21 / 27
四周目
21
しおりを挟む
「そもそも、皆がこの世界に問わられてどれぐらいになるかわからないけど。仮想世界とはいえずっと搾り取られていたなら、アンタたちの体力も持たないはずだ」
「……タイミング」
「どうした樋山」
山久が声をかけると、樋山ははたと気づいたように口元を押さえる。
「奥山さん」
「……どうした」
「僕らはドナーとあわせて治験目的でこちらにやってきました。何か事前に説明などありませんでしたか」
「……治験の話であれば、ある特定の感情によって射精を促す薬の開発と聞いた覚えがある」
「……そうでしたか。僕の方はもっとえげつない説明でした。人はどのような性衝動に駆られた時に、最も優秀な精子を出すことができるのか。レイプなのか、それとも和姦なのか、或いは」
愛のある行為の最中なのか、と自嘲気味に樋山は呟く。こんな非人道的な実験をさせておきながら何が愛だと彼は吐き捨てる。
「……その話が本当であれば、少なくとも実験を指示した側は、その条件についても見当がついていると思います」
白液学園という、タイトルは擁護しきれないぐらいまあ酷くはあるが、話自体は比較的純愛もののゲームのように、今のところは全年齢向けの展開であること。
何度も酷い結末を迎えさせてループさせること、そしてその記憶を全員が引き継いで困難を乗り越えようとしているところなど。
「恐らく、一番いい条件でのエンディングクリアでしょう」
ハッピーエンドかつトゥルーエンド、困難を乗り越え結ばれて。愛と感動の中、最後のご褒美シーンとしてのエッチ(貴一にとっては地獄である)で発射される精子、それが最も優れている精子だと考えられているのではないか。
一番良い条件下での精子搾取、それがここから全員出られるルートなのだとしたら。
「……このゲームでの一番いいエンディングって~」
「なんだろー」
双子の言葉に山久も、樋山も顔をしかめる。
「……ロクなもんじゃねえだろうな」
「何せ、私立白液学園~青春プロテインを沢山飲ませて♡ 僕のえくすたしー性活~ですもんね」
「……俺はもう覚悟を決めている。所詮仮想世界だ」
貴一は自身の尻の穴に「これから苦労をかけるかもしれないが、どんな時も俺たちズッ友だからな」と、心の内で肛門との永遠の友情を誓った。
「ヤマザキに会いに行こう」
攻略ヒントを聞きに、そしてもしかしたら別れを告げることになるかもしれない。この世界の良心、そしてわが友であり心の支えであったヤマザキがゲームの世界の住人であったとしたら。貴一にとって悲しい別れが約束されてしまっている。
「あれ、珍しいメンバーが勢揃いしてんな、どした」
「ヤマザキ」
生徒会メンバーと風紀委員長と東頭と貴一という大人数で押しかけたにもかかわらず、ヤマザキは人懐こい笑みで迎え入れる。
思えば、白液学園というトチ狂った名前の中で彼は良心だった。貴一にとって懐かしい、学校生活というものを追体験させてくれたのも彼だった。
「何か相談事か? もしここで話しにくいことならみんな俺ん家に来るか?」
「……タイミング」
「どうした樋山」
山久が声をかけると、樋山ははたと気づいたように口元を押さえる。
「奥山さん」
「……どうした」
「僕らはドナーとあわせて治験目的でこちらにやってきました。何か事前に説明などありませんでしたか」
「……治験の話であれば、ある特定の感情によって射精を促す薬の開発と聞いた覚えがある」
「……そうでしたか。僕の方はもっとえげつない説明でした。人はどのような性衝動に駆られた時に、最も優秀な精子を出すことができるのか。レイプなのか、それとも和姦なのか、或いは」
愛のある行為の最中なのか、と自嘲気味に樋山は呟く。こんな非人道的な実験をさせておきながら何が愛だと彼は吐き捨てる。
「……その話が本当であれば、少なくとも実験を指示した側は、その条件についても見当がついていると思います」
白液学園という、タイトルは擁護しきれないぐらいまあ酷くはあるが、話自体は比較的純愛もののゲームのように、今のところは全年齢向けの展開であること。
何度も酷い結末を迎えさせてループさせること、そしてその記憶を全員が引き継いで困難を乗り越えようとしているところなど。
「恐らく、一番いい条件でのエンディングクリアでしょう」
ハッピーエンドかつトゥルーエンド、困難を乗り越え結ばれて。愛と感動の中、最後のご褒美シーンとしてのエッチ(貴一にとっては地獄である)で発射される精子、それが最も優れている精子だと考えられているのではないか。
一番良い条件下での精子搾取、それがここから全員出られるルートなのだとしたら。
「……このゲームでの一番いいエンディングって~」
「なんだろー」
双子の言葉に山久も、樋山も顔をしかめる。
「……ロクなもんじゃねえだろうな」
「何せ、私立白液学園~青春プロテインを沢山飲ませて♡ 僕のえくすたしー性活~ですもんね」
「……俺はもう覚悟を決めている。所詮仮想世界だ」
貴一は自身の尻の穴に「これから苦労をかけるかもしれないが、どんな時も俺たちズッ友だからな」と、心の内で肛門との永遠の友情を誓った。
「ヤマザキに会いに行こう」
攻略ヒントを聞きに、そしてもしかしたら別れを告げることになるかもしれない。この世界の良心、そしてわが友であり心の支えであったヤマザキがゲームの世界の住人であったとしたら。貴一にとって悲しい別れが約束されてしまっている。
「あれ、珍しいメンバーが勢揃いしてんな、どした」
「ヤマザキ」
生徒会メンバーと風紀委員長と東頭と貴一という大人数で押しかけたにもかかわらず、ヤマザキは人懐こい笑みで迎え入れる。
思えば、白液学園というトチ狂った名前の中で彼は良心だった。貴一にとって懐かしい、学校生活というものを追体験させてくれたのも彼だった。
「何か相談事か? もしここで話しにくいことならみんな俺ん家に来るか?」
11
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。


そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる