25 / 104
第2章
14
しおりを挟む
その後は零士が持ってる映画のBlu―rayを観ていた。
昔の映画から最近のまで色々置いてあり、そこから1本選ぶのが大変なくらい置いてあった。
ソファーに座り、柚子を抱き締める零士の心の中は、本当はドキドキが止まらなかった。本音を言うと柚子を抱き寄せてキスをして、それ以上のことをしたい。だけど、柚子を傷つけたくなくて紳士を演じてる。そんな思いを持ってることを柚子に知られたくなくて必死に誤魔化してる。
柚子の方もほっとしていることを知られたくない。覚悟はしていた筈なのに、まだ踏み切れないでいる自分がいたことに驚いていて、先に進むのが怖かった。だから零士に「しない」と言われてほっとしている。
「柚子」
頭の上から呼び掛けられる。顔を上げると綺麗な顔がそこにある。その事にまだ信じられない思いと安心感と色んな感情が入り交じりになる。
「風呂、入るか?入るなら沸かしてくる」
「ん」
「待ってな」
柚子から離れた零士は風呂場へと行く。零士が離れていくと不安が柚子の中を満たしてしまう。零士がいることで安心感を得てる状態。いなくなるとこうして不安で胸が締め付けられるのだ。
「どした?」
戻ってきた零士は俯いていた柚子の頭をポンと置くと顔を覗き込む。
「不安そうな顔してる」
柚子の不安を感じ取ったのか、再び隣に座り抱き寄せた。
その距離に安心したのか零士の背中に柚子は手を回した。
「柚子……」
零士は柚子の髪を優しく撫でる。その手の優しさに柚子はほっとする。
(いつも会える距離だといいのに)
無理な話なのだけど、そう思わずにはいられなかった
◇◇◇◇◇
「柚子が寝室使え」
と寝室を案内する零士に「悪いよ」と言う柚子。
「いいから」
「ダメ」
ふたりはこんなやり取りをし始めた。
「いいから。俺は少しあっちの部屋に籠るから」
と指した部屋。そこは防音室になっていて、作曲したりする時に使う部屋。いろんな機材やパソコンが置いてある。
「柚子に会えたから、メロディーが浮かんできた」
そう言うと防音室に入っていく。
防音室に入ると中の音は全く聞こえない。
仕方なく柚子は寝室のドアを閉めた。
(眠れない……)
自分のベッドじゃないからなのか、防音室に籠ってる零士が気になるのか、柚子はなかなか寝付けなかった。
何度目かの寝返りを打った後、身体を起こした。
ひとりで寝室にいるのが寂しいのか。よく分からないけど、寝室の冷たい空気が邪魔して寝れなかった。
柚子はゆっくりとベッドから出ると寝室のドアを開けた。リビングには零士はいなかった。防音室の方を見るとドアの隙間から光が漏れている。そっと近付いてみた。
中で作業しているのかしていないのか。分からない程静かだった。
柚子は思いきって防音室のドアを叩いた。そもそも防音室のドアを叩いても聞こえるか分からないのだけど。
カチャ、と。ドアが開く。
「柚子」
柚子は零士に抱きついていた。
「どうした」
「一緒に……いたくて……」
小さな声で呟くように出た言葉に、零士は目を見開いた。そして優しい笑みを浮かべると柚子を中に入れた。
昔の映画から最近のまで色々置いてあり、そこから1本選ぶのが大変なくらい置いてあった。
ソファーに座り、柚子を抱き締める零士の心の中は、本当はドキドキが止まらなかった。本音を言うと柚子を抱き寄せてキスをして、それ以上のことをしたい。だけど、柚子を傷つけたくなくて紳士を演じてる。そんな思いを持ってることを柚子に知られたくなくて必死に誤魔化してる。
柚子の方もほっとしていることを知られたくない。覚悟はしていた筈なのに、まだ踏み切れないでいる自分がいたことに驚いていて、先に進むのが怖かった。だから零士に「しない」と言われてほっとしている。
「柚子」
頭の上から呼び掛けられる。顔を上げると綺麗な顔がそこにある。その事にまだ信じられない思いと安心感と色んな感情が入り交じりになる。
「風呂、入るか?入るなら沸かしてくる」
「ん」
「待ってな」
柚子から離れた零士は風呂場へと行く。零士が離れていくと不安が柚子の中を満たしてしまう。零士がいることで安心感を得てる状態。いなくなるとこうして不安で胸が締め付けられるのだ。
「どした?」
戻ってきた零士は俯いていた柚子の頭をポンと置くと顔を覗き込む。
「不安そうな顔してる」
柚子の不安を感じ取ったのか、再び隣に座り抱き寄せた。
その距離に安心したのか零士の背中に柚子は手を回した。
「柚子……」
零士は柚子の髪を優しく撫でる。その手の優しさに柚子はほっとする。
(いつも会える距離だといいのに)
無理な話なのだけど、そう思わずにはいられなかった
◇◇◇◇◇
「柚子が寝室使え」
と寝室を案内する零士に「悪いよ」と言う柚子。
「いいから」
「ダメ」
ふたりはこんなやり取りをし始めた。
「いいから。俺は少しあっちの部屋に籠るから」
と指した部屋。そこは防音室になっていて、作曲したりする時に使う部屋。いろんな機材やパソコンが置いてある。
「柚子に会えたから、メロディーが浮かんできた」
そう言うと防音室に入っていく。
防音室に入ると中の音は全く聞こえない。
仕方なく柚子は寝室のドアを閉めた。
(眠れない……)
自分のベッドじゃないからなのか、防音室に籠ってる零士が気になるのか、柚子はなかなか寝付けなかった。
何度目かの寝返りを打った後、身体を起こした。
ひとりで寝室にいるのが寂しいのか。よく分からないけど、寝室の冷たい空気が邪魔して寝れなかった。
柚子はゆっくりとベッドから出ると寝室のドアを開けた。リビングには零士はいなかった。防音室の方を見るとドアの隙間から光が漏れている。そっと近付いてみた。
中で作業しているのかしていないのか。分からない程静かだった。
柚子は思いきって防音室のドアを叩いた。そもそも防音室のドアを叩いても聞こえるか分からないのだけど。
カチャ、と。ドアが開く。
「柚子」
柚子は零士に抱きついていた。
「どうした」
「一緒に……いたくて……」
小さな声で呟くように出た言葉に、零士は目を見開いた。そして優しい笑みを浮かべると柚子を中に入れた。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R18】カッコウは夜、羽ばたく 〜従姉と従弟の托卵秘事〜
船橋ひろみ
恋愛
【エロシーンには※印がついています】
お急ぎの方や濃厚なエロシーンが見たい方はタイトルに「※」がついている話をどうぞ。読者の皆様のお気に入りのお楽しみシーンを見つけてくださいね。
表紙、挿絵はAIイラストをベースに私が加工しています。著作権は私に帰属します。
【ストーリー】
見覚えのあるレインコート。鎌ヶ谷翔太の胸が高鳴る。
会社を半休で抜け出した平日午後。雨がそぼ降る駅で待ち合わせたのは、従姉の人妻、藤沢あかねだった。
手をつないで歩きだす二人には、翔太は恋人と、あかねは夫との、それぞれ愛の暮らしと違う『もう一つの愛の暮らし』がある。
親族同士の結ばれないが離れがたい、二人だけのひそやかな関係。そして、会うたびにさらけだす『むき出しの欲望』は、お互いをますます離れがたくする。
いつまで二人だけの関係を続けられるか、という不安と、従姉への抑えきれない愛情を抱えながら、翔太はあかねを抱き寄せる……
托卵人妻と従弟の青年の、抜け出すことができない愛の関係を描いた物語。
◆登場人物
・ 鎌ヶ谷翔太(26) パルサーソリューションズ勤務の営業マン
・ 藤沢あかね(29) 三和ケミカル勤務の経営企画員
・ 八幡栞 (28) パルサーソリューションズ勤務の業務管理部員。翔太の彼女
・ 藤沢茂 (34) シャインメディカル医療機器勤務の経理マン。あかねの夫。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。
——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない)
※完結直後のものです。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
先生、生徒に手を出した上にそんな淫らな姿を晒すなんて失格ですよ
ヘロディア
恋愛
早朝の教室に、艶やかな喘ぎ声がかすかに響く。
それは男子学生である主人公、光と若手美人女性教師のあってはならない関係が起こすものだった。
しかしある日、主人公の数少ない友達である一野はその真実に気づくことになる…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる