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第4章
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旅行から戻ってきた柚子は、また零士と会えない日が続いた。
零士は次のライブの為の準備に取りかからなきゃいけなかったのだ。
(また会えない……)
寂しさで胸がいっぱいになる。それでもこればかりは仕方ないと言い聞かせる。
どんどん我が儘になるなと柚子は思っていた。
もっと一緒にいたい。もっと繋がっていたい。もっともっと……。
そんな想いが常に柚子の中にある。
(我が儘言うと困るのに)
だから零士にはそれを言えないのだ。
『チケット、用意しようか?』
そう電話があったのは旅行から帰ってきてから一週間経った頃だった。
チケットはまだ販売前。ファンの間でもいつライブをするのか知らない状況だった。
「え?」
『チケット、幼馴染みたちと来るといいよ』
「え?」
『来るだろ?だったら用意しておく』
「そんな、いいよ!」
慌ててそう返事をする。用意して貰ったら行けなくなるファンから妬まれる。それがイヤだった。
『何を気にしてるの?』
「だって……」
柚子は素直に思ってることを言った。
『優しいね、柚子は』
耳元で聞こえる声がくすぐったい。
「だからね、大丈夫。行けなかたたらそれはそれで仕方ないよ」
たくさんの人に零士たちを見て欲しい。柚子はそう願ってる。
◇◇◇◇◇
夏休みが明けると、また大学生活が始まった。
勉強にバイトと毎日慌ただしい。
そんな風に過ごしていたからか、いつの間にか学のことは忘れかけていた。完全に忘れた訳ではないが、気にしないで過ごすことが出来た。
「噂にもならずに良かったね」
と、芽依に言われた。とても柚子を心配していた芽依。休みの間もよく柚子を気にかけていた。
「ほんと、いつもありがとうね」
「なーに、言ってるのよ」
芽依に何か出来ることないかなと考えていた。
いつもいつも柚子の傍にいて、柚子のことを心配してくれる大切な友人。そんな友人になにかを返したかった。
「ねぇ、お兄ちゃん」
アパートで柚子は芽依のことを話した。
いつも心配してくれてる、芽依に何かを返したいと。
でも何をしてあげたらいいのか分からない。常に一緒にいたけど、芽依の好みなども分かってる筈。
それでも何をしてあげたらいいのか分からないでいた。
「う~ん……、そうだな」
湊も考えていた。
大切な妹のことをいつも気にかけてくれる芽依に何かしてあげたいと。
「あまり気が進まないんだけどな……」
ポツリと呟いた湊は柚子の顔を見た。
「ん?」
「芽依、SHINが好きだろ」
「うん」
「皆に会わせてやるか」
「大丈夫なの?」
「すぐにとはいかないだろうけどな」
そう言って湊は零士に電話をかけた。
だけど仕事なのか繋がらず、「またあとで連絡してみる」と言った。
(大丈夫かな)
真司には気を付けろって前に言われたことを思い出す。
だけど芽依は「SHINになら何されてもいい」なんて言いそう。柚子はそう思っていた。
冬に入る頃、湊から「芽依と一緒にここに来い」とメッセージがあった。
メッセージの中には場所のURLが入っていた。
「芽依。ちょっと一緒に行って欲しいところがあるんだけど」
柚子は芽依を連れて呼び出された場所まで向かう。タクシーを使って行った場所は、都内にあるグランピング施設だった。その場所に着くちょっと前に湊に連絡を入れておいたから、施設の前で湊が待ち受けていた。
「こっち」
とふたりを連れて奥へと向かう。
都内にこんな施設があるなんて思わなかった柚子と芽依はあたりをキョロキョロしていた。
こんな季節だからか、利用者はそんなに多くはなかった。
奥の方のドームに、騒いでる集団があった。
「おっ。戻ってきた」
零士がこっちに気付き近寄ってくる。
「REIJIさん」
芽依は目を丸くした。そしてその後ろには他のメンバーがいることを確認すると、カチカチになってしまった。
「え、どういうこと?」
柚子に助けを求めると、柚子はにっこりと笑った。
「いつも芽依には助けて貰ってるから」
「え、え、え?」
状況が読めないという顔をする芽依に真司が近付いた。
「初めまして。真司です」
「あ、は、初めまして……。め、芽依です」
緊張しているのが分かる。そんな芽依が可愛いと思った。
「今日は楽しんで」
湊が芽依の頭をポンと撫でた。
「真司!芽依ちゃん口説くんじゃねぇぞ」
「だから、ダチの知り合いに手ぇ出さねぇよ」
「女関係は信用ならんっ」
「酷ぇな」
そう言いながら芽依に顔を向けるとニコッと笑った。
「よく時間作れたね」
零士にそう言うと柚子に笑う。
「まあね」
そう答える零士は芽依の為にどうにかスケジュールを空けたのではないかと柚子は疑ってる。
「ライブまであと少しでしょ。大変なんじゃないの?」
「大丈夫。柚子はそんなこと気にしなくていいよ」
