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第3章
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ライブの日から一週間。柚子たちは日常に戻っていた。
学校での夏期講習に加えて、予備校にも通う。柚子と芽依は部活はやっていなかったからまだいいけど、煌太は空手部なのでそちらにも顔を出している。
そんなある日。夏期講習の為、学校へと行っていた柚子。その日は芽依はいなく、柚子はひとりで学校に向かっていた。受験の為の講習なのでクラスの全員がいるわけではないし、一人ひとりの学力に合わせて受けられるように学校側が設けたカリキュラムなので、いない人もいる。
そしてその日は仲のいい子はいなく、ひとりで講習を受けていた。全ての講習が終わり、みんなが帰り始めた頃、勇一が柚子に近寄ってきた。
「ちょっといいか」
と、呼ばれた。
芽依に脅しをかけられてからは声をかけられることもなく、夏休みに入って夏期講習で顔を合わせても芽依がいるからか、声をかけてくることはなかった。
だが、今日は芽依がいない。その隙を狙ってか声をかけてきたのだ。
「柚子」
と手を掴み教室を出て走る。
「ちょ……っと!ねぇ!やめてどこに行くの!」
どんどん引っ張るように廊下を走って行く。誰もいない教室へ柚子を引っ張り込み、壁にドンと押し付けた。
「……痛っ!」
小さく叫ぶと勇一を睨む。
「な、なによ」
柚子は震えていた。勇一の目が怖かった。
(いつも見る滝山くんじゃない……)
いつまでも湊に会わせないことが腹が立っているのだろうかと考える。だが、勇一はそれとは違う目的のようだった。
「柚子!」
肩を抑えつけてる勇一の顔が目の前に迫っていた。
「ちょ……っと!」
拒否をする柚子のことはお構い無しの勇一は、何度か柚子にキスをしようとする。
「……やっ!」
柚子は力いっぱい押し退けた。
「柚子。好きなんだ!」
とまた柚子を抑えつけてキスを迫る。
「嫌っ……!」
男と女じゃ力の差がある。逃げきれずにそのままキスをされた。
「……っ、やめて……っ!」
ドンと、どうにか押し退けた柚子は目に涙を溜めていた。
そしてそのまま教室を飛び出して走って行く。荷物を取りに戻って逃げるように学校を出る。そしてそのままバスに乗り込んだ。駅で電車に乗り、湊のアパートにまで行く。
迷うことなくアパートまで行けた柚子は、湊が帰ってくるのをしゃがみこんで待っていた。
◇◇◇◇
どのくらい待ったのか、カンカンと階段を上ってくる音がした。
「……柚子?」
しゃがみこんでいた柚子に気付き、柚子と同じようにしゃがみこむ。
「どうした?」
泣いてることに気付いた湊は柚子を部屋の中に入れた。
コトンと、テーブルにペットボトルのお茶を置いた。
「何があった?」
答えない柚子にため息を吐く。
「零士とケンカしたか?」
「違う」
「じゃなんだ」
答えない柚子にスマホ取り出す。
「零士呼ぶ」
「違う!零士さんは関係ないの!」
顔を上げた柚子に近付き、涙でグシャグシャになってる顔に触れる。
「分かったから、もう泣くな」
何があったのか話さない柚子に困った湊は、結局零士に電話をかけた。
何度目かのコールで漸く繋がった電話は、元気のない零士の声がした。
『なんだ』
落ち込んでいるような声を出す零士に、湊は不思議思う。
「お前もどうした?」
『お前もってなんだ』
「今、柚子がいる」
『は?』
「柚子が泣いてる。お前、なんかしたか?」
『今日会ってねぇよ』
「じゃなんで泣いてんだよ」
『知らねぇよ』
ふたりは黙ってしまった。
『柚子はなんか言ってんのか』
零士がそう聞いてきた。
膝を抱えて小さくなってる柚子を見下ろし、「なにも」と答えた。
『ちょっと、まだ雑誌の撮影あって……。終わったらお前んとこ行くから』
「分かった」
電話を切ると柚子の隣に座り頭を撫でた。
◇◇◇◇◇
ドンドン……っ!
