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空の上に……
前編
しおりを挟むその話を聞いたのは、突然だった。予想もしていなかった。
彼氏の家に泊まりに行っていたその夜。テレビから流れてきたニュース。
ずっと大好きだったバンドのギターが亡くなった。
そのニュースを聞いた時、茫然として涙が止まらなかった。溢れ出る思いをどう表現すればいいのか分からなかった。
彼氏はただ黙って私の傍にいてくれた。
もしひとりでそのニュースを聞いていたなら、きっとダメになっていたと思う。
その日から毎日、泣いて過ごす日が続いた。
私にとって、そのバンドは『大好き』という言葉だけじゃ言い表せないくらい大切な存在だった。
彼らに出会って生き方が変わった。死んでるように生きていた私は、彼らに出会ってちゃんと生きるようになった。
「葬儀には行くな」
彼氏にそう言われた。
「行ったらお前はダメになる」と。
テレビでその日のことをやっていた。回りにはどこから来たのかってくらい大勢の人で埋め尽くされていた。
葬儀に出ようとして車飛ばして事故に遭い、そのまま還らぬ人になってしまった人もいた。亡くなったことで自暴自棄になり自ら死を選んでしまう人もいた。
葬儀に参列して名前を呼んで気絶する人もいた。
バンドのギターがいなくなることが、これ程まで大勢の人に影響あるか。
それは私にとっても影響がありすぎた。
毎日毎日泣いて。
毎日毎日夢に出てきて。
私はこれからどうすればいいのだろう。
どんな風に生きればいいのだろう。
空を見上げて、空の向こうにいる大切な人を想う。
彼氏とは違う、大切な人。
「もう一度、ギターの音が聴きたい……」
涙は止まらない。
この涙が枯れるまで、私は泣くだろう。
空の上を見ながら私は涙を流すだろう──……。
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