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第2章
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湊に電話をしてから約1時間後。
零士は柚子の家の近くにいた。車を停めて柚子にメッセージを送る。柚子はそれに対して《今行く!》と返信していた。
それから数分。ちょっと大きめの荷物持って走ってきた柚子が見えた。
零士の車はいつもとは違う赤のスポーツカーで柚子は戸惑う。零士は助手席のドアを開けるとそのドアに滑り込むように車に乗り込んだ。
「柚子」
ニコッと笑う零士に柚子はドキッとした。今日は時間が時間なので零士のマンションに泊まると、事前にふたりは話していた。柚子に取ってはそれがどんなことなのか分かっていた。それでも柚子は零士と会いたかった。
「大丈夫?」
緊張している柚子に笑いかけるとゆっくり車を走らせた。
「さっき湊に文句言われたわ」
ハンドルを握りしめて運転する零士は誰よりもかっこいい。
「お兄ちゃんに?」
「うん。凄い心配なんだろうなぁ」
湊のところへ行ってると話を合わせてくれてる兄に感謝だ。
「零士さん……。仕事、大丈夫……?」
「心配ないよ」
零士の運転する車はとあるイタリアン料理のお店へと向かっていた。
「食事をしよう」
と言った。
零士は事前に予約していたのか、貸し切り状態の店内。
「零士さん……?」
「ここ、俺の兄貴の店」
「え」
「一番上の兄貴とは8コ離れてるんだよ。で、中学卒業して単身でイタリアに行ったんだよ。だからほぼ一緒に暮らした記憶がない」
どうしたらいいのか分からない柚子は緊張によりガチガチになっていた。
「大丈夫だって」
そう言うと零士に後ろから声がかかる。
「お前な、大丈夫じゃねーだろ」
零士に似た人がそこに立っている。そして柚子をちらっと見て零士を睨む。
「彼女、高校生か?」
「まぁ」
「緊張するに決まってるだろ。誰もいない店にいるんだ。何事かと思うだろ。ごめんな、バカな弟が」
そう言うと厨房へ戻って行く。
(声が……、そっくり)
後ろから声がした時、びっくりした。そのくらい声が似てた。勿論、顔も似ていて優しい笑顔をしていた。
「零士……さん。あの……」
緊張で言葉が出てこない柚子は黙り込んでしまった。
「兄貴の店じゃないと色々と問題があってな。無理言ったんだよ」
色々と問題という言葉に柚子は引っ掛かった。どういう問題なのか、想像つく。自分と会うことがリスクがあること。そもそも自分と付き合うこと自体が零士にとってリスクあることなんだと。
「不安がらせるな」
零士に似たお兄さんがふたりの前に戻ってきた。
「お前の言葉は彼女を不安がらせてる」
「えぇっ!」
「問題があるじゃねーだろ。その発言は彼女のせいのよう聞こえるぞ」
「あ……」
「ほんと、ごめんな。こいつはうちの店以外は信用出来なくて君を連れて行けないってことを言いたいんだよ。しかも今、思いっきりREIJIの格好してるからな」
そういえば……と、零士を見るといつものラフな格好ではなく革ジャンに皮パンにサングラスといったいかにもBRのREIJIだった。
「仕事から直接迎えに行ったから」
「だから車も?」
「そ」
「車乗ってる時に見られるなよ」
「分かってる」
零士の兄は目の前にサラダやスープを置いて行った。
「本来ならスタッフがやるんだろうけどな。俺が来るとスタッフはみんないないんだよ」
零士の兄は零士のことを思い、零士が来るとスタッフを休みにする。スタッフと零士を関わらせないように。
「一緒に住んだ記憶はほぼないけど、いつも俺を気にかけてくれたんだ」
そう言うとスープに口をつける。
「兄貴ー」
厨房に向かって叫ぶ零士。
「お前なぁ、次準備すっから呼ぶな」
と厨房から叫び返される。
ひとりで料理をしているから慌てるのかと思いきや冷静に動く。
暫くして「なんだ」と零士の方へとやってくる。
「玉ねぎいらない」
「食え」
「野菜嫌い」
「食え」
「嫌い」
「好き嫌いしてっとデカクならねーよ」
「これ以上デカクなってどうすんだ」
「煩せぇ。とにかく出されたもんは食え」
そして柚子に振り返り「嫌いなものある?」と聞いた。
「あ……。海老と蟹、食べられないです」
「アレルギー?」
「はい。あとは全然大丈夫です」
「了解。スープには入ってないから安心して」
優しく柚子に笑いかけまた戻って行く。
「野菜、苦手なの?」
「嫌い。じゃがいもは食えるけど……」
拗ねた感じが可愛く見える。
「柚子は甲殻アレルギーなんだ」
「うん」
「そっか」
そんなたわいもないこともニコニコと笑って聞く。零士に会えたことで心が安らぐのを感じていた。それは零士も同じことだった。
「じぁ兄貴」
そう言った零士はサングラスをかける。その仕草を見て零士の兄は笑う。
「似合わねぇ」
「な、なんだよっ!」
「お前はまだまだガキだっての」
そう言って頭をグシャグシャとする。
「あー!何すんだよ!」
「頭グシャグシャの方がREIJIっぽくねぇよ。REIJIはいつもキメ過ぎたからな」
「なんか、ガキ扱いされてる気がする」
「俺からすりゃガキだよ。じゃ、柚子ちゃん。またおいで。旨いもん食わせてやるから」
「ありがとうございました」
そう言ってふたりは店を後にした。
車に乗り込もうとした時、零士は考え込んでしまった。
「柚子。後ろに乗ってな」
車のシートを倒し後ろに乗せる。
