もう一度抱きしめて……

星河琉嘩

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第3章

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「ど、ど、どうして……」
「え……っと、本物?」
「マジで……?」
 3人の声が震えていた。

「零士!待て!!」
 リビングに芽依を支えながら入って来たのは湊だった。
「愛川くん?」
 優奈が湊を見て驚いた。
「なんで、愛川くんが?」
「平川。そっか、ここ平川ん家か。で、芽依ちゃんの従姉妹か」
 頷く優奈は驚いてばかりだった。
 零士はいるし、湊はいるしで混乱していた。


「お兄ちゃん?」
 柚子は湊を見ると「同じ大学」と答える。
「え。じゃ、優奈さんもお医者さんになるの?」
「なれるかな?」
 と笑うその笑顔は優しかった。


「じゃ、とりあえず説明、してくれる?」
 混乱が落ち着いた頃、優奈は柚子に言った。陽葵は優奈の後ろからチラチラと零士を見ていた。
 煌太なんか口を開けてぼけーとしてる。
「まずは柚子ちゃん。愛川くんの妹さんなの?」
 こくんと頷く。
「零士は俺の親友」
「え?」
「高校ん時からの俺の親友」
「BRは俺と湊で作った」
 零士は柚子の肩を抱きながら言う。その言葉にその場にいた4人が「は?」となった。

「で!なんでREIJIとその子が一緒にいたのよ!しかも今肩抱いてるし!」
 陽葵はそう叫んでは優奈の後ろに隠れる。
 それを聞いて零士があぁと呟く。
「それは……、柚子が俺の彼女だから」
 さらっと言った零士に驚いて心臓がバクバクいってる。まさか、そんな簡単に話してしまうとは思ってもいなかった。
 思わず零士の顔を見るとにこっと笑う。
 その笑顔に顔が真っ赤になる。

「それ、本当の話なんですか?」
 冷静を取り戻した優奈が言うと「そうだよ」と答える。
「俺の一目惚れ。納得、出来ない?」
「まぁ……」
「高校ん時だよ、中学生の柚子を見たの。それからずっと忘れられなくてね」
 そんな話をされると恥ずかしくなる。
「ほ、本当に付き合ってるっていうんですか!」
 陽葵はまだ優奈の後ろから叫んでいた。
「本当だよ」
「信じられない!本当かなんて!」
「証拠、いる?」
 零士は悪戯っぽく言った。
「あるなら見せて!」
 陽葵はそう叫ぶ。
 それを聞いて零士は柚子の顔を自分の方へと向けた。
 そしてそのままキスをする。


「……っ!」
 驚いた柚子は思わず零士の胸を叩く。
「もうっ!人前で何するの!」
「いいじゃん」
「よくないでしょ!」
 顔が真っ赤になり熱くなる。そんな柚子を見ていた優奈は笑い出した。


「柚子ちゃんっ!かわいいっ!あははっ!」
 そして陽葵を見て言った。
「陽葵。これは内緒ね。私たちの秘密。いい?誰かに言うんじゃないよ」
「はい……」
「あはは……っ!かわいいっ!柚子ちゃん、ほんとかわいいっ!」
 優奈は何が面白いのかずっと笑っていた。だが、陽葵だけは納得いかない顔をしていた。
 そして芽依と煌太は柚子の顔を見てるだけだった。


「じゃ、連れて帰るよ」
 そう言うと零士に「すみません」と優奈。
 陽葵は不貞腐れたような顔をしていた。
「この子にはちゃんと口外しないように言い聞かせます」
「ありがとう」
 そう零士は笑いかける。
 その笑顔はやっぱり凄い威力で、優奈と陽葵は見惚れていた。

「芽依ちゃんと煌太もおいで」
 湊がふたりを手招きする。
「こいつらも連れて帰るから」
「愛川くん。この子たち知ってるんだね」
「ガキん時からな」
「そっか」
「じゃまた」
「また」
 優奈と湊がそう挨拶を交わし、ふたりを背中を押す。ふたりは何も話せないでいた。


 優奈のマンションの外に出ると、一台の車が停まっていた。
 白のワンボックス。
 その車のドアを開ける零士を見て柚子が言った。
「車……」
「ああ。新しいの買った」
 そう言うと芽依たちに「乗って」と言う。
 湊は何も言わず助手席に座った。
「お前、後ろに座れよ」
「嫌だね」
「なんでだよ」
「お前、今、REIJIのまんまだって分かってる?」
「あ、そっか」
 そう言うとシートベルトをして車を走らせた。
 車は優奈のマンションから離れて高級マンションの建ち並ぶエリアまでいく。
 そんな中のひとつのマンションの地下駐車場に滑り込んで行った。


 車から降りた芽依と煌太が訳が分からないといった顔をしている。
「やべっ。うち、なんもねぇや。柚子。先、部屋行ってて」
「うん」
「湊、ちょい付き合え」
 と、湊を連れて何処かへ行ってしまった。
 それを見送った柚子は普通に駐車場に設置してあるエレベーターへと向かった。
「こっち」
 手招きしてふたりを誘導する。
「ねぇ、柚子。どういうこと?」
「そうだよ、いつから!」
「てか、湊さんが元メンバーってこと?」
「柚子は最初っから知ってたのかよ!」
 と大騒ぎ。
 REIJIがいた時は大人しくしていたけど、いなくなると途端に騒ぎ出した。
「話、部屋行ってから聞くから」
 そう言ってエレベーターに乗り込む。
(驚くとは思ってたけど、ここまで驚くのかぁ)
 予想以上に驚いたふたりをどう言って宥めようかと考え込む。


 ポンとエレベーターのドアが開く。
 外廊下を歩いて奥のドアを開ける。表札は出ていない。
 持っていた鍵を出してドアを開けてふたりを中に入れた。
「ほら、入って!」
 ふたりを押し込むようにして中へ入る。柚子の勢いに推されるように入るふたりは、部屋に入って更に驚く。

「す……げぇ」
 煌太の声が部屋の中で響いたような気がした。
「柚子。ここって……」
「零士さんのマンション」
 そう言ってテーブルに出しっぱなしのカップをキッチンの方へ持っていく。
「いつも出しっぱなしで出ていくなぁ」
「柚子……。本当に?」
「ん。ごめんね、ふたり共。話せなくて……」
 大きな冷蔵庫を開けると本当に何も入ってなかった。
 いつも飲んでるビールすら入ってない。
「買いに行ったのね」
 柚子はリビングへ戻り、ソファーに座る。それを見てふたりも遠慮がちに座った。
 そして柚子は零士とのことを話し始めた。
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