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雨降る日に……

7 先生の行動

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 あれから数日が経った。教え子から連絡が来たのは。今にも消えてしまいそうな声をしていた。

『……先生。私、どうしたらいいんだろう』
 泣きながら言う教え子から話を聞くと彼とは完全に切れたということらしかった。彼から何度も連絡あっても電話にもメッセージも返さなかったらしい教え子は彼にあの喫茶店にいるところを見つかって散々言われたらしい。「無理」という事を。

『もう初めっから分かってることなんだけどね』
 乾いた笑いを溢す教え子がなんとも痛々しい。だけど、俺は何もしてやれない。これは本人が乗り越えなきゃいけないことだ。
「これからはもっと自分を磨くんだな。そうすればいつかはお前を愛してくれる人が現れるよ」
『ほんとに?』
「多分な」
『そこは絶対だよって言うところじゃないのー?』
 笑う教え子の声は高校時代のあの時と変わらなかった。

(きっと大丈夫)
 俺はそう確信した。その元気があればきっと大丈夫な気がしていた。
『先生。この前行った喫茶店あるでしょ』
 と、教え子は言った。偶然入ったアンティークな本棚が置いてある喫茶店。教え子があの後も通ってると言っていた。

『本、好きになったみたい。あの喫茶店のおかげ』
 笑う教え子は彼の事はもう話すことはなかった。俺がこの教え子にしてやれるのは見守ることだけ。そしてたまに助言をしてやることだ。きっと自分で道を見つけ、歩いて行ける。迷った時に手を差し伸べてやればいい。俺はそういう立場でいてやろうと思う。


 教え子と電話を切った後、リビングから書斎へ顔を出したうちの奥さん。
「ご飯、出来たよ」
 うち奥さんはこうやって教え子から電話かかってたり会って話したりすることを快く「やってあげなさい」と言う女性だった。普通はいい顔をしないのではないかと思うけど、奥さんはにこにこと笑って「先生なんだから!卒業してもその子の先生でしょ!」と言うような人。本当に色々と出来た奥さんだ。

「また連絡来てたの?」
「まぁな」
「今度はどんなこと?」
 奥さんには色々と話をしている。教え子のことをどう導いてやればいいのか迷う時もあるから。そんな時、奥さんの助言は役に立つのだ。
「彼とはもう連絡取るのをやめたそうだ」
「そっか。でもその方がいいわね。いつまでも執着していても彼女の為にはならないもの。自分を成長させる機会を失ってしまうもの」
 確かにそうだ。次へと進む為には執着は捨てなきゃいけない。教え子にはまだまだ未来があるのだから。
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