湊のアパートのドアを勢いよく叩く音が響く。湊は面倒臭そうに立ち上がり玄関を開ける。
「叩くなよ、インターフォンあんだからさー」
そんな湊を無視して部屋の中に入る。部屋の隙に膝を抱えて座る柚子がいた。
「柚子」
声をかけても顔を上げない。
「どう……した?」
柚子に触れていいのか迷ってる零士がいる。その様子に湊は不思議に思う。ふたりに何かあったとその時に感じた。だけど、柚子がこうなってるのはそれとはまた違うんだろう。
「柚子」
何度か柚子の名を呼び、どうにか自分の方を向かせる。
涙で目が腫れぼったくなっている。
「柚子」
頬に触れ涙を拭う。
「何があった……?答えて」
零士を見上げた柚子は、そのまま零士に抱きついた。そしてゆっくり話し出した。
「……なさい」
微かに出た言葉は何を言ってるのか分からないくらいだった。
「……たし、そんな……つもりない……のに……」
ぐずっと鼻をすすり、震えてる柚子を抱きしめる。
「──……キスされた」
学校での夏期講習に加えて、予備校にも通う。柚子と芽依は部活はやっていなかったからまだいいけど、煌太は空手部なのでそちらにも顔を出している。
そんなある日。夏期講習の為、学校へと行っていた柚子。その日は芽依はいなく、柚子はひとりで学校に向かっていた。受験の為の講習なのでクラスの全員がいるわけではないし、一人ひとりの学力に合わせて受けられるように学校側が設けたカリキュラムなので、いない人もいる。
そしてその日は仲のいい子はいなく、ひとりで講習を受けていた。全ての講習が終わり、みんなが帰り始めた頃、勇一が柚子に近寄ってきた。
「ちょっといいか」
と、呼ばれた。
芽依に脅しをかけられてからは声をかけられることもなく、夏休みに入って夏期講習で顔を合わせても芽依がいるからか、声をかけてくることはなかった。
だが、今日は芽依がいない。その隙を狙ってか声をかけてきたのだ。
「柚子」
と手を掴み教室を出て走る。
「ちょ……っと!ねぇ!やめてどこに行くの!」
どんどん引っ張るように廊下を走って行く。誰もいない教室へ柚子を引っ張り込み、壁にドンと押し付けた。
「……痛っ!」
小さく叫ぶと勇一を睨む。
「な、なによ」
柚子は震えていた。勇一の目が怖かった。
(いつも見る滝山くんじゃない……)
いつまでも湊に会わせないことが腹が立っているのだろうかと考える。だが、勇一はそれとは違う目的のようだった。
「柚子!」
肩を抑えつけてる勇一の顔が目の前に迫っていた。
「ちょ……っと!」
拒否をする柚子のことはお構い無しの勇一は、何度か柚子にキスをしようとする。
「……やっ!」
柚子は力いっぱい押し退けた。
「柚子。好きなんだ!」
とまた柚子を抑えつけてキスを迫る。
「嫌っ……!」
男と女じゃ力の差がある。逃げきれずにそのままキスをされた。
「……っ、やめて……っ!」
ドンと、どうにか押し退けた柚子は目に涙を溜めていた。
そしてそのまま教室を飛び出して走って行く。荷物を取りに戻って逃げるように学校を出る。そしてそのままバスに乗り込んだ。駅で電車に乗り、湊のアパートにまで行く。
迷うことなくアパートまで行けた柚子は、湊が帰ってくるのをしゃがみこんで待っていた。
◇◇◇◇
どのくらい待ったのか、カンカンと階段を上ってくる音がした。
「……柚子?」
しゃがみこんでいた柚子に気付き、柚子と同じようにしゃがみこむ。
「どうした?」
泣いてることに気付いた湊は柚子を部屋の中に入れた。
コトンと、テーブルにペットボトルのお茶を置いた。
「何があった?」
答えない柚子にため息を吐く。
「零士とケンカしたか?」
「違う」
「じゃなんだ」
答えない柚子にスマホ取り出す。
「零士呼ぶ」
「違う!零士さんは関係ないの!」
顔を上げた柚子に近付き、涙でグシャグシャになってる顔に触れる。
「分かったから、もう泣くな」
何があったのか話さない柚子に困った湊は、結局零士に電話をかけた。
何度目かのコールで漸く繋がった電話は、元気のない零士の声がした。
『なんだ』
落ち込んでいるような声を出す零士に、湊は不思議思う。
「お前もどうした?」
『お前もってなんだ』
「今、柚子がいる」
『は?』
「柚子が泣いてる。お前、なんかしたか?」
『今日会ってねぇよ』
「じゃなんで泣いてんだよ」
『知らねぇよ』
ふたりは黙ってしまった。
『柚子はなんか言ってんのか』
零士がそう聞いてきた。
膝を抱えて小さくなってる柚子を見下ろし、「なにも」と答えた。
『ちょっと、まだ雑誌の撮影あって……。終わったらお前んとこ行くから』
「分かった」
電話を切ると柚子の隣に座り頭を撫でた。
◇◇◇◇◇
ドンドン……っ!
湊のアパートのドアを勢いよく叩く音が響く。湊は面倒臭そうに立ち上がり玄関を開ける。
「叩くなよ、インターフォンあんだからさー」
そんな湊を無視して部屋の中に入る。部屋の隙に膝を抱えて座る柚子がいた。
「柚子」
声をかけても顔を上げない。
「どう……した?」
柚子に触れていいのか迷ってる零士がいる。その様子に湊は不思議に思う。ふたりに何かあったとその時に感じた。だけど、柚子がこうなってるのはそれとはまた違うんだろう。
「柚子」
何度か柚子の名を呼び、どうにか自分の方を向かせる。
涙で目が腫れぼったくなっている。
「柚子」
頬に触れ涙を拭う。
「何があった……?答えて」
零士を見上げた柚子は、そのまま零士に抱きついた。そしてゆっくり話し出した。
「……なさい」
微かに出た言葉は何を言ってるのか分からないくらいだった。
「……たし、そんな……つもりない……のに……」
ぐずっと鼻をすすり、震えてる柚子を抱きしめる。
「──……キスされた」
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