そう言われたけど気にしてしまう柚子。でも自分の為に、芽依の為に時間を作ってくれたことが嬉しかった。
零士は次のライブの為の準備に取りかからなきゃいけなかったのだ。
(また会えない……)
寂しさで胸がいっぱいになる。それでもこればかりは仕方ないと言い聞かせる。
どんどん我が儘になるなと柚子は思っていた。
もっと一緒にいたい。もっと繋がっていたい。もっともっと……。
そんな想いが常に柚子の中にある。
(我が儘言うと困るのに)
だから零士にはそれを言えないのだ。
『チケット、用意しようか?』
そう電話があったのは旅行から帰ってきてから一週間経った頃だった。
チケットはまだ販売前。ファンの間でもいつライブをするのか知らない状況だった。
「え?」
『チケット、幼馴染みたちと来るといいよ』
「え?」
『来るだろ?だったら用意しておく』
「そんな、いいよ!」
慌ててそう返事をする。用意して貰ったら行けなくなるファンから妬まれる。それがイヤだった。
『何を気にしてるの?』
「だって……」
柚子は素直に思ってることを言った。
『優しいね、柚子は』
耳元で聞こえる声がくすぐったい。
「だからね、大丈夫。行けなかたたらそれはそれで仕方ないよ」
たくさんの人に零士たちを見て欲しい。柚子はそう願ってる。
◇◇◇◇◇
夏休みが明けると、また大学生活が始まった。
勉強にバイトと毎日慌ただしい。
そんな風に過ごしていたからか、いつの間にか学のことは忘れかけていた。完全に忘れた訳ではないが、気にしないで過ごすことが出来た。
「噂にもならずに良かったね」
と、芽依に言われた。とても柚子を心配していた芽依。休みの間もよく柚子を気にかけていた。
「ほんと、いつもありがとうね」
「なーに、言ってるのよ」
芽依に何か出来ることないかなと考えていた。
いつもいつも柚子の傍にいて、柚子のことを心配してくれる大切な友人。そんな友人になにかを返したかった。
「ねぇ、お兄ちゃん」
アパートで柚子は芽依のことを話した。
いつも心配してくれてる、芽依に何かを返したいと。
でも何をしてあげたらいいのか分からない。常に一緒にいたけど、芽依の好みなども分かってる筈。
それでも何をしてあげたらいいのか分からないでいた。
「う~ん……、そうだな」
湊も考えていた。
大切な妹のことをいつも気にかけてくれる芽依に何かしてあげたいと。
「あまり気が進まないんだけどな……」
ポツリと呟いた湊は柚子の顔を見た。
「ん?」
「芽依、SHINが好きだろ」
「うん」
「皆に会わせてやるか」
「大丈夫なの?」
「すぐにとはいかないだろうけどな」
そう言って湊は零士に電話をかけた。
だけど仕事なのか繋がらず、「またあとで連絡してみる」と言った。
(大丈夫かな)
真司には気を付けろって前に言われたことを思い出す。
だけど芽依は「SHINになら何されてもいい」なんて言いそう。柚子はそう思っていた。
冬に入る頃、湊から「芽依と一緒にここに来い」とメッセージがあった。
メッセージの中には場所のURLが入っていた。
「芽依。ちょっと一緒に行って欲しいところがあるんだけど」
柚子は芽依を連れて呼び出された場所まで向かう。タクシーを使って行った場所は、都内にあるグランピング施設だった。その場所に着くちょっと前に湊に連絡を入れておいたから、施設の前で湊が待ち受けていた。
「こっち」
とふたりを連れて奥へと向かう。
都内にこんな施設があるなんて思わなかった柚子と芽依はあたりをキョロキョロしていた。
こんな季節だからか、利用者はそんなに多くはなかった。
奥の方のドームに、騒いでる集団があった。
「おっ。戻ってきた」
零士がこっちに気付き近寄ってくる。
「REIJIさん」
芽依は目を丸くした。そしてその後ろには他のメンバーがいることを確認すると、カチカチになってしまった。
「え、どういうこと?」
柚子に助けを求めると、柚子はにっこりと笑った。
「いつも芽依には助けて貰ってるから」
「え、え、え?」
状況が読めないという顔をする芽依に真司が近付いた。
「初めまして。真司です」
「あ、は、初めまして……。め、芽依です」
緊張しているのが分かる。そんな芽依が可愛いと思った。
「今日は楽しんで」
湊が芽依の頭をポンと撫でた。
「真司!芽依ちゃん口説くんじゃねぇぞ」
「だから、ダチの知り合いに手ぇ出さねぇよ」
「女関係は信用ならんっ」
「酷ぇな」
そう言いながら芽依に顔を向けるとニコッと笑った。
「よく時間作れたね」
零士にそう言うと柚子に笑う。
「まあね」
そう答える零士は芽依の為にどうにかスケジュールを空けたのではないかと柚子は疑ってる。
「ライブまであと少しでしょ。大変なんじゃないの?」
「大丈夫。柚子はそんなこと気にしなくていいよ」
そう言われたけど気にしてしまう柚子。でも自分の為に、芽依の為に時間を作ってくれたことが嬉しかった。
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