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第2章
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「メシ、どこで食うんだ」
少しスッキリした顔で降りてきた崇弘はさっきまでの二日酔いの顔はしていない。
「酔い覚めたか」
「まだ残ってる」
「いつもいつも飲み過ぎなんだよ!」
輝は崇弘に怒鳴っていた。
「頭に響くからやめろ」
嫌そうな顔をして部屋から持ってきた荷物をまとめている。
「あ、あんまりキレイに片付けなくていいよ。親父の方でハウスキーパー入れるだろうから」
「んなわけにいくか」
真面目な輝は崇弘に睨む。
そんな輝を見て崇弘は「ガハハハっ」と笑った。
「じゃ行くか」
最後まで寝ていた崇弘が一番先にワゴン車に乗っていた。
「お前なぁ」
苦笑しながら輝は運転席に乗り込み零士を見た。
「じゃついてこいよ」
車を走らせた。
「ほら。乗って」
零士に促され後部座席に乗り込もうとした。
「柚子は助手席に乗れ。俺は後ろで寝るわ」
「え」
湊はさっさと後部座席に乗って瞼を閉じた。
「変な気、回すんじゃねぇよ」
零士は呟くと助手席のドアを開けた。
零士は湊の車を走らせ、先に行ったワゴン車を追いかけた。
柚子は何を話していいのか分からなかった。久しぶりに会ったと思ったら葉山まで連れ出され、湊たちの集まりに参加させられて緊張しっぱなし。夜はいつの間にか寝てしまって、零士と同じベッドで寝てたということ。
その全てが駆け足で起きた出来事だった。
「まだ緊張してる?」
ハンドルを持つ手がかっこよくて見惚れてしまう。
「柚子」
呼ばれてはっとする。
「あまり固くなるなよ。アイツらバカばっかだし。まだああやって集まると高校生の時のノリと変わらないし。気兼ねしちゃダメだよ」
「それでも……緊張します」
「俺とふたりってのも?」
「あ……、うん」
ふっと柔らかい笑みを溢す。
「慣れていくしかない……かなぁ」
信号で停車した時に、零士はそう言って柚子を見る。
「早く慣れて欲しいな。寂しいじゃん」
「ごめんなさい……」
思わず謝った柚子に寂しい顔を向ける零士は「謝って欲しいわけじゃないよ」と告げる。
(分かってる。それでも緊張してまともに顔を見られない時もあるの)
付き合ってるといっても、会ったのはまだ数える程で、柚子にとっては初めての彼氏で、本当にどうしたらいいのか分からないことのが多い。
それを分かってるが零士は寂しくなる。
「また仕事忙しくはなるけど、日本にいるから。会える時には会いに行くから」
「ん……」
頷く柚子の中は不安でいっぱいだった。
この二日間、本当に緊張しっぱなしだった。それでもメンバーはみんな優しくて気を使ってもらってしまった。
湊がまだこの人たちと友達をしている訳が分かった気がした。
(ならなんで、バンドを辞めてしまったんだろう)
それが不思議だった。
◇◇◇◇◇
「柚子っ!」
朝、家を出たところで芽依に会う。煌太は早々に部活の朝練に出てしまってる。
「土日どっか行ってた?」
「お兄ちゃんに呼び出されてた」
「湊さんに?」
「ん」
まさかBRのメンバーに会ったとは言えない。
「お兄ちゃんの友達も一緒だったの」
葉山で会ったメンバーたちはとても優しかった。
「なーんだ。彼氏と会ってるのかもと思ったのに」
「えっ」
思わずそう反応する。
「あ、彼氏も一緒かぁ」
柚子の顔を見てそう判断した芽依は柚子の顔色を読むのが得意。すぐに嘘などはバレてしまう。
「どんな人なの?」
「教えられないー」
ふたりは話しながら学校へと向かう。
学校に着くとクラスメートたちはテレビドラマやアイドルの話で盛り上がっていた。
「あ、愛川さん」
紫が駆け寄る。
「今ね、凄い話聞いちゃった」
