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第5章
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BRの事務所で優樹菜が慌ただしくしていた。メンバーの交際関係の噂が上がる度に手を回して処理をしている。それはいつものことだった。
今回もまたSHINがやらかしていたのだった。
「また……」
呆れてる場合ではなく、本当に大変なことだった。しかも今回のお相手が今人気のアイドルだから相手側の事務所からどうしてくれるのかと連絡が入っていたのだ。
「真司はいつもこうだわ……」
出会った高校生の頃からすでに色んな女の子と付き合っていて、騒ぎになっていた。
女の子の方も知っていて真司に近付くんだから始末が悪い。
この人は【彼女】を切らしたことがないのだ。
その分、ひとりじゃいられない人なのも付き合いが長いから知ってる。
「北山くん」
と事務所の社長が優樹菜に声をかけた。いつも優しい顔の社長が、少し呆れた顔で優樹菜を見ていた。
「いつも大変な思いをさせてすまないねぇ」
真司のことは毎度のことだから、社長も慣れてしまった。だが、その後始末を優樹菜が背負ってることに真司は何も思ってない。
社長はそれに呆れている。
「仕方ないです。真司くんは女がいないと生きてはいけない人なんです。昔っから」
「高校生の頃にはもうこんな感じ?」
「そうですね。二股かけることはないけど、別れてもすぐ彼女が出来ます。女の子が寄ってくるんですよ。顔はいいしああ見えて優しいんで」
高校生の頃はその優しさが原因で巻き込まれたこともあった。優樹菜は湊しか見えてなかったのに。
「とにかく真司くんにはもう一度ちゃんと言っておきます。向こうの事務所にもちゃんと謝罪を入れておかないといけませんね」
と、スマホを取り出して真司へと電話をかけた。
◇◇◇◇◇
真司の熱愛発覚から暫くして、真司は記者会見を開いていた。
それを零士の家のテレビで観ていた柚子は複雑な思いだった。
「真司さん、大丈夫なの?」
零士の顔を見た柚子は不安な顔をする。
「アイツはいつものことだから。あれは女切らしたら生きていけないやつなんだよ」
零士も呆れているが、「このことが原因でバンドに影響あるとは言えない」と言った。
「女が寄ってくるんだよ、アイツの場合。アイツだけが悪い訳じゃない」
高校の時からそうだと言って、零士は柚子を見た。不安げな顔は見たくないと抱き締める。
「私たち……、バレたら……」
そこまで言って黙った。それ以上言ったら何かが終わる気がしたからだった。
(この手を放したくない……。この場所から離れたくない……)
ギュッと零士に抱きつくと、零士も分かってるよと言うように抱き締める腕の力を強めた。
柚子の不安を受け止めるように、零士は柚子を抱く。
このところいつもそんな感じだった。
会わないと決めた時、会えないのはとても辛く、結局2ヶ月もしないうちに会ってしまった。
そこから柚子は会えなくても零士のマンションにいることが多くなった。だから零士のマンションには柚子の私物が増えていく。
化粧品や着替え、歯ブラシにお揃いのカップなどが零士のマンションに増えていくことが、零士は嬉しく思っていた。だけど同時にそれじゃダメだとも思っていた。
思ってはいるが、離すことも出来ない自分の弱さに嫌気が差している。
柚子を見ると触れたくなってしまう。自分の思いを抑えられないのだ。
ブチッとテレビを消した零士は柚子にキスをする。
「ベッド行こ」
そう言って抱き上げると、ベッドルームへと入っていく。
(何度こうして抱かれただろう)
零士のマンションの天井を眺めながら思う。これから何度こうしていられるのかも不安で、零士の背中に爪を立てるように力を入れる。
「……んっ」
声が漏れる。切ない声が。
何度抱かれてもまだ足りない想いが募る。
(もっと……もっと……)
零士への想いは溢れる。零士もまた柚子への想いは溢れてくる。
「柚子……、舌、出して」
甘く切ない声で柚子を求める。それに応えようと必死になる。
「……んっ……、アっ……」
「は……ぁ……あっ……」
きつく零士の背中に手を回す柚子は、「もっと……」と切なく言う。その言葉に零士は嬉しく思った。
「ちゅ……っ」
