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第5章
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この頃から柚子は自分をさらけ出すかのように、気持ちを伝えるようになっていた。
どんなに忙しくても電話をするふたり。その時に柚子はちゃんと「好き」ということを言ってる。
「会いたい……」
朝も昼も夜も。ずっと会っていたい。ずっと触れていたい。それなのにそれが出来ない。
「寂しい……」
そんな言葉は本人には言えない。
「暫く会ってないの?」
大学の構内を歩いてる柚子と芽依。柚子の元気のなさを芽依は見抜いていた。
「うん……」
元気なく答える柚子に、なんて言ったらいいのか分からなくなっていた。
隣にただいるだけ。それしか出来ないのが苦しい。
「昨日、テレビ出てたね」
昨日の音楽番組にBRは出ていた。芽依はそれを観ていた。もちろん、柚子も観ていた。
テレビの中の零士は心なしか元気がないようにもみえた。それに気付いているのは、仲間たちと柚子。
それはやっぱり会えないからだった。
「会える距離なのに会えないのはツラいね」
柚子のアパートと零士のマンションの距離を知ってるから、その言葉が出てくる。
(分かっているけど、やっぱりツラい……)
兄の友人とはいえ、芸能人。
その芸能人との恋は想像以上にツラい。こんなに人気で、よく海外にレコーディングに行ってしまうような人だから余計に……。
唇を噛みしめ、柚子はそれに耐えなければいけないのだ。
◇◇◇◇◇
ガチャ……。
ドアを開けて中に入る。
(誰にも見られてないことを確認したからきっと大丈夫)
玄関のドアを締めると柚子は安心した気持ちになる。
(零士さんの匂い……)
ちょっと入ったばかりなのに、そう感じてしまう。
ヒールを脱ぎ、そっと中へ進んで行く。
リビングを開けると相変わらずの部屋。コーヒーカップはまた出しっぱなし。
ビールの空き缶もそのままになっている。キッチンへ行くとカップ麺の空が置かれていた。
そんな惨状の部屋を片付け、バスルームへと向かう。そこにはやっぱり洗濯物が溜まっていた。
洗濯機に洗濯物を入れて回して、他の部屋を掃除する。ベッドルームだけがなぜかキレイにされている。
ここに通うことも許されないのだろうかと掃除をしながら考えていた。
毎日会いたいのを我慢している柚子は、せめてここにいたいと感じていた。
◇◇◇◇◇
ガチャ……。
玄関のドアが開く音がした。零士が帰って来る前に帰ろうとしていた柚子は「しまった」という顔をした。
「柚子?来てるのか?」
玄関から声が聞こえた。
柚子は答えることが出来ないでいた。
ガチャと、リビングのドアが開く。そこに立っていたのは会いたかった人だった。
「柚子……」
名前を呼ばれたと思ったら、柚子はその人の腕の中にいた。
「れ、零士さん……」
「あぁ……、柚子だ」
耳元で聞こえるその声はとても切なかった。
「顔見せて?」
両手で柚子の頬を触りおでこをくっ付ける。
「会いたかった……」
零士の切ない声が、想いが、柚子の中に流れ込む。柚子もまた切なく零士の名前を呼ぶ。
「零士さん……」
ふたりはそのままキスを交わした。
ソファーに座って抱き合うふたり。キスをしてはまた抱き合う。
お互いが会いたかったことを身体で伝えてる。
「零士さん……」
「ん」
「元気……だった?」
零士の頬に触れながら柚子はそう言う。その手を掴むと柚子を抱き寄せ小声で「あぁ」と答える。その事からそうではなかったと感じる。
それは柚子も同じで零士に抱き留められてるこの状態で、やっと元気になっていく。
「やっぱりここがいいな」
頭の上から声が降ってくる。見上げると零士の優しい笑顔がそこにある。
「俺の居場所は柚子の傍なんだよ」
零士の胸に顔を埋めると、優しく頭を撫でる。
暫くそうしてお互い甘え合っていた。
◇◇◇◇◇
「しかしなんで来るかなー」
ふたりの気持ちが落ち着いた頃、零士は柚子に言った。
「せっかく俺が会いたい気持ち抑えていたのに」
「だって……。会いたかった」
この言葉にふたりは同じ想いを抱えていたことを痛感する。
「好き……」
その言葉は口にした途端、寂しさでいっぱいだった柚子の中は、少し満たされていく気がした。
ずっと本人に言えてなかったから。
「分かってるよ。俺意外、見えてないこと」
柚子の頭を撫でながら「当たり前だ」とでも言うように笑う。
