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四周目

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「ヤマザキ、もしかして学校に出没した変質者って」

「ああ、サイオンジの可能性が高い」

 それはそうとして無理やり軌道修正すると、貴一は自身の命を二度も奪った男もサイオンジなのかと問いかける。でも、サイオンジは160㎝程度の小柄な男だ。身体付きも華奢であったし、貴一を殺した男は少なくとも身長も肩幅もあった。

「これはまだ公開されていない情報なんだけど、先日も黒ずくめの変質者が現れて、くやしいことに取り押さえることはできなかった。でも現場には10㎝以上は高くなれるシークレットブーツと、肩用のむやみやたらにゴツイプロテクターが落ちていたんだ」

「何故そこまでして俺を殺したい? 」

「なんでそんな重要な証拠品、現場に残すんだよ」

「逃げるのに邪魔だったから、ですかね」

「あいつ、本当に頭は悪かったからな……ある意味犯人の可能性高くなったな」

 元々、あらゆることに対して杜撰であったサイオンジと思しき犯人が、捨て身かつやけっぱちになっている今がチャンスと貴一は考える。

「ヤマザキ、Xデー。デカい魔薬が校内に置かれる日っていつかわかったりしないか」

「そうだな、俺の読みだと夏休み前の終業式前日だと思う」

 ヤマザキ曰く、現在は大人しくしているもののサイオンジは出席率の低さや素行の悪さ、ならびに単純に学力が足りておらず、自主退学もしくは転校という形で、別の学校に飛ばされる可能性があるからだと言う。

「なるほどな……そうなると魔薬の設置先は」

「体育館の第四倉庫が妥当じゃないかな」

 今度は奥山が口を挟む。白液学園には全体朝礼などで利用されるマイクや、体育で利用するマットやボールをしまうための倉庫が、体育館の角4つに存在する。

 第一第二倉庫は体育館ステージ側の両サイドにあり、関係者がよく通る場所だ。舞台用装置もあるため早くに見つかってしまう恐れがある。
そうなると後は体育館の後ろにある第三か第四倉庫が妥当だが、第三倉庫は以前よりドアが故障しており、誰にも使用されないように常に解放されていた。ここに設置してしまうと中の様子が丸見えである。

「よし、じゃあ終業式前日に徹夜で体育館で張り込むか」

 貴一は「ついにこれを使う時が来た」とスタンバトンを腰から引き抜くと、ブンッと一振りした。

「貴一。俺も行く。君一人で行かせるわけにはいかない」

 奥山が隣に立つ。東頭も無言で頷くと逆側に立つ。そこまでであれば熱い友情だが、生徒会の六人も立ち会うと名乗り出た。

「サイオンジもだが、お前らが抜け駆けで貴一に手を出さないか心配だ」

 山久の言葉に他生徒会メンバーも全力で首を縦に振る。

「酷いわ、神聖な学び舎でそんな破廉恥なこと考えると思って? 」

貴一が大げさに嘆いて見せると、東頭と奥山は瞬時に貴一から顔をそむけた。どうやらそのつもりがあったらしい。

「やっぱりお前らだけだと心配だな! 」

 マイフェイバリットヤマザキも当日は同行してくれるようだ。このゲームの五週目はもういらない、セーブ君と顔を合わせることもしたくない。
 貴一は決意を新たに終業式の前日まで、ジリつくような日々を過ごした。
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