もう一度抱きしめて……

星河琉嘩

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第3章

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 夏休みに入ってすぐにライブ。芽依はライブ前に従姉妹のところへ柚子と煌太を連れていった
「ゆうちゃん、また会いたいって」
 芽依の従姉妹もまたライブへ行くことになっていて、途中で待ち合わせをしていた。
 待ち合わせした場所には着飾った優奈が待ってた。

「初めまして。煌太くん」
 優奈に笑いかけられた煌太は顔が真っ赤だった。そのくらい、優奈はキレイな人だった。特に今日は本当にキレイ。
「ゆうちゃん、キレイー!」
 芽依は優奈に抱きつくと優奈は芽依の頭を撫でる。そんなふたりを見て煌太はますます顔を赤くする。
「なに、煌太」
 芽依は煌太をちらっと見てニヤとする。
「煌太にはゆうちゃんが刺激過ぎたかなー」
「芽依。煌太くんをからかわないの。ごめんね、芽依ったら」
「あっ!いやっ!」
 緊張なのか、ガチガチな煌太が可笑しくて芽依は笑った。
「柚子ちゃんも久しぶり」
「お久しぶりです」
 じっと見つめてくる優奈に戸惑う柚子は芽依に目線だけで助けを求める。
 だけど芽依はそれに知らんぷりをしていた。
「柚子ちゃん、キレイになったよね?」
「え……っ」
「恋してる?」
「え……」
 そんなことを言われたから恥ずかしさで顔が真っ赤になる。
「だって社会人の彼氏いるもんねー」
 横から芽依が口を挟む。
「そうなの?そりゃキレイになるわね」
 そう言った優奈は何かを思いつたように笑うと、柚子の手を握る。
「まだ時間あるからちょっと衣装チェンジしよ」
 悪戯っぽく笑うとそのまま柚子を引き摺っていくように歩きだした。その後ろを芽依と煌太は着いていく。
 
 連れていかれた場所は優奈のマンション。会場から本当に近い。
(お兄ちゃんのアパートも近いんだよね)
 優奈のマンションから程近いところに湊のアパートがある。

「ちょっと待ってねー」
 クローゼットの中から色々出してきては「う~ん」と考えてる。
 柚子たちはリビングでその姿を見ていた。
「よし。これかな」
 と、柚子を手招きして寝室を閉めた。
 優奈から手渡された洋服を柚子は仕方なく着替える。
 普段は淡い色ばかり着る柚子はその正反対の黒のワンピースを渡されていた。
「絶対、似合うわよ」
 早く着てみろと言わんばかりの勢いで柚子の着ている服を脱がそうとする。
「あっ、じ、自分で出来ますから!」
 脱がされるのは恥ずかしい。
 優奈の見てる前で脱ぐのも恥ずかしかった。それでも早く早くと急かす優奈に負けて着替える。
 黒のシンプルなワンピースだけど、その色が柚子にとても似合っていた。
「やっぱり!」
 そう言って寝室のドアを開けて芽依たちの前へ連れていく。
「見てみて!」
「わぁ!柚子、似合うー!」
「派手さはないシンプルなワンピースだけど、柚子ちゃんが着るとこれだけでも華やかさがあるわねぇー」
 黒だからか、いつもより大人っぽい柚子に煌太は目線を合わせられない。
「柚子ちゃん、これあげる。私、もう着ないものなのよ」
「え……」
「これ着てライブ行きましょっ!」
 少し強引な優奈に背中押されてマンションを出る。ライブ会場までは歩いて10分くらいの場所だった。

「ゆうちゃん、グッズ欲しいんだけどー」
 芽依が言うとふふっと笑った。
「初日に買ってあるから、あとでね」
 と人数分のペンライトを取り出した。
「これどうぞ」
「ゆうちゃん!買ってくれてたの?」
「そう。どうせ、芽依はグッズ欲しがるだろうと思って買ってマンションに置いてあるわ。あなたたちのもあるけど」
「ありがとうございます」
「お金は芽依に預けてくれれば芽依から渡すわー。欲しいものだけあとで教えてねー」
 と楽しそうに歩く。優奈は全員分と言いつつもっと買っていそうな感じだった。
「さ、3人はどこ?」
 チケットの場所を覗き込むと「あら!」と目を丸くした。
「いい席ね」
 3人のチケットはアリーナの前の方だった。そんな場所を煌太は勝ち取っていたのだった。
「じゃ私は向こうだから」
 と、優奈は別の入り口の方へと走って行った。

「凄い人だな……」
 煌太は呆気に取られていた。パワフルでちょっと強引でそしてキレイな人。柚子も会うのは二度目だけど、呆気に取られるくらいの人だった。
「ねぇ、このワンピース本当にもらってよかったのかな」
「ゆうちゃん、着なくなったって言ってたから大丈夫よ」
 ニコニコと笑って柚子の腕を組む。
「さ、行こう!」
 3人は入り口へと向かって歩いて行った。
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