73 / 104
第5章
4
しおりを挟む
抱きしめる腕の中で眠る柚子。そのぬくもりに、幸せを感じる。
白い素肌が零士を掻き立てる。
(ヤバいな……)
散々求めた後なのに、まだ足りない。まだまだ柚子が欲しい。
「柚子」
おでこにキスをして、柚子を抱き寄せる。それに気付いた柚子はうっすらと目を開ける。
「れ……いじさん……?」
「ちゅ……っ」
唇を重ねると零士はまた柚子に覆い被さる。
「柚子」
「零士さん……」
「もっとシたいんだけど」
「え」
「ダメ?」
「ム、ムリ」
顔を背けた柚子は顔が真っ赤だ。
「そんな顔されると余計に抱きたくなるんだけど」
そう言ってまたキスをする。
「もう……っ、ダメだってっ!」
柚子の身体中にキスを落とす零士に抵抗する。身体がダルくてそれすらも儘ならない。零士に抱かれるのは幸せだけど、幸せなんだけど、身体がついていかない。
「零士さんっ、本当にもう、ムリ……」
抵抗する気力もなく、ぐったりとし始める柚子に気付き抱き寄せる。
「ごめん」
一言、謝るとそのまま瞼を閉じた。
◇◇◇◇◇
「ただいまー」
湊と暮らすアパートに帰ると、湊がリビングでテレビを観ていた。
「なんだ。今日はこっち帰ってきたのか」
柚子に視線を移すと心配そうな顔をしていた。
「なに?」
「ん、ただな、あんまり零士んとこ行くなよと思ってな」
「え」
「真司のことがあったからさ。マークされるんじゃねぇかと」
真司の一件で、他のメンバーまでマークされていると優樹菜が湊に連絡してきたのだ。零士が付き合ってるのは湊の妹だと、優樹菜は知ってる。だからこそ、湊に連絡を入れたのだった。
「優樹菜が心配してんだよ。お前、まだ大学生だから」
優樹菜は柚子を心配してくれていた。会ったこともないが、湊の妹だから、傷付くのではないかと心配している。
「優樹菜にやめさせろって言われたよ」
「え?」
「この世界の汚い部分触れさせたくないでしょって言われた」
マスコミはどんな汚い手を使ってでもスキャンダルが欲しいんだよと言われたようで、マークされていると。
「ネットニュースでも零士の彼女の存在出てるから、俺は心配だよ」
パチッとテレビを消して、立ち上がり柚子の傍まで歩く。ぽんっと頭を手を置くと、優しい顔をして見る。
「気を付けろ、マジでさ」
本当に心配しているんだなと思う。
(分かってるけど……。会えないのは嫌)
頭では分かってる。頻繁に会うことが、どんなことになるのか。それでもふたりは離れることが出来ない。
(弱いよね……)
意志が弱いと思ってしまう。
会いたい。
会いたい。
会いたい。
いつもどんな時でも傍にいたい。
それが柚子の本音だった。
◇◇◇◇◇
『柚子。ゆうちゃんから伝言!』
と、電話があったのは次の週末だった。いつものように零士のマンションにいる時だった。
「なに?」
久しぶりに優奈の名前を聞いた柚子は、会いたいなと思った。だけどその会いたい優奈からの伝言は、柚子を凍りつかせるものだった。
『うちのチームと敵対してるチームがあるのね』
ファンチームでも敵対するチームがあるらしく、優奈のファンチームと敵対しているチームがあった。
単に相性が悪い。
同じバンドのファンなのに、相性が悪いととことん敵対するらしい。
その敵対するチームから【REIJIの彼女】の襲撃予告というものを知ったらしい。柚子が少なくとも優奈と関わりを持ってることを知ってる。その柚子が零士の【彼女】だってことを知ってるらしい。
『だから気をつけて!そのチーム、本当に何をするか分からないから!』
芽依が珍しく慌てていた。
柚子が零士の彼女だということを知ってるのはごく一部。
兄貴とメンバー、マネージャーの優樹菜。そして芽依に煌太に優奈と陽葵。高校時代の勇一とその兄の健一。零士の兄の祐士。
陽葵は柚子のことを認めてない感じではあったが、零士にお願いされては言わないだろう。優奈にも口止めするようにきつく言われてる筈だし。
(じゃどこで……)
よくよく考えてみれば見られてる可能性もある。ファンなら零士のマンションを知ってる。そのマンションに出入りする女が柚子だって分かるだろう。その女が元メンバーの妹だってことも調べはついてるかもしれないのだから。
電話を切ってから暫く動けなくなっていた。それに気付いた零士は後ろから抱いてくる。
「なんかあった?」
「ん……」
なんて答えればいいのか分からずに生返事をしてしまった柚子の顔を自分の方に向かせる。
「柚子」
柚子は零士の顔を見上げてポツリポツリと話し出した。
柚子が話し終わるまで黙って聞いていた零士は、柚子をソファーに座らせた。
「大丈夫。きっと大丈夫だから」
いつもなら零士の言葉は柚子を勇気づけてくれるのだが、今日はそれがない。零士自身もそろそろ本気でバレるのでは……と、感じているのだ。
白い素肌が零士を掻き立てる。
(ヤバいな……)
散々求めた後なのに、まだ足りない。まだまだ柚子が欲しい。
「柚子」
おでこにキスをして、柚子を抱き寄せる。それに気付いた柚子はうっすらと目を開ける。
「れ……いじさん……?」
「ちゅ……っ」
唇を重ねると零士はまた柚子に覆い被さる。
「柚子」
「零士さん……」
「もっとシたいんだけど」
「え」
「ダメ?」
「ム、ムリ」
顔を背けた柚子は顔が真っ赤だ。
「そんな顔されると余計に抱きたくなるんだけど」
そう言ってまたキスをする。
「もう……っ、ダメだってっ!」
柚子の身体中にキスを落とす零士に抵抗する。身体がダルくてそれすらも儘ならない。零士に抱かれるのは幸せだけど、幸せなんだけど、身体がついていかない。
「零士さんっ、本当にもう、ムリ……」
抵抗する気力もなく、ぐったりとし始める柚子に気付き抱き寄せる。
「ごめん」
一言、謝るとそのまま瞼を閉じた。
◇◇◇◇◇
「ただいまー」
湊と暮らすアパートに帰ると、湊がリビングでテレビを観ていた。
「なんだ。今日はこっち帰ってきたのか」
柚子に視線を移すと心配そうな顔をしていた。
「なに?」
「ん、ただな、あんまり零士んとこ行くなよと思ってな」
「え」
「真司のことがあったからさ。マークされるんじゃねぇかと」
真司の一件で、他のメンバーまでマークされていると優樹菜が湊に連絡してきたのだ。零士が付き合ってるのは湊の妹だと、優樹菜は知ってる。だからこそ、湊に連絡を入れたのだった。
「優樹菜が心配してんだよ。お前、まだ大学生だから」
優樹菜は柚子を心配してくれていた。会ったこともないが、湊の妹だから、傷付くのではないかと心配している。
「優樹菜にやめさせろって言われたよ」
「え?」
「この世界の汚い部分触れさせたくないでしょって言われた」
マスコミはどんな汚い手を使ってでもスキャンダルが欲しいんだよと言われたようで、マークされていると。
「ネットニュースでも零士の彼女の存在出てるから、俺は心配だよ」
パチッとテレビを消して、立ち上がり柚子の傍まで歩く。ぽんっと頭を手を置くと、優しい顔をして見る。
「気を付けろ、マジでさ」
本当に心配しているんだなと思う。
(分かってるけど……。会えないのは嫌)
頭では分かってる。頻繁に会うことが、どんなことになるのか。それでもふたりは離れることが出来ない。
(弱いよね……)
意志が弱いと思ってしまう。
会いたい。
会いたい。
会いたい。
いつもどんな時でも傍にいたい。
それが柚子の本音だった。
◇◇◇◇◇
『柚子。ゆうちゃんから伝言!』
と、電話があったのは次の週末だった。いつものように零士のマンションにいる時だった。
「なに?」
久しぶりに優奈の名前を聞いた柚子は、会いたいなと思った。だけどその会いたい優奈からの伝言は、柚子を凍りつかせるものだった。
『うちのチームと敵対してるチームがあるのね』
ファンチームでも敵対するチームがあるらしく、優奈のファンチームと敵対しているチームがあった。
単に相性が悪い。
同じバンドのファンなのに、相性が悪いととことん敵対するらしい。
