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しおりを挟む「あぁー、なんかそんな事もあったわ~」
「忘れてたの?あん時は俺も、俺の母さんも、すっごい心配してたんだよ?」
「わっ、まじでか!!それは悪いことしたなぁ…」
皆が帰ったあと、有沢はリビングもなんだしと俺を自分の部屋へと招き入れた。
そして2人はベッドに腰を下ろし、昔の思い出話に花を咲かせていた。
「そういえば、あの後家に戻ったとき、有沢めちゃくちゃ泣いてたな!鼻水まで垂らしてさあっ!」
「ちょ、やめてよ。てか、忘れてたって言ってたじゃん!!!」
有沢が頬を赤らめ、ぷくぅと膨らませる。
「いや、だってなんか、言われてたら段々思い出してきて…」
「もう~…ほんと桐谷は俺にとって都合悪いことだ、け、は!覚えてるよね!」
わざとらしく嫌味ったらしい目をこちらへ向けできたのでごめんごめん、と彼の頭をくしゃくしゃと撫でる。
そして幾つか言葉を交わした後、有沢はコップの中が空になったからと1階のリビングへ降りていった。
そして有沢の部屋で一人きりになって、静かな時間が訪れる。
「なんか、全然変な空気にならなかったな」
2人きりになった時は正直気まずいかとも思ったが…
「それよか前みたいに普通に話せてる」
嬉しくなって、ふわっと胸が踊るような感じがして、思いのままにぼふっとベッドに横たわる。
なんだ、有沢のやつ全然俺のこと嫌いになってなんかなかったじゃん。
酷いことをして、あいつも新しい友達ができたからもう俺のことなんてどうでもいい嫌な奴くらいに見られてたと思ってたのに。
変わらない、あのときのままだ。
もしかしたら、有沢は俺の意図を汲み取ってくれていたのかもしれない。
中学の時一方的に有沢を避けてたりしたけど、あいつはよく物事を考える、思慮深い人間だ。
きっと俺の行動の意味を推察して、
桐谷は、これはお互いが健全で良好な関係を築くためにやっているのだと、有沢は理解してくれていたのかもしれない。
だから俺になにも文句も言わなかったし、俺以外の奴とよく話すようになった。
「なーんだ、俺は何を今まで思い悩んでいたんだか」
これからは故意に避けるなんてことはせず、普通に仲良くしていこう。
もう共依存のことについて心配になることは無い。
俺も、あいつも、大人になっている。
重いものが取り除かれたように、気分の良くなった俺は大の字に寝そべる。
そして広くなった視界で部屋全体を見回した。
「あいつの部屋も変わんねーなー」
ベッドの上にある目覚ましも、カーテンも。
昔となんも変わらない。
昔からある家具や匂いに刺激されて、ふわっと湧き出る昔の記憶に思いを馳せる。
すると、今の今まで忘れていた、2人の尊い、ある記憶がふっと、思い出される。
そういえば、俺たちがちっさい頃、確か5歳の時に書いた「20年後の手紙」もまだあったりすんのかな。
懐かし~と、ニヤッと笑みが溢れる。
どこだっけ。
「あれは確か…ベッドの下だ」
寝転んだまま、ベッドの下にさわさわと手を伸ばすと、手応えが。
「うわー、まだあった」
取り出してみると、古びた四角い箱が出てくる。
それぞれクレパスで自分への手紙を書いて、20年経ったらまたまたここへ来て、ふたりで開けようねと、指切りしたのだった。
「なつかしいな…」
今すぐ開けてみたいけど、どうしよう。
まだ20年経ってないしな。
しかし、目の前にある好奇心には勝てなかった。
「まあでも、開けてみるだけなら…」
箱の蓋を開けてみるだけ。
封筒に入っている手紙は読まなかったら良いだけのことだ。
少しドキドキしながら、おそるおそるフタを開けてみる。
するとそこには2つの封筒があった。
「うわ~これ俺が昔好きだった戦隊モンのやつじゃん!」
俺宛へのは、当時テレビで流れていた戦隊ものの便せん。
よく「戦いごっこ」なんてものを2人でやってたっけ。
ええとそんで?有沢のは……?
キノコ?
「あ~…昔流行ってたなこれ」
キノコっぽい風貌をしたかわいいキャラクターの便せん。
何故かはよく分からないがその当時はその「キノコ」が男女共に大流行していた。
今振り返ってみればそれの何が良いのかよく分からないな。
「そろそろあいつも戻ってくるだろうし、元に戻しておくか」
手紙の内容は、ええと8年後?のお楽しみということで。
いそいそと片付けをしていると、箱の中に、ある異変というか、違和感に気づいた。
なんだ…?
有沢の手紙が、箱の面から少し浮いてるような。
いや、浮遊力とかの話では無い。
箱の面と有沢の手紙との間に、何かが挟まっている。
なんか他に入れたりしたっけ。
二人の手紙以外なにも入れた覚え無いんだけどな。
一体何がーーー
胸あたりがザワザワとして、見ない方がいいかも、という勘に似た嫌な予感に知らないフリをする。
そっと有沢の手紙を取り除くと、
するとそこにはーーー
「…手錠??」
鉄製の硬い素材に、2つの丸い円。
それは犯人を逮捕する時とかによく使う、刑事ドラマとかにでてくるヤツ。
おもちゃにしては妙にリアルで、12年前の5歳の時に入れたにしては色ハゲや古びた形跡もない、新しい感じだ。
普通に生活していたら目に入るようなことが無いような不気味なそれに、気味の悪さを感じる。
こんなもの、なんで有沢の部屋なんかにあるんだ?
分からない。
俺がよく知っている有沢は、小学生の頃の。
俺によく懐いていて、どうぶつの出てくる本が大好きだった、かわいくて純粋なちひろ。
小学生の頃からそんな物騒なものを持っていたっていうのか?
ありえない。
しかもそうならもっと年季が入っているはずだ。
きっと、その後。
俺が彼と余り関わらなくなっていった中学生時代。
あの頃から、あいつの中で何かが変わっていった…?
そう疑問の念を抱いていると、背後からギシ、ギシ、と階段を昇ってくる有沢の足音が聞こえてきた。
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