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プロローグ或いはよくある修羅場
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それはよくある修羅場とも言えるし、我々にとっては未知の軋轢とも呼べるかもしれない。その二人は生涯を誓い合ったパートナーであった。結婚はまだ先であったが子も授かりまさに幸せの絶頂といった瞬間、男は他のΩを「運命の番」だと思慕し、あっさり身重の元最愛を裏切ろうとしていた。
オメガバースと呼ばれるこの世界観では、男女の他に第二の性としてα、β、Ωと3つの性別が枝分かれし存在している。
βは我々と変わりなく、最も数が多い。αやΩの呪いのような性衝動やフェロモンに惑わされることもなく、比較的平穏に生きて行ける性別といえるだろう。
αはヒエラルキーの最上位に位置付けられ、希少なエリートと認識されている。彼ら彼女らは生物学的な機能として、実は女性αは両性具有であり、同じα女性、β女性、そしてΩの人間を孕ますことができる。
反面Ωはヒエラルキーの最下層に位置付けられ、男女問わず子を成すことができる身体の構造と数カ月に1度やってくるヒートと呼ばれる発情期、子を成す為αを惑わすフェロモンを放出する体質により、長きにわたり社会的に冷遇されていた歴史があった。
αとΩには彼ら特有の関係があり、発情期のΩがαにうなじを噛まれると「番」と呼ばれるパートナー関係が締結される。番うことでΩはヒートが軽くなるか或いはほぼ感じなくなり、フェロモンは番ったαしか感知できないというΩにとってのメリットもあるが、その反面デメリットも大きい。
番解除はパートナーとの死別か、もしくはαからしか解除ができない。
番の解除後もαは別のΩと番うことが可能だが、解除されたΩは二度と他のαと番うことが叶わない。
なにより番の解除には差はあるものの、αにもΩにも負担がかかり、特に解除された側であるΩは番の消失によるダメージと重苦しいヒートにより、短命になりやすいとされている。
そしてαとΩの間には稀に「運命の番」という、遺伝子レベルで相性のいい存在がいる。
東堂敦(とうどうあつし)は男性αで、霧ヶ峰奏(きりがみねそう)は男性Ωだった。
二人は幼馴染の間柄で、小さい頃より友達以上の思いを互いに抱いていた。彼らにはもう一人の幼馴染、三囲芽以(みめぐりめい)という少女漫画のヒロインを彷彿とさせるような華奢で美形の男性βがいた。
「ふたりは運命の番ってやつだね」
思春期になってからも、変わらず揶揄うように敦と奏を見守る芽以の瞳の内に見える微かな仄暗い影を見付けることができたのなら、この悲劇も事前に防げただろうか。
「芽以が、Ωに?」
「ああ、後天性のΩらしくて、珍しい事例らしいんだ」
幼馴染が突然βからΩへ性転換されてしまったことに、Ωである奏の心は親友として心配をしていたはずだった。しかし、友の異変を教えてくれた最愛は何故か芽以の手を繋ぎ、大切な者を抱えるようにして奏と対峙している。
まるで二人にとって奏こそが邪魔者であるかのように。
オメガバースと呼ばれるこの世界観では、男女の他に第二の性としてα、β、Ωと3つの性別が枝分かれし存在している。
βは我々と変わりなく、最も数が多い。αやΩの呪いのような性衝動やフェロモンに惑わされることもなく、比較的平穏に生きて行ける性別といえるだろう。
αはヒエラルキーの最上位に位置付けられ、希少なエリートと認識されている。彼ら彼女らは生物学的な機能として、実は女性αは両性具有であり、同じα女性、β女性、そしてΩの人間を孕ますことができる。
反面Ωはヒエラルキーの最下層に位置付けられ、男女問わず子を成すことができる身体の構造と数カ月に1度やってくるヒートと呼ばれる発情期、子を成す為αを惑わすフェロモンを放出する体質により、長きにわたり社会的に冷遇されていた歴史があった。
αとΩには彼ら特有の関係があり、発情期のΩがαにうなじを噛まれると「番」と呼ばれるパートナー関係が締結される。番うことでΩはヒートが軽くなるか或いはほぼ感じなくなり、フェロモンは番ったαしか感知できないというΩにとってのメリットもあるが、その反面デメリットも大きい。
番解除はパートナーとの死別か、もしくはαからしか解除ができない。
番の解除後もαは別のΩと番うことが可能だが、解除されたΩは二度と他のαと番うことが叶わない。
なにより番の解除には差はあるものの、αにもΩにも負担がかかり、特に解除された側であるΩは番の消失によるダメージと重苦しいヒートにより、短命になりやすいとされている。
そしてαとΩの間には稀に「運命の番」という、遺伝子レベルで相性のいい存在がいる。
東堂敦(とうどうあつし)は男性αで、霧ヶ峰奏(きりがみねそう)は男性Ωだった。
二人は幼馴染の間柄で、小さい頃より友達以上の思いを互いに抱いていた。彼らにはもう一人の幼馴染、三囲芽以(みめぐりめい)という少女漫画のヒロインを彷彿とさせるような華奢で美形の男性βがいた。
「ふたりは運命の番ってやつだね」
思春期になってからも、変わらず揶揄うように敦と奏を見守る芽以の瞳の内に見える微かな仄暗い影を見付けることができたのなら、この悲劇も事前に防げただろうか。
「芽以が、Ωに?」
「ああ、後天性のΩらしくて、珍しい事例らしいんだ」
幼馴染が突然βからΩへ性転換されてしまったことに、Ωである奏の心は親友として心配をしていたはずだった。しかし、友の異変を教えてくれた最愛は何故か芽以の手を繋ぎ、大切な者を抱えるようにして奏と対峙している。
まるで二人にとって奏こそが邪魔者であるかのように。
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