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第2章
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放課後。柚子のクラスにやってきたのは芽依。にこにこと笑うその姿に思わず柚子も笑う。
「じゃあね、伊原さん」
紫に振り返り手を振る。そして芽依と一緒に教室を出ていく。
そんな姿を紫は見ていた。
紫は芽依が羨ましかった。柚子と仲がいい芽依のことが。自分ももっと仲良くなりたいと思っているのにふたりの間には壁あるように思える。
「伊原さんと仲いいの?」
下駄箱で靴を履き替えてると芽依が聞いてきた。その言葉に振り返ると「ん~」と考え込んでいた。
「そんなに仲いいわけじゃなないけど、仲悪くもないかな」
靴を履き替え終わるとふたりは並んで学校を出ていく。
「で、どこに行くの?」
正門を出たところで柚子は聞くと、芽依は柚子の腕を掴みニヤリとした。
「電車乗るよ!」
柚子たちの自宅は光葉高校まで徒歩で行ける距離にある。その高校から駅まではバスを使って行くしかない。
ふたりはバスに乗り込み駅まで向かった。
「会わせたい人ってね、BRのファンのチームのトップなんだ」
芽依の話だとファンたちで独自のグループを作ってBRを応援して交流しているらしい。そういうチームがいくつも存在していると話してくれた。芽依はそのうちのPINK ROSEというチームにいると教えてくれた。
「こっちよ」
芽依に着いていく柚子はドキドキとしていた。初めて会う人たち。初めての世界に緊張していた。
芽依は駅へと入って行く。電車に乗ってまた移動するらしい。
「柚子」
振り返り早くおいでというように笑う。
芽依と並んで電車に乗り込む。どこまで行くのかと不安になりながらも柚子は芽依の隣に立っていた。
電車の窓から見える景色は、だんだんと都会の風景になっていく。
◇◇◇◇◇
「あれ?」
柚子は思わず声に出す。
見覚えのある景色。それもその筈、湊が住んでるところだった。
降りた駅も湊のアパートの最寄り駅だった。
「ここら辺、お兄ちゃんが住んでるとこだよ」
「お兄さん、ここら辺なんだっけ?」
「大学に近いとこがいいーって一人暮らししたんだもん」
「そっかそっか」
ニコニコと楽しそうな芽依はどんどん歩いていく。その芽依に付いていくのが必死になるくらい。
芽依はあるマンションで立ち止まった。柚子に振り返りニコッと笑う。
(さっきからなんなの?)
柚子はどう反応していいか分からなくなる。
エレベーターに乗り込むと6階のボタンを押す。
芽依に話を振っても笑うだけだった。
エレベーターを降りて廊下を右側へ歩いていく。その突き当たりにあるドアの前に立った。
表札には『平川』と書いてあった。
「平川……?」
芽依の名字と同じ。どういうことなのか、理解出来ずにいた。
芽依はインターフォンを鳴らすと、ドアを開けて入る。
「芽依っ!勝手に入って……」
「大丈夫よ」
笑って柚子の手を引く。芽依に手を引かれるまま中に入っていく柚子はどうしたらいいのか分からなくなっていた。
「ゆうちゃん!」
リビングのドアを開けると湊と同じ歳くらいのキレイな女の人がいた。
「芽依。いらっしゃい」
そして柚子を見るとどことなく芽依に似た笑顔で笑いかけてきた。
「初めまして。平川優奈です」
「……は、初めまして」
「そんなに固くならないで。どうせ芽依が無理やり連れてきたんでしょう」
「ゆうちゃん、そんな言い方しないでー」
「芽依と私は従姉妹なのよ」
「父親が兄弟なんだー」
「あ、じゃBRのBlu―ray借りたのって」
「ああ、それは私の兄ね」
「そうなんですね」
そんなやり取りをしている時も優奈はニコニコとしていた。どうやら芽依のBR熱はこの優奈とその兄にあるらしい。
「それにしてもキレイな子ね」
柚子をまじまじと見て言う。そんなことを言う優奈も本当に綺麗な人なんだけど。
「芽依があなたに会って欲しいって言うのよ、ずっと」
キッチンの方へ行き、お茶の準備をする優奈の仕草は無駄がない動きだった。そんな姿な見とれてしまうくらい。
「あなた、芽依にライブに連れていかれたでしょ」
「はい」
「それでどう思った?」
「え……っ」
まさかREIJIと付き合うことになったとは言えない。
「……かっこよかったです」
「だよねー」
横から芽依が口を挟みはしゃぐ。
「芽依、だからといって柚子ちゃんを無理に入れちゃダメよ」
そう。柚子はこのPINK ROSEに入れたいのだった。だからここに連れてきた。
「ごめんね、ほんとに」
そう言って柚子の前に紅茶を置いた。
「別にチームにいないからといってファンじゃないってわけじゃないもの。ファンであってもチームにいない子、沢山いるわよ」
「でもゆうちゃん~」
「芽依」
優奈に窘められた芽依は「ごめんなさい」と言った。
「じゃあね、伊原さん」
紫に振り返り手を振る。そして芽依と一緒に教室を出ていく。
そんな姿を紫は見ていた。
紫は芽依が羨ましかった。柚子と仲がいい芽依のことが。自分ももっと仲良くなりたいと思っているのにふたりの間には壁あるように思える。
「伊原さんと仲いいの?」
下駄箱で靴を履き替えてると芽依が聞いてきた。その言葉に振り返ると「ん~」と考え込んでいた。
「そんなに仲いいわけじゃなないけど、仲悪くもないかな」
靴を履き替え終わるとふたりは並んで学校を出ていく。
「で、どこに行くの?」
正門を出たところで柚子は聞くと、芽依は柚子の腕を掴みニヤリとした。
「電車乗るよ!」
柚子たちの自宅は光葉高校まで徒歩で行ける距離にある。その高校から駅まではバスを使って行くしかない。
ふたりはバスに乗り込み駅まで向かった。
「会わせたい人ってね、BRのファンのチームのトップなんだ」
芽依の話だとファンたちで独自のグループを作ってBRを応援して交流しているらしい。そういうチームがいくつも存在していると話してくれた。芽依はそのうちのPINK ROSEというチームにいると教えてくれた。
「こっちよ」
芽依に着いていく柚子はドキドキとしていた。初めて会う人たち。初めての世界に緊張していた。
芽依は駅へと入って行く。電車に乗ってまた移動するらしい。
「柚子」
振り返り早くおいでというように笑う。
芽依と並んで電車に乗り込む。どこまで行くのかと不安になりながらも柚子は芽依の隣に立っていた。
電車の窓から見える景色は、だんだんと都会の風景になっていく。
◇◇◇◇◇
「あれ?」
柚子は思わず声に出す。
見覚えのある景色。それもその筈、湊が住んでるところだった。
降りた駅も湊のアパートの最寄り駅だった。
「ここら辺、お兄ちゃんが住んでるとこだよ」
「お兄さん、ここら辺なんだっけ?」
「大学に近いとこがいいーって一人暮らししたんだもん」
「そっかそっか」
ニコニコと楽しそうな芽依はどんどん歩いていく。その芽依に付いていくのが必死になるくらい。
芽依はあるマンションで立ち止まった。柚子に振り返りニコッと笑う。
(さっきからなんなの?)
柚子はどう反応していいか分からなくなる。
エレベーターに乗り込むと6階のボタンを押す。
芽依に話を振っても笑うだけだった。
エレベーターを降りて廊下を右側へ歩いていく。その突き当たりにあるドアの前に立った。
表札には『平川』と書いてあった。
「平川……?」
芽依の名字と同じ。どういうことなのか、理解出来ずにいた。
芽依はインターフォンを鳴らすと、ドアを開けて入る。
「芽依っ!勝手に入って……」
「大丈夫よ」
笑って柚子の手を引く。芽依に手を引かれるまま中に入っていく柚子はどうしたらいいのか分からなくなっていた。
「ゆうちゃん!」
リビングのドアを開けると湊と同じ歳くらいのキレイな女の人がいた。
「芽依。いらっしゃい」
そして柚子を見るとどことなく芽依に似た笑顔で笑いかけてきた。
「初めまして。平川優奈です」
「……は、初めまして」
「そんなに固くならないで。どうせ芽依が無理やり連れてきたんでしょう」
「ゆうちゃん、そんな言い方しないでー」
「芽依と私は従姉妹なのよ」
「父親が兄弟なんだー」
「あ、じゃBRのBlu―ray借りたのって」
「ああ、それは私の兄ね」
「そうなんですね」
そんなやり取りをしている時も優奈はニコニコとしていた。どうやら芽依のBR熱はこの優奈とその兄にあるらしい。
「それにしてもキレイな子ね」
柚子をまじまじと見て言う。そんなことを言う優奈も本当に綺麗な人なんだけど。
「芽依があなたに会って欲しいって言うのよ、ずっと」
キッチンの方へ行き、お茶の準備をする優奈の仕草は無駄がない動きだった。そんな姿な見とれてしまうくらい。
「あなた、芽依にライブに連れていかれたでしょ」
「はい」
「それでどう思った?」
「え……っ」
まさかREIJIと付き合うことになったとは言えない。
「……かっこよかったです」
「だよねー」
横から芽依が口を挟みはしゃぐ。
「芽依、だからといって柚子ちゃんを無理に入れちゃダメよ」
そう。柚子はこのPINK ROSEに入れたいのだった。だからここに連れてきた。
「ごめんね、ほんとに」
そう言って柚子の前に紅茶を置いた。
「別にチームにいないからといってファンじゃないってわけじゃないもの。ファンであってもチームにいない子、沢山いるわよ」
「でもゆうちゃん~」
「芽依」
優奈に窘められた芽依は「ごめんなさい」と言った。
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