「え」
「BRって、この街が出身だって!」
その話で盛り上がっていたらしい。
詳しい場所は公表していなかったはず。どこでバレたんだろうと柚子は考えていた。
「しかもこの学校にいたって話だよー!」
女子は噂話が好きだ。それが芸能人の話だとしても。
「ねぇ、滝山」
振り返ると滝山勇一がえっへんと言うように立っていた。
「俺の兄貴、3コ上なんだけど、ここの卒業生なんだ。それで教えてもらった」
勇一の言葉に柚子も諦めて話に加わる。
「うちのお兄ちゃん、クラス一緒だったって」
「え!そうなのか?」
勇一は柚子に近寄り、柚子の腕を強く掴んだ。
「お前の兄ちゃんに合わせてくれ!話聞きたい!」
「無理よ」
「いいじゃんかー。うちの兄貴、メンバーみんなのこと嫌ってて話してくれないんだよー」
「うちのお兄ちゃん、今一人暮らしだから家に帰ってこないし。やたらに話す人じゃないのよ」
柚子は自分の席へと座った。
「いいじゃん、お前の兄ちゃん紹介してくれー」
「お兄ちゃん、忙しい人だから」
「ちぇっ」
柚子が頑なに無理と言ってるからか、勇一は諦めるしかなかった。
『で、誰だっけ。俺らが光葉高校だって言いふらしたの』
夜、部屋で零士と今日あったことを話してる。
「滝山くん」
『滝山……滝山……。あ……!アイツかぁ』
何かを思い出したかのようで「参ったな」と呟いてるのが聞こえた。
『その滝山の兄貴が俺らのこと嫌ってるって言ってたんだろ。それ、俺らというより湊を嫌ってるんだよ』
「え?」
『俺らのマネージャー、いるだろ』
「優樹菜さん?」
『そ。今は俺ら全体のマネージャーやってくれてんだけど、アイツは元々は湊の追っかけ。で、その優樹菜のケツ追っかけてたのが滝山健一。その滝山勇一の兄貴』
こんなところに繋がりがあったんだと柚子は妙な縁に驚いていた。
『で、優樹菜が自分に靡かないから俺らを目の敵にしてる。もしかしてまだ優樹菜に付きまとってるのかもな』
零士は面白いという風に笑った。
少しスッキリした顔で降りてきた崇弘はさっきまでの二日酔いの顔はしていない。
「酔い覚めたか」
「まだ残ってる」
「いつもいつも飲み過ぎなんだよ!」
輝は崇弘に怒鳴っていた。
「頭に響くからやめろ」
嫌そうな顔をして部屋から持ってきた荷物をまとめている。
「あ、あんまりキレイに片付けなくていいよ。親父の方でハウスキーパー入れるだろうから」
「んなわけにいくか」
真面目な輝は崇弘に睨む。
そんな輝を見て崇弘は「ガハハハっ」と笑った。
「じゃ行くか」
最後まで寝ていた崇弘が一番先にワゴン車に乗っていた。
「お前なぁ」
苦笑しながら輝は運転席に乗り込み零士を見た。
「じゃついてこいよ」
車を走らせた。
「ほら。乗って」
零士に促され後部座席に乗り込もうとした。
「柚子は助手席に乗れ。俺は後ろで寝るわ」
「え」
湊はさっさと後部座席に乗って瞼を閉じた。
「変な気、回すんじゃねぇよ」
零士は呟くと助手席のドアを開けた。
零士は湊の車を走らせ、先に行ったワゴン車を追いかけた。
柚子は何を話していいのか分からなかった。久しぶりに会ったと思ったら葉山まで連れ出され、湊たちの集まりに参加させられて緊張しっぱなし。夜はいつの間にか寝てしまって、零士と同じベッドで寝てたということ。
その全てが駆け足で起きた出来事だった。
「まだ緊張してる?」
ハンドルを持つ手がかっこよくて見惚れてしまう。
「柚子」
呼ばれてはっとする。
「あまり固くなるなよ。アイツらバカばっかだし。まだああやって集まると高校生の時のノリと変わらないし。気兼ねしちゃダメだよ」
「それでも……緊張します」
「俺とふたりってのも?」
「あ……、うん」
ふっと柔らかい笑みを溢す。
「慣れていくしかない……かなぁ」
信号で停車した時に、零士はそう言って柚子を見る。