耳に吸い付いくと柚子が甘い声を出す。その度に零士は自分を抑えられなくなる。
「柚子……」
甘く甘く柚子を呼ぶ。お互いを求めるその声は満たされるまで続いた。
今回もまたSHINがやらかしていたのだった。
「また……」
呆れてる場合ではなく、本当に大変なことだった。しかも今回のお相手が今人気のアイドルだから相手側の事務所からどうしてくれるのかと連絡が入っていたのだ。
「真司はいつもこうだわ……」
出会った高校生の頃からすでに色んな女の子と付き合っていて、騒ぎになっていた。
女の子の方も知っていて真司に近付くんだから始末が悪い。
この人は【彼女】を切らしたことがないのだ。
その分、ひとりじゃいられない人なのも付き合いが長いから知ってる。
「北山くん」
と事務所の社長が優樹菜に声をかけた。いつも優しい顔の社長が、少し呆れた顔で優樹菜を見ていた。
「いつも大変な思いをさせてすまないねぇ」
真司のことは毎度のことだから、社長も慣れてしまった。だが、その後始末を優樹菜が背負ってることに真司は何も思ってない。
社長はそれに呆れている。
「仕方ないです。真司くんは女がいないと生きてはいけない人なんです。昔っから」
「高校生の頃にはもうこんな感じ?」
「そうですね。二股かけることはないけど、別れてもすぐ彼女が出来ます。女の子が寄ってくるんですよ。顔はいいしああ見えて優しいんで」
高校生の頃はその優しさが原因で巻き込まれたこともあった。優樹菜は湊しか見えてなかったのに。
「とにかく真司くんにはもう一度ちゃんと言っておきます。向こうの事務所にもちゃんと謝罪を入れておかないといけませんね」
と、スマホを取り出して真司へと電話をかけた。
◇◇◇◇◇
真司の熱愛発覚から暫くして、真司は記者会見を開いていた。
それを零士の家のテレビで観ていた柚子は複雑な思いだった。
「真司さん、大丈夫なの?」
零士の顔を見た柚子は不安な顔をする。
「アイツはいつものことだから。あれは女切らしたら生きていけないやつなんだよ」
零士も呆れているが、「このことが原因でバンドに影響あるとは言えない」と言った。
「女が寄ってくるんだよ、アイツの場合。アイツだけが悪い訳じゃない」
高校の時からそうだと言って、零士は柚子を見た。不安げな顔は見たくないと抱き締める。
「私たち……、バレたら……」
そこまで言って黙った。それ以上言ったら何かが終わる気がしたからだった。
(この手を放したくない……。この場所から離れたくない……)
ギュッと零士に抱きつくと、零士も分かってるよと言うように抱き締める腕の力を強めた。
柚子の不安を受け止めるように、零士は柚子を抱く。
このところいつもそんな感じだった。
会わないと決めた時、会えないのはとても辛く、結局2ヶ月もしないうちに会ってしまった。
そこから柚子は会えなくても零士のマンションにいることが多くなった。だから零士のマンションには柚子の私物が増えていく。
化粧品や着替え、歯ブラシにお揃いのカップなどが零士のマンションに増えていくことが、零士は嬉しく思っていた。だけど同時にそれじゃダメだとも思っていた。
思ってはいるが、離すことも出来ない自分の弱さに嫌気が差している。
柚子を見ると触れたくなってしまう。自分の思いを抑えられないのだ。
ブチッとテレビを消した零士は柚子にキスをする。
「ベッド行こ」
そう言って抱き上げると、ベッドルームへと入っていく。
(何度こうして抱かれただろう)
零士のマンションの天井を眺めながら思う。これから何度こうしていられるのかも不安で、零士の背中に爪を立てるように力を入れる。
「……んっ」
声が漏れる。切ない声が。
何度抱かれてもまだ足りない想いが募る。
(もっと……もっと……)
零士への想いは溢れる。零士もまた柚子への想いは溢れてくる。
「柚子……、舌、出して」
甘く切ない声で柚子を求める。それに応えようと必死になる。
「……んっ……、アっ……」
「は……ぁ……あっ……」
きつく零士の背中に手を回す柚子は、「もっと……」と切なく言う。その言葉に零士は嬉しく思った。
「ちゅ……っ」
耳に吸い付いくと柚子が甘い声を出す。その度に零士は自分を抑えられなくなる。
「柚子……」
甘く甘く柚子を呼ぶ。お互いを求めるその声は満たされるまで続いた。
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