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第5章
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抱きしめる腕の中で眠る柚子。そのぬくもりに、幸せを感じる。
白い素肌が零士を掻き立てる。
(ヤバいな……)
散々求めた後なのに、まだ足りない。まだまだ柚子が欲しい。
「柚子」
おでこにキスをして、柚子を抱き寄せる。それに気付いた柚子はうっすらと目を開ける。
「れ……いじさん……?」
「ちゅ……っ」
唇を重ねると零士はまた柚子に覆い被さる。
「柚子」
「零士さん……」
「もっとシたいんだけど」
「え」
「ダメ?」
「ム、ムリ」
顔を背けた柚子は顔が真っ赤だ。
「そんな顔されると余計に抱きたくなるんだけど」
そう言ってまたキスをする。
「もう……っ、ダメだってっ!」
柚子の身体中にキスを落とす零士に抵抗する。身体がダルくてそれすらも儘ならない。零士に抱かれるのは幸せだけど、幸せなんだけど、身体がついていかない。
「零士さんっ、本当にもう、ムリ……」
抵抗する気力もなく、ぐったりとし始める柚子に気付き抱き寄せる。
「ごめん」
一言、謝るとそのまま瞼を閉じた。
◇◇◇◇◇
「ただいまー」
湊と暮らすアパートに帰ると、湊がリビングでテレビを観ていた。
「なんだ。今日はこっち帰ってきたのか」
柚子に視線を移すと心配そうな顔をしていた。
「なに?」
「ん、ただな、あんまり零士んとこ行くなよと思ってな」
「え」
「真司のことがあったからさ。マークされるんじゃねぇかと」
真司の一件で、他のメンバーまでマークされていると優樹菜が湊に連絡してきたのだ。零士が付き合ってるのは湊の妹だと、優樹菜は知ってる。だからこそ、湊に連絡を入れたのだった。
「優樹菜が心配してんだよ。お前、まだ大学生だから」
優樹菜は柚子を心配してくれていた。会ったこともないが、湊の妹だから、傷付くのではないかと心配している。
「優樹菜にやめさせろって言われたよ」
「え?」
「この世界の汚い部分触れさせたくないでしょって言われた」
マスコミはどんな汚い手を使ってでもスキャンダルが欲しいんだよと言われたようで、マークされていると。
「ネットニュースでも零士の彼女の存在出てるから、俺は心配だよ」
パチッとテレビを消して、立ち上がり柚子の傍まで歩く。ぽんっと頭を手を置くと、優しい顔をして見る。
「気を付けろ、マジでさ」
本当に心配しているんだなと思う。
(分かってるけど……。会えないのは嫌)
頭では分かってる。頻繁に会うことが、どんなことになるのか。それでもふたりは離れることが出来ない。
(弱いよね……)
意志が弱いと思ってしまう。
会いたい。
会いたい。
会いたい。
いつもどんな時でも傍にいたい。
それが柚子の本音だった。
◇◇◇◇◇
『柚子。ゆうちゃんから伝言!』
と、電話があったのは次の週末だった。いつものように零士のマンションにいる時だった。
「なに?」
久しぶりに優奈の名前を聞いた柚子は、会いたいなと思った。だけどその会いたい優奈からの伝言は、柚子を凍りつかせるものだった。
『うちのチームと敵対してるチームがあるのね』
ファンチームでも敵対するチームがあるらしく、優奈のファンチームと敵対しているチームがあった。
単に相性が悪い。
同じバンドのファンなのに、相性が悪いととことん敵対するらしい。
その敵対するチームから【REIJIの彼女】の襲撃予告というものを知ったらしい。柚子が少なくとも優奈と関わりを持ってることを知ってる。その柚子が零士の【彼女】だってことを知ってるらしい。
『だから気をつけて!そのチーム、本当に何をするか分からないから!』
芽依が珍しく慌てていた。
柚子が零士の彼女だということを知ってるのはごく一部。
兄貴とメンバー、マネージャーの優樹菜。そして芽依に煌太に優奈と陽葵。高校時代の勇一とその兄の健一。零士の兄の祐士。
陽葵は柚子のことを認めてない感じではあったが、零士にお願いされては言わないだろう。優奈にも口止めするようにきつく言われてる筈だし。
(じゃどこで……)
よくよく考えてみれば見られてる可能性もある。ファンなら零士のマンションを知ってる。そのマンションに出入りする女が柚子だって分かるだろう。その女が元メンバーの妹だってことも調べはついてるかもしれないのだから。
電話を切ってから暫く動けなくなっていた。それに気付いた零士は後ろから抱いてくる。
「なんかあった?」
「ん……」
なんて答えればいいのか分からずに生返事をしてしまった柚子の顔を自分の方に向かせる。
「柚子」
柚子は零士の顔を見上げてポツリポツリと話し出した。
柚子が話し終わるまで黙って聞いていた零士は、柚子をソファーに座らせた。
「大丈夫。きっと大丈夫だから」