「この車、結構目立つから張られてるかもしれない」
そう言って零士は車を走らせた。
零士は柚子の家の近くにいた。車を停めて柚子にメッセージを送る。柚子はそれに対して《今行く!》と返信していた。
それから数分。ちょっと大きめの荷物持って走ってきた柚子が見えた。
零士の車はいつもとは違う赤のスポーツカーで柚子は戸惑う。零士は助手席のドアを開けるとそのドアに滑り込むように車に乗り込んだ。
「柚子」
ニコッと笑う零士に柚子はドキッとした。今日は時間が時間なので零士のマンションに泊まると、事前にふたりは話していた。柚子に取ってはそれがどんなことなのか分かっていた。それでも柚子は零士と会いたかった。
「大丈夫?」
緊張している柚子に笑いかけるとゆっくり車を走らせた。
「さっき湊に文句言われたわ」
ハンドルを握りしめて運転する零士は誰よりもかっこいい。
「お兄ちゃんに?」
「うん。凄い心配なんだろうなぁ」
湊のところへ行ってると話を合わせてくれてる兄に感謝だ。
「零士さん……。仕事、大丈夫……?」
「心配ないよ」
零士の運転する車はとあるイタリアン料理のお店へと向かっていた。
「食事をしよう」
と言った。
零士は事前に予約していたのか、貸し切り状態の店内。
「零士さん……?」
「ここ、俺の兄貴の店」
「え」
「一番上の兄貴とは8コ離れてるんだよ。で、中学卒業して単身でイタリアに行ったんだよ。だからほぼ一緒に暮らした記憶がない」
どうしたらいいのか分からない柚子は緊張によりガチガチになっていた。
「大丈夫だって」
そう言うと零士に後ろから声がかかる。
「お前な、大丈夫じゃねーだろ」
零士に似た人がそこに立っている。そして柚子をちらっと見て零士を睨む。
「彼女、高校生か?」
「まぁ」
「緊張するに決まってるだろ。誰もいない店にいるんだ。何事かと思うだろ。ごめんな、バカな弟が」
そう言うと厨房へ戻って行く。
(声が……、そっくり)
後ろから声がした時、びっくりした。そのくらい声が似てた。勿論、顔も似ていて優しい笑顔をしていた。
「零士……さん。あの……」
緊張で言葉が出てこない柚子は黙り込んでしまった。
「兄貴の店じゃないと色々と問題があってな。無理言ったんだよ」
色々と問題という言葉に柚子は引っ掛かった。どういう問題なのか、想像つく。自分と会うことがリスクがあること。そもそも自分と付き合うこと自体が零士にとってリスクあることなんだと。
「不安がらせるな」
零士に似たお兄さんがふたりの前に戻ってきた。
「お前の言葉は彼女を不安がらせてる」
「えぇっ!」
「問題があるじゃねーだろ。その発言は彼女のせいのよう聞こえるぞ」
「あ……」
「ほんと、ごめんな。こいつはうちの店以外は信用出来なくて君を連れて行けないってことを言いたいんだよ。しかも今、思いっきりREIJIの格好してるからな」
そういえば……と、零士を見るといつものラフな格好ではなく革ジャンに皮パンにサングラスといったいかにもBRのREIJIだった。
「仕事から直接迎えに行ったから」
「だから車も?」
「そ」
「車乗ってる時に見られるなよ」
「分かってる」
零士の兄は目の前にサラダやスープを置いて行った。
「本来ならスタッフがやるんだろうけどな。俺が来るとスタッフはみんないないんだよ」
零士の兄は零士のことを思い、零士が来るとスタッフを休みにする。スタッフと零士を関わらせないように。
「一緒に住んだ記憶はほぼないけど、いつも俺を気にかけてくれたんだ」
そう言うとスープに口をつける。
「兄貴ー」
厨房に向かって叫ぶ零士。
「お前なぁ、次準備すっから呼ぶな」
と厨房から叫び返される。
ひとりで料理をしているから慌てるのかと思いきや冷静に動く。
暫くして「なんだ」と零士の方へとやってくる。
「玉ねぎいらない」
「食え」
「野菜嫌い」
「食え」
「嫌い」
「好き嫌いしてっとデカクならねーよ」
「これ以上デカクなってどうすんだ」
「煩せぇ。とにかく出されたもんは食え」
そして柚子に振り返り「嫌いなものある?」と聞いた。
「あ……。海老と蟹、食べられないです」
「アレルギー?」
「はい。あとは全然大丈夫です」
「了解。スープには入ってないから安心して」
優しく柚子に笑いかけまた戻って行く。
「野菜、苦手なの?」
「嫌い。じゃがいもは食えるけど……」
拗ねた感じが可愛く見える。
「柚子は甲殻アレルギーなんだ」
「うん」
「そっか」
そんなたわいもないこともニコニコと笑って聞く。零士に会えたことで心が安らぐのを感じていた。それは零士も同じことだった。
「じぁ兄貴」
そう言った零士はサングラスをかける。その仕草を見て零士の兄は笑う。
「似合わねぇ」
「な、なんだよっ!」
「お前はまだまだガキだっての」
そう言って頭をグシャグシャとする。
「あー!何すんだよ!」
「頭グシャグシャの方がREIJIっぽくねぇよ。REIJIはいつもキメ過ぎたからな」
「なんか、ガキ扱いされてる気がする」
「俺からすりゃガキだよ。じゃ、柚子ちゃん。またおいで。旨いもん食わせてやるから」
「ありがとうございました」
そう言ってふたりは店を後にした。
車に乗り込もうとした時、零士は考え込んでしまった。
「柚子。後ろに乗ってな」
車のシートを倒し後ろに乗せる。
「この車、結構目立つから張られてるかもしれない」
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