「早く慣れて欲しいな。寂しいじゃん」
「ごめんなさい……」
思わず謝った柚子に寂しい顔を向ける零士は「謝って欲しいわけじゃないよ」と告げる。
(分かってる。それでも緊張してまともに顔を見られない時もあるの)
付き合ってるといっても、会ったのはまだ数える程で、柚子にとっては初めての彼氏で、本当にどうしたらいいのか分からないことのが多い。
それを分かってるが零士は寂しくなる。
「また仕事忙しくはなるけど、日本にいるから。会える時には会いに行くから」
「ん……」
頷く柚子の中は不安でいっぱいだった。
この二日間、本当に緊張しっぱなしだった。それでもメンバーはみんな優しくて気を使ってもらってしまった。
湊がまだこの人たちと友達をしている訳が分かった気がした。
(ならなんで、バンドを辞めてしまったんだろう)
それが不思議だった。
◇◇◇◇◇
「柚子っ!」
朝、家を出たところで芽依に会う。煌太は早々に部活の朝練に出てしまってる。
「土日どっか行ってた?」
「お兄ちゃんに呼び出されてた」
「湊さんに?」
「ん」
まさかBRのメンバーに会ったとは言えない。
「お兄ちゃんの友達も一緒だったの」
葉山で会ったメンバーたちはとても優しかった。
「なーんだ。彼氏と会ってるのかもと思ったのに」
「えっ」
思わずそう反応する。
「あ、彼氏も一緒かぁ」
柚子の顔を見てそう判断した芽依は柚子の顔色を読むのが得意。すぐに嘘などはバレてしまう。
「どんな人なの?」
「教えられないー」
ふたりは話しながら学校へと向かう。
学校に着くとクラスメートたちはテレビドラマやアイドルの話で盛り上がっていた。
「あ、愛川さん」
紫が駆け寄る。
「今ね、凄い話聞いちゃった」
「え」
「BRって、この街が出身だって!」
その話で盛り上がっていたらしい。
詳しい場所は公表していなかったはず。どこでバレたんだろうと柚子は考えていた。
「しかもこの学校にいたって話だよー!」
女子は噂話が好きだ。それが芸能人の話だとしても。
「ねぇ、滝山」
振り返ると滝山勇一がえっへんと言うように立っていた。
「俺の兄貴、3コ上なんだけど、ここの卒業生なんだ。それで教えてもらった」
勇一の言葉に柚子も諦めて話に加わる。
「うちのお兄ちゃん、クラス一緒だったって」
「え!そうなのか?」
勇一は柚子に近寄り、柚子の腕を強く掴んだ。
「お前の兄ちゃんに合わせてくれ!話聞きたい!」
「無理よ」
「いいじゃんかー。うちの兄貴、メンバーみんなのこと嫌ってて話してくれないんだよー」
「うちのお兄ちゃん、今一人暮らしだから家に帰ってこないし。やたらに話す人じゃないのよ」
柚子は自分の席へと座った。
「いいじゃん、お前の兄ちゃん紹介してくれー」
「お兄ちゃん、忙しい人だから」
「ちぇっ」
柚子が頑なに無理と言ってるからか、勇一は諦めるしかなかった。
『で、誰だっけ。俺らが光葉高校だって言いふらしたの』
夜、部屋で零士と今日あったことを話してる。
「滝山くん」
『滝山……滝山……。あ……!アイツかぁ』
何かを思い出したかのようで「参ったな」と呟いてるのが聞こえた。
『その滝山の兄貴が俺らのこと嫌ってるって言ってたんだろ。それ、俺らというより湊を嫌ってるんだよ』
「え?」
『俺らのマネージャー、いるだろ』
「優樹菜さん?」
『そ。今は俺ら全体のマネージャーやってくれてんだけど、アイツは元々は湊の追っかけ。で、その優樹菜のケツ追っかけてたのが滝山健一。その滝山勇一の兄貴』
こんなところに繋がりがあったんだと柚子は妙な縁に驚いていた。
『で、優樹菜が自分に靡かないから俺らを目の敵にしてる。もしかしてまだ優樹菜に付きまとってるのかもな』
零士は面白いという風に笑った。
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