にもうひとり入ってきた。その人が柚子の太腿に流れる血液を見て不適な笑みを溢す。
「紫、やりすぎ」
「だって、ムカつく」
紫は持っていたナイフを再び柚子に向けていた。
「……やめて」
柚子の声は聞かない。まっすぐナイフをブラジャーの真ん中に入れた。
「ムカつく。ほんとに。なんであんた……、私のREIJIと……」
紫は本当にREIJIしか見えてなかった。目の前にあるもの全てから逃げてるようにも見えた。だからREIJIしか見えてない。
ザッと、ブラジャーを切られ柚子の胸が姿を表す。
「ムカつく。本当に」
胸元につけられた赤い跡。それに気付いた紫は顔を赤くし、怒り出していた。
◇◇◇◇◇
そのマンションの前に着いた湊と優奈は、疑わしいと思う部屋を探しだした。
だけどそれは簡単には分かる筈もなかった。
♪~♪~♪~!
何度も柚子に電話をかける湊。どうにかその音が聞こえないかとひとつひとつのドアの前で聞き耳を立てる。だがそんなに簡単に聞こえるわけない。
「柚子……っ」
湊がこんなにも焦ってる姿を見るのは初めてだった。柚子がこんなにも大切にされているんだって知って、こんな時なのに少し羨ましいと優奈は感じた。
「柚子ちゃんを探さなきゃ……」
また先を急ぐ優奈に着信が入る。
そのスマホ画面には【柚子】の文字。
この前、柚子と番号を交換したばかりで初めての着信だった。
だけど、電話の向こうの声は柚子ではなかった。
『こんにちは。PINK ROSEのリーダーの優奈さん』
その声には聞き覚えがあった。
「DREAM ROSEの……っ」
伊原華。紫の姉だった。そしてこの華は、優奈と犬猿の仲。
「華っ!柚子はっ!」
『あ─……、妹がね、ちょっと遊んでる』
「遊んでるって……」
『早くおいでよ。面白いから』
そう言って電話が切れ、その後すぐに写真が送られてきた。
その写真を見て、優奈は泣き出しそうになっていた。
「どうした?」
優奈に近付き、スマホを覗き込む。
そこには椅子に座らされて手足を縛られ、洋服を引き千切られた柚子がいた。
顔や身体に殴られた跡が残っていた。切られて血も流している。
その写真を見た湊は怒りで身体が震えていた。
「……どこにいる」
静かな声はマンションの外廊下に響いた。その声は非常に冷たく恐怖を感じさせた。そのタイミングで優奈のスマホがメッセージを受け取っていた。
「あ……」
そのメッセージには部屋番号が書かれていた。
◇◇◇◇◇
ドンドンドン!!
湊が乱暴にドアを叩く。インターフォンも連打していた。
「華!開けなさい!」
優奈も叫んでいた。
暫くして、ガチャリとドアが開いた。そこに立っていたのは柚子を捕まえた男のひとりだった。
格闘でもやっていたのか、体格はいい。だが、湊も負けてない体格だ。暇さえあれば鍛えてるから。
身長も湊の方が高い。相手は湊を睨んでいたが、その眼力に根負けしたかのように後ずさった。
靴は履いたまま、ドカドカと部屋の奥へと入っていく湊。その後ろを優奈も着いていく。
ガチャとリビングのドアを開けると、そこにはぐったりとした柚子がいた。そしてその柚子を見下ろしてる紫がいる。
紫が湊と優奈に気付くとニヤリと笑う。奥ではソファーに座った華がいた。
「うちの妹、怒ると手がつけられないのよ」
と、呆れた顔をした。
「そっちの男はあんたのカレシ?」
そう言う華の言葉に触れず、湊は柚子を抱きしめた。それを見て華が優奈に聞いた。
「この子、他にも男いるわけ?」
そんな華の言葉はふたり共、聞いてなかった。というより、無視してた。そして湊の声が聞こえた。
「──…………を」
なんて言ったのか分からないくらい、低い声が部屋に響いた。
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