その敵対するチームから【REIJIの彼女】の襲撃予告というものを知ったらしい。柚子が少なくとも優奈と関わりを持ってることを知ってる。その柚子が零士の【彼女】だってことを知ってるらしい。
『だから気をつけて!そのチーム、本当に何をするか分からないから!』
芽依が珍しく慌てていた。
柚子が零士の彼女だということを知ってるのはごく一部。
兄貴とメンバー、マネージャーの優樹菜。そして芽依に煌太に優奈と陽葵。高校時代の勇一とその兄の健一。零士の兄の祐士。
陽葵は柚子のことを認めてない感じではあったが、零士にお願いされては言わないだろう。優奈にも口止めするようにきつく言われてる筈だし。
(じゃどこで……)
よくよく考えてみれば見られてる可能性もある。ファンなら零士のマンションを知ってる。そのマンションに出入りする女が柚子だって分かるだろう。その女が元メンバーの妹だってことも調べはついてるかもしれないのだから。
電話を切ってから暫く動けなくなっていた。それに気付いた零士は後ろから抱いてくる。
「なんかあった?」
「ん……」
なんて答えればいいのか分からずに生返事をしてしまった柚子の顔を自分の方に向かせる。
「柚子」
柚子は零士の顔を見上げてポツリポツリと話し出した。
柚子が話し終わるまで黙って聞いていた零士は、柚子をソファーに座らせた。
「大丈夫。きっと大丈夫だから」
いつもなら零士の言葉は柚子を勇気づけてくれるのだが、今日はそれがない。零士自身もそろそろ本気でバレるのでは……と、感じているのだ。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R18】カッコウは夜、羽ばたく 〜従姉と従弟の托卵秘事〜
船橋ひろみ
恋愛
【エロシーンには※印がついています】
お急ぎの方や濃厚なエロシーンが見たい方はタイトルに「※」がついている話をどうぞ。読者の皆様のお気に入りのお楽しみシーンを見つけてくださいね。
表紙、挿絵はAIイラストをベースに私が加工しています。著作権は私に帰属します。
【ストーリー】
見覚えのあるレインコート。鎌ヶ谷翔太の胸が高鳴る。
会社を半休で抜け出した平日午後。雨がそぼ降る駅で待ち合わせたのは、従姉の人妻、藤沢あかねだった。
手をつないで歩きだす二人には、翔太は恋人と、あかねは夫との、それぞれ愛の暮らしと違う『もう一つの愛の暮らし』がある。
親族同士の結ばれないが離れがたい、二人だけのひそやかな関係。そして、会うたびにさらけだす『むき出しの欲望』は、お互いをますます離れがたくする。
いつまで二人だけの関係を続けられるか、という不安と、従姉への抑えきれない愛情を抱えながら、翔太はあかねを抱き寄せる……
托卵人妻と従弟の青年の、抜け出すことができない愛の関係を描いた物語。
◆登場人物
・ 鎌ヶ谷翔太(26) パルサーソリューションズ勤務の営業マン
・ 藤沢あかね(29) 三和ケミカル勤務の経営企画員
・ 八幡栞 (28) パルサーソリューションズ勤務の業務管理部員。翔太の彼女
・ 藤沢茂 (34) シャインメディカル医療機器勤務の経理マン。あかねの夫。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。
——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない)
※完結直後のものです。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
先生、生徒に手を出した上にそんな淫らな姿を晒すなんて失格ですよ
ヘロディア
恋愛
早朝の教室に、艶やかな喘ぎ声がかすかに響く。
それは男子学生である主人公、光と若手美人女性教師のあってはならない関係が起こすものだった。
しかしある日、主人公の数少ない友達である一野はその真実に気づくことになる…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる