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第3章
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湊の車が実家に着くと、柚子を下ろした。
「準備してこい。母さんには俺が話す」
と、家の中に入る。
零士はいつもの角で待ってる。
「ただいま」
湊がそう言うと柚子は何も言わずに部屋へと向かった。
湊はそのままリビングへ入る。
「あら、湊」
「母さん。ちょっと柚子、連れて行く」
「何かあった?」
「ん。ちょっとね。でもま、大丈夫だとは思うけど。少し話するから」
そう言ってソファーに座る。
「ねぇ、湊」
「ん」
「柚子、お付き合いしてる人、いるわよね?」
「え」
「それも湊のお友達」
母親の勘はいつも当たる。バレバレだったわけだ。
「大槻くん……かしらね」
「母さん」
「柚子の部屋にBRのものが増えてるからね。柚子が好きになりそうな子って大槻くんかなって」
(母さん、鋭い)
湊は母親を見て驚く。
「まぁ、言えないわよね。もしかして、何度か湊のとこに泊まるって言って彼氏のところかしら。今日もかな」
「いや……あ、えっと……」
さすがの湊でさえ、誤魔化しが出来なくなっていた。
「まぁ、なかなか会えないものね。目を瞑るけど、伝えて。節度を持ったお付き合いをお願いしますって」
「はい……。あの、父さんには?」
「私が上手く言っておくわ。柚子にも私が知ってるとは言わなくていいから」
「分かった。ごめん、母さん」
「湊が謝ることじゃないでしょ」
「うん」
「あ!あとひとつ」
これが一番大事よと言うように湊を見る。
「妊娠はさせないでって伝えて」
「はい……」
母親の迫力に負ける湊は素直に頷く。
ふたりの話が終わった頃、二階から柚子が降りてきた。
「柚子。湊に迷惑かけないのよ」
こくんと頷き、湊と一緒に家を出ていく。
その姿を見てふふっと笑う、母親。
「柚子もそんな年頃なのねー」
嬉しいような、寂しいようなちょっと複雑な気分だった。
「さて、お父さんにはなんて話しましょ」
ウキウキと楽しそうな母親がそこにいたことは湊も柚子も知らない。
◇◇◇◇◇
荷物を車に乗せて零士が待つ場所まで行く。すぐ近くなんだけど、わざわざ乗って行ったのは母親の手前というか、柚子は母親が零士と一緒に行くなんて知らないと思ってるからだった。
角を曲がると零士の車が停まっていた。
車を降りた柚子と湊は零士の車に近付く。
「零士。ちょっと」
と、零士の耳元で母親からの伝言を伝えた。
「え。マジで?」
ただ頷く湊を驚きの顔で見る。
「で、妊娠させるなと」
小声でそう言うと「あー……うん」と答える。
零士にはその言葉は結構重くのし掛かってる。
「なんの話してるの」
「なんでもないよ」
ぽんと頭に手を置く湊はさっさと乗れと零士の車に押し込める。
「じゃ明日迎えに行く」
そう言うと湊も車に乗り走らせた。
湊の車が走り去った後、零士も車を走らせる。
「腹、減ったなぁ」
車を走らせながら言う零士は「飯、食いにいこう」と言った。
てっきり祐士の店かと思いきや、そことは違う店だった。
夜の繁華街。柚子は夜の街に出たことはない。キラキラとした光が眩しい。
「大丈夫。友人の店だから」
と、路地裏にある駐車場に車を停めて、歩いて店まで行く。どうやら居酒屋のような場所だった。
「零士じゃないか」
カウンターにいる零士と同じ歳くらいの男性が声をかける。
「女の子連れてくるなんて初めてか?」
「悪い。奥の部屋、いい?」
「ああ。どうぞ」
どうやら、個室がある店らしい。
雰囲気はお洒落なBar。テーブルや椅子などのインテリアも凝ってる。
「はい」
と、友人らしき店主がお冷やを持ってきた。
「高校の友人のひとりだよ」
と柚子に紹介する。
「彼女か?」
「ああ。湊の妹」
「は?アイツの?アイツ、こんな可愛い妹隠してたんだ!」
どうやら湊も知ってるらしい。
「で、その可愛い友人の妹を彼女にしたのか!」
がははっと笑った後に「ん?」と考えた。
「未成年?」
「まだ高3。光葉高校だよ」
「おっ。後輩!」
ぺこりと頭を下げる柚子にニカッと笑った。
「じゃ酒出せねぇな」
「腹減ったからなんか適当に頼むわ」
「お前なぁ……」
「あ、今日車だから」
「普通に飯食いに来ただけかよ」
呆れながらも一旦下がると、今度はアイスコーヒーとアイスティーを持ってきた。
「こいつ、偏食酷いだろ。適当にって言われるとスゲー難しいんだよ。本当に適当に持ってくるから文句言うなよ」
と、また下がる。
「いちいちうるせーヤツだろ」
笑った顔にほっとする。
「じゃ、義行。またな」
そう言うとさっさと店を出る。店の中は薄暗いせいか、他の客が零士に気付くことはなかった。
「帰るか」
路地裏に停めた車まで歩く。歩く時、柚子は見られないか気付かれないかドキドキしていた。
「案外、気付かれないもんだろ」
と笑う零士。それでもドキドキしてるのは柚子だけだった。
「準備してこい。母さんには俺が話す」
と、家の中に入る。
零士はいつもの角で待ってる。
「ただいま」
湊がそう言うと柚子は何も言わずに部屋へと向かった。
湊はそのままリビングへ入る。
「あら、湊」
「母さん。ちょっと柚子、連れて行く」
「何かあった?」
「ん。ちょっとね。でもま、大丈夫だとは思うけど。少し話するから」
そう言ってソファーに座る。
「ねぇ、湊」
「ん」
「柚子、お付き合いしてる人、いるわよね?」
「え」
「それも湊のお友達」
母親の勘はいつも当たる。バレバレだったわけだ。
「大槻くん……かしらね」
「母さん」
「柚子の部屋にBRのものが増えてるからね。柚子が好きになりそうな子って大槻くんかなって」
(母さん、鋭い)
湊は母親を見て驚く。
「まぁ、言えないわよね。もしかして、何度か湊のとこに泊まるって言って彼氏のところかしら。今日もかな」
「いや……あ、えっと……」
さすがの湊でさえ、誤魔化しが出来なくなっていた。
「まぁ、なかなか会えないものね。目を瞑るけど、伝えて。節度を持ったお付き合いをお願いしますって」
「はい……。あの、父さんには?」
「私が上手く言っておくわ。柚子にも私が知ってるとは言わなくていいから」
「分かった。ごめん、母さん」
「湊が謝ることじゃないでしょ」
「うん」
「あ!あとひとつ」
これが一番大事よと言うように湊を見る。
「妊娠はさせないでって伝えて」
「はい……」
母親の迫力に負ける湊は素直に頷く。
ふたりの話が終わった頃、二階から柚子が降りてきた。
「柚子。湊に迷惑かけないのよ」
こくんと頷き、湊と一緒に家を出ていく。
その姿を見てふふっと笑う、母親。
「柚子もそんな年頃なのねー」
嬉しいような、寂しいようなちょっと複雑な気分だった。
「さて、お父さんにはなんて話しましょ」
ウキウキと楽しそうな母親がそこにいたことは湊も柚子も知らない。
◇◇◇◇◇
荷物を車に乗せて零士が待つ場所まで行く。すぐ近くなんだけど、わざわざ乗って行ったのは母親の手前というか、柚子は母親が零士と一緒に行くなんて知らないと思ってるからだった。
角を曲がると零士の車が停まっていた。
車を降りた柚子と湊は零士の車に近付く。
「零士。ちょっと」
と、零士の耳元で母親からの伝言を伝えた。
「え。マジで?」
ただ頷く湊を驚きの顔で見る。
「で、妊娠させるなと」
小声でそう言うと「あー……うん」と答える。
零士にはその言葉は結構重くのし掛かってる。
「なんの話してるの」
「なんでもないよ」
ぽんと頭に手を置く湊はさっさと乗れと零士の車に押し込める。
「じゃ明日迎えに行く」
そう言うと湊も車に乗り走らせた。
湊の車が走り去った後、零士も車を走らせる。
「腹、減ったなぁ」
車を走らせながら言う零士は「飯、食いにいこう」と言った。
てっきり祐士の店かと思いきや、そことは違う店だった。
夜の繁華街。柚子は夜の街に出たことはない。キラキラとした光が眩しい。
「大丈夫。友人の店だから」
と、路地裏にある駐車場に車を停めて、歩いて店まで行く。どうやら居酒屋のような場所だった。
「零士じゃないか」
カウンターにいる零士と同じ歳くらいの男性が声をかける。
「女の子連れてくるなんて初めてか?」
「悪い。奥の部屋、いい?」
「ああ。どうぞ」
どうやら、個室がある店らしい。
雰囲気はお洒落なBar。テーブルや椅子などのインテリアも凝ってる。
「はい」
と、友人らしき店主がお冷やを持ってきた。
「高校の友人のひとりだよ」
と柚子に紹介する。
「彼女か?」
「ああ。湊の妹」
「は?アイツの?アイツ、こんな可愛い妹隠してたんだ!」
どうやら湊も知ってるらしい。
「で、その可愛い友人の妹を彼女にしたのか!」
がははっと笑った後に「ん?」と考えた。
「未成年?」
「まだ高3。光葉高校だよ」
「おっ。後輩!」
ぺこりと頭を下げる柚子にニカッと笑った。
「じゃ酒出せねぇな」
「腹減ったからなんか適当に頼むわ」
「お前なぁ……」
「あ、今日車だから」
「普通に飯食いに来ただけかよ」
呆れながらも一旦下がると、今度はアイスコーヒーとアイスティーを持ってきた。
「こいつ、偏食酷いだろ。適当にって言われるとスゲー難しいんだよ。本当に適当に持ってくるから文句言うなよ」
と、また下がる。
「いちいちうるせーヤツだろ」
笑った顔にほっとする。
「じゃ、義行。またな」
そう言うとさっさと店を出る。店の中は薄暗いせいか、他の客が零士に気付くことはなかった。
「帰るか」
路地裏に停めた車まで歩く。歩く時、柚子は見られないか気付かれないかドキドキしていた。
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