4 / 104
第1章
3
しおりを挟む
「ほんとにお前はッ!」
柚子の顔を見た途端、湊は大声で怒鳴り散らす。芽依はほっとして胸を撫で下ろしていた。
「心配かけんじゃねーよ!」
「ごめんなさい……」
「はぁ。無事で良かった」
湊はその場にしゃがみ込んでしまった。そのくらい、柚子が心配で仕方なかった。
「今日の事は親父たちに言うんじゃねーぞ。言ったら二度とライブに行かせて貰えなくなるからな」
ぽん……と、柚子の頭に手を置くと「帰るぞ」と車のドアを開けた。
「柚子、ごめんね」
車の後部座席で芽依は柚子に謝っていた。
「私がライブ誘ったから」
「芽依が悪いんじゃないよー」
「でも……」
そんなやり取りを聞いていた湊は「芽依」とバックミラー越しに声をかける。
「ライブ後のあの人混みは仕方ない。とりあえず柚子いるからもう自分責めないで」
「はい……」
湊の優し声が芽依に向けられる。湊は見た目はちょっと厳つい風貌をしているが、本当はとても優しい目と声の持ち主。子供の頃からからかわれるくらい美形なのだ。それがイヤで厳つい風貌になった。それを知ってる芽依はこんなに厳つい湊が怖いとは思わない。柚子の友達何人かは湊が怖いと言う子がいた。でも芽依は全然そんなことなく、本当に優しいことを知ってる。今日も柚子に怒ったのは本当に心配してるから。それに対して誰も悪くないと言うのはやっぱり優しいから。
「それにしてもどこまで歩いて行っちゃってたのよ」
芽依は柚子に尋ねる。
「どこだろ……」
柚子にはどこまで歩いていたのか分かってない。
「それにどうやってあの場所まで戻ってこれたのよ」
「よく分からない」
柚子はREIJIと会ったことを言わない方がいいのかもと考えていた。そもそもあれは本当にREIJI本人だったのかと。夢でも見てたのかと。
(有名人があんな風に歩いてるわけないよね)
あれは似た人なんだと思うようにした。
「でも本当に良かった」
芽依の安心した顔を見て申し訳なさそうにする。楽しかったライブの後にこんなに心配させてしまうなんて柚子だって思ってもいなかったんだから。
◇◇◇◇◇
帰り道は渋滞にハマってしまい、地元に戻ったのは夜中の1時を回っていた。芽依の家の前に車を停めると家の明かりは点いていて、芽依の両親がまだ起きてることを確認出来た。
カチャッと、家のドアが開き中から芽依の父親が出てきた。
「おじさん」
湊は車から降りて頭を下げた。
「遅くなってしまってすみません。渋滞にハマってしまいました」
「湊君。ありがとう。送り迎えしてくれて」
そう言うと芽依に向き「湊君にお礼は言ったのか?」と聞いていた。
「言ったよー」
芽依はそう言うと後ろを振り返りバイバイと手を振った。芽依の父親はもう一度頭を下げると芽依と一緒に家の中へと入っていく。
「親父たち、待ってるかな」
車にもう一度乗り込んだ湊は自宅の前まで車を走らせた。というより動かしたといった感じで移動させた。自宅には父親の車の他にもう一台停められるスペースがあり、湊はそこへ車を停めた。
「いいか、柚子。今日はぐれたことは絶対言っちゃダメだぞ」
「うん」
「よし。じゃ家入るぞ」
「はぁーい」
全く……と湊はため息を吐く。柚子は湊なら自分をどんな時でも自分を守ってくれると知ってるのだ。湊の前だと甘えたがりな妹になってしまうのだ。
「おかえり」
と、母親が出迎えてくれた。まだ起きていてくれた両親に申し訳なくなる。
「遅かったな」
リビングから顔を出した父親は顔には出さないがとても心配していた。
「渋滞にハマった」
「大変だったね。ご飯は?」
「いらない。途中軽く食ってきた」
「柚子は?」
「今から食べたら太るよー」
母親に言う柚子は体型を気にする年頃の女の子だ。
「じゃ順番にお風呂入っちゃいなさい」
「はーい」
柚子はそう言って階段を上がり自分の部屋へと戻る。湊も同じように階段を上がっていく。柚子と湊の部屋は2階の隣同士。今湊はひとりで暮らしてるとはいえ、ベッドなどの家具はそのままになっていていつでも帰って来れるように母親の手入れも行き届いてる。
「先、フロ入れよ」
そう言った湊はパタンと部屋のドアを閉めた。
部屋に戻った柚子は今日あったことを思い返していた。ライブであんなに夢中になり感動してしまったこと。ライブ終わりに芽依とはぐれてしまったこと。はぐれてしまったことでREIJIと会ったこと。その全てが夢ではないのかと、信じられない思いが胸がいっぱいになっていた。
REIJIと会ったことで柚子の運命も変わっていく。そんなことは柚子はまだ知らなかった。
柚子の顔を見た途端、湊は大声で怒鳴り散らす。芽依はほっとして胸を撫で下ろしていた。
