もう一度抱きしめて……

星河琉嘩

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第2章

13

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 零士のマンションに着くと途端に柚子はソワソワし出す。前に来た時は本当に訳も分からず来た感じだった。でも今日は最初っからここに来ることは決まっていた。
 その為、マンションに着いた途端に緊張が湧き出てしまったのだ。
 奥手な柚子にだって男の人の部屋に来る意味くらい分かる。どんなことになってもそれは自分の責任だって。


「柚子」
 柚子の荷物を持っていた零士はその荷物をリビングに置くと柚子を自分の方に抱き寄せた。
「あ……っ。れ、零士さん……」
「少し黙って」
 そのまま零士は柚子を抱き締めていた。

 どのくらい経ったのだろう。そう思うくらい長い時間抱き締められていたように感じていた。
 実際はそんなに長く抱き締めてはいなかったが。

「やっぱり緊張してるね」
 柚子の顔を覗き込むとソファーに座らせる。
「どうしたらその緊張が解けるかな」
 柚子の顔を見ながら言う零士はくくくっと笑う。
「ごめん。ちょっと意地悪だったね」
 ポンと頭に手を置く。
(好きなのにどうしたらいいか分からない)
 こんな思いは初めてで、胸が張り裂けそうになる。目の前には大好きな人がいて、その人と一晩同じマンションにいる。
 その覚悟はしてきたつもりなのに、どうしたらいいのか分からない。
「俺だって緊張しない訳、ないじゃん。女の子、うちに泊まらせるなんてことしないし」
 ドキン……っ!
 鼓動が跳ねた。
「泊まる」という言葉に鼓動は早くなる。
 柚子は顔を真っ赤に染める。「泊まる」ということに今更ながらそういうことなんだよねと思わされる。
 思わず俯いた柚子を引き寄せる。
 ますます心臓の音が煩くなる。

「しねぇよ」
 零士はそう呟く。
 初め、何のことかと思った。緊張で固まってる私はさの言葉の意味が理解出来ていなかった。
「一晩一緒にいたって、しねぇからな」
「……?」
 柚子はただ零士の顔を見てるだけで何も言わない。
 そんな柚子をじっと見て、零士はおでこにキスをする。
「ここまで。まだ……、やるには早い……、からな」
 そしてまた抱き締めた。
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