もう一度抱きしめて……

星河琉嘩

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第4章

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 バイトが終わった湊が柚子のメッセージを読んでいた。
「あいつまた……」
 帰ってくると柚子を呼び出す零士に呆れていた。こんな時間だ。柚子は帰って来ないのだろう。
「ま、仕方ないかぁ」
 柚子も零士もお互いを必要としている。惚れ込んでいる。
 それが分かる。

「お疲れ様でしたー!」
 と、バイト先のファミレスを出た湊は近道の為、路地裏に入り込んでいた。
 途中、見覚えのあるバッグが落ちていた。
「これ……」
 湊が柚子の誕生日にあげたバッグだった。中身を開けるとやっぱり柚子に買ってあげた服が入っていた。
(嫌な予感がする)
 この場所は大通りから見える。
「じゃこっちか?」
 歩いて角を曲がる。曲がったところで凍り付いた。


「柚子……?」
 そこにいたのは服がはだけて身体のあちこちに傷をつけ、頭からは血が出ている柚子だった。
 駆け寄り柚子を抱き締める。
「柚子。何があった?」
 答えることが出来ない柚子。このままじゃダメだと判断した湊はスマホを出して警察に電話を入れた。



     ◇◇◇◇◇



 零士から電話あったのは警察の手配により病院へ行った後だった。

『湊?』
 その声は焦っていた。いつまでもマンションに来ない柚子のことを心配していたのだ。
『柚子と一緒か?』
「……零士。悪ぃ。柚子そっち行けねぇ」
 冷静な声が逆に怖い。
「柚子……、レイプされた」
 湊の声があまりにも冷静過ぎて怖かった。
「お前は、こっち来んなよ。自分の立場考えろ。今、うちの親もこっち向かってるし」
 言うだけ言って、湊は一方的に電話を切った。
 柚子は頭に怪我もしていた。深くはないが手当てをしてもらい、婦人科の方で色々と検査をしてもらっていた。
 そのあと、女性警官が柚子と話をしている。

「お兄さん?」
 病室から出てきた女性警官が廊下にいた湊に話しかけてくる。
「どうやらね、同じ大学の子らしいの」
 だけどそれ以上は話してくれないとのことだった。
「また落ち着いたら話を聞くことになるから」
 女性警官がそう言うと一旦病院を出ていく。
 湊はどんな顔して柚子に会えばいいのか分からなかった。だけど、ひとりには出来ない。

 病院の先生からは帰っても大丈夫と言われて柚子と一緒にアパートに戻った。
 柚子は部屋に籠って何も言うことはなかった。
 本来なら零士と一緒にいた筈。それを身勝手な奴に奪われた。
「柚子」
 呼びかけに反応出来ない柚子はそのまま座り込んでいた。

「家、帰るか?」
 湊の言葉に驚いた。
「大学、休学して家で……」
 それに対して首を横に振る。
「大丈夫……なのか?」
「……分からない」
 頭を撫でた湊もどうしたらいいのか分からなかった。
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