いつもなら零士の言葉は柚子を勇気づけてくれるのだが、今日はそれがない。零士自身もそろそろ本気でバレるのでは……と、感じているのだ。
白い素肌が零士を掻き立てる。
(ヤバいな……)
散々求めた後なのに、まだ足りない。まだまだ柚子が欲しい。
「柚子」
おでこにキスをして、柚子を抱き寄せる。それに気付いた柚子はうっすらと目を開ける。
「れ……いじさん……?」
「ちゅ……っ」
唇を重ねると零士はまた柚子に覆い被さる。
「柚子」
「零士さん……」
「もっとシたいんだけど」
「え」
「ダメ?」
「ム、ムリ」
顔を背けた柚子は顔が真っ赤だ。
「そんな顔されると余計に抱きたくなるんだけど」
そう言ってまたキスをする。
「もう……っ、ダメだってっ!」
柚子の身体中にキスを落とす零士に抵抗する。身体がダルくてそれすらも儘ならない。零士に抱かれるのは幸せだけど、幸せなんだけど、身体がついていかない。
「零士さんっ、本当にもう、ムリ……」
抵抗する気力もなく、ぐったりとし始める柚子に気付き抱き寄せる。
「ごめん」
一言、謝るとそのまま瞼を閉じた。
◇◇◇◇◇
「ただいまー」
湊と暮らすアパートに帰ると、湊がリビングでテレビを観ていた。
「なんだ。今日はこっち帰ってきたのか」
柚子に視線を移すと心配そうな顔をしていた。
「なに?」
「ん、ただな、あんまり零士んとこ行くなよと思ってな」
「え」
「真司のことがあったからさ。マークされるんじゃねぇかと」
真司の一件で、他のメンバーまでマークされていると優樹菜が湊に連絡してきたのだ。零士が付き合ってるのは湊の妹だと、優樹菜は知ってる。だからこそ、湊に連絡を入れたのだった。
「優樹菜が心配してんだよ。お前、まだ大学生だから」
優樹菜は柚子を心配してくれていた。会ったこともないが、湊の妹だから、傷付くのではないかと心配している。
「優樹菜にやめさせろって言われたよ」
「え?」
「この世界の汚い部分触れさせたくないでしょって言われた」
マスコミはどんな汚い手を使ってでもスキャンダルが欲しいんだよと言われたようで、マークされていると。
「ネットニュースでも零士の彼女の存在出てるから、俺は心配だよ」
パチッとテレビを消して、立ち上がり柚子の傍まで歩く。ぽんっと頭を手を置くと、優しい顔をして見る。
「気を付けろ、マジでさ」
本当に心配しているんだなと思う。
(分かってるけど……。会えないのは嫌)
頭では分かってる。頻繁に会うことが、どんなことになるのか。それでもふたりは離れることが出来ない。
(弱いよね……)
意志が弱いと思ってしまう。
会いたい。
会いたい。
会いたい。
いつもどんな時でも傍にいたい。
それが柚子の本音だった。
◇◇◇◇◇
『柚子。ゆうちゃんから伝言!』
と、電話があったのは次の週末だった。いつものように零士のマンションにいる時だった。
「なに?」
久しぶりに優奈の名前を聞いた柚子は、会いたいなと思った。だけどその会いたい優奈からの伝言は、柚子を凍りつかせるものだった。
『うちのチームと敵対してるチームがあるのね』
ファンチームでも敵対するチームがあるらしく、優奈のファンチームと敵対しているチームがあった。
単に相性が悪い。
同じバンドのファンなのに、相性が悪いととことん敵対するらしい。
その敵対するチームから【REIJIの彼女】の襲撃予告というものを知ったらしい。柚子が少なくとも優奈と関わりを持ってることを知ってる。その柚子が零士の【彼女】だってことを知ってるらしい。
『だから気をつけて!そのチーム、本当に何をするか分からないから!』
芽依が珍しく慌てていた。
柚子が零士の彼女だということを知ってるのはごく一部。
兄貴とメンバー、マネージャーの優樹菜。そして芽依に煌太に優奈と陽葵。高校時代の勇一とその兄の健一。零士の兄の祐士。
陽葵は柚子のことを認めてない感じではあったが、零士にお願いされては言わないだろう。優奈にも口止めするようにきつく言われてる筈だし。
(じゃどこで……)
よくよく考えてみれば見られてる可能性もある。ファンなら零士のマンションを知ってる。そのマンションに出入りする女が柚子だって分かるだろう。その女が元メンバーの妹だってことも調べはついてるかもしれないのだから。
電話を切ってから暫く動けなくなっていた。それに気付いた零士は後ろから抱いてくる。
「なんかあった?」
「ん……」
なんて答えればいいのか分からずに生返事をしてしまった柚子の顔を自分の方に向かせる。
「柚子」
柚子は零士の顔を見上げてポツリポツリと話し出した。
柚子が話し終わるまで黙って聞いていた零士は、柚子をソファーに座らせた。
「大丈夫。きっと大丈夫だから」
いつもなら零士の言葉は柚子を勇気づけてくれるのだが、今日はそれがない。零士自身もそろそろ本気でバレるのでは……と、感じているのだ。
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