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第3章
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高校生最後の年は考えなきゃいけないことが色々とある。その為か、不安定になることもある。
「柚子」
部屋でベッドに横になりスマホも握りしめてると、母親がやってきていた。
「ねぇ、柚子」
「お母さんはもう少し、遊んでてもいいと思うの。就職なんかしなくてももう少し学生でいてもいいのよ」
「でも何をしたらいいか分からない」
大学に行くとしてもどこに入ったらいいのか分からない。
「柚子は小さい頃、言ってたこと覚えてる?」
「え」
「あなた、テレビで見たアイドルの洋服を見てキレイって。あんな服作りたいって。忘れちゃったかな」
本当に幼い頃の事だ。柚子も忘れてしまっていたこと。
「デザインを習ってみたら?」
「芽依と同じことを言う」
「あら。芽依ちゃんなかなか鋭いわね」
「今からでもそういうの出来るのかな」
「やってみなきゃ」
「考えてみる」
そう言うと柚子はそれ以上なにも話さなかった。
◇◇◇◇◇
『デザイン?』
スマホの向こうから聞こえてきた声に不安な気持ちをぶつける。
「私、本当に何をやりたいか分からなくて。どうしたらいいのか分からなくて」
芽依と母親に言われたことを話してみた。
『柚子はそういうの、興味あるの?』
「分からない」
『こりゃ湊が頭悩ませる筈だな』
くくくっといつもの笑い声が聞こえた。
「わりと美術の授業は好きだけど……、だからと言ってそういう道に進みたいかどうかは分からないの」
『三年生は大変だなぁ』
「零士さんはどうだったの?」
『俺はバンドしか興味なかったから。でもその頃には湊は脱退するって決めてて。引き留めてたんだけど最後まで医学部行くって言ってたなぁ』
湊は本当に色々と考えていたんだと改めて思う。
湊が医学部に行くことを決めていたのは子供の頃から。だけど勉強ばかりをしてきたわけじゃなく、色々と人に言えないようなこともしてた……らしい。
そのあたりの事は、誰も教えてはくれない。
『今からでも戻ってきて欲しいよ』
零士は湊が医者を目指してることを納得はいかないらしい。
『アイツのギターで歌いてぇなぁ……』
心底、湊と一緒にやってた時が楽しかったのかそう呟く。
(やっぱりみんな、夢中になれるものがあったんだね)
話を聞いてると自分がダメなやつだって思わされてくる。ただ勉強が出来るだけじゃダメなんだよ。
分かってるけど、柚子にはそれしかない。
それがとても悔しかった。
「柚子」
部屋でベッドに横になりスマホも握りしめてると、母親がやってきていた。
「ねぇ、柚子」
「お母さんはもう少し、遊んでてもいいと思うの。就職なんかしなくてももう少し学生でいてもいいのよ」
「でも何をしたらいいか分からない」
大学に行くとしてもどこに入ったらいいのか分からない。
「柚子は小さい頃、言ってたこと覚えてる?」
「え」
「あなた、テレビで見たアイドルの洋服を見てキレイって。あんな服作りたいって。忘れちゃったかな」
本当に幼い頃の事だ。柚子も忘れてしまっていたこと。
「デザインを習ってみたら?」
「芽依と同じことを言う」
「あら。芽依ちゃんなかなか鋭いわね」
「今からでもそういうの出来るのかな」
「やってみなきゃ」
「考えてみる」
そう言うと柚子はそれ以上なにも話さなかった。
◇◇◇◇◇
『デザイン?』
スマホの向こうから聞こえてきた声に不安な気持ちをぶつける。
「私、本当に何をやりたいか分からなくて。どうしたらいいのか分からなくて」
芽依と母親に言われたことを話してみた。
『柚子はそういうの、興味あるの?』
「分からない」
『こりゃ湊が頭悩ませる筈だな』
くくくっといつもの笑い声が聞こえた。
「わりと美術の授業は好きだけど……、だからと言ってそういう道に進みたいかどうかは分からないの」
『三年生は大変だなぁ』
「零士さんはどうだったの?」
『俺はバンドしか興味なかったから。でもその頃には湊は脱退するって決めてて。引き留めてたんだけど最後まで医学部行くって言ってたなぁ』
湊は本当に色々と考えていたんだと改めて思う。
湊が医学部に行くことを決めていたのは子供の頃から。だけど勉強ばかりをしてきたわけじゃなく、色々と人に言えないようなこともしてた……らしい。
そのあたりの事は、誰も教えてはくれない。
『今からでも戻ってきて欲しいよ』
零士は湊が医者を目指してることを納得はいかないらしい。
『アイツのギターで歌いてぇなぁ……』
心底、湊と一緒にやってた時が楽しかったのかそう呟く。
(やっぱりみんな、夢中になれるものがあったんだね)
話を聞いてると自分がダメなやつだって思わされてくる。ただ勉強が出来るだけじゃダメなんだよ。
分かってるけど、柚子にはそれしかない。
それがとても悔しかった。
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