「心配かけんじゃねーよ!」
「ごめんなさい……」
「はぁ。無事で良かった」
湊はその場にしゃがみ込んでしまった。そのくらい、柚子が心配で仕方なかった。
「今日の事は親父たちに言うんじゃねーぞ。言ったら二度とライブに行かせて貰えなくなるからな」
ぽん……と、柚子の頭に手を置くと「帰るぞ」と車のドアを開けた。
「柚子、ごめんね」
車の後部座席で芽依は柚子に謝っていた。
「私がライブ誘ったから」
「芽依が悪いんじゃないよー」
「でも……」
そんなやり取りを聞いていた湊は「芽依」とバックミラー越しに声をかける。
「ライブ後のあの人混みは仕方ない。とりあえず柚子いるからもう自分責めないで」
「はい……」
湊の優し声が芽依に向けられる。湊は見た目はちょっと厳つい風貌をしているが、本当はとても優しい目と声の持ち主。子供の頃からからかわれるくらい美形なのだ。それがイヤで厳つい風貌になった。それを知ってる芽依はこんなに厳つい湊が怖いとは思わない。柚子の友達何人かは湊が怖いと言う子がいた。でも芽依は全然そんなことなく、本当に優しいことを知ってる。今日も柚子に怒ったのは本当に心配してるから。それに対して誰も悪くないと言うのはやっぱり優しいから。
「それにしてもどこまで歩いて行っちゃってたのよ」
芽依は柚子に尋ねる。
「どこだろ……」
柚子にはどこまで歩いていたのか分かってない。
「それにどうやってあの場所まで戻ってこれたのよ」
「よく分からない」
柚子はREIJIと会ったことを言わない方がいいのかもと考えていた。そもそもあれは本当にREIJI本人だったのかと。夢でも見てたのかと。
(有名人があんな風に歩いてるわけないよね)
あれは似た人なんだと思うようにした。
「でも本当に良かった」
芽依の安心した顔を見て申し訳なさそうにする。楽しかったライブの後にこんなに心配させてしまうなんて柚子だって思ってもいなかったんだから。
◇◇◇◇◇
帰り道は渋滞にハマってしまい、地元に戻ったのは夜中の1時を回っていた。芽依の家の前に車を停めると家の明かりは点いていて、芽依の両親がまだ起きてることを確認出来た。
カチャッと、家のドアが開き中から芽依の父親が出てきた。
「おじさん」
湊は車から降りて頭を下げた。
「遅くなってしまってすみません。渋滞にハマってしまいました」
「湊君。ありがとう。送り迎えしてくれて」
そう言うと芽依に向き「湊君にお礼は言ったのか?」と聞いていた。
「言ったよー」
芽依はそう言うと後ろを振り返りバイバイと手を振った。芽依の父親はもう一度頭を下げると芽依と一緒に家の中へと入っていく。
「親父たち、待ってるかな」
車にもう一度乗り込んだ湊は自宅の前まで車を走らせた。というより動かしたといった感じで移動させた。自宅には父親の車の他にもう一台停められるスペースがあり、湊はそこへ車を停めた。
「いいか、柚子。今日はぐれたことは絶対言っちゃダメだぞ」
「うん」
「よし。じゃ家入るぞ」
「はぁーい」
全く……と湊はため息を吐く。柚子は湊なら自分をどんな時でも自分を守ってくれると知ってるのだ。湊の前だと甘えたがりな妹になってしまうのだ。
「おかえり」
と、母親が出迎えてくれた。まだ起きていてくれた両親に申し訳なくなる。
「遅かったな」
リビングから顔を出した父親は顔には出さないがとても心配していた。
「渋滞にハマった」
「大変だったね。ご飯は?」
「いらない。途中軽く食ってきた」
「柚子は?」
「今から食べたら太るよー」
母親に言う柚子は体型を気にする年頃の女の子だ。
「じゃ順番にお風呂入っちゃいなさい」
「はーい」
柚子はそう言って階段を上がり自分の部屋へと戻る。湊も同じように階段を上がっていく。柚子と湊の部屋は2階の隣同士。今湊はひとりで暮らしてるとはいえ、ベッドなどの家具はそのままになっていていつでも帰って来れるように母親の手入れも行き届いてる。
「先、フロ入れよ」
そう言った湊はパタンと部屋のドアを閉めた。
部屋に戻った柚子は今日あったことを思い返していた。ライブであんなに夢中になり感動してしまったこと。ライブ終わりに芽依とはぐれてしまったこと。はぐれてしまったことでREIJIと会ったこと。その全てが夢ではないのかと、信じられない思いが胸がいっぱいになっていた。
REIJIと会ったことで柚子の運命も変わっていく。そんなことは柚子はまだ知らなかった。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2024.8.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる