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第2章
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「俺の車の中でいちゃつくな」
その声に急に恥ずかしくなる柚子。運転席には湊が座ってルームミラー越しに睨んでくる。
「零士。頼むから妹を傷付けるなよ」
不機嫌そうな湊ににやっと笑う零士は「言われなくても」と答える。
「じゃ行くぞ。零士はちゃんとサングラスかけてろよ。柚子シートベルトしてな」
零士に話す時と柚子に話す時の声のトーンが違う。柚子には本当に甘くて優しい湊はゆっくりと車を走らせた。
「どこに行くの?」
柚子は状況が掴めていない中、湊に聞く。とりあえず言われた通りにシートベルトをした。
隣の零士は再びサングラスをして後部座席に深く座ってる。
「葉山」
「へ?」
にやっと笑う湊は悪戯っ子のようだ。隣を見ると零士も同じだった。
「今日は帰れねぇから」
「は?」
ますます分からない。どういうことなのか分からない。
「どういうこと?」
「TAKAの親父さんが持ってる別荘に行くんだよ」
「え?」
「親父たちには言ってるから大丈夫」
「えっ。あのお父さんが許したの?」
「まぁな」
「えー!……てか、着替えとかどうすんの!」
「買いに行けばいい」
ふたりのやり取りを見て零士はクスクス笑い出す。
「そんな簡単に……っ!私に予定があったらどうすんの!」
「なかったろ」
「ぐっ……。ないけど……」
今回の口喧嘩はどうやら湊の勝ちらしい。
「ほら。服、買ってやるから機嫌直せ」
運転しながらニコニコと笑う湊はやっぱり柚子に甘々だ。
こんなふたりを見ていると飽きないなと、零士は思っていた。
結局3人は葉山に行く前に適当なショッピングモールへ行く事になった。
実は湊は柚子の服を見立てるのが好きだったりする。
「ねぇ。もしかして自分たちは用意してるの?」
「当たり」
「酷いなぁ」
「言ったらサプライズにならないだろ」
湊は柚子の頭に手を置くとショッピングモールの中を歩いていく。
零士は柚子の隣に立ちゆっくりと歩く。それは柚子の歩幅に合わせて。
「零士さん、大丈夫なんですか」
こんなに人がいる中を普通に歩いてる。バレてしまわないかとヒヤヒヤしている。
「誰もあのREIJIだと思わないさ」
事実、誰も零士に気付かない。テレビの中の人がここにいるとは思わないからかもしれない。誰ひとり振り返らない。
「柚子」
前の方から湊が声をかける。
「好きな服選べ」
と言った湊は柚子を店の中へと向かわせた。
「零士」
服選びをしている柚子を見ながら湊は零士に言う。
「頼むから柚子を泣かさないでくれ。傷付けないでくれ。柚子が幸せに笑ってくれるなら、親友のお前やる。けど、柚子が泣いてたら傷付いてたらお前を許さない」
湊の顔を真剣な目で話を聞いていた零士は「分かってる」とだけ答えた。
「お兄ちゃん」
店の中から呼ばれふたりは店の中へと入って行く。
「決まったのか」
「洋服だけじゃダメだからね」
「はいはい」
柚子の我が儘に素直に応じる。葉山に行く前に湊と零士は柚子の我が儘に付き合うことになった。
まぁ、主に湊がその我が儘に振り回されていたんだけど。
結局、柚子に甘い湊は柚子に洋服だけではなく化粧品なども買い与えていた。その様子を見て零士は苦笑いしていた。
「お前、本当に柚子に甘いのな」
そう言うくらいだった。
◇◇◇◇◇
「じゃ、本当に行くぞ。崇弘たちが待ってる」
崇弘とはTAKAのことだ。崇弘からメッセージが届いていて少し急いだ。
車の中で零士は柚子にアメリカであったことやメンバーの話などしていた。それをニコニコ聞いてる柚子。後部座席のふたりは本当に嬉しそうに話していた。
柚子の嬉しそうな顔をしているのが分かり、湊も嬉しくなる。今まで本当に柚子の喜ぶことばかりを優先してきた兄、湊。全ては柚子の為。
(少し、寂しいけどな)
湊の心中は複雑だった。それでも柚子の気持ちを優先してあげたいと思っている。
景色はだんだんと移り変わっていく。ゆっくりと流れる外の景色は都会のものとは違っていた。
車は一軒の大きな家へと向かって行く。その庭には数人、騒いでる人たちがいた。
「降りて」
車が停まると柚子はドキドキと胸が高鳴るのを感じた。
「柚子」
サングラスを外した零士が柚子の手を握ると騒いでる人たちの方へ歩いていく。
「もう飲んでるのか」
零士が声をかけた人たちはBRのメンバーだった。
「やっと来たな」
AKIRAが零士を見て笑う。その姿はステージ上ではベースを弾いてるあのAKIRAの笑顔そのものだった。
バーベキューのグリルで肉を焼いてるのはドラムのSHIN。ビール片手に座り込んでるのはTAKAだ。
「おい、零士。荷物運べよ」
後ろから湊が追ってくる。
「運んどいて」
「お前なぁ……」
湊は呆れ顔で零士を見る。
「柚子!」
湊は柚子を手招きし、荷物を運ばせる。
本当に湊と零士はしっかりと準備をしてきていて、柚子は少し腹を立てた。
「柚子。真司には気を付けろよ」
「……?」
「あいつは悪いやつじゃないけど、女にだらしない。まぁ友人の妹には手は出さないとは思うが」
SHINの方を見る湊は「どうしようもねぇやつなんだよ」と呟く。
「んで、崇弘は周りに気を遣い過ぎるやつなんだよ、あんな頭してるけど。けど、酒好きでそれが一番困ったところなんだよ」
ピンクの頭してるTAKAはもう既に出来上がってるようで、さっきから悪ふざけをしている。
「輝は兎に角人に優しい。誰よりも優しいんじゃないかな。けど、怒ると怖ぇよ」
と、AKIRAを見る。その傍には小学4年生くらいの女の子がいた。
「あの女の子は輝の妹」
別荘のリビングに荷物を置き、庭の方へと戻って行く。
「やっと柚子ちゃんに会えたなぁ」
真司が柚子にニコニコと笑いかける。それに対して湊が睨む。
「お前がいるから会わせたくないんだよ」
「なんだよ、それー!」
「俺の大事な妹を傷付けられたら堪らないわ」
「はっ?なんだよ、それー!オレがダチの妹に手出すと思ってんのか!」
「女関係じゃ信用ならん」
ふたりのやり取りにメンバーは笑い出す。
柚子は笑っていいのかどうか分からないでただそこにいた。
「柚子ちゃん、あまり緊張しないでいいからね。あれはいつものことだし」
と崇弘はまだ言い合ってる湊と真司を指した。
湊の高校時代の友達。それがBR……。
その声に急に恥ずかしくなる柚子。運転席には湊が座ってルームミラー越しに睨んでくる。
「零士。頼むから妹を傷付けるなよ」
不機嫌そうな湊ににやっと笑う零士は「言われなくても」と答える。
「じゃ行くぞ。零士はちゃんとサングラスかけてろよ。柚子シートベルトしてな」
零士に話す時と柚子に話す時の声のトーンが違う。柚子には本当に甘くて優しい湊はゆっくりと車を走らせた。
「どこに行くの?」
柚子は状況が掴めていない中、湊に聞く。とりあえず言われた通りにシートベルトをした。
隣の零士は再びサングラスをして後部座席に深く座ってる。
「葉山」
「へ?」
にやっと笑う湊は悪戯っ子のようだ。隣を見ると零士も同じだった。
「今日は帰れねぇから」
「は?」
ますます分からない。どういうことなのか分からない。
「どういうこと?」
「TAKAの親父さんが持ってる別荘に行くんだよ」
「え?」
「親父たちには言ってるから大丈夫」
「えっ。あのお父さんが許したの?」
「まぁな」
「えー!……てか、着替えとかどうすんの!」
「買いに行けばいい」
ふたりのやり取りを見て零士はクスクス笑い出す。
「そんな簡単に……っ!私に予定があったらどうすんの!」
「なかったろ」
「ぐっ……。ないけど……」
今回の口喧嘩はどうやら湊の勝ちらしい。
「ほら。服、買ってやるから機嫌直せ」
運転しながらニコニコと笑う湊はやっぱり柚子に甘々だ。
こんなふたりを見ていると飽きないなと、零士は思っていた。
結局3人は葉山に行く前に適当なショッピングモールへ行く事になった。
実は湊は柚子の服を見立てるのが好きだったりする。
「ねぇ。もしかして自分たちは用意してるの?」
「当たり」
「酷いなぁ」
「言ったらサプライズにならないだろ」
湊は柚子の頭に手を置くとショッピングモールの中を歩いていく。
零士は柚子の隣に立ちゆっくりと歩く。それは柚子の歩幅に合わせて。
「零士さん、大丈夫なんですか」
こんなに人がいる中を普通に歩いてる。バレてしまわないかとヒヤヒヤしている。
「誰もあのREIJIだと思わないさ」
事実、誰も零士に気付かない。テレビの中の人がここにいるとは思わないからかもしれない。誰ひとり振り返らない。
「柚子」
前の方から湊が声をかける。
「好きな服選べ」
と言った湊は柚子を店の中へと向かわせた。
「零士」
服選びをしている柚子を見ながら湊は零士に言う。
「頼むから柚子を泣かさないでくれ。傷付けないでくれ。柚子が幸せに笑ってくれるなら、親友のお前やる。けど、柚子が泣いてたら傷付いてたらお前を許さない」
湊の顔を真剣な目で話を聞いていた零士は「分かってる」とだけ答えた。
「お兄ちゃん」
店の中から呼ばれふたりは店の中へと入って行く。
「決まったのか」
「洋服だけじゃダメだからね」
「はいはい」
柚子の我が儘に素直に応じる。葉山に行く前に湊と零士は柚子の我が儘に付き合うことになった。
まぁ、主に湊がその我が儘に振り回されていたんだけど。
結局、柚子に甘い湊は柚子に洋服だけではなく化粧品なども買い与えていた。その様子を見て零士は苦笑いしていた。
「お前、本当に柚子に甘いのな」
そう言うくらいだった。
◇◇◇◇◇
「じゃ、本当に行くぞ。崇弘たちが待ってる」
崇弘とはTAKAのことだ。崇弘からメッセージが届いていて少し急いだ。
車の中で零士は柚子にアメリカであったことやメンバーの話などしていた。それをニコニコ聞いてる柚子。後部座席のふたりは本当に嬉しそうに話していた。
柚子の嬉しそうな顔をしているのが分かり、湊も嬉しくなる。今まで本当に柚子の喜ぶことばかりを優先してきた兄、湊。全ては柚子の為。
(少し、寂しいけどな)
湊の心中は複雑だった。それでも柚子の気持ちを優先してあげたいと思っている。
景色はだんだんと移り変わっていく。ゆっくりと流れる外の景色は都会のものとは違っていた。
車は一軒の大きな家へと向かって行く。その庭には数人、騒いでる人たちがいた。
「降りて」
車が停まると柚子はドキドキと胸が高鳴るのを感じた。
「柚子」
サングラスを外した零士が柚子の手を握ると騒いでる人たちの方へ歩いていく。
「もう飲んでるのか」
零士が声をかけた人たちはBRのメンバーだった。
「やっと来たな」
AKIRAが零士を見て笑う。その姿はステージ上ではベースを弾いてるあのAKIRAの笑顔そのものだった。
バーベキューのグリルで肉を焼いてるのはドラムのSHIN。ビール片手に座り込んでるのはTAKAだ。
「おい、零士。荷物運べよ」
後ろから湊が追ってくる。
「運んどいて」
「お前なぁ……」
湊は呆れ顔で零士を見る。
「柚子!」
湊は柚子を手招きし、荷物を運ばせる。
本当に湊と零士はしっかりと準備をしてきていて、柚子は少し腹を立てた。
「柚子。真司には気を付けろよ」
「……?」
「あいつは悪いやつじゃないけど、女にだらしない。まぁ友人の妹には手は出さないとは思うが」
SHINの方を見る湊は「どうしようもねぇやつなんだよ」と呟く。
「んで、崇弘は周りに気を遣い過ぎるやつなんだよ、あんな頭してるけど。けど、酒好きでそれが一番困ったところなんだよ」
ピンクの頭してるTAKAはもう既に出来上がってるようで、さっきから悪ふざけをしている。
「輝は兎に角人に優しい。誰よりも優しいんじゃないかな。けど、怒ると怖ぇよ」
と、AKIRAを見る。その傍には小学4年生くらいの女の子がいた。
「あの女の子は輝の妹」
別荘のリビングに荷物を置き、庭の方へと戻って行く。
「やっと柚子ちゃんに会えたなぁ」
真司が柚子にニコニコと笑いかける。それに対して湊が睨む。
「お前がいるから会わせたくないんだよ」
「なんだよ、それー!」
「俺の大事な妹を傷付けられたら堪らないわ」
「はっ?なんだよ、それー!オレがダチの妹に手出すと思ってんのか!」
「女関係じゃ信用ならん」
ふたりのやり取りにメンバーは笑い出す。
柚子は笑っていいのかどうか分からないでただそこにいた。
「柚子ちゃん、あまり緊張しないでいいからね。あれはいつものことだし」
と崇弘はまだ言い合ってる湊と真司を指した。
湊の高校時代の友達。それがBR……。
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