この当たり前の時間が柚子にとってとても大事だった。これからも続くように祈っていた。
どんなに忙しくても電話をするふたり。その時に柚子はちゃんと「好き」ということを言ってる。
「会いたい……」
朝も昼も夜も。ずっと会っていたい。ずっと触れていたい。それなのにそれが出来ない。
「寂しい……」
そんな言葉は本人には言えない。
「暫く会ってないの?」
大学の構内を歩いてる柚子と芽依。柚子の元気のなさを芽依は見抜いていた。
「うん……」
元気なく答える柚子に、なんて言ったらいいのか分からなくなっていた。
隣にただいるだけ。それしか出来ないのが苦しい。
「昨日、テレビ出てたね」
昨日の音楽番組にBRは出ていた。芽依はそれを観ていた。もちろん、柚子も観ていた。
テレビの中の零士は心なしか元気がないようにもみえた。それに気付いているのは、仲間たちと柚子。
それはやっぱり会えないからだった。
「会える距離なのに会えないのはツラいね」
柚子のアパートと零士のマンションの距離を知ってるから、その言葉が出てくる。
(分かっているけど、やっぱりツラい……)
兄の友人とはいえ、芸能人。
その芸能人との恋は想像以上にツラい。こんなに人気で、よく海外にレコーディングに行ってしまうような人だから余計に……。
唇を噛みしめ、柚子はそれに耐えなければいけないのだ。
◇◇◇◇◇
ガチャ……。
ドアを開けて中に入る。
(誰にも見られてないことを確認したからきっと大丈夫)
玄関のドアを締めると柚子は安心した気持ちになる。
(零士さんの匂い……)
ちょっと入ったばかりなのに、そう感じてしまう。
ヒールを脱ぎ、そっと中へ進んで行く。
リビングを開けると相変わらずの部屋。コーヒーカップはまた出しっぱなし。
ビールの空き缶もそのままになっている。キッチンへ行くとカップ麺の空が置かれていた。
そんな惨状の部屋を片付け、バスルームへと向かう。そこにはやっぱり洗濯物が溜まっていた。
洗濯機に洗濯物を入れて回して、他の部屋を掃除する。ベッドルームだけがなぜかキレイにされている。
ここに通うことも許されないのだろうかと掃除をしながら考えていた。
毎日会いたいのを我慢している柚子は、せめてここにいたいと感じていた。
◇◇◇◇◇
ガチャ……。
玄関のドアが開く音がした。零士が帰って来る前に帰ろうとしていた柚子は「しまった」という顔をした。
「柚子?来てるのか?」
玄関から声が聞こえた。
柚子は答えることが出来ないでいた。
ガチャと、リビングのドアが開く。そこに立っていたのは会いたかった人だった。
「柚子……」
名前を呼ばれたと思ったら、柚子はその人の腕の中にいた。
「れ、零士さん……」
「あぁ……、柚子だ」
耳元で聞こえるその声はとても切なかった。
「顔見せて?」
両手で柚子の頬を触りおでこをくっ付ける。
「会いたかった……」
零士の切ない声が、想いが、柚子の中に流れ込む。柚子もまた切なく零士の名前を呼ぶ。
「零士さん……」
ふたりはそのままキスを交わした。
ソファーに座って抱き合うふたり。キスをしてはまた抱き合う。
お互いが会いたかったことを身体で伝えてる。
「零士さん……」
「ん」
「元気……だった?」
零士の頬に触れながら柚子はそう言う。その手を掴むと柚子を抱き寄せ小声で「あぁ」と答える。その事からそうではなかったと感じる。
それは柚子も同じで零士に抱き留められてるこの状態で、やっと元気になっていく。
「やっぱりここがいいな」
頭の上から声が降ってくる。見上げると零士の優しい笑顔がそこにある。
「俺の居場所は柚子の傍なんだよ」
零士の胸に顔を埋めると、優しく頭を撫でる。
暫くそうしてお互い甘え合っていた。
◇◇◇◇◇
「しかしなんで来るかなー」
ふたりの気持ちが落ち着いた頃、零士は柚子に言った。
「せっかく俺が会いたい気持ち抑えていたのに」
「だって……。会いたかった」
この言葉にふたりは同じ想いを抱えていたことを痛感する。
「好き……」
その言葉は口にした途端、寂しさでいっぱいだった柚子の中は、少し満たされていく気がした。
ずっと本人に言えてなかったから。
「分かってるよ。俺意外、見えてないこと」
柚子の頭を撫でながら「当たり前だ」とでも言うように笑う。
この当たり前の時間が柚子にとってとても大事だった。これからも続くように